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【関西チューハイ事情】 東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺

【関西チューハイ事情】 東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺

2023,7,21 更新

東京出身、大阪在住の酒場ライター・スズキナオさんとともに巡る、関西ならではのチューハイ事情を探るシリーズ。第2回は、東京スタイルを引っさげて、関西で快進撃を続ける「立呑み晩杯屋」について調査します。

前段 スズキナオさんと「立呑み晩杯屋」

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2022年の8月、大阪の酒好きたちを驚かせるニュースがありました。「立呑み晩杯屋」の関西初となる店舗が大阪市淀川区・十三にオープンしたのです。

「立呑み晩杯屋」は東京の武蔵小山に本店を構える大衆酒場のチェーン店で、2009年の創業以来、フード・ドリンクメニューの驚異的な安さと品揃えの豊富さなどから注目を集め、都内を中心に店舗数を増やしてきました。一人でもグループでも気軽にふらっと立ち寄ることができ、千円前後でしっかり満足できてしまう、いわゆる「せんべろ」的な使い勝手のいいお店です。

また、創業者の金子源さんが東京・赤羽の老舗立呑み店「いこい」で修行をしていたことは有名です。飲兵衛の聖地とも言われる赤羽にあって常に酔客で賑わう「いこい」にルーツを持つことは、「立呑み晩杯屋」の暖簾に「赤羽いこい系」の文字が刻まれていることからもわかります。

と、そんな関東の大衆酒場シーンから生まれ、広く認知されてきた「立吞み晩杯屋」が関西の、それも安くて美味しい居酒屋がひしめく十三に支店を出すと聞いた時は非常に驚きました。

私はオープンから間もないタイミングで訪れ、以降、何度も飲みに行っています。また、十三店を皮切りに天王寺や梅田エリアに増えた支店のそれぞれにも行き、「立吞み晩杯屋」が関西でも人気を集めている様子を見てきました。

今回、オープンから一年が経とうとする「立吞み晩杯屋 十三店」に改めてお邪魔し、店長の林幸司さんに詳しいお話を聞いてきました。また、甲類焼酎※をお客さんが好きな割り材で割って飲むという、関西では珍しいスタイルがどんな風に受け入れられているかなど、個人的に気になるポイントについても確かめてきました!

※連続式蒸留機で造られたものを「甲類焼酎」、単式蒸留機で造られたものを「乙類焼酎」という。「甲類焼酎」は、原料となるもろみを連続して投入しながら繰り返し蒸留を行うことにより、ピュアでクセのない味わいとなり、酎ハイやサワーなど幅広い飲み方で楽しんでいただけます。

東京発! 人気立呑み店が関西に進出。

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阪急電鉄十三駅の西口を出てすぐ、居酒屋の立ち並ぶ通りに「立吞み晩杯屋 十三店」はあります。活気にあふれる商店街があり、多くの飲食店が集まる十三ですが、とりわけこの通りにはリーズナブルな価格帯の立呑み店が集中しています。
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「立吞み晩杯屋 十三店」は午前11時から営業しており、取材当日もお店は早い時間から多くのお客さんで賑わっていました。店内は奥に長いL字のカウンターとグループ客用のテーブル席で構成されており、カウンターの内側では店長の林幸司さんがテキパキとお仕事をされています。
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林さんによると、お客さんには地元・大阪の方だけでなく、阪急電鉄が結ぶ京都や神戸方面から来る人も多いそうです。また、東京の「立呑み晩杯屋」でよく飲んでいる人が出張で大阪に来たついでに訪ねてくるケースもあるんだとか。

ナカとソト? 東京スタイルを体験。

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「立吞み晩杯屋」といえば、甲類焼酎を「バイス」「ホッピー」「ハイサワー」などの割り材で割って飲む、東京の下町の大衆酒場でよく見られるスタイルを踏襲しているのが特徴なのですが、それはこの十三店でも変わりません。
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たとえば「バイスセット」を注文すると、宝酒造の甲類焼酎(宝焼酎)が注がれたグラスと「バイス」の瓶とが別々に提供され、自分でそれを混ぜ合わせて飲むようになっています。

東京の下町酒場では甲類焼酎のことを「ナカ」、割り材のことを「ソト」と呼ぶことが多く、たとえば、半分残っている割り材(ソト)を利用してもう一杯分のお酒を楽しみたいという場合、「ナカのおかわりください!」とオーダーし、甲類焼酎だけを追加してもらうというようなスタイルがよく見受けられました。これによって、甲類焼酎を自分の好みの濃度で割ってお酒を楽しむことができるのです。

私がかつて東京に住んでいた頃は当然のように繰り返していたこの飲み方も、大阪に越してきて以来、なかなか体験できずにいました。特に大阪の飲食店では、手軽さや効率性が重視される向きがあるからか、チューハイ系のメニューはあらかじめ割り合わせたものが中心になっている気がします。
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この“自分で割って飲むスタイル”は大阪でも受け入れられているのでしょうか。林さんに聞いてみると、「最初は少し手間に感じるお客さんもいたようなんですけど、一度飲んでもらって、美味しさと楽しさを知ってハマっていく人も多いですよ」とのこと。豊富なドリンクメニューから「次はこれにしよう」と、あれこれ選んで飲む人が多いそうで、割り材の種類は今後さらに増やしていきたいそうです。

“宝焼酎ゴールデン”の販売量は日本一!

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また、「立吞み晩杯屋」といえば、「宝焼酎ゴールデン」を使用したチューハイである「ゴールデンチュウハイ」も定番のドリンクメニューの一つです。店内に「宝焼酎ゴールデン販売量日本一」のポスターが貼られていることからも、その人気ぶりがうかがえます。
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キリッとプレーンな味わいでありつつ、後味に甘みとコクがあるのは「宝焼酎ゴールデン」ならでは。「うちでは割って飲むメニューよりも多く出ています。“ゴールデン”という響きがいいんでしょうね。十三でも定番になっていますよ」と語る林さんによると、「ゴールデンチュウハイにぴったりのおつまみはアジフライですね。値段も安くて大きくて食べ応えもありますし、おすすめです!」とのこと。

目移り必至! “安ウマ”アテのパラダイス。

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「ゴールデンチュウハイ」に合うと、林店長に推薦してもらった「アジフライ」は130円という驚きの価格なのですが、他にも100円台、200円台のおつまみメニューが豊富なのが「立呑み晩杯屋」の素晴らしいところです。
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柔らかなモツに味噌の風味がしっかり染みた名物の「煮込み」が一皿150円。お刺身の「おまかせ五種盛」ですら500円。アジフライとあわせて、この三品を注文しただけでも、テーブルの上は一人飲みに十分な賑やかさです。
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晩杯屋は鮮魚類の新鮮さにも定評があり、もちろんどれも低価格で提供されています。基本的には東京の拠点から毎日送られてきたものを店内で捌いているそうなのですが、関西以南の海で獲られた魚介類が並ぶことも多く、そのラインナップは大阪ならではのものだそうです。また、関東の店舗と同じ素材を使うとしても、関西風の味付けで調理したり、細かな工夫が凝らされているといいます。

関西にひろがる晩杯屋スピリット。

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大阪に出店してからの一年近くについて聞くと「手ごたえはあります。最高ですよ!」と笑顔を見せてくれた林さん。もともとは大阪出身で、「立呑み晩杯屋」の運営母体であるトリドールホールディングスの様々な業態で働いてきたそうです。

関西初となる「立呑み晩杯屋 十三店」の店長を任されることになり、「不安は正直、ありましたね(笑)なんせ大阪ですから、すでにできあがった文化があるじゃないですか」と感じつつも、「自分の地元にどれだけ晩杯屋を根付かせていけるか」を課題に掲げながら努力を続けてきたといいます。
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林さんの気さくな接客は常連さんにも熱く支持されており、「店長に会いに来てるんや」と語るお客さんが取材当日にもいらっしゃいました。

「あまりかしこまった感じの接客ではなくて、友達と話すような感覚で、お客さんに居心地のよさを感じてもらえたらうれしいですね。『また来たよー!』『最近どう?』みたいな感じが理想です。みなさんのおかげでそんな店になってきている感触はあります。一日に2回も3回も来てくれるお客さんまでいますから(笑)」
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お客さんがカウンターを挟んで林さんと楽し気に会話しながら飲んでいる姿に「立呑み晩杯屋」が確実に大阪の町に定着していることを実感しつつ、次は何で甲類焼酎を割って飲もうかなとメニューを手に取るのでした。

<取材協力>

立呑み晩杯屋 十三店

立呑み晩杯屋 十三店

大阪府大阪市淀川区十三本町1-2-6
06-6195-7955
営業時間 11:00〜22:00(ラストオーダー21:30)
定休日 不定休
(取材日:2023年6月1日)


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●宝焼酎「ゴールデン」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/golden/

▼「関西チューハイ事情」バックナンバーはこちら

【第1回】大阪チューハイ文化のパイオニア、ヨネヤ「純ハイ」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/yoneya_230623
   

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