焼酎との相性抜群、70年続く老舗もつ焼きの噺
2019,1,18 更新
今も大衆酒場で愛され続ける焼酎を炭酸で割った、焼酎ハイボールが生まれたのは、昭和20年代の東京下町であるといわれています。その発祥の地で、焼酎ハイボールと同じくらい愛されている食べ物がもつ焼き。焼酎にぴったりなこの下町グルメを求めて、東京は世田谷区等々力で三代続くもつ焼きの老舗「とよ田」を訪れました。
そもそも「もつ焼き」って?
もつ焼きとは「豚のモツ(内蔵)」を串に刺して焼いたもの。
関東では養豚ブームが起こった明治時代頃から昭和初期にかけて「やきとり」や「やきとん」の別名と共に下町を中心に食べられていますが、肉と言えば「牛」のイメージが強い関西ではなかなか見られないもの。
シンプルな食べ物であるものの、それだけに素材のうまさや作り手の技術が問われる下町のご馳走です。東京の大衆酒場ファンは、この少し脂っこいモツをすっきりとした焼酎で流し込むのです。
関東では養豚ブームが起こった明治時代頃から昭和初期にかけて「やきとり」や「やきとん」の別名と共に下町を中心に食べられていますが、肉と言えば「牛」のイメージが強い関西ではなかなか見られないもの。
シンプルな食べ物であるものの、それだけに素材のうまさや作り手の技術が問われる下町のご馳走です。東京の大衆酒場ファンは、この少し脂っこいモツをすっきりとした焼酎で流し込むのです。
三代目が守る70年の老舗
今回訪れた「とよ田」は東急大井町線「等々力」駅から徒歩わずか10秒にあるもつ焼きの老舗。
細かな傷が刻まれたカウンターや煙に燻された壁が歴史を感じさせます。現在この店を守るのは、三代目の店主となる三上信行(みかみ・のぶゆき)さん。
この店の成り立ちについて「もう何年続いているかは定かじゃないけれど、70年くらいかな。初代はもともと相撲取りだったんだけど、廃業して最初はスズメなんかを焼く屋台を引っ張っていたんだって。その後に、この場所に店を構えたんだ。俺も昔はこの店の常連でね。
二代目の娘だった妻と結婚して、しばらくしてからこの店を継いだんだ」(三上さん)
店を継ぐことを決めてから、肉の仕込みから焼き方、秘伝のタレまで全てを伝授された三上さんは、以来、雨の日も雪の日も焼き場に立ち続けています。
細かな傷が刻まれたカウンターや煙に燻された壁が歴史を感じさせます。現在この店を守るのは、三代目の店主となる三上信行(みかみ・のぶゆき)さん。
この店の成り立ちについて「もう何年続いているかは定かじゃないけれど、70年くらいかな。初代はもともと相撲取りだったんだけど、廃業して最初はスズメなんかを焼く屋台を引っ張っていたんだって。その後に、この場所に店を構えたんだ。俺も昔はこの店の常連でね。
二代目の娘だった妻と結婚して、しばらくしてからこの店を継いだんだ」(三上さん)
店を継ぐことを決めてから、肉の仕込みから焼き方、秘伝のタレまで全てを伝授された三上さんは、以来、雨の日も雪の日も焼き場に立ち続けています。
「割り材は自分で」 とよ田のルール
とよ田のメニューは実にシンプル。食べ物はもつ焼きだけ。
部位は、カシラ、ハラミ、ガツ、テッポウ、タン、ハツ、レバーにコブクロと、品数は豊富だがいずれも一串140円。
あとは、焼酎をはじめとしたドリンクのみ。
とよ田で焼酎を頼むと出てくるのは、コップになみなみと注がれた焼酎のストレート。これをちびちびと飲みながら、ジューシーなもつ焼きを楽しむのがとよ田の楽しみ方。
ただ、ストレートだと度数が強いなと思った場合などは注意が必要。お店には水やお湯の用意しかありません。とよ田のルールは、“割り材を自分で用意すること”なんです。
常連は近隣のお店で氷や炭酸水、時にはお茶を買い込んで、思い思いのスタイルで焼酎のロックや焼酎ハイボールを作って、もつ焼きをおつまみに飲み始めます。
部位は、カシラ、ハラミ、ガツ、テッポウ、タン、ハツ、レバーにコブクロと、品数は豊富だがいずれも一串140円。
あとは、焼酎をはじめとしたドリンクのみ。
とよ田で焼酎を頼むと出てくるのは、コップになみなみと注がれた焼酎のストレート。これをちびちびと飲みながら、ジューシーなもつ焼きを楽しむのがとよ田の楽しみ方。
ただ、ストレートだと度数が強いなと思った場合などは注意が必要。お店には水やお湯の用意しかありません。とよ田のルールは、“割り材を自分で用意すること”なんです。
常連は近隣のお店で氷や炭酸水、時にはお茶を買い込んで、思い思いのスタイルで焼酎のロックや焼酎ハイボールを作って、もつ焼きをおつまみに飲み始めます。
「最初は常連が飲みかけのお茶を持ってきたのがきっかけ。“これ飲んでいいかい”って聞かれたら断れないよ。それがいつの間にか、炭酸や氷をもってくるようになって、今の形になったんだよ。でも、うちはたくさん飲んでくれたらそれでいいしね。何よりいろいろ用意しなくて済むしさ」と、なんともおおらかなエピソードを三上さんは語ります。
これぞ至上の焼酎のアテ
焼き台に火がともり、モツが並べられると脂の焦げる香りが一面に立ち上ります。そして、創業時から休むことなく継ぎ足され、幾万本ものモツが中をくぐり抜けてきた秘伝のタレを絡ませると、焼き台の煙の香ばしさは一段と深くなり、これだけでも焼酎が飲めそうです。
じわっと脂の浮いたもつ焼きは、見た目よりもあっさり。
焼き鳥などは、甘辛いタレが定番ですが、とよ田のそれは甘さをほとんど感じず、醤油をベースにした深いコクと潔い後味が残ります。歯ごたえを堪能したら、焼酎をグビッと一口。
それで口の中の脂はすっきりと流れてリフレッシュ。くどさやしつこさのない、筋の通った粋な味は、なるほどクリアな焼酎によく合う食べ物です。
じわっと脂の浮いたもつ焼きは、見た目よりもあっさり。
焼き鳥などは、甘辛いタレが定番ですが、とよ田のそれは甘さをほとんど感じず、醤油をベースにした深いコクと潔い後味が残ります。歯ごたえを堪能したら、焼酎をグビッと一口。
それで口の中の脂はすっきりと流れてリフレッシュ。くどさやしつこさのない、筋の通った粋な味は、なるほどクリアな焼酎によく合う食べ物です。
常連に学ぶとよ田の楽しみ方
シンプルなとよ田のメニューですが、常連客にはそれぞれの楽しみ方があるのだとか。
例えばメニューにはない「レバーとコブクロの酢醤油」。毎日芝浦まで仕入れに行き、新鮮な豚のモツを一頭分仕入れ、店内で下処理をするからこそできる、臭みゼロの味わいです。また、部位ごとの「厚いところ」や「薄いところ」など、この店を味わいつくした常連だからこその通な頼み方もあるのだとか。
また、常連同士が各々持ってきた氷や炭酸などをわけあう姿も、この店の日常風景。時には初めてのお客さんに、「使いな」と声をかけ、そこから会話が弾み出すなんてことも少なくないのだとか。
例えばメニューにはない「レバーとコブクロの酢醤油」。毎日芝浦まで仕入れに行き、新鮮な豚のモツを一頭分仕入れ、店内で下処理をするからこそできる、臭みゼロの味わいです。また、部位ごとの「厚いところ」や「薄いところ」など、この店を味わいつくした常連だからこその通な頼み方もあるのだとか。
また、常連同士が各々持ってきた氷や炭酸などをわけあう姿も、この店の日常風景。時には初めてのお客さんに、「使いな」と声をかけ、そこから会話が弾み出すなんてことも少なくないのだとか。
ある常連さんに話を聞くと「この店は安心できるよね、親子何代にもわたってくる人も多いし、俺なんか“ここにきたらあいつに会えるし、そしたらそのまま2軒目に行こうなんて”作戦も立てられちゃう。でもね、常連をひいきすることなんてない。初めての人も同じ。同じように美味くて楽しいからさ」と、コップの焼酎を片手に朗らかな笑顔で答えてくれました。
誰もが平等になれるカウンターで焼酎を
70年にわたって味を守り続けるとよ田。
その心意気に、かつて政界を揺るがした大物も惚れ込んでいたとか。それでも三上さんは言います。
「店の中じゃ、政治家だろうが有名人だろうがみんな一緒。特別扱いなんてしないよ。」
焼酎と絶品もつ焼き、それからムード満点のノスタルジーを味わいたいなら、等々力駅から徒歩10秒、テープで補強されたボロボロの暖簾をくぐってみてください。きっとそこには、どんなに時代を経ても変わらない、酒飲みの楽園が広がっているはずです。
その心意気に、かつて政界を揺るがした大物も惚れ込んでいたとか。それでも三上さんは言います。
「店の中じゃ、政治家だろうが有名人だろうがみんな一緒。特別扱いなんてしないよ。」
焼酎と絶品もつ焼き、それからムード満点のノスタルジーを味わいたいなら、等々力駅から徒歩10秒、テープで補強されたボロボロの暖簾をくぐってみてください。きっとそこには、どんなに時代を経ても変わらない、酒飲みの楽園が広がっているはずです。
<取材協力>
とよ田(とよだ)
営業時間:平日:16:00〜21:00、土曜:14:00〜21:00 ※もつが売り切れ次第終了
定休日:日曜・祝日
住所:東京都世田谷区等々力2−32−11
※取材データは2018年11月時点
営業時間:平日:16:00〜21:00、土曜:14:00〜21:00 ※もつが売り切れ次第終了
定休日:日曜・祝日
住所:東京都世田谷区等々力2−32−11
※取材データは2018年11月時点