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日本一の梅の産地・和歌山で、梅酒づくりを学ぶ噺

日本一の梅の産地・和歌山で、梅酒づくりを学ぶ噺

2022,6,17 更新

6月に入ると全国的に梅雨入りし、ジメジメとした季節を迎えます。この時期の長雨に “梅”という漢字が使われる理由は諸説ありますが、一説では中国の長江下流域で、5-6月にかけて降る雨期が、梅の実が熟すタイミングだったからと言われています。そんな梅雨の時期に、収穫の最盛期を迎える青梅が青果店やスーパーの店頭で並ぶのを見かけると、梅酒づくりの季節がやってきたことを実感します。梅とホワイトリカー(焼酎)、氷砂糖で簡単につくることができる梅酒。今回、家庭でつくる梅酒をワンランクアップさせる秘訣を求めて、日本一の梅の生産地・和歌山にお伺いしました。

しとしとと雨の降り続く梅雨時は、梅酒づくりの季節。
青果店やスーパーの陳列棚に青々とした梅の実が並ぶと、思わず手に取って、自宅で梅酒づくりに励むという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
梅にホワイトリカーと氷砂糖を加えて簡単につくれる梅酒ですが、ご家庭でもっとおいしく梅酒をつくれる方法はないものでしょうか。

まずは梅酒づくりのおさらい

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梅酒のつくり方といえば、へたを取った梅をよく洗い、水気を拭き取って熱湯やアルコールで殺菌した広口壜に砂糖と梅を交互に詰めていき、アルコール分35度程度の焼酎を注いで冷暗所で保管するというもの。
この時重要なのは、焼酎の選び方。「酒噺」がおススメするのは、焼酎の中でも甲類焼酎に分類される「ホワイトリカー」です。果実酒の漬け込み専用の甲類焼酎であるホワイトリカーは、そのまま飲用する甲類焼酎とは異なり、無味無臭に近いため、梅の繊細な香りを損なわないというメリットがあります。またアルコール度数も35度と高いので、素材の成分の抽出を早めると同時に、腐敗からもしっかりと守ってくれるのです。

日本最大の梅の生産地・田辺市へ

和歌山県田辺市。隣接するみなべ町と共に、全国の梅生産量の約60%に達するという、言わずと知れた日本一の梅の産地です。
今回、私たちが訪れたのは1965(昭和40)年から、梅干や梅ジュースなど梅の加工品の製造・販売を行う株式会社丸惣(まるそう)。50年以上にわたり、梅と向き合い続けるプロフェッショナルである、社長の芝 邦浩(しば・くにひろ)さんにお話を伺いました。

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「和歌山での梅のルーツは江戸時代まで遡ります。現在の田辺市がある田辺藩は、梅や竹しか育たないほど土地が痩せていたため、初代藩主であった安藤帯刀は梅の栽培を奨励し、これをもって農民の年貢の軽減を図りました。
こうして、和歌山はその土地の特性を活かし改良を重ねる篤農家(とくのうか)たちによって、梅の一大産地となっていくのです。そして1902(明治35)年、上南部村の高田貞楠(たかだ・さだぐす)氏が自身の梅畑の中に一際粒が大きく、赤く色づく梅を発見します。これを大切に育て、守り継いだものが現在のブランド梅の最高峰・南高梅なんです」と芝さん。

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「江戸時代より梅は食物であると同時に、薬としても用いられてきました。梅にはクエン酸やポリフェノールをはじめ数々の栄養素が含まれています。クエン酸は、疲労回復に役立ちますし、梅干の持つ酸は、雑菌の繁殖を抑えてくれます。“梅はその日の難逃れ”というように、昔の人々はこうしたことを経験的に知っていたのでしょう。私たち丸惣も、この梅という古来の食品を通じて、お客様の健康づくりに寄与したいと思っており、いち早く有機栽培に取り組み、田辺市の4つの生産農家さんと連携しながら、本当に美味しい梅を追求し、提供し続けています」。

苦節20年の有機栽培が生んだ艶やかな南高梅

「話だけを聞いていても、有機栽培の梅のおいしさはわからないかもしれませんね、実際に
梅畑に行ってみませんか?」という芝さんの提案で、私たちは生産者さんの元を訪ねることになりました。
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JR紀伊田辺駅から、車で40分ほどの山中。切り立った山の斜面などに植えられた梅の木の間を縫うように車を走らせて到着したのが、那須 健人(なす・たけと)さんの梅畑。
無農薬・化学肥料を一切使わないという有機栽培の梅畑は、下草が伸び、枝からはウグイスの声が響き、近くの小川には魚やイモリなどの生き物が生息しています。これだけで、この畑がどれだけ丁寧に、やさしく育てられているかわかるというものです。

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「ここまでくるのに20年以上かかりました」と那須さんは語ります。

「最初はなかなか実が大きくならず、病気にも弱かったので本当に苦労しました。下草を丁寧に刈って肥料にして、根気強く見守ってきたのがこの梅です。今は300本ほどの梅を育てていて、年間の収穫量は6トンほど。これは農薬や化学肥料を使った梅畑とそれほど変わらない量なんです。それに、うちの梅の実は、艶があって実が厚いのに、梅干や梅酒にしても皮が破けることなくしっとりとして、かつ重量感があるんです。安全に食べられて、しかも美味しい。苦労して頑張った甲斐がありました」。
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梅雨の雨の滴が光る梅の実は青々としつつ、ほんのりと紅色が差していて見るからに美味しそう。これで梅酒をつくったら、どんなに美味しいだろうと想像せずにはいられません。

青梅でなくてもいいの? 梅づくりのコツ

改めて芝さんに梅酒づくりのコツを教えていただきます。
「梅酒は青い梅でなければならないと思っていませんか?」と話し始める芝さん。
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熟度や生育期間によって大きさや色が異なる梅
確かに梅酒づくりのレシピや本には、青梅が梅酒に最適で、黄色く完熟したものは梅干用と記述してあることがほとんどです。

「青梅でなければ梅酒はつくれないというわけではないんです。青梅を梅酒にすると、さっぱりとしたキレの良い口当たりになります。その一方で、黄色く完熟した梅を使えば、青い梅にはない、濃厚でフルーティーな香りを楽しめるんです。また、青梅と完熟した梅を一緒に漬け込むことで、ちょうどその中間、フルーティーでキレの良い梅酒もつくることができるんですよ。私の家では、両方の梅を使うことが多いですね。いろいろな梅で漬けてみて、自分の好みの梅酒を探すのも楽しいと思います」と話してくださいました。

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「梅の大きさですが、大きいほど歩留まり(重量に対して使用できる果汁の割合)は良くなります。大きい梅でも小さい梅でも、梅の種の大きさはそれほど変わりませんからね。ただし、梅酒ではなくカリカリ梅などに加工する場合は、小梅の方が食べやすいため向いているといった使い分けはできます。もちろん、小さい梅でも梅酒は作れますよ。私のところにもあえて、“小さい梅がほしい”とご依頼いただく方も少なくありませんから」と話します。

「梅酒作りのコツ…というほどでもありませんが、和歌山の人たちは、以前からやっていたこととして、梅酒をつける際に一度梅を24時間程度冷凍庫で凍らせるというものがあります。こうすると、実から果汁をより多く出すことができます。また、材料面で注意することとしては、氷砂糖を使うことと、最後に氷砂糖で蓋をしてあげることが大切ですね。
氷砂糖はグラニュー糖や上白糖と比べて溶けにくいため、砂糖の濃度が急激に高くならず、ゆっくりと梅の実に染み込んで、梅の果汁と外液を十分に交換してくれます。また、梅を漬け込むときの仕上げとして、蓋をするように氷砂糖を置くと上から下へとゆっくり溶けた氷砂糖が降りていくので、ムラのない均一な漬け込みができるんです」。

ご家庭で、オリジナルの梅酒づくりに挑戦してみませんか?

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梅酒づくりと一口に言っても、コツは色々とあるものです。
むしろシンプルだからこそ奥深いものなのかもしれません。
皆さんも今年は、ご家庭で梅酒づくりに挑戦してみませんか? できれば、青梅だけでなく、完熟の梅も使って、皆さんだけのオリジナルな配合を試してみてはいかがでしょう。いつもの梅酒がちょっと特別なものに感じられるかもしれませんよ。

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<取材協力>
株式会社丸惣
〒646-0059 和歌山県田辺市古尾14番8号
URL:http://www.genki-maruso.jp/index.html
丸惣通販サイト(K・Mプラムセレクト):https://km-plumselect.com/


▽梅酒づくりにおすすめのお酒
35°ホワイトタカラ「果実酒の季節」

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ホワイトリカーで作る“コーヒー焼酎”の噺

   

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