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【colocal×酒噺】焼酎ハイボールのアテ探し旅~東京・谷中銀座の人情に満ちた 「いか焼」の噺

【colocal×酒噺】焼酎ハイボールのアテ探し旅~東京・谷中銀座の人情に満ちた 「いか焼」の噺

「colocal(コロカル)」はマガジンハウスが発行するWebマガジン。酒造りの伝統を守りつつ次世代につなげる宝酒造と、ローカルな素材を活かしてとっておきのつまみを提案する「colocal」とのタッグで、企画を連載しています。

「酒噺」では、「colocal」とのコラボ企画として不定期に、その内容をご紹介します。
全国の商店街には、その土地を物語る魅力がいっぱい!
そこでしかお目にかかれないおいしいものとの出合いも楽しみのひとつです。
酒ライターの岩瀬大二さんが、タカラ「焼酎ハイボール」〈ドライ〉に合う最高のアテを探すべく、全国の商店街を巡ります。
これぞ! というアテをテイクアウトして、焼酎ハイボールとの相性をレポート。
思わず喉が鳴る至極の組み合わせをご覧あれ!
今回は、東京都台東区の谷中(やなか)銀座商店街です。

谷中銀座商店街で、これぞ下町! なアテは見つけられるか?

谷中銀座商店街。
JR山手線日暮里(にっぽり)駅の西口から歩けば、昭和の郷愁に、どこか文化的な香りもする場所。下町の中の山の手といった、どこか凛とした空気は、寺町と職人たちの歴史、明治、大正、昭和の風流人たちが長年かけて醸しだしたもの。
徳川慶喜公をはじめ多くの著名人が眠る〈谷中霊園〉を過ぎ、歩いていくと、〈夕やけだんだん〉とよばれる夕日の名所が現れる。
そこまでくれば眼下に広がるのが谷中銀座だ。

谷中銀座商店街は、昭和20年頃、戦災を受けてこの地に移ってきた商店や職人により自然発生的に誕生。平成に入って、「谷根千(やねせん)」(谷中・根津・千駄木)に注目が集まると、東京の散策スポットとしても人気に。全国、海外からも風情を求める人が訪れる。
活気はあるけれど、情緒もある小路。
〈夕やけだんだん〉からは端から端までその全容が見えるが、一歩入ってみると、まっすぐな道だけれど心地よい迷宮。

そう感じさせるのはなんだろうと谷中銀座商店街の公式サイトを見れば、「商店街には昔ながらの個人商店を中心に、さまざまな業種約60店舗が全長170メートルほどの短い通りに立ち並びます」、「肉、野菜、魚、酒、洋服、着物、陶器、お茶など、店主は皆さまざまなジャンルのプロです」とある。

なるほど、それぞれの店の個性と誇りが狭い通りに溢れている。
画一的なものではない混沌が、逆に谷中銀座としての統一感になっている不思議。
日常の買い物の場でもあるし、日常にはない場所でもある。
デートのために和装をしてみたという感じの初々しいカップルや、散策を楽しむカメラを持った人生のベテランが歩いている。
もちろん、酒のアテを求める私たちも。

多彩で豊富な〈手づくりおかず トーホー〉のお惣菜

JR日暮里駅から、というのが散策の王道かもしれないが、今日は逆回り。
東京メトロ千代田線の千駄木駅から歩いてみた。
最初は普通にマンションが並んでいる東京の風景で、少しずつ、昭和の名残の住宅地に入り、5分もすれば谷中銀座にたどり着く。
ここからでも迷宮感がにじみ出てくる。
その入口にある店〈手づくりおかず トーホー〉でアテを探すのが最初の目的。

店頭には揚げもの、煮ものが並び、奥のショーケースには冷菜系もずらり。
基本、この店で手づくりしていて、家庭の味を提供したいという店だ。
お店の人に聞けば「谷中は高齢者と単身者が多いんです。そのご要望を聞いていたらいつのまにか増えちゃって(笑)」
たった3人で毎日この量を仕込むという大変なチャレンジ。
「要望に応えすぎですよ」と私は笑って返しつつ、焼酎ハイボールの味わいを思い出していると、直感が働いてサバの味噌煮をチョイス。

「さば味噌」は270円(税込み)。開店以来継ぎ足してきた味噌、サバの絶妙な煮加減でこの価格は破格。
「サバやアジはおススメなんですよ。いいいところに目をつけられましたね」
というお店の人のひと言を、お世辞ととらずに勝手に自慢げな顔になる単純さ。

ずらりと並んだ総菜。お店の人に聞けば「50種類ぐらいです」。左側にはワンコインでボリュームたっぷりの日替わり弁当が並ぶが「定番もありますけど……これも50種類ぐらいですかねえ」。すごい。

冷菜は定番や懐かしいものだけではなくアイデアメニューも。最近の人気は「花椒エリンギ」(180円:税込み)なるピリ辛総菜。単身、高齢者も多い場所柄、少量のおひとり様サイズがあるのもうれしい。

関西の粉もん〈いか焼 やきや〉

次の目的地は、〈夕焼けだんだん〉のすぐ下にある〈いか焼 やきや〉。
全長170メートルという商店街を眺めつつ、日暮里側へと端から端まで歩くのも楽しい。
やきやは、東京の下町情緒あふれる谷中にあって、関西の下町の風味、粉もんの「いか焼」の店だ。こちらは普段から、タカラ「焼酎ハイボール」を置いているということで、その相性を確かめたいと目をつけていた店。

店主の尾上浩史さんはこの場所で開業したことを「縁ですよね」と言う。
飲食をやりたいと思っていた時にたまたま出合ったのがいか焼。
これだと思ってすぐ道具を買って、何年も納得いくまで独学で焼き続けた。

いか焼と出合った日。その翌日にすぐに入手したというこのツールはくじけそうになった時にも支えてくれた相棒。最初は友人に食べてもらうもダメ出しの連続。それが何百枚と続き……。汗と涙と生地が刻まれているのだ。
いよいよ開店というところまで技量と気持ちは高まったけれど、物件がなかなか見つからない。
これ以上は進めないのか?そんな時に、それまで知らなかった谷中銀座の物件に出合えた。

入れ替わりはあるけれど、すぐに次が決まってしまうという谷中の物件。
いか焼も縁、谷中も縁だったのだろう。
とはいえ、いか焼は関西の名物。関東ではピンとこない。
居酒屋や海の家の「イカのまる焼き」を想像してしまうのではないだろうか。

「ですよね。でも地元でも迎え入れてくれて。そのうえ、ちゃんと味について物申してくれる。これがありがたい」

バリエーション豊かな「いか焼」

バリエーションは多彩。人生のベテラン勢からは王道「いか焼ネギ」、若い世代には「チーズいかせん」や「いか焼マヨ玉」が支持を集めているとのこと。
ああしたほうがいいんじゃないか、こうすればもっといいんじゃないか。
その声に、職人気質なのか、ちゃんと挑み、真摯に取り組んだ尾上さん。
常連さんたちのちょっとしたおせっかいがモチベーションにも輪にもなる。
それが下町流のコミュニケーション。

いか焼のプロである一方、映像関係の仕事もしている尾上さん。中身がしっかりしていることと同時に、どう見せるか、喜んでいただけるかも大切だと語る。
尾上さんの自信作で、メディアにも取り上げられたヒットメニュー、いか焼をいかせんべいで挟み、片手でも食べられる「いかせん」も、商店街の中で絵になるものを生み出したいという気持ちがあってこそ。

丁寧につくられた生地、ゴロゴロっと食べ応え十分のイカ。つくり置きをせずに注文が入ってから焼くこともこだわり。

人気の「チーズいかせん」(350円:税込み)。いか焼が1枚入ってチーズもたっぷり。なかなかのボリューム感。「この断面を見てほしくて」とビジュアルにもこだわりが。

「いかせん」はせんべいが熱気で湿気ってしまうから、テイクアウトに向いていないのだとか。なので、店先でできたての「いかせん」をいただいた。お持ち帰りは、「いか焼マヨ玉」にしよう。
谷中に新しい風を吹かせた〈いか焼 やきや〉も開業して12年。
谷中にはメディアに取り上げられる新しい店も多い。
歴史ある店とこれからの店をつなぐことも自分の役割ではないか、と尾上さんは考えている。
チャレンジする。それ自体が谷中への恩返し。

大正12年創業・佃煮の老舗〈中野屋〉

〈夕やけだんだん〉を上ってさらに日暮里方面へ。
そこは冒頭で書いた、下町の山の手。商店街とはまた味わいの違う風情ある道が続く。
そこに佃煮の〈中野屋〉がある。

創業1923年、元号で言えば大正12年。
もともと老舗で修業していた先代が、関東大震災を機にこの地で独立開業。
その先代の娘、金子良子さんが96歳の今も現役で店に立つ。

歳の話ばかりでは失礼だが、それにしても驚きの96歳。おしゃれなヘアカラー、声も快活。「このお豆は、中国の青海。それからこちらは河内」と商品の説明も滑らか。すごい。

店頭の佃煮を並べている大皿は「震災のときに持ってきたもの」。骨董品ではなく、佃煮とともに暮らしの中で生き続ける皿。
目指す味、その基本は創業からずーっと変わらないし、
材料と産地にこだわることも変わらない。ただ、「昔の醤油は塩っぱかったから。今は甘めですかね」
昔から変わらない味を守っていくことと同じぐらい暮らしに合わせて変わっていくことも大切にしたい。

大正から昭和にかけては、
「幸田露伴(明治~昭和の文豪)さんや朝倉文夫(同じ時代の彫刻家)さん、
片山哲(第46代内閣総理大臣)さん……いろんな方が住んでいて、それにネクタイ屋さんのようなおしゃれな店もありました」
文化的で、洒落た谷中を求めて、人々がやってきた。

「昔は、ここの佃煮とお向かいのおせんべいを谷中に来たお土産にして帰っていかれましたね」(金子さん)。かつて文豪や文化人が住み、ふらりと歩いていた道。道路は拡張されたが中野屋のたたずまいとともに、その名残が感じられる。

夕方ここに立って谷中銀座を見下ろすと、その先にきれいな夕日が見えるという、なんとも絵になる場所。夕焼けだけではなく、すっと涼やかな風が吹く気持ちのいい場所でもある。
昭和から平成と時代は移り、令和も早、3年目。
「このあたりもあの喫茶店は、昔は薬屋さん、あちらの角は小間物屋さんでした。
谷中銀座のお店も、最近は、ちょっと見ないと変わってますね」という金子さんの言葉は、決して寂しさからではなく、90年以上の歳月をこの場所で過ごしてきたからこその実感だ。
店の移り変わりは早くなり、住む世代も変わっていく。

谷中のまちも変わらない風景と、変わる風景と。
そんなことを思いながら、佃煮を買う。
おすすめされた一番人気という「葉唐辛子」と、佃煮と焼酎ハイボールの相性を狙って直感的に選んだ「まぐろの角煮」。
歴史までじっくり噛みしめようか。

谷中銀座商店街のうまいものを、焼酎ハイボールと共に

さて、いよいよ「焼酎ハイボール」×商店街を味わう時間だ。

まずは〈トーホー〉の「さば味噌」から。
サバはふっくら、しっとり。味噌煮というよりも味噌仕立て。
創業以来、30年以上継ぎ足しでつくっているという味噌が使われているが、熟成のコクはありつつもあっさり、すっきり。サバの味をちゃんと生かしているから不思議。
もちろん焼酎ハイボールとの相性は抜群だ。

続いて〈いか焼 やきや〉の「いか焼マヨ玉」をいただこう。
生地の弾力ともちもち感、そして噛めば噛むほど感じるイカの風味。
いか焼の生地は、煮干し、かつおだし、とろろ昆布、日高昆布、山芋に醤油などの
11種類がこの弾力と風味を出している。
またソースも3種類をブレンドしているのだとか。
焼酎ハイボールのコクともぴったりの相性だ。

〈中野屋〉の佃煮「まぐろ角煮」と「葉唐辛子」にいこう。
もっと塩辛いかなと思っていたけれど、塩気よりも艶気というか、しっとり程よい甘み。
醤油は確かに効いているのだけれど、まろやか。
もちろん産地にこだわった素材の風味がいい。
「まぐろ角煮」も「葉唐辛子」も、ひと口で食べるより、少しずつがいい。
酒飲みなら、これひと粒で1杯はいける。
艶気が、染みる。

いずれも軽いつまみのようで、年季が入っている。
「さば味噌」はお客さんの要望を重ねてきた。
「いか焼」はご主人の努力、「佃煮」は大正から4つの元号を経てきた。
でもそれを自慢せずに、さらりと出してくる。

谷中銀座商店街。
濃く、深いけれど、あくまでも軽やかに、偉ぶらず。
庶民的な場所だけれど、東京の下町らしい“粋”を感じさせてくれた。
今日もまた最高のアテに出合えた。

information
手づくりおかず トーホー
住所:東京都台東区谷中3-8-11
TEL:03-5814-8868
営業時間:平日 10:00~21:00、日曜 10:00~20:00
定休日:正月三が日

いか焼 やきや
住所:東京都台東区谷中3-11-15
TEL:090-1313-9999
営業時間:土・日曜・祝日:11:00~19:00
定休日:月~金曜、不定休


中野屋
住所:東京都荒川区西日暮里3-2-5
TEL:03-3821-4055
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜
Web:https://www.nakanoya1923.com/

※取材にご協力いただいた上記3店は、新型コロナウィルス対策に伴う東京都からの時短要請を受け、営業時間など変更中。最新情報は、各店舗にお問い合わせください。
▽今回アテと共にご紹介したお酒はこちら
タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>

※オリジナル記事はこちら(Webマガジン「colocal」)

■クレジット

・ライター:岩瀬大二
(プロフィール)
●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆

・撮影:ただ(ゆかい)