改めて見直す、お酒と氷の噺
2018,10,12 更新
酷暑も過ぎて、秋も深まりつつあるこの頃。炭酸の爽快感を求めて晩酌に酎ハイを飲んでいた人も、秋の夜長にゆっくりとオンザロックの焼酎やウイスキーを楽しむ人も多いのではないでしょうか。 そんななか「お店で飲む焼酎やウイスキーは一味違うな」と思ったことはありませんか? それはもしかしたら、「氷」の違いかもしれません。よくよく見てみると、バーや居酒屋の氷は、すっきりと透き通っていることが多いもの。あの氷は、家庭の製氷機で作る氷と何が違うのでしょうか? その疑問を解消するため、大阪市北区で明治時代から氷の販売を行う老舗「日本氷業株式会社」を訪ねました。
明治から続く、氷卸の専門店「ニッピョウ」
大阪屈指の繁華街、北新地や曽根崎の飲食店に氷を卸す専門店として150年以上にわたり営業を続ける老舗です。顧客は1,000件を超え、現在では飲食店だけでなく関西の名だたる音楽フェスや夏季の野外イベントなどにも氷を提供しています。今回お話を伺ったのはこの、日本氷業株式会社、通称“ニッピョウ”の代表である古川能規(ふるかわ・よしのり)さん。
この純氷作りにかける時間はなんと48時間。ゆっくりと凍らせることで、氷の結晶が大きく、透明で溶けにくい氷が完成するのだといいます。
高級店が純氷を選ぶワケ
「純氷はその透き通った見た目の美しさと共に、氷の温度が低いため溶けにくいのが特長です。さらに、先ほどもお話した通り水の中の不純物を取り除いているため、お酒などの味を損ないません」と古川さん。
確かに、家庭の製氷機で作った氷に、お酒を注ぐとあっという間に溶けてしまうことがあります。また、夏場などは、冷蔵庫の匂いや塩素臭が気になることも。
「やはり、大切なお客様にとっておきのお酒を楽しんでもらおうと心を砕くお店は氷にも気を使いますよね。お酒の味が変わらず長い時間楽しんでいただくことや、純度の高い透き通った氷がグラスと触れ合う時の心地よい音も、演出のひとつですから。」
そう語りながら、古川さんは私たちを今度は氷作りの現場へと案内してくれました。
氷作りの現場へ潜入
扉を開けると、マイナス2度の冷たい空気が身を包みます。そこに並べられている氷柱は高さ1m、重さ135kgにもなる巨大なもの。中央に、白い筋が入っていますがこれは製氷時にどうしても残ってしまう最後の空気が入っている部分。
運ばれてきた氷は、大きな丸ノコで幾つかににカットされます。例えば大きさがいわゆる1貫(3.75kg)のものは、祭りの屋台などで飲み物を冷やす大容量のクーラ―ボックス(どぶづけ)などに使われることが多いサイズ。
ここから氷を切り分けてブロックアイスやかちわり氷に、さらに細かく砕いていくと、鮮魚店などで使われる小さなクラッシュアイスとなります。
また、特殊な機械で丸くくり抜けば、ウイスキーのオン・ザ・ロックには欠かせない丸氷の出来上がりです。
私たちが日常的に使うことはできないものか…。と思っていると古川さんがそっと「スーパーやコンビニで販売している板氷やロックアイスも純氷です。ただ、そこから好みのサイズに切り出したり、丸氷を作るのは難しいですよね。そういった場合は、私たちのような氷の卸売業者にお問い合わせいただき、お店に来ていただければお分けできますよ。実際にお酒好きの個人のお客様が、2つ3つと買っていかれることが多いんですよ」と教えてくれました。
純氷でお酒を楽しもう!
何より驚くのはその透明度。
取材前までは、たかが氷と思っていた考えが一変しました。
これから始まる秋の夜長。いつもよりゆったり時間をかけてお酒を楽しむために、皆さんも、今晩はいつものグラスに純氷を入れて、とっておきのお酒を楽しんでみませんか?