
「せんべろnet」に聞く! 1000円で楽しめる「せんべろ」の噺
2022,8,26 更新
「せんべろ」とは“1000円でべろべろに酔える”ような酒場の俗称ですが、今回話を聞いたのは、立ち飲みや大衆酒場など「せんべろ」飲み歩き情報を配信中の「せんべろnet」管理人のひろみんさん。年間800軒飲み歩く彼女に、大塚にある「ドラム缶大塚店」で、知っているようであまり知られていない「せんべろ」の世界を教えてもらいました。

原点はかつて新橋にあった立ち飲み店
ひろみん「もともと新橋のIT企業で働いていたのですが、終業後に一人で食事をすることも多く、となるとそこは酒場天国の新橋。ちょっと一杯飲みたいなってなるじゃないですか。そんなある日、たまたま入った立ち飲み店がめちゃめちゃ衝撃的だったんです。
ジャンルは鳥皮焼きが名物の九州料理のお店でしたね。
それまであまり立ち飲みには行ったことがなかったのですが、そこには見たことのないおつまみがたくさんあったり、価格帯も100円台~300円台とお財布に優しくてスゴくワクワクしたんです。
味も絶品で一人飲みにピッタリな量、店員さんも笑顔で気持ちがいいし、立ち飲みだから一杯だけで帰る人もいて気軽。しかも会計は1000円ぐらい。『こんなに素敵な世界があるんだーっ!』と感激して、そこから立ち飲みにハマりました」

ひろみん「2012年ぐらいから3年程グルメサイトに投稿していました。ただ投稿するにつれ、もっと自分の色を出せるブログみたいなものをやりたいと思うようになり、『せんべろnet』を立ち上げました。
一人飲みや立ち飲みに慣れていないころ、入店してみたいけど情報がなくて不安ということもあったので、一人飲みにチャレンジしたいけど『初めてのお店はちょっと不安』という方の背中を少しでも押せたらいいなぁというコンセプトで、更新するようになりました」

ひろみん「足で探すこともよくありますし、お酒好きの知人のほか、お店の方や、そこで飲んでいる人から聞くこともあります。あとはネット検索で見つけることもありますし、はたまた読者の方から情報をいただくこともあり、まちまちですね。歩くことが好きなので、お店を探すためだけに探索をすることもよくあるんですよ」
家飲みに関する記事は、2020年以降より充実。レシピや飲み比べ、テイクアウト、お取り寄せ、コンビニのおすすめおつまみなど、こちらも多彩な記事が継続的にアップされ、現在に至ります。
「せんべろ」は金額以上に満足度が大切

ひろみん「せんべろは、1000円でべろべろに酔えるという言葉ではありますが、発祥と言われている『せんべろ探偵が行く』を読むと、気の利いたつまみとお酒2~3杯ほどという意味合いが強く、そういった酒場が多く紹介されています。
そもそもせんべろには、1000円で何杯以上飲めるとか、1000円を超えてはいけないといった明確な定義はありません。ですので、私は1000円ぐらいでちょっと一杯、イイ気分になれたらせんべろ、と解釈してこの言葉を使っています。
本当にべろべろになったら危ないですし、1000円を超えてしまうことも日常茶飯事です。ただ、『せんべろnet』では予算の目安で、1軒あたりお酒2杯+つまみ1品=1000円以内をせんべろとしており、自身がほろ酔いになれる量を設定しています」


ひろみん「業態としての特徴は、特に立ち飲みではキャッシュオンのお店があったりもします。最近ではキャッシュレス決済を導入しているお店もありますが、現金のみのお店もあるので、できれば1000円札や小銭を用意しておきましょう。キャッシュオンの立ち飲みなどでの1万円札の利用は、できるだけ避けたいところです。
また、小さなお店には大人数では押しかけず、1~2名がベター。なかには、3名以上のグループは入店NGと言う立ち飲みもあります。そしてダラダラと長居はせずに、混んできたらサッと次のお店へ。
あとは、お店の方やお客さんに迷惑がかかるような絡み方はしない、騒がないといった一般的なマナーも当然ながら大切。セクハラ発言などは絶対にNGですし、楽しくなって、ワーキャーと声が大きくなったりするのも迷惑行為になってしまいます。
とはいえ、難しく考えず、迷惑をかけずに楽しく飲めば何ら問題ないと思います」


一人飲みしやすいお店とは?
ひろみん「外から店内の様子が見えたり、入口に『お一人様歓迎』とか書いてあったり。あとは、メニューと価格が張り出されていて料金の目安がわかるお店は入りやすいですよね。カウンターがあることもポイント。座り飲みでカウンターがないお店だとハードルが上がってしまう気がします。
居心地の良さも重要ですね。店員さんにある程度注文しやすい雰囲気だったり、酔って絡んでくるお客さんを取り締まってくれたり、リラックスして飲めたりとかそういったところです。
さらに、一人用のおつまみがあったら最高ですね!」


『せんべろnet』流のペアリング術
ひろみん「おつまみに関しては、基本的にお店の名物をオーダーします。でもそれを含め、自分が食べたいもの、気になるものになりますね。せんべろの場合1~2品をつまむ程度ですからそこまでの数を注文しませんし、はしごもするのでお腹がいっぱいになってしまうと回れません。ですので、メニュー選びはかなり吟味します」
ドリンクも同様の理由で、お腹にたまりがちなビールよりはチューハイ。加えて、甘くないタイプがお気に入り。量も飲むため、焼酎ベースのハイボールやホッピー割りなどをオーダーすることが多いと言います。
具体的にはどのような組み合わせになるのでしょうか。今回訪れている「立ち飲み居酒屋ドラム缶 大塚店」を例に、お酒とのペアリングを踏まえたせんべろセットを教えてもらいました。
ひろみん「例えば私が好きな『ぽん酢サワー』は、コクとキレのある焼酎にぽん酢の酸味がしっかり効いており、抜群の爽快感が肉や揚げ物といったこってり系のおつまみに合うんです。なので、カレー風味の『おつまみパイコー(※)』や、しっとりジューシーなお肉をハニーマスタードで味わう『ヒレ ローストポーク』がオススメ。スパイスの風味にも、すっきりとしたサワーの味がちょうど良く合うんです」
※パイコー(拝骨):中国語で豚などのスペアリブ。豚のあばら肉に卵と小麦粉の衣をつけて油で揚げた中華の肉料理を指す。


メニューを見てワクワクできるお店が好き

もちろん、著書で紹介しているお店はすべてがワクワクするところばかり。つい長居してしまったり、なかには立ち飲みではないお店もあります。例えば篠崎の「大林」や、八王子の「独楽寿司」などはインパクト抜群のつまみが豊富な名店。

せんべろ飲みから得たお店レシピ紹介本の発刊へ

ひろみん「第一章の『大好きな酒場に教わるおつまみレシピ』は、何度かお邪魔している酒場から自宅でも再現できるおつまみレシピを教わって紹介しています。この本を参考に作ってみるもよし、本家の味を食べに飲みに行くもよし。二度楽しむことができて面白いかなと。コラムでは『一人飲みのススメ』といった小ネタやおすすめのお酒や宅飲みグッズなども挟んでおり、『せんべろnet』らしさのある一冊になっています」
6月30日に発売された同書は、なんと1週間で重版決定するほど大ヒット。のせるだけ、混ぜるだけ、漬けるだけ、などなど、ほろ酔いでも作れる簡単なレシピが70以上も掲載。ぜひ晩酌に活用してみてはいかがでしょうか。そして、ひろみんさんもおっしゃるように、本書をきっかけに実際に「せんべろ」のお店へ足を運べば、新しい発見もあるはずです。
楽しみ方は千差万別。無限に広がる「せんべろ」の世界に、あなたもたっぷり浸ってみませんか?
<取材協力>

住所:東京都豊島区南大塚3-38-8 山上ビル 1F
営業時間:火~金曜日16:30~22:30(L.O22:00)、土曜、祝日15:00〜21:00(L.O20:30)
定休日:月曜日
※価格はすべて税込みです
※詳細な営業時間や定休日等に関しましては、公式インスタグラム等の営業カレンダーを確認ください(取材日:2022年7月28日)
撮影/我妻慶一
記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・ISAINA
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/