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【colocal×酒噺】焼酎ハイボールのアテ探し旅~純白の「はんぺん」を求めて〈阿佐谷パールセンター〉を巡る噺

【colocal×酒噺】焼酎ハイボールのアテ探し旅~純白の「はんぺん」を求めて〈阿佐谷パールセンター〉を巡る噺

2022,11,18 更新

「colocal(コロカル)」はマガジンハウスが発行するWebマガジン。酒造りの伝統を守りつつ次世代につなげる宝酒造と、ローカルな素材を活かしてとっておきのつまみを提案する「colocal」とのタッグで、企画を連載しています。

「酒噺」では、「colocal」とのコラボ企画として不定期に、その内容をご紹介します。
全国の商店街には、その土地を物語る魅力がいっぱい!
酒ライターの岩瀬大二さんが、
タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉に合う最高のアテを探すべく、
全国の商店街を巡ります。今回は、東京・杉並区の〈阿佐谷パールセンター商店街〉です。

“阿佐ヶ谷らしさ”ってなんだろう?

今回訪れるのは阿佐谷パールセンター商店街。
JR中央線阿佐ヶ谷駅南口を降りて、
左手を見ればすぐにアーケードの入口。
この地のメイン通り、中杉通りと並行するように、
東京メトロ丸の内線・南阿佐ヶ谷駅方面へと続く。
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なんとなく阿佐ヶ谷界隈らしさを思わせるのは、
新旧、洋の東西のカルチャーが個性を放ちつつ共存しているから。

確かに最近チェーン展開している店も目に入るけれど、
昔ながらの甘味処や、アパレル、カフェの小さな個性的な店、
エスニックな飲食店に輸入雑貨、地元系の安売りスーパー、
クラフトやこだわりのポップを掲げる酒屋さんなど、
多彩な店が入り混じるあたりに、阿佐ヶ谷らしさを感じるのだ。
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阿佐ヶ谷駅から青梅街道、南阿佐ヶ谷駅方面へ、南北700メートルほどのアーケード街に200店以上の店が並ぶ。アーケードができたのは昭和37年。昔は参道でもあったようで、和菓子屋、甘味処も多い。風物詩は毎年8月7日前後に行われる恒例の七夕祭り。
その阿佐谷パールセンター商店街での〈焼酎ハイボール〉と楽しむアテ探し。
目をつけてきたのは、いずれもこの地で代を重ねてきた老舗の2軒。
真夏の午後、熱気はあるけど期待も膨らみスタート。

手塩にかけたはんぺんの実力やいかに

まずは阿佐ヶ谷駅から入って、2分ほどぶらっと歩いて
昭和11年開店という〈蒲重蒲鉾店〉へ。
こちらで手に入れたいアテは「はんぺん」。
はんぺんというと頭に浮かぶのはおでんだろうか。
ぷかぷかと浮いている白い三角系の物体。
とはいえ「好きなおでんの具ベスト3」なんていう軽い話題を
みなさんしたことがあるかと思うが、
僕のベスト3に登場することはあまりないな、という印象。
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蒲重蒲鉾店の売れ筋は練り物、さつま揚げ系におでんの具材。紅ショウガを練りこんだ利久揚げ、アサリが入ってボリューミーな深川揚げ、カレー風味のコーン揚げなど、新しいテイストも人気。手づくりのすり身は新鮮で素材の風味がしっかり感じられる。
でもこちらの手づくりのはんぺんを食せば、きっと、印象は一変する。
材料も一般的なものはスケトウダラなど白身魚だが、
ヨシキリザメとアオザメ、2種のサメのすり身のブレンド。
そこに山芋、塩、砂糖などを加えてつくられる。
店主の太田泰司さんによれば、
サメのすり身の良さは「きめ細やかさ」。
これに山芋のねばりで、まろやか、ねっとり。
これを丁寧に時間をかけてふんわりと仕上げるという。
はんぺんひとつでこの手のかけよう。
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きめ細かく美しい肌の「はんぺん」300円(税込)。
「おいしいものをつくり続けるしかないですから」
という太田さんは3代目。商店街の副理事長も務め、
長らく商店街のうつろいを見てきた。
「今は個人店は全体の3分の1ぐらい。新しい店も増えました。
それもまたいいんじゃないかと思います。
まちとしておもしろいことをしていければ」
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「おいしいものが食べたければここに来てください、って言えるように日々がんばりたいですね」という太田さん。油、食材の値上げは痛いけれど、それでも手づくりで良いものをつくり続けたいと言う。
太田さんによれば、先代の時代、昭和29年に七夕祭りを開催しよう、
つまり、なにかおもしろいことをしていこうということで商店街が一致。
そのまとまりから昭和35年、公募で「パールセンター」と命名され、
さらにいろいろな活動が始まったとのこと。

商店街として新しいものを受け入れ、
そこで、自分の店のスペシャリティも追及する。
個性が集まるから商店街としての魅力もある。
ふと見れば、20代前半かなという男性が、おでんの具をお買い上げ中。

「高円寺も近いという場所柄、若い方は多いですね。
若い方も舌が肥えていると感じます。だから来てくれるのはうれしい」と太田さん。
地方から中央線沿線をめざして上京する人も多い。
常に若い人たちが憧れて集まり、そしてここから羽ばたいていく。
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テキパキと切り盛りする女性おふたり。実は太田さんの娘さん。「娘は5人姉妹。孫は8人。家族旅行に行くときはマイクロバス。近所からは保育園なんて言われていますよ(笑)」。それでこのTシャツ。老舗は次の次の世代へと続いてくれそう。

初代の洞察力で、阿佐ヶ谷に根づく

そのまま進み、商店街のちょうど真ん中あたり、
右手から芳ばしいタレの香りがふんわりと漂ってくれば、
そこが目的の2軒目、〈稲毛屋〉。
タレの香りは、焼き鳥とうなぎ、ふたつのタレが混じったもの。
そう、こちらは焼き鳥とうなぎなどの川魚の店。
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王道からセロリ胸肉塩焼き、ささみピーマン、鴨串といったバラエティ感があるものまで豊富なラインナップ。焼酎ハイボール好きには、食感、味わい的に、かわタレ焼き、若鳥ハツ焼き、豚シロモツ、つくね、あたりもおススメ。
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うなぎは、愛知県産、静岡県産、宮崎県産など、その時々の良質な国産鰻を仕入れる。タレは塩辛すぎず、濃すぎず。うなぎ自体の味わいを重視。
ルーツは明治初期、新宿・牛込界隈。
宮内庁御用達にもなり、名士たちも集う繫盛店だったが、
2代目が昭和23年この地に開店。

4代目の佐藤光利さんによれば、
「最寄り駅の乗降客数や周辺環境を調べて、出店を決めたとのことです。
ここだけではなく、大きくしては誰かに任せて、ということをしてきたようです」

新たなフロンティアを求めて、まだにぎわい始めたばかりの阿佐ヶ谷に来た。
ショーケースにきれいに並ぶ焼き鳥、豚のもつ焼き、うなぎは、
どれも「焼酎ハイボール」との時間を妄想させてくれ、つい買いすぎてしまいそうになる。

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蒲重蒲鉾店の太田さんと同じく、
佐藤さんも小さい頃から店の手伝いをしながらまちを見ていた。

「店の前、今ドラッグストアですが昔は電気屋さん、
右隣のカフェチェーンはカーテン屋さん、
左隣のケバブ屋は薬局。いろいろ変わりましたね」
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4代目の佐藤さん。3代目のお父様は3年前他界。「一緒に仕事をしてきたので、大切にしてきたことは守っていきたい」。そのうえで新しいことにも取り組む。大学卒業後は「このタイミングしかない」とアメリカ西海岸へ。音楽とカルチャーに触れてから、4代目として戻ってきた。フロンティアスピリッツは初代からの遺伝かも。
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明治時代、新宿、市谷甲良町(大江戸線・牛込柳町駅近く)にあった店舗にて。真ん中の長身の、現代風に言えばイケメンが初代。映画やドラマになりそうな雰囲気。
夏、お店の中から、電気屋さんの店頭に並ぶテレビで見た高校野球。
どの商店街にも地元の電気店があって、店頭のテレビを見て、
並んだ扇風機で涼を取り、電球1個を買って帰る。
それも懐かしの昭和の商店街の光景。
タレの香りがまたその世界に誘ってくれる。
とはいえ、ここは阿佐ヶ谷。
新しい人がやってきて、カルチャーが生まれる場所。

「最近も新しいタワマンができたり、人が増えて、
活気が出てきたように感じます」と佐藤さん。
「学生時代に来られて、今では親子で来られる方もいらっしゃいますね」
新しさが懐かしさになって、商店街は続いていく。
阿佐ヶ谷に対する初代のリサーチは間違っていなかったようだ。

はんぺんをそのままで!? でもこれが旨い!

さあ、阿佐谷パールセンター商店街と「焼酎ハイボール」のコラボレーションの時間だ。
まずははんぺん。
自ら酒好きを公言してくれた太田さんの、「焼酎ハイボール」とのおススメは、
シンプルに「そのまま」。そして醤油とわさびで。
まずはそのまま。はんぺんをそのままというのはあまり経験がないが……
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まず、歯ごたえというよりは心地よさが。
しっとりとふわっと、それが同時に。
洋菓子のスフレやマシュマロを思わせる食感だ。
なにもつけずとも味わいはしっかり。
ここで「焼酎ハイボール」をすかさずひと口。
するとはんぺんの甘みが喉をなめらかに滑り落ちていく。
目を閉じるとふわっと程よい、酔い心地。
天使の……そんな言葉を使いたくなるはんぺんの食感が次のひと口へ誘う。
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うなぎは、頭の中ではすでにでき上がっている組み合わせ。
うなぎのねっとりと焼酎ベースのまろやかさに、思わずうっとり。
山椒を軽く振れば炭酸の清涼感とも相性がよく飽きさせない。
せっかくならうなぎは熱々で。
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温めなおす際のコツ、料理清酒をひとふり。
これでふっくら仕上がるのだ。
頭の中で描いていた相性通りなのだけど、
やはり商店街の老舗で買ってきたというプラスαの喜びで
この時間がもっと幸せなものになる。

阿佐ヶ谷という、常に若い才能やカルチャーが集うまちで、
老舗の味、情緒ある商店街というイメージはわかなかったのだけれど、
実際に足を運んでみれば、新旧が楽しく混ざりあって、
きっとここからまた新しい何かが生み出されるんだという雰囲気。
そこに、ビシッと背骨があって、
それが何代ものれんを守ってきた店なんだろう。
そんなことを考えると、ふわっとまろやかに味わっていた「焼酎ハイボール」から、
持ち味のガツッとくる飲みごたえが。
いろいろな表情がある。だから楽しいんだ。
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information
蒲重蒲鉾店
住所:東京都杉並区阿佐谷南1-47-10
TEL:03-3311-3543
営業時間:9:00~19:30 
定休日:水曜

稲毛屋
住所:東京都杉並区阿佐谷南1-35-24
TEL:03-3311-2907
営業時間:11:00~20:00 
定休日:水曜、第2・第3木曜
▽今回アテと共にご紹介したお酒はこちら
タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>

※オリジナル記事はこちら(Webマガジン「colocal」)

クレジット

・ライター:岩瀬大二
(プロフィール)
●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆

・撮影:黒川ひろみ
   

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