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恵方呑みとアテの海苔の噺

恵方呑みとアテの海苔の噺

2月3日は節分の日。
本来は立春・立夏・立秋・立冬の4つの前日のことを指します。
節分といえば、豆まきに恵方巻きなどを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、近年「恵方呑み」なるものが流行の兆しを見せているのだとか。
今回は、縁起のいいお酒とそれに合わせる抜群に美味しい肴の噺をご紹介します。

「恵方呑み」って?

「恵方呑み」は、恵方(2020年は西南西)に向かって願いを込めながら日本酒をいただくことで、季節の福を呼び込むというものです。
この新しい風習を始めたのは栃木県の酒造会社や卸・小売店なのだとか。
日本酒の販売促進を狙ってのイベントですが、お酒好きな方にとっては、飲む口実ができるのであれば大歓迎ですよね。しかも立春はまさに新酒の時期、しぼりたての新酒を味わうのにうってつけのタイミングです。

しかし、ただお酒を飲むというのもなかなか味気ないもの。せっかくの美味しい新酒を味わうなら、それに合うつまみがほしいところです。
酒噺がこの時期に提案する恵方呑みのお供は「海苔」。
同じく恵方を向いて食べる「恵方巻き」につきものの海苔は、お米のベストパートナーということで、同じ米からできた日本酒と合わないはずがありません。
嬉しいことに11月から2月は海苔の旬。香ばしい新海苔と日本酒との出合いを求めて、大阪で大人気を誇る海苔専門店へ伺いました。

2010年創業。若い店主が送り出す、香り豊かな大阪新名物

やってきたのは「のり屋 Umanori」。
2010年に大阪の千林で創業したお店で、本店の千林店の他に2号店の豊崎店があります。
今回取材でお邪魔したのは2号店の豊崎店。
一見するとおしゃれなのり屋さんに見えますが、この店には、ただののり屋ではない特徴が二つあります。

一つは週に1日しか営業をしていないこと、もう一つはネットショップなどを展開せず、店頭のみの販売にこだわっているということ。

これだけ特殊な販売方法を行い、さらには宣伝などもほとんど行っていないにも関わらず、地元の人々の口コミや大切な人への贈り物として認知を広めたそうです。
現在では、開店からわずか数時間で全ての商品が売り切れてしまうこともあるのだとか。

2時間に40個が限度。手作りにこだわる味付け海苔

こだわり満載のお店と海苔づくりについて、代表取締役の梁本 康朋(やなもと・やすとも)さんに伺いました。

「週に1日しかお店を開けないのは、製造に時間がかかるからなんですよ」と梁本さん。

のり屋では、有明や三重など海苔の産地まで直接出向いて厳選した海苔に、調味料を人の手で丁寧に揉み込んでいきます。
機械化を考えたこともあるそうですが、この工程だけはどうしても人の手でなければ、旨味が乗らないのだとか。
さらに、味を揉み込んだ海苔を特殊な方法で十分に乾燥させていく非常に手のかかる作業を経るため、2時間で生産できるのはわずか40個分が限度なんだそうです。

カウンターに置いてあるメッセージカードには、海苔への熱い想いが。

「製造に時間がかかるので数は限られます。海苔屋を始めた当初は副業として行っていたので、本業の仕事が終わってから海苔の製造をしていたというのもあります。スタッフが増えた現在も、私を含め働く人たちが気持ちよく余裕を持って仕事をするためには、やはりこの製造量・製造タイミングがちょうど良いんです」(梁本さん)。

さらに梁本さんは続けます。

「宣伝やネット通販をしないのもこの製造量によるところがあります。千林で初めて店を開いた時、最初の週は売上ゼロ。二週目になってようやく地元の方に買っていただいたのですが、幸運なことにこの方が私の作る海苔をすごく気に入ってくださって、毎週のようにお店に来てくださったんです。その後も、千林の商店街の皆さんが口コミで私の店を応援してくださいました。ネット通販をしてしまうと、私の海苔を待ってくださる地元の方に、お渡しできる数がなくなってしまうかもしれません。せっかく店まで足を運んでくださったのに、商品がなくがっかりされるかもしれません。それだけは絶対に嫌なんです。だから、私はこれからも店頭での販売にこだわり続けます」(梁本さん)。

エメラルド色に輝く香ばしい海苔に日本酒が止まらない!

並々ならぬ思いで作られるのり屋さんの海苔。
本来は並んで購入させていただくところですが、特別に「とうがらし」と「うめかつお」の2つの商品をいただきます。

「とうがらし」は、梁本さんがのり屋をオープンするきっかけとなった味。
梁本さんのお祖母さまが、手作りしていた味を再現・改良したものです。

ぱりっと海苔が口の中でちぎれると、ごま油の香りが鼻の奥に広がります。
香ばしさの後に、心地よい唐辛子の辛さが舌の上に広がって、一枚また一枚と知らず知らずのうちに手が伸びる美味しさ。
ちょっと強めの塩味が、お酒のつまみにぴったり。
日本酒もいいですが、レモンサワーなどの強炭酸のお酒にもよく合います。

「うめかつお」は、梁本さんが新たに考えた味。
米油が優しく香り、かつおの旨味とほんのりとした梅の酸味がなんとも懐かしい味わいがより日本酒向けです。

海苔を噛み、少しシナっとした瞬間に日本酒を含めば、鼻にも喉にも馥郁(ふくいく)たる香りが広がって至福の味わい。
お酒を口に運ぶ手も、海苔をつまむ手も足りなくなるほど夢中になります。
もちろんこれでご飯をいただいても絶品なのは間違いありません。

「とうがらし」「うめかつお」それぞれ魅力的な味わいなのですが、塩味や油のコクをしっかりと受け止め、引き出してくれる海苔そのものの旨味に感動します。

「良い海苔の基準は、均一な厚みと美しい色。陽の光に通すと、綺麗な緑色になるのがベスト。ぜひ食べる前に光に当ててみてください」(梁本さん)。

福を呼ぶ恵方呑みは、笑顔になれる海苔とともに

日本酒にもご飯にもぴったりな、のり屋の海苔。
常連客の中には、カマンベールチーズに巻いて食べるなんてちょっとおしゃれな楽しみ方をしている方もいるそうです。

「いろいろな味わい方をしていただくのは嬉しいですね。これからも“のり屋の味が好き”と言ってくれる方に向けて、顔の見える距離で美味しい海苔を作っていきたいです。通販はしていませんが、お取り置きはできますので、ご来店の前にお電話いただけると幸いです」と笑顔で話す梁本さん。

お話を聞いているうちに、こちらが笑顔になってくるほど真摯な気持ちで作られるのり屋の海苔。
春を迎え幸せを呼び込む恵方呑みに、これほど適したつまみはないかもしれません。

なお、節分の日が2月3日なのは2020年まで。
来年からは1日早い2月2日となります。暦が変わる前の最後の節分。

皆さんも美味しい海苔で一献、恵方呑みを楽しんでみませんか?

<取材協力>

大阪千林のりや Umanori

【千林店】
大阪府大阪市旭区大宮1-17-12
営業時間:10:30~20:00(売り切れ次第終了)
水曜のみ営業

【豊崎店】
大阪府大阪市北区豊崎4-2-16
営業時間:10:30~20:00 (売り切れ次第終了)
金曜のみ営業