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健康で美味しい毎日につながる、和食とみりんの噺

健康で美味しい毎日につながる、和食とみりんの噺

2019,11,29 更新

11月24日は一般社団法人和食文化国民会議が制定する“いい(11)にほん(2)しょく(4)”の語呂合わせで「和食の日」、11月30日は全国味醂協会、全国本みりん協議会が制定する“いい(11)みりん(30)”の語呂合わせで「本みりんの日」。

秋もぐっと深まったこの時季、本みりんの優しい甘さや照りが活きた上品な和食で晩酌を楽しむのも乙なものです。

料理を美味しく仕上げるのに一役買うみりんだからこそ、上手に活用する方法を知りたいと思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、和食の中心地・京都で多彩な料理教室を開催している「京都料理学校」の副校長・小川洸(おがわ・ひかる)先生に、みりんの魅力と料理に活用するコツを伺いました。

京都の老舗料理学校で学ぶ、みりん使いの技

京都の繁華街・三条通の一角にある「京都料理学校」。
同校は昭和16年に設立した京都女子栄養学校を前身とし、家庭料理や子ども向け料理教室などを広く開催しています。

今回お話を伺った小川洸先生は、大学時代からフランス料理店でアルバイトをし、その後、日本のみならずフランスでも料理の修行を重ねた料理人です。先生の得意分野は、家庭でも気軽にさっと作れる料理のコツを伝授すること。
私たちも早速、みりんの魅力や上手な使い方についてお話を伺ってみます。

「現在は調味料として認識されているみりんですが、江戸時代以前は高級品として貴族階級の方々に飲まれていたお酒の一種でした。庶民が調味料として本格的に使うようになったのは、日本の経済状況が良くなった戦後以降なんです」(小川先生)。
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「みりんは甘みのある調味料ですが、砂糖などとは大きく違います。上白糖の甘さは強く、時に舌にべったりと残ってしまうことがありますが、みりんは複雑なコクがありながらもすっきりとした甘みをつけることができます。こうしたみりんの上品な味わいは、素材の味を生かすという意味で、京料理にも影響を与えていますね」(小川先生)。
まずは歴史を踏まえた、みりんの魅力を語ってくださいました。

また、味をつけるという役割以上にみりんには機能的な特徴があるそう。

「もっとも大きな特徴は、みりんにはアルコールが入っているということ。食材を煮炊きする際に、アルコールが肉や魚の臭みを消すとともに、味がしみやすくなり、煮崩れを防ぐ効果も与えてくれるんです」(小川先生)。
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さらに続けて、こうしたみりんの特徴を生かすために、家庭ではどのような使い方をすればいいのかについてもお話いただきました。

「料理の基本は、さ(砂糖)し(塩)す(酢)せ(醤油)そ(味噌)ですね。調味を行う際、はじめに砂糖、最後に味噌という順序で使っていきますが、みりんはこの中のいずれにも該当しないので、料理の仕上げの段階で入れるというのがセオリー。煮物の場合などは、煮崩れを防ぐために最初から入れていただいてもOKです。相性の良い食材としては肉や魚ですが、味の主張が小さい野菜に使っても旨みを引き出してくれます。家庭料理の範囲であれば、自由に使っていただいて結構です。まずは色々と試して、相性を見ていただくのが良いかもしれませんね」。

みりんを使った和食づくりのレッスン開始

「それでは実際にみりんを使った料理を作っていきましょうか」と小川先生。

今回の和食づくりで使うのは、豊かなうまみとまろやかな甘みが人気の“タカラ本みりん「国産米100%」〈米麹二段仕込〉”と、京都産のもち米を100%使用した “タカラ京都産もち米全量仕込本みりん”です。
料理学校のキッチンを使って、みりんの使い方を伝授していただきます。

はじめに先生が作り始めたのは、切り干し大根のサラダ。切り干し大根というと煮物を想像しますが、戻したものをサラダにしても美味しいのだそう。
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「ドレッシングに使う酢のカドを取るためにみりんを活用します。みりんの深いコクが、お酢の刺激を和らげてくれるんです。注意するのは、みりんにはアルコールが入っているので必ず煮切ってアルコールを飛ばすこと。特にお子さんやお酒が苦手な方に作る場合は丁寧に煮切ってください。宝酒造さんの“京都産もち米全量仕込本みりん”は、豊かで品のある甘みが特徴ですね。ワンランク上の味付けを目指す場合に最適です」(小川先生)。
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ミックスビーンズと切り干し大根を混ぜた、色味が美しいサラダが完成。
ほんのりと香るお酢はみりんとなじみ、甘く上品な仕上がりとなっています。水で戻した切り干し大根のコリコリとした歯ざわりが癖になり、いくらでも食べられそうな一品です。

あっさりとしたサラダの味を邪魔しないよう、まずは本格焼酎の炭酸割りで乾杯。「一刻者ハイボール」ならではの華やかな芋の香りとすっきりとした味わいが、お酢の香りと上品に調和します。
*切干し大根サラダ*
<材料2人分>
国産切干大根20gほど、人参少々、ミックスビーンズ、オリーブオイル大1(好みのオイル)
A…タカラ本みりん大2、酢大1、うす口醤油大1、おろし生姜少々
<作り方>
1    切干大根を熱湯に数分漬けて、もどれば洗い流して絞る。人参は千切りにする。
2    Aを煮立てて、千切りの人参とミックスビーンズとオリーブオイルを混ぜる。 
3    2に切干大根を和える。
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次は、魚の蓮根蒸しを作っていただきます。

「魚はフィレの状態で売っているもの、骨・皮のないフライ用の白身であればなんでもOKです。魚の臭みを取るためにまずはお酒を振っておきましょう。みりんの爽やかな甘さが蓮根を使った餡を上品に仕上げてくれます」(小川先生)。
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蓮根をすりおろし、とろみをつけた餡は優しい甘さと程よい塩気。
また、餡をたっぷりまとい、口に入れた瞬間にとろけるように崩れる白身が絶品です。
添えられたわさびの香りが素晴らしいアクセントになっていますが、お好みで生姜でも良いそう。
*魚の蓮根蒸し*
<材料2人分>
白身魚(フライ・ムニエル用)2切れ、蓮根130gほど、きのこ類適量、好みでおろし生姜かわさび、タカラ「料理のための清酒」 
B…だし1カップ、うす口醤油大2、タカラ本みりん大4
<作り方>
1    魚を2等分して塩・タカラ「料理のための清酒」を少々をふっておく。蓮根は洗って、薄切り6枚くらい切って、残りをおろしておく。きのこはさばいておく。
2    蒸し物茶碗に魚、きのこ、蓮根を入れ、ふんわりラップをかけて4分ほど電子レンジにかける(割り箸で刺してスっと通る程度に)。
3    鍋にBとおろした蓮根を入れて、混ぜながら煮立てる。とろみがついたら、火が入った2にかける。好みでおろし生姜かわさびを天盛りにする。
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最後は煮物の定番、筑前煮。今回はメインとしていただきます。

「素材を準備したらサラダ油でさっと炒めてから、出汁と醤油・みりんで煮込んでいきます。しっかりと煮込んでいくことで深みとコク、それから上品な照りが出てきますよ。大切なのは醤油とみりんの比率。筑前煮の場合は、醤油1に対してみりんが2。このバランスさえ覚えておけば量が変わっても大丈夫です」(小川先生)。
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ふっくらと炊き上がった筑前煮。
素材の味はしっかり残しつつ、柔らかく、深みのある味に炊き込まれています。

少しこってりとした味に合わせるのはやはり日本酒。
食事に合わせやすい“特撰松竹梅「山田錦」<特別純米>辛口”と一緒にいただきます。
*筑前煮*
<材料4人分>
鶏もも半枚、ごぼう150g、人参80g、蓮根80g、椎茸4枚、大根150g、こんにゃく半丁、絹さや少々、サラダ油
C…だし2カップほど、醤油大3、タカラ本みりん100cc 
<作り方>
1    鶏肉は一口大に切る。ごぼうはたわしでよく洗って根が多ければ包丁の背などでこそげて乱切りにする。蓮根、人参、大根も乱切りにする。ごぼう、蓮根は水につけておく。椎茸は飾り切りする。
2    こんにゃくはたたいて猪口などで一口大にちぎり、茹でておか上げする。
3    サラダ油で1、2の材料を炒める。Cを加えて落し蓋をしてほとんど煮汁がなくなるまで煮含める(途中鍋を返す)。茹でた絹さやの筋を取って、斜めに切って飾る。

伝統ある和食は“生きる力”も育てる

丁寧な説明とともに、美味しい料理もいただいてすっかり満足。
普段何気なく使っているみりんですが、しっかりとその機能やバランスを考えて使えば、これほどまでに奥深い味わいが出るのかと驚かされます。

「みりんのすっきりとした甘みは、食材本来の味を生かしてくれます。何より出汁と調和して、日本食らしい美味しさを引き立ててくれるんです」(小川先生)。
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「現代の暮らしには、脂の多い食事やこってりと味付けされた料理があふれていますが、濃い味や脂の味覚は食べ続けることで健康を損ねてしまうこともあります。健康診断などで突然“もう油ものは食べないでください”と言われた場合、こってりした味しか知らない人であれば、非常に辛い思いをするでしょう。そんな時、出汁の旨味やみりんによって素材の滋味が引き出された料理の味を知っていれば、毎日を豊かに過ごせます。こうした料理は健康にも良いですし、実を言えばお酒との相性だって抜群なんです。私たち大人はもちろん、子ども達にとっても、素材の持つ味や旨味を知っておくことは、生きる力を高めるためにもとても重要です」(小川先生)。
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美味しいだけでなく健康にもつながる、和食とみりんの魅力。
普段、ちょっと不摂生だなと感じている皆さんも、食べ盛りのお子さんがいる皆さんも、今日はみりんを使った伝統的な和食づくりに挑戦してみませんか?

<取材協力>

京都料理学校
住所:京都府京都市中京区中之町三条通り柳馬場東1-1
http://kyoto-cooking.com/




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