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いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺

いろんな「甲類焼酎」を飲み比べて味わいの違いを実感する噺

2022,2,18 更新

【意外と知らない焼酎の噺03】
日本酒と並ぶ日本の伝統的なお酒・焼酎。ただ、その製造方法などは、あまり詳しく知られていないかも。そこで、焼酎のいろはから専門的なコトまで、『古典酒場』の倉嶋紀和子編集長がナビゲーターとなって探っていきます。

宝酒造の松戸工場で「甲類焼酎の製造方法」を学んだ前回に続く第3回のテーマは、「甲類焼酎の味わいの違い」。宝焼酎の商品開発担当者へのインタビューや飲み比べを行い、その奥深い世界に迫ります。
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●倉嶋紀和子:雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名

「焼酎ブーム」はワインや洋酒ブーム後に起きている

倉嶋 今回のテーマは甲類焼酎の味わいということで、まずはどのようにして誕生し、幾多の焼酎ブームを経ていまに至るのかを教えてください。

高井 よろしくお願いします。倉嶋さんは以前、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)と乙類焼酎(単式蒸留焼酎/本格焼酎)の成り立ちなどについて触れられたと思いますが、改めて甲類焼酎の歴史からお話しますね。
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高井晋理 宝酒造(株)商品第一部蒸留酒課長
倉嶋 はい。おさらいを兼ねて、よろしくお願いします。

高井 甲類焼酎の起源は明治末期の1910年。甲類焼酎の製造に欠かせない、連続式蒸留が1826年にスコットランドで発明されたのですが、やがてヨーロッパから日本へ伝わりました。そして連続式蒸留機によってつくられたアルコールに、酒粕を原料に蒸留した焼酎(粕取焼酎)をブレンドして風味を付けたのが、現在の甲類焼酎の原型である「日の本焼酎」です

倉嶋 確か、「日の本焼酎」は宝酒造の前身にあたる会社が販売してヒットさせたんですよね。

高井 そうです。1910年に愛媛県宇和島の日本酒精(株)が「日の本焼酎」を開発し、1912年に当社の前身である四方(よも)合名会社が関東における販売権を取得。そして「寶」の商標で発売して大ヒットしました。いまも宝焼酎のラベルが、その歴史を物語っています。
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当時の「寶焼酎」のラベル
倉嶋 1912年といえば明治45年であり、大正元年。この焼酎は旧来の焼酎に対し「新式焼酎」とも呼ばれていたそうですが、実際に新時代の焼酎だったというわけですね。

高井 おっしゃる通りです。そして、1916年には四方合名会社が、その「新式焼酎」開発の功労者である大宮庫吉(おおみやくらきち)を招へいし、自社製造による新式焼酎「寶焼酎」を誕生させました。特に売れ行きがよかったエリアは東京です。くせの少ない軽快な味わいが、関東圏を中心とした都市生活者や旧来の焼酎の味に馴染めなかった人々に支持されたのではないかと言われています。寶焼酎は大正~昭和にかけて東京を中心に大ヒットし、戦後復興期の物資や食料不足が続くなかでは、大衆のお酒として重宝されました。

倉嶋 チューハイ(酎ハイ)の語源でもある、焼酎ハイボールが誕生するのもこの戦後復興期の東京の下町ですよね。

高井 はい。焼酎ハイボールの誕生と普及は、当時の焼酎トレンドにおいても色濃く関係していますね。そして高度経済成長期を経て、以降の焼酎ブームには、ある法則がみられるようになります。

倉嶋 何でしょう、気になります!

高井 それは洋酒のブームが定期的に起こり、そのあとに「焼酎ブーム」が来ているということです。例えば1981年、1998年ごろにワインブームが起こったあと、それぞれチューハイブーム、本格(芋)焼酎ブームとなりました。
近年のお酒のブーム

近年のお酒のブーム

倉嶋 なるほど! 確かに近年でもハイボールやウイスキーのブームのあとに、レモンサワーブームで焼酎が脚光を浴びてますもんね。

高井 はい。もともとの健康志向の高まりに加えて、最近ではステイホームで外出も減っているので、糖質ゼロ・プリン体ゼロの焼酎を使ったレモンサワーが、家飲みでも重宝されています。

超高純度アルコールと樽貯蔵熟成酒がおいしさの要

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倉嶋 歴史とブームの変遷を学んだところで、次は甲類焼酎の味わいについて詳しく教えてください。特に宝酒造の焼酎はラインアップが豊富で、それぞれ個性的な味わいですから興味深いです。

高井 当社は、ピュアなアルコールをつくれる設備と技術を持っていることが大前提としてあります。

倉嶋 ピュアなアルコールが、おいしさの絶対条件であると

高井 そうですね。松戸工場の連続式蒸留機をご見学いただきましたが、十数本の蒸留塔を備え、最も高い塔は約35m、直径約2.5m、最多で60段もの棚段というスケールは日本最大級です。
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松戸工場の連続式蒸留機
倉嶋 巨大な蒸留機のなかに、緻密な構造がいくつも設けられていると伺いました。

高井 はい。設計については独自の意向を細かく反映させており、どう運転させるか、組み合わせるかなど、ノウハウを含めていくつもの独自技術が採用されています。業界屈指の蒸留設備と技術があるからこそ、10億分の1レベルで不純物濃度をコントロールできるのです。

倉嶋 10億分の1ですか!
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高井 蒸留されるアルコールの純度は99.99%以上(水を除くエタノールの純度)。不純物は渋味や辛さといった雑味につながり、この成分の濃度が低いことがデータでも明らかになっています。これが独自技術によるものであり、ベースのアルコールがピュアだからこそ、味にブレのない宝焼酎を開発できるのです。

倉嶋 ピュアでクリアだから、狙った味づくりがしやすいということですね。

高井 はい。この超高純度アルコールがあるからこそ、当社が長年培ってきたブレンド技術がより活きるのです。

倉嶋 なるほど。ブレンドによって商品ごとに品質の設計をしているんですね。

高井 先ほど「新式焼酎」のお話をしましたが、100年以上前は連続式蒸留機で蒸留したアルコールに加水し、酒粕を原料にした粕取焼酎をブレンドして製品化していました。クセのない軽快な口当たりやまろやかな芳香は、それまでの焼酎よりケタ違いにおいしいと大好評だったそうです。
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倉嶋 今も昔も、おいしさと人気は比例しますよね。

高井 現在、当社ではサトウキビ糖蜜を原材料とするピュアなアルコールに、粕取焼酎ではなくトウモロコシや大麦などを原料に使用した熟成酒をブレンドしています。原材料はラベルにも明記されていますが、この樽貯蔵熟成酒も宝焼酎にとって欠かせません。
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倉嶋 超高純度のアルコールと樽貯蔵熟成酒。それぞれをつくり、ブレンドする技術が宝焼酎のおいしさの要ということですね。この樽貯蔵熟成酒というものはどちらに貯蔵されているのですか。

高井 はい、宮崎の高鍋町に「黒壁蔵」という当社の工場があるのですが、そこの樽庫で貯蔵しています。現在、約85種類、約2万樽を保有しています。

倉嶋 宮崎・高鍋の蔵に2万樽も!

高井 今回、特別にベースのアルコールと樽貯蔵熟成酒を数種用意しました。香りや味わいを比べていただくと、個性や違いがよくわかると思います。どうぞ!

倉嶋 貴重な体験ですね! うれしいです。

テイスティングで甲類焼酎の多彩な味わいを実感

高井 まずはベースの違いから。蒸留前の「粗留アルコール」(※)と蒸留後の「高純度アルコール」とで、雑味がどうカットされているかを感じていただけたらと思い用意しました。飲用ではありませんので、香りを嗅いでチェックしてください。

※粗留アルコール:穀物、サトウキビ等を発酵させて蒸留したアルコール。現在は主に海外(ブラジル等)で生産されたものを輸入している。

倉嶋 あ、粗留アルコールのほうは、どこかエキゾチックな香りがしますね。想像したほどネガティブではないですが、パンチのある香りです。それに比べて蒸留後の高純度なアルコールは、元は同じアルコールなのに、ここまでクリアになるとは驚きです。

高井 蒸留の設備や技術が確かでないと高純度アルコールになりません。そして純度が高くないと、製品化した際に求める味わいになりません。品質を高め維持していくためにも、最高水準の蒸留設備と技術にこだわっていくことは欠かせないのです。

倉嶋 なるほど、先ほど高井さんがおっしゃった、ピュアなアルコールづくりの大切さがよくわかりました!

高井 では、次に樽貯蔵熟成酒を。一方はトウモロコシを原料にした、樽で1年貯蔵した熟成酒。もう一方はトウモロコシ、大麦などを原料に3年樽貯蔵した熟成酒です。こちらは口に含んでいただいて大丈夫ですので、ぜひ飲み比べてみてください。
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トウモロコシ、大麦などを原料に3年樽貯蔵した熟成酒(左)。トウモロコシを原料にした、貯蔵1年の貯蔵熟成酒(右)
倉嶋 どちらも微かに、樽熟成による色が付いてますね。トウモロコシの方は、熟成期間が1年ですけど十分な厚みを感じます。これだけでもおいしく飲めますね。そして3年熟成の方は、いくつかの味が重なり合ったような印象。その中でもやっぱり麦感が豊かで、この膨らみがカギなんでしょうね。おいしいし、飲み続けたくなる味わいです!
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高井 次に、樽貯蔵熟成酒がブレンドされると甲類焼酎の味にどう違いが出るかを飲み比べしてください。ご用意した焼酎のアルコール度数は25度なので、水で1:1に割って約12.5度に調整してあります。まずは何もブレンドしていない甲類焼酎からどうぞ。
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ずらっと並んだ宝酒造の「甲類焼酎」。一番右のものが何もブレンドしていない甲類焼酎
倉嶋 待ってました! うん、ブレンド無しでもクリアでトゲがなく、すっきりした味わいですね!

高井 お次は定番の「宝焼酎」です。おいしさや飲みやすさを感じていただけるかと。
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宝焼酎
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倉嶋 おなじみの宝焼酎ですね。あ、でもこうして飲み比べるとより違いがわかります! さっきはしっかりしたボディをストレートに感じましたが、こちらはカドがまろやかになって、よりスムース。

高井 飲み慣れている味でも、比較するとわかりやすいですよね。では次に、樽貯蔵熟成酒を3%ブレンドした「極上<宝焼酎>」もお試しください。
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樽貯蔵熟成酒を3%使用したひとクラス上の「極上<宝焼酎>」
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倉嶋 わっ、リッチな香りをダイレクトに感じます。味もいっそうなめらかで、水で割るだけでもスイスイいけますね。

高井 ありがとうございます。こちらはひとクラス上の芳醇な味わいが好評です。ブレンド比率の違いによる奥深さを実感いただけたと思いますが、次はよりリッチな「純」をご賞味ください。こちらは11種類の樽貯蔵熟成酒を13%使用しています。
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11種類の樽貯蔵熟成酒を13%の黄金比率でブレンドした、宝焼酎「純」
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倉嶋 うん、舌の上をトゥルンとすべるようなまろやかさが印象的。余韻にバニラを思わせる甘みもありますかね。「純」も馴染み深いブランドですけど、じっくり味わうと改めて品質の高さを実感します。

高井 「純」をチューハイのベースにされるお店もありますから、倉嶋さんならよく召し上がってらっしゃるかもしれませんね。なお、ほのかな甘みの心地よさはまさに樽のニュアンスです。そして次は樽貯蔵熟成酒を20%使用した「レジェンド」。液体の琥珀色は焼酎の規格内の色度(しきど)になっています。
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色付きの焼酎として代表的な銘柄が宝焼酎「レジェンド」。樽貯蔵熟成酒を20%使った深いコクと豊かな香りが魅力です
倉嶋 確かに「レジェンド」は色も特徴的です。「純」も13%使用でコク深いですが、色はクリアですよね。

高井 「純」の開発には、1974年にアメリカで起こったバーボンとウオッカの消費量の逆転現象である「ホワイトレボリューション」が関係しています。透明な蒸留酒のトレンドが日本に到来することを見据えて、1977年にデビューし大ヒットしました。そのため、「純」にブレンドする樽貯蔵熟成酒は、色をクリアにして、透明だけどコク深いおいしさをつくり上げたのです。一方、「レジェンド」は樽熟成による魅力と高級感をお届けすべく、1988年に誕生したブランドです。

倉嶋 背景を聞くと、それぞれのおいしさもいっそう染みわたりますね。では「レジェンド」もいただきます。おぉ~、これはウッディな樽香がふくよか。はちみつ的な甘い香りもあって、華やかなテイストです。どっしりとしていながらも、まろやかで飲みやすいですね。
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高井 ありがとうございます。「レジェンド」は炭酸割り(ハイボール)もおいしいですし、ロックでじっくりとその味わいを楽しまれるお客様も多いと思います。

倉嶋 私はロックやストレートで飲むなら「レジェンド」ですね。「純」はいつものチューハイだけでなく、レモンサワーでも飲んでみたいと思いました。

高井 レモンサワーといえば宝焼酎「レモンサワー専用」もありますので、最後にこちらをどうぞ。樽貯蔵熟成酒を3%使っているほか、レモン系の香り成分を含むハーブを一部使用し、レモンの風味を引き立てる設計になっています。
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レモンの風味を引き立てる、レモンサワーのために開発された宝焼酎「レモンサワー専用」
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倉嶋 あ、これはまた清々しい香り。ストレートで飲んだだけですけど、どこか酸味を感じ、エスニック料理が食べたくなります。

高井 さすがですね。原料の一部にレモンマートルという柑橘系の香りを感じるハーブや、エスニック料理で多用されるコリアンダーシードも使用しているんです。

倉嶋 いろいろ飲み比べもさせていただきましたが、どれも個性があっておいしいです。このまま置いてあったらついどんどん飲んじゃいそう(笑)。割り方でも味が変わるので、改めて家でも試そうと思います。

高井 お酒好きの倉嶋さんにそう言っていただき、光栄です。甲類焼酎は本来、ピュアでクセがないからこそお茶などで割ったり、自分好みの度数に調整して楽しめるのが特長ですが、こういった味わいの違いによって様々な楽しみ方ができることも実感していただけて良かったです。

倉嶋 今日はすごく勉強になりました。ありがとうございました!


【意外と知らない焼酎の噺】第3回はここまで。宝焼酎のおいしさを左右する「樽貯蔵熟成酒」についても気になるところですが、次回の第4回は「甲類焼酎」から「本格焼酎」に切り替えてその魅力を探ります。
   

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