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“本みりんの日”に知りたい「本みりんの底力」の噺

“本みりんの日”に知りたい「本みりんの底力」の噺

11月30日は「本みりんの日」。知っているようで知らない、料理をぐっと美味しくしてくれる本みりんの魅力をお伝えします。

11月30日は、“いい(11)みりん(30)”の語呂合わせから、全国味淋協会が定める「本みりんの日」となっています。
本みりんは、料理好きの人にとってはなくてはならない調味料なのですが、普段料理をしない方の中には、本みりんが料理をどのように美味しくするのか、ピンときていないという人も多いのではないでしょうか。

元々は、中国大陸から伝来した(一説には日本が発祥とも)とされる、本みりん。
かつては高級な甘いお酒として嗜まれていたようですが、現在は調味料として料理へと活躍の場が移り、和食はもちろん、洋食やスイーツまで幅広いジャンルに利用されるようになってきました。
今回はそんな本みりんの魅力を、和食を得意とする料理研究家の吉田愛(よしだ・あい)さんに伺いました。

料理研究家・吉田愛さん プロフィール

吉田さんは、雑誌や料理教室などで活躍する人気料理研究家。
料理人としてのキャリアは、大学卒業後、料理家のアシスタント兼東京の日本料理店に勤めたところからスタート。その際、自分が作り慣れ、食べ慣れていると思っていた日本料理の技法や味わいの深さに改めて気づき、以後、本格的な日本料理を学ぶため京都で修行を重ねました。
また、料理人として腕をふるう中で、自分が向き合うお客様に対して、料理と一緒に美味しいお酒も提供したいという気持ちから、唎酒師(ききさけし)の資格を取得。
修行を終え独立したのちは、料理研究家としての道を歩み始めます。

吉田さんの織りなす和食を中心としたレシピの数々は、簡単に作れて美味しいとSNSなどでも話題を呼び、2021年には初のレシピ本『温故知新 和食つまみ』(成美堂出版)が発刊され、人気を博しています。

本みりんは、素材をつなぐ料理の要

本みりんは甘みのあるアルコール分を含んだ調味料ですが、それが料理にどのような効果を発揮するのか、というとなかなかわからないもの。
また、近年では「みりん風調味料」や「発酵調味料」など、本みりんに似た調味料が出回っていますが、こうした調味料との違いはどこにあるのでしょうか。

「私の料理教室の生徒さんでも、『本みりん』と『みりん風調味料』の違いがわからないという方はいらっしゃいますね。実を言うと、私も料理の道に入るまでは、その違いを意識したことがなかったんです。でも、日本料理店で働き始めたとき、本みりんそのものの味を確かめようと、そのまま舐めたときに“これは美味しい!”と気づいたんです。本みりんには、お米由来の自然な甘さと旨味、アルコール分が含まれていますが、みりん風調味料にはアルコールがほとんど含まれていないことに加え、その風味を水飴や酸味料などで再現しているため、料理にした時に甘さが際立ってしまうことがあります」と吉田さん。

さらに続けて、「自然な甘さもそうなのですが、本みりんにはもっとたくさんの長所があるんです。アルコールの成分が肉や魚の臭みを和らげてくれたり、ほんのりと旨味を加えてくれることも。また、本みりんを使うと煮物が煮崩れしにくくなったり、美味しそうな照りを出すことができます。日本料理では、味だけでなく見た目も重視されますから、思わず食べたくなる見栄えに仕上げることはとても重要です。本みりんは、素材の旨味を引き出して料理の味わいをまとめてくれる調味料ですね」と話してくださいました。

日本料理も洋食も、料理の味と見た目をワンランク上げてくれる本みりん

「日本料理では、お吸い物などのシンプルな味付けのもの以外のほとんどの料理に、本みりんが使われているのではないでしょうか」と吉田さん。

こうした日本料理を調理される上で、本みりんの力がはっきりとわかるのは、魚を使った料理なのだそう。

「照り焼きなどを作る際は、本みりん・酒・醤油につけたお魚を焼いて最後に煮切りみりんで照りをつけるのですが、このひと手間で料理が見違えるほど美しく、美味しくなるんです。家庭料理の味わいをワンランクアップさせる上でも、本みりんは欠かせませんね。煮物はもちろん、炊き込みご飯にいれても素材の味を引き出してくれますし、本当に使わないともったいないないですよ!」と力強く語ってくださいました。

また、吉田さんは日本料理以外でも本みりんを使用していると言います。

「私がよく使うのはカレーですね。仕上げにちょっと本みりんを加えるだけで、スパイスの刺激が柔らかくなって、味が一つにまとまります。この他にも、トマトを使ったパスタに入れれば酸味の角が取れてまろやかになりますし、まさに万能調味料ですね」。

本みりんが活躍する料理はお酒との相性も抜群!

本みりんについてのお話を伺った後で、吉田さんに「本みりんの味わいや効果を実感できるお料理」を教えていただきました。

甘辛味で焼酎がすすむ「鶏手羽元と厚揚げの旨煮」

最初に披露してくだったのは、「手羽元と厚揚げの旨煮」。
一度焼いて香ばしい香りをまとわせた鶏の手羽元を、本みりんと醤油で煮込んだ甘辛味がたまらないボリューミーな一品です。
甘辛味ながら、あえて砂糖を使わず本みりんだけで甘みを加えているので、味が重たくなりすぎず、食べ飽きないのも嬉しいところ。また、下地に出汁を入れていないのにも関わらず、旨味はたっぷり。「鶏と本みりんの旨味でここまで美味しくなるのか」と、驚かされる味わいです。

このお料理に合わせるお酒は、芋の奥深い甘みが愉しめる全量芋焼酎「一刻者」<赤>のロックがぴったり。
旨煮のしっかりとした香りと味わいが、本格芋焼酎の力強い香りを受け止め豊かなものにしてくれます。

レシピ(2人分)
鶏手羽元  6本
厚揚げ  1丁(200g)
生姜  1かけ
サラダ油  大さじ1/2
[A]
水  3/4カップ(150ml)
本みりん  大さじ3
醤油  大さじ2
料理清酒  大さじ2

① 厚揚げはキッチンペーパーで包んで余分な油をとり、8等分に切る。生姜は薄切りにする。
② フライパンにサラダ油を中火で熱し、鶏手羽元と厚揚げを入れて途中上下を返しながら焼き色がつくまで5分ほど焼く。
③ [A]と生姜を加え、煮立ったら落し蓋をして弱めの中火で15分煮る。
 

ほんの少しなのに確かな存在感。「水菜とカニカマのからし和え」

続いては、さっぱりとした一皿を用意していただきました。
さっと茹でた水菜に、ほぐしたカニカマを加え、出汁・薄口醤油とほんの少しの本みりん、練りからしを加えた「水菜とカニカマのからし和え」です。
おひたしやからし和えに本みりんを使うというのは、家庭では馴染みのない方法ですが、食べてみるとびっくり。本みりんのほのかな甘さが、水菜とカニカマを上手に取り持ち、さらに和からしの強い辛味を程よくマイルドにしてくれます。

このからし和えにおすすめなのが松竹梅「白壁蔵」<生酛(きもと)純米>。
ぬる燗にした生酛純米のコシある味わいに、和からしの刺激がよく合います。口に含んだ瞬間2つの味わいが合わさり、豊かな風味になるのですが、それを飲み込むとふっと口に残るのは、水菜の繊細な香りとカニカマの旨味。
日本酒との相性が抜群な一品です。


レシピ(2人分)
水菜   130g
かに風味かまぼこ  2本
[A]
だし  大さじ3
薄口醤油  小さじ1
本みりん  小さじ1/2
練りからし  小さじ1/4~1/3

① 水菜は熱湯でサッとゆでて氷水にとり、水気をしっかり絞って長さ5cmに切る。
② かに風味かまぼこをほぐす。
③ ボウルにAを混ぜ合わせ、①と②を加えて和え、5分おく。

本みりんがデザートに!? 意外な組み合わせ&美味しさの「みりん大学芋」

最後はなんと、本みりんを使ったデザート。
本みりんを鍋にかけて半量ほどになるまで煮詰めると、上品なとろみが出てきます。このシロップは、ヨーグルトやアイスクリームなどにかけても美味しいということですが、今回はこのみりんシロップを使って大学芋を作っていただきました。

ほくほくとした大学芋に絡む、みりんシロップ。
砂糖やみりん風調味料を使うと甘さが際立ってしまうところ、上品な甘み・旨味が感じられるのは、みりんシロップを使った大学芋ならではの魅力です。
食事の最後にぴったりなこのお料理には、本みりんと同じくお米由来の優しい甘さが感じられるスパークリング清酒「澪」が最適。
砂糖とは違う「芋」と「米」という素材本来がもつ柔らかな甘さには重たさがなく、さっぱりとした余韻を口の中に残してくれます。

レシピ(作りやすい分量)
さつまいも  1本(約300g)
みりんシロップ  大さじ2
黒いりごま  小さじ1
揚げ油(サラダ油)  適量

①     さつまいもは食べやすい大きさの乱切りにして水に5分さらし、水気をふきとる。
②     鍋で揚げ油を150~160度に熱し、①を入れて串がすっと通るまで揚げて一度取り出す。油の温度を180度に上げ、再びさつまいもを入れて表面を色よくカリっと揚げて油をきる。
③     ボウルに②、みりんシロップ、黒ごまを入れて混ぜる。

台所の調味料に本みりんを加えてみませんか?

和食の枠を飛び越えて、世界中の料理やデザートづくりにも活用できる本みりん。
自然で柔らかな味わいで素材同士をつなぎ、調味ではなく“調和”させてくれるのがその一番の魅力です。
「本みりんの代わりに、砂糖やみりん風調味料を使うと、甘さが際立ってしまいますので、味のバランスを取るために塩や醤油が多くなってしまうことがあります。素材の持ち味をしっかり味わうためはもちろん、健康のためにも、皆さんにぜひ本みりんを使って欲しいですね」と吉田さん。

これまで本みりんを使っていなかったという方は、これを機に台所に本みりんを備えてみませんか?
ご家庭のお料理がワンランクアップすれば、食卓も晩酌も一層華やかで楽しいものになること請け合いですよ!

<取材協力>
料理研究家 吉田愛さん

インスタグラム https://www.instagram.com/ai2ueo/
書籍『温故知新 和食つまみ』 http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415329741/