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【colocal×酒噺】「和酒を楽しもうプロジェクト」 焼酎ハイボールのアテ探し旅〜東京・戸越銀座商店街で出合った「おでんコロッケ」の噺

【colocal×酒噺】「和酒を楽しもうプロジェクト」 焼酎ハイボールのアテ探し旅〜東京・戸越銀座商店街で出合った「おでんコロッケ」の噺

「colocal(コロカル)」はマガジンハウスが発行するWebマガジン。酒造りの伝統を守りつつ次世代につなげる宝酒造と、ローカルな素材を活かしてとっておきのつまみを提案する「colocal」とのタッグで、企画を連載しています。

「酒噺」では、「colocal」とのコラボ企画として不定期に、その内容をご紹介します。
全国の商店街には、その土地を物語る魅力がいっぱい!
そこでしかお目にかかれないおいしいものとの出合いも楽しみのひとつです。
酒ライターの岩瀬大二さんが、タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉に合う最高のアテを探すべく、全国の商店街を巡ります。
これぞ! というアテをテイクアウトして、焼酎ハイボールとの相性をレポート。
思わず喉が鳴る至極の組み合わせをご覧あれ!

戸越銀座商店街で見つけた、新しさとノスタルジーが入り混じるアテ

商店街。
そうだ、こんな身近に、「食の宝庫」「肴の楽園」があるじゃないか。
歩いて、人の情に触れて帰ってくる。
買ってきたアテを並べ、焼酎ハイボール缶を開ければ、飾らないのに極上の時間が始まる。
きっとあなたの近くにも、そんな商店街がある。

戸越銀座。
テレビでもよく登場する関東でも著名な商店街。
実はここ、僕が通った中学校の近所。
生まれ育ったのは、もう少し先の武蔵小山のアーケード街のほう。
こちらは部活の帰りや放課後の遊びのあとに遠回り、
小腹を満たし、たわいもない会話をしたという思い出。

戸越銀座の正式名称は「戸越銀座商店街連合会」。3つの商店街振興組合からなり、全長約1.3キロにわたる関東有数の長さを誇る。大正12年の関東大震災で壊滅的な被害を受けた東京の下町や横浜方面の商業者たちが集まったことから始まった。現在約400軒の店舗が軒を連ねる。最寄り駅は東急池上線「戸越銀座」駅、都営地下鉄浅草線「戸越」駅など。
それはもう30年以上前のことになるけれど、
あのころは、地元の人たちが集い、地元の人のために営む、
ごくごく当たり前の日常があった場所だった。
ここまでメディアに取り上げられるような、
そして休日にはB級グルメの食べ歩きや、
テレビのロケ場所巡り、東京の南側の下町情緒を求めて、
この商店街自体を目当てに、全国からたくさんの人が往来するような時代が来るなんて、
想像できるはずもなかった。

後藤蒲鉾店の「おでんコロッケ」

あの頃の懐かしい店を訪ねてみた。
まずは浅草線・戸越駅から徒歩6分の〈後藤蒲鉾店〉。
遠回りして小腹を満たした店だ。
店頭でおでんを買ってつまむ。
もちろん手元にあったのは酒ではなく炭酸飲料だったけれど。
きっとあのころ、全国どこの商店街でもあったありふれた光景。
後藤蒲鉾店は創業50年を超え、戸越銀座とともに歩んできた。

おでんのシーズンにはかまぼこをはじめとするおでんだねが並ぶ。この日は3代目となる息子さんの友人がおでん番をしていた。この光景にもグッとくる。

店頭にずらりと並ぶおでんの材料は定番から変わりだねまで多彩。にぎやかな雰囲気で、すっと入りやすいのもうれしい。
「もともと肉屋と総菜屋が多くて、生活に密着した商店街でした」
と2代目の後藤学(まなぶ)さん。
1990年、バブル崩壊。踊った業界だけではなく、
普通の暮らしも元気をなくしてしまった出来事で、そこからのトンネルも長かった。
戸越銀座も例外ではなかった。でも負けなかった。

2代目の後藤学さん。「食べ歩きの活気も戻ってきてほしいですね」
「相当な落ち込みでした。
そこから生まれたのがコロッケによるまちおこしです。
私たちも『おでんコロッケ』を発案して参加しました」
丸い食べやすいサイズのコロッケの中身は、
なるとや大根といったおでんの材料を細かく刻んだものと、じゃがいも。

「せっかくつくるなら、普通のじゃ、おもしろくない。
あまりものを入れれば、というのは違うと思ったんです」
その日の残ったおでんをコロッケに回すのではなく、
そのための材料。レシピはしっかり決まっている。

「おでんの材料として人気の大根は入れたかったですし、
断面でも、おでんらしい色合いになるような材料を選びました」

他店も個性的なコロッケを次々と発案。
戸越銀座商店街には肉屋、総菜屋が多かったという背景があって、
そしてスペシャリティを生かす専門店のこだわりがあって、
それは芯の通ったキャンペーンになった。

各店のコロッケとともにおでんコロッケも評判を呼び、
これをきっかけに、食べ歩きが楽しい商店街として、
多くのメディア、テレビ番組にも取り上げられた。
「土日で1000個以上売れたときもありましたね」というからすごい。
もちろんその裏にはおでん、かまぼこのプロの創意工夫。
そんな物語のあるつまみを入手。
頭に浮かべた焼酎ハイボールとの相性に思わず笑みがこぼれる。

フライものを入れる袋に描かれているのは戸越銀座のマスコット、銀ちゃんこと戸越銀次郎。名前は硬派でも可愛らしい。「おでんコロッケ」1個108円(税込み)。
後藤蒲鉾店が、戸越銀座の歴史の証人のひとつとすれば、
続いて訪れたこの店、人は、新しい時代を体現するものだろう。

帯広豚丼 炭火焼 とんたんの「豚丼 」

初めて見つけたのは10年前。飲み歩きの途中。
店頭に漂う炭火で焼かれた豚肉とタレの香ばしさに誘われて
腹ごしらえにふらりと入った。

赤身のうまさを堪能できる「肩ロース」と脂の甘さがぐっとくる「バラ」。オリジナルのタレと絡むとその良さが引き出される(タレもお店で販売)。

こちらがテイクアウトした「豚丼」(竹:700円(税込み))。お肉とご飯の量、肩ロースかバラ、または半々などいろいろなバリエーションが楽しめる。肉だけのテイクアウトもOK。もちろん焼酎ハイボールとの相性は抜群。
店主の田中穣(じょう)さんにそんな思い出を伝えると、
「あぁ、開店して2年目の頃ですね。
まだ戸越銀座のことをよく知らなくて、辛さもあった頃です」
としみじみとした表情を浮かべる。

田中さんは東京で飲食業をするべく長野から上京し、
戸越銀座に店を構え、戸越の地に住み始めた。
「狙ってきたわけではなくて、たまたまなんです。
人の通りがあっていいな、って。
それと、昼から飲める雰囲気があって(笑)」
ただ戸越銀座らしさのようなものには、最初は馴染めなかった。

古くから商売をしてきた人たちの成功体験があり、
できあがった文化がある。これは当たり前のこと。
地域密着という言葉は、「よそ者」には壁という意味でもある。

「でも、あるとき思ったんです。
結局、ここで、自分がやりたいことを実現するためには懐に飛び込んだほうが早い。
自分たちが支払っている町会費でどういうふうに商店街が運営されているのか、
知ることも必要なんじゃないかって」

こうやって話しているわずかな間にも何人もの人に声をかけられ、田中さんからも声をかける。
田中さんは商店街組合に入り、理事になった。
すると、どんどんここにいることが楽しくなった。

「結構、好き勝手なアイデアを出したりしているんですけど、
そうするとかえって可愛がってもらえるんです」

壁をつくっていたのは自分だったのかもしれない。
お店が10年目を迎えた際に、商店街組合の重鎮の寿司屋で
ささやかな祝杯を挙げていたとき、

「これでようやく半人前だな、って寿司屋のご主人が
ニッコリ笑ってくれて。
あれは……、なんだかうれしかったですね」

東京スタイルのさらりとしたドライにも思える関係と、
下町的なコクのある人情と、
そこに商店街として生き抜いてきた目利きと工夫。
肉屋と総菜屋が多かった商店街に、新たな肉料理がやってきて、
そのやんちゃさがあってこそ、可愛がられ、
新しい風が吹いて、なにかが巻き起こる。
それで商店街は生きていく。


商店街は古くからのことがあって、
時代の空気や雑多な空気も飲み込んでいくからおもしろい。
おしゃれな店も増えた。

エスニックさも、中華の香りも、流行りのから揚げも、
新進気鋭のベーカリーも、どこかで見かけるチェーン店も混然一体。
新しさに負けない伝統があって、伝統に埋もれない新しさもあって。
便利さとノスタルジーの絶妙なブレンドにその土地らしさがあれば、
それが魅力的な商店街の姿。

龍輝の「焼き小籠包」

帰りがけ、古くからこの地に住み、戸越銀座を使い、
子どもや孫までも戸越銀座のもので育ててきたような近所のマダムたちが、
軽くおしゃべりしながら気長に出来上がりを待っている店があった。
焼き小籠包の専門店〈龍輝〉だった。
本場・上海ではポピュラーな人気のファストフードも、
まだまだ日本ではニッチな存在。
それが戸越銀座ではさらりと受け入れられている。

「本場・上海の味を戸越銀座で」、というのが龍輝さんの思い。材料を厳選し、丁寧につくることで実現。一見するとかなり本場という店構えだけれど、不思議に戸越銀座の風景に溶け込む。

蒸した小籠包よりも、皮のもちもち感がすごい。そして中からあふれ出る肉汁もより濃厚な感じ。この熱々には焼酎ハイボールを氷入りのグラスに注いで冷や冷やで対抗したい。うれしい追いかけっこで、対抗と言いながらお互いの魅力が引き合ういい関係になりそうだ。「焼き小籠包」6個入り540円(税込み)。
蒸気にのせて餡の脂の甘みが伝わってくる香りが鼻腔に届いて、
「焼酎ハイボールに合うはずだよ」と誘いをかけてきた。
これはもうしょうがない。マダムたちの後ろに気長に並ぼう。

戸越銀座商店街のアテ、いざ、実食!

おまちかねの焼酎ハイボールと「商店街」のペアリング。
まだほくほくのおでんコロッケを手に取り、
まずは焼酎ハイボールでのどを潤す。
すかさず「おでんコロッケ」をひと噛み。
口の中に残った焼酎ハイボールの余韻に、ほのかなおでんの出汁が絡む。

この出汁、サクサク感やじゃがいもの質感を邪魔しないように顆粒状になったもの。
それが焼酎ハイボールという至極の液体によって、
ほどけるようにじわっと絡んでくるのだ。
揚げ物の王道であるポテトコロッケとドライな炭酸の爽快感という組み合わせに加え、
おでんと焼酎のコクまであって、
そのふたつの好相性が同時に楽しめるのだからたまらない。
ソースは不要とみた。

サク、ホロ、そしてじわっとつつましやかにおでんの出汁感。割った時の見た目にと入れてあるエビ、なると、紅ショウガは味や食感にも貢献。「絶対入れたかった」と後藤さんが言う大根。これをおいしく入れるためにコロッケの形は丸型に、というエピソードもいい。
熱々の「焼き小籠包」も、厚みのある皮の甘さと、
たっぷりすぎる肉汁に潜む脂の甘さの二重奏を、
焼酎ハイボールが受け止めつつ、キレで次のひと口へと誘う。
濃い味のアテとの相性の良さを再確認。

「豚丼」はまずはバラ肉だけをひと切れ口に。
炭の香ばしさが強炭酸とともに鼻に抜ければ、
バラの甘みが焼酎とともに口の中で広がる。
タレが抜群に旨い豚丼。
焼酎ハイボールとともにどんどん肉もメシも消えていく……。

戸越銀座で出合ったアテ。
古くから続く店の創意工夫、新風を吹き込んだ店の自信作、
そして、すっと溶け込んだ国際色。
「商店街」をアテに飲む楽しさを存分に教えてくれた。
次の「食の宝庫」「肴の楽園」を求めて。
その言葉を頭に浮かべただけで、また1杯飲めてしまうのだ。

Information
後藤蒲鉾店
住所:東京都品川区戸越2-6-8
TEL:03-3781-5686
平日:10:00~20:00
定休日:火曜
※イートインコーナー併設。

information
帯広豚丼 炭火焼 とんたん
住所:東京都品川区戸越2-5-1
TEL:03-3786-5558
営業時間:11:00~22:00(通常時)
定休日:なし


information
龍輝
住所:東京都品川区戸越2-6-4
TEL:03-6426-8929
営業時間:11:00頃~22:00頃(通常時)
定休日:不定休
※取材にご協力いただいた上記3店は、新型コロナウィルス対策に伴う東京都からの時短要請を受け、営業時間など変更中。最新情報は、各店舗にお問い合わせください。
▽今回アテと共にご紹介したお酒はこちら
タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>

■クレジット

・ライター:岩瀬大二
(プロフィール)
●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆。

・撮影:黒川ひろみ