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自然と人の努力が生んだ、酒造好適米・山田錦の噺
2019,12,13 更新
12月は、日本全国で日本酒の仕込みが始まる季節。
日本酒にとって大切な素材といえば、水と米。水に関しては、以前この【酒噺】の中でもご紹介しました。
今回ご案内するのは、日本酒造りに重要なお米の噺。
今や全国的に有名となった、酒造好適米として“酒米の王様”とも呼ばれる「山田錦」のふるさと、兵庫県加東市のJAみのり東条営農経済センターを訪れました。
酒造好適米・山田錦の“ふるさと”とは?
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酒造好適米の「山田錦」が生まれたのは、1936年、明石市の兵庫県立農事試験場でのこと。
以来、この地は山田錦の故郷として83年経った現在も日本一の山田錦出荷量を誇っています。
この地域の農家をサポートするのが、JAみのり東条営農経済センター。
今回、JAみのりの東条営農経済センターの谷川利喜(たにがわ・としき)さん、笹倉延泰(ささくら・のぶやす)さん、営農部販売課の荻野俊輔(おぎの・しゅんすけ)さん、JA全農兵庫の小嶋一範(おじま・かずのりさん)、そして山田錦の生産を行う農業家の平川嘉一郎(ひらかわ・かいちろう)さんにお話を伺ってきました。
酒造好適米と普通の米は何が違う?
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続いて、山田錦の特徴を笹倉さんがお話しくださいました。
![(2258)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/258/medium/16c38142-1eda-44cc-b333-4e32dc4f93a6.png?1576031887)
それから消化性が高いことが挙げられます。もともと山田錦は、米の吸水性や消化性に優れた『山田穂』(やまだぼ)と、大粒で心白の大きい『短稈渡船』(たんかんわたりぶね)を掛け合わせてできた品種で、その長所をよく受け継いでいます。これが、山田錦が“酒米の王様”と呼ばれる理由のひとつで、実際に山田錦が誕生してから80年以上が経ちますが、これ以上に優れた酒米はまだ発見されていないと言われています」。
![(2260)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/260/medium/511a1dce-dccf-49b5-9c48-0171754e48ef.png?1576031925)
気候と土壌と人が生んだ、日本を代表する酒造好適米産地
では、なぜ加東市が山田錦の産地となったのでしょうか。
実際に山田錦を栽培する生産者の平川さんにその理由を伺いました。
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![(2268)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/268/medium/876c825a-b163-403c-bb23-6e95ea048d0c.jpg?1576032184)
![(2271)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/271/medium/7fc3de1a-4df8-41ab-8e80-fc1809e9a6c4.png?1576032297)
1袋900kg! 巨大な米袋が並ぶライスセンターへ
![(2275)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/275/medium/b6875645-7fdf-4e8a-88a5-b1dab77cd090.jpg?1576032404)
地域一帯で作られた山田錦がこの施設に集められ、籾摺り(もみすり)・選別・出荷されていきます。
![(2278)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/278/medium/3c688767-cf51-4678-88d9-42337fc0e089.jpg?1576032498)
私たちが普段スーパーで目にしているものとは大きさが全く異なります。
一つの袋はなんと900kg。これが倉庫中に並んでいるのです。
加東市東条地区で一年に作られる山田錦は約1,800トン。そのうちJAみのり東条営農経済センターには約1,200トンが集まります。
![(2280)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/280/medium/50d25672-b800-4dd2-a87e-d26b44584744.jpg?1576032564)
![(2282)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/282/medium/03b5bd4c-a018-4711-b008-7977204c7d54.png?1576032623)
米の一粒、日本酒の一滴に込められた多くの努力
「私たちが見てもやっぱり壮観ですね。今や山田錦は全国各地で栽培が行われていますが、やはり私たちの地域のものにはかなわないと思っています。実際に、鑑評会に挑む酒蔵さんからも『兵庫の山田錦を使えば間違いない』という声が上がっているほどです。東条地区で現在、山田錦を作っている農業家さんは430戸ほど。これからも、美味しい日本のお酒が皆さんのお手元に届くよう、より良い実りを目指して私たちも努力を続けていかないといけませんね」。
![(2287)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/287/medium/ace0ef74-47d6-4029-90e6-0d62a19bae7d.jpg?1576032796)
JAみのり東条営農経済センターや生産者の皆さんは何事もないように語りますが、その裏には、毎年変わる天候・気候に合わせて土を作り、肥料を細かに調整し、背の高い山田錦を風雨から守り、倒れないよう大切に育てあげるためのさまざまな苦労が見て取れました。
それだけではなく、平川さんによれば「山田錦を他の土地で栽培しても、東条地区のような粒が大きく、優れた酒米にするのは難しい」のだそうです。
艶やかに透き通り、その中心に雪のように白い心白を抱く大粒の山田錦。
大吟醸酒のように酒米を50%以上まで削る酒造工程においては、時として、弱い酒米が削りに耐えきれず砕けて酒の味を損ねてしまうことがあります。
しかし、心白が大きく高い粘度と強度を保ち、そして雑味の元となるタンパク質の少ない山田錦は砕けにくく、甘く、すっきりとした味わいの酒を造り出してくれます。
また、山田錦は心白がもろみに溶け出しやすく、消化性も高いため低温で時間をかけて造られる吟醸酒造りには最適。
その高い吸水性から酵母菌が入りやすく、「突き破精型」(つきはぜがた)と呼ばれる吟醸酒に最適な麹(こうじ)が育まれ、まさに”美味い酒”を造るための理想が詰まった酒米なのです。
![(2290)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/290/medium/104e83f9-ff6b-4bb0-9074-0240b0a5d414.jpg?1576033167)
進化をもたらした要因の一つは、山田錦の登場にあるのかもしれません。
その裏には、何百という酒米の中から、山田錦を開発した育種研究員さん、それを最適な場所で育て、守り続けた生産者の皆さん、そして山田錦の魅力を最大限に引き出すために、飽くなき探求を続けた酒造家さんの、気の遠くなるような試行錯誤があったのです。
私たちが気軽に飲む日本酒には、数多くの生産者の歴史と奇跡のような努力が結晶のように溶け込んでいます。
豊かな水と土壌、山から吹き降ろす六甲の涼やかな風の情景はきっと、皆さんのお酒を楽しむ時間を一層趣あるものに変えてくれるはずです。
![(2293)](https://cdn.clipkit.co/tenants/433/item_images/images/000/002/293/medium/462fc628-db4f-4930-87dd-83501ae55dd4.png?1576033273)
JAみのり 東条営農経済センター
住所:兵庫県加東市天神277-1
そのほか、お酒造りに関する噺をあわせてどうぞ
秋に円熟する日本酒「秋あがり」と灘の名水の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/2VQmN