【関西チューハイ事情】 串かつを大阪名物に押し上げた[串かつ だるま]と、「だるまハイボール純」の噺
2023,9,8 更新
東京出身の酒場ライター・スズキナオさんと、関西のチューハイの楽しみ方について体当たりで調査する連載企画。第3回は、串かつを大阪名物として世界に発信する[串かつだるま]と、新名物の「だるまハイボール純」について。
前段 大阪名物って?
大阪らしい食べ物と言えば何が思い浮かぶでしょうか。たこ焼き、お好み焼き、イカ焼きあたりから始まって色々と出てくるかと思うのですが、そういった大阪名物の中にきっと“串かつ”も入っているかと思います。
しかし、串かつが大阪らしい食べ物として広く認知され始めたのは実はそれほど昔のことではないそうです。2000年代以降、メディアで頻繁に取り上げられるようになり、それによって一気に全国的に知られるようになったというのです。
そして、その串かつを大阪名物の位置に押し上げた立役者が、大阪市内と京都に15店舗をチェーン展開する[串かつだるま]。1929(昭和4)年、通天閣のそびえる大阪・新世界に創業した老舗です。
今回はその[串かつだるま]にお邪魔し、もとはとても小さな規模だったというお店がどのようにして現在の姿になったのかという話、ソースや衣、油へのこだわりについて、また店名を冠したチューハイである「だるまハイボール純」のことまで、色々とお話を伺ってきました!もちろん、串かつを食べてお酒も飲んで、しっかりと楽しんできました!
しかし、串かつが大阪らしい食べ物として広く認知され始めたのは実はそれほど昔のことではないそうです。2000年代以降、メディアで頻繁に取り上げられるようになり、それによって一気に全国的に知られるようになったというのです。
そして、その串かつを大阪名物の位置に押し上げた立役者が、大阪市内と京都に15店舗をチェーン展開する[串かつだるま]。1929(昭和4)年、通天閣のそびえる大阪・新世界に創業した老舗です。
今回はその[串かつだるま]にお邪魔し、もとはとても小さな規模だったというお店がどのようにして現在の姿になったのかという話、ソースや衣、油へのこだわりについて、また店名を冠したチューハイである「だるまハイボール純」のことまで、色々とお話を伺ってきました!もちろん、串かつを食べてお酒も飲んで、しっかりと楽しんできました!
新世界からはじまった[串かつだるま]の躍進。
大阪・新世界にやってきました。新世界エリアには[串かつだるま 新世界総本店]をはじめ、計4店舗が展開されています。店舗に伺う前に、まずは事務所でじっくりとお話を聞かせていただくことに。今回インタビューさせていただいたのは[串かつだるま]の常務取締役を務める藪口征平さんです。
1929(昭和4)年の創業から90年を超える老舗の[串かつだるま]の発祥の地はここ新世界。その始まりは4坪ほどの敷地に12席だけの小さな規模だったそうです。創業者の百野ヨシエさんから3代目の百野貴彦さんまで、お店は家族経営で引き継がれてきたのですが、2001年になって貴彦さんが体調を崩し、店を閉めようと決意したといいます。
そこにキーパーソンとして現れたのが俳優の赤井英和さんです。赤井さんは[串かつだるま]の味に惚れ込んで長らく通い詰めてきた常連だったのですが、3代目が店を辞めようと考えていることを知り、なんとかこの店の味を残せないかと思ったそうです。そこで、自分が通っていた高校のボクシング部の後輩で、よく一緒に[串かつだるま]に来ていた上山勝也さんに連絡し、「だるまを継がないか」と打診。上山さんは当時会社員をしていたのですが、先輩からのいきなりの連絡に対し、「はい!わかりました」と応じ、会社を辞めてすぐに修行に入ったとのこと。
ちなみにそんなお話を私に聞かせてくれている藪口さんは上山さんがいた会社の部下で、新卒で会社に入った時から上山さんを慕っていたのだそう。その後、藪口さんも上山さんの後を追うようにして[串かつだるま]で働くようになり、今も一緒に仕事をしているのだから不思議なものです。
修業を終えた上山さんが4代目店主となり、少しずつ店舗を増やしつつ、今の[串かつだるま]ができていったといいます。赤井英和さんがテレビに出演するたびにお店のことを告知してくれたり、上山さん自身もメディアに登場するなどして、その結果、[串かつだるま]自体の認知度が高まっただけでなく、串かつというものが大阪ならではのローカルフードとして知られるようになっていきました。
「一番の目標にしたのは串かつを大阪名物にすることでした。『大阪名物といえば串かつで、串かつと言えばだるま』と思ってもらえるようにと。うちの店自体が地元の人々に助けてもらって続けてこられたので、新世界を飛び出してミナミへ、ミナミからキタへとお店を少しずつ増やして、大阪全体を元気にすることで恩返しをしたいと考えてきました」と、藪口さんは語ってくれました。
修業を終えた上山さんが4代目店主となり、少しずつ店舗を増やしつつ、今の[串かつだるま]ができていったといいます。赤井英和さんがテレビに出演するたびにお店のことを告知してくれたり、上山さん自身もメディアに登場するなどして、その結果、[串かつだるま]自体の認知度が高まっただけでなく、串かつというものが大阪ならではのローカルフードとして知られるようになっていきました。
「一番の目標にしたのは串かつを大阪名物にすることでした。『大阪名物といえば串かつで、串かつと言えばだるま』と思ってもらえるようにと。うちの店自体が地元の人々に助けてもらって続けてこられたので、新世界を飛び出してミナミへ、ミナミからキタへとお店を少しずつ増やして、大阪全体を元気にすることで恩返しをしたいと考えてきました」と、藪口さんは語ってくれました。
新名物誕生! 屋号を冠した「だるまハイボール純」。
「だるまハイボール純」を注ぐ写真は[串かつだるま 通天閣店]
さて、ここからは実際に[串かつだるま]の店舗にお邪魔し、飲んだり食べたりしつつ、さらにお話を聞いていくことにしましょう。
まずは店名を冠した「だるまハイボール純」をいただきます。この「だるまハイボール純」は、藪口さんがミナミの有名焼肉店で宝焼酎「純」を使ったチューハイを飲んだのをきっかけにして生まれたものだとか。
まずは店名を冠した「だるまハイボール純」をいただきます。この「だるまハイボール純」は、藪口さんがミナミの有名焼肉店で宝焼酎「純」を使ったチューハイを飲んだのをきっかけにして生まれたものだとか。
藪口さんいわく、「それを飲んだ時に、焼肉の脂っこさを流してくれるところがいいなと思ったんです。クセがなくて飲みやすい。これだったら串かつにも合うはずと思って、すぐに開発を進めました。35度の『純』を強炭酸水で割って、店でレモンチューハイを出す時に使っているオリジナルのコンク(濃縮エキス)を足して、さらにカットレモンを入れて、これなら看板メニューにできると思いました。すごく評判がいいですよ」とのこと。
なるほど、「だるまハイボール純」の飲み口はキリリと爽やかで、これをおともにすれば、串かつがいくらでも食べられてしまいそうです。
油よし、衣よし! 食材を生かして揚げる名物串かつ。
牛肉を使った「元祖串かつ」や「天然エビ」「鶏つくね」など、お店イチオシの串かつが12本と名物の「どて焼き」までセットになった「新世界セット」を注文してみるとテーブルの上がいきなり豪勢になりました。
まずは「元祖串かつ」からいただいてみると、衣はサクサクと軽めの食感で、酸味を感じるソースの味わいもあいまって、いくらでもいけるぞという食べ応えです。アスパラも美味しいし、チーズもいける!食材の味が損なわれないように絶妙に揚げ方を加減しているのが伝わってきます。
まずは「元祖串かつ」からいただいてみると、衣はサクサクと軽めの食感で、酸味を感じるソースの味わいもあいまって、いくらでもいけるぞという食べ応えです。アスパラも美味しいし、チーズもいける!食材の味が損なわれないように絶妙に揚げ方を加減しているのが伝わってきます。
串かつへのこだわりについて、藪口さんはこう解説してくれました。「うちでは牛油を使って揚げているのですが、この油は創業当時からの作り方を守っています。牛油は瞬発力が高いと言いますか、揚げたての美味しさがすごく増すんですよ。衣には、ソースがよく絡むように目の細かいパン粉を使っています。自家製ソースも、創業時からのレシピをできる限り守っていて、レシピを知っているのは上山と私と工場長だけなんです。ほどよい酸味と甘みが特徴です」
昭和4年から引き継がれてきた貴重なレシピが目の前の串かつを作り上げているのだと思うと、なおさら美味しく感じられてきます。
ソースは二度漬け禁止から、かけるスタイルへ。
ちなみに[串かつだるま]は「“ソース二度漬け禁止”の発祥の店」としても有名なのですが、コロナ禍に入ってからはソースの共有を取りやめ、専用ボトルから各自でかけるスタイルに変更しています。
「食品衛生上の観点から当面はこのままのスタイルを続けていくつもりです。ただ、現在は有料で個別のソースも提供していまして、それをご利用いただければ串をソースにとっぷりと浸すことができます。観光で訪れた方はやはりあれをやってみたいようで、人気なんですよ」と藪口さん。
また、もう一つの変化として、以前は無料で提供していたキャベツを今年3月から有料化したとのことです。
「キャベツをお出しして、たとえばお客さんが一口も食べられなかったとしても、もちろんそれは捨てることになります。そのようなロスが実は全体の4分の1にもなっているんです。SDGsが掲げられる時代ですから、これに対応すべきなのではないかと思いまして、現在はキャベツを有料とさせていただいています。ソースの二度漬け禁止も、もともとはもったいない精神から生まれたものなので、そういう取り組みは積極的にしていきたいですね」と、時代の変化を感じさせるお話も聞けました。
名物どて焼きにも「だるまハイボール純」がフィット。
串かつと並ぶ名物メニューだという「どて焼き」は、濃厚な味噌の味わいと甘み、牛すじの柔らかな食感がたまらない一品です。「特製の味噌でこんにゃくと牛すじを煮ているんですが、濃厚な風味が『だるまハイボール純』とすごく合うと思いますよ」と藪口さんにおすすめしてもらった通り、素晴らしい相性でした。
今後の[串かつだるま]の展望について伺うと、こんな答えが返ってきました。
「これからもずっと大阪で商売をしていくので、まずは地元の方に愛される企業でありたいです。それに加えて、今は海外からもたくさんお客さんが来てくださっていますし、国内の観光のお客さんも含めて、『だるまの串かつを食べに行こう』とうちを目指して来ていただいて、大阪が元気になるように、一役を担えたらいいかなとは思っています。海外の方に串かつの美味しさを知っていただければ、この食文化が世界へと広がっていくことにも繋がっていくと思います。創業当時の味を変えずに守りながら、大阪から日本へ、世界へと広げていきたいですね」
取材後、「串かつだるまと言えば」というほどに目立つ店頭の人形(4代目社長の上山さんの姿を模したものです)を改めて眺めてみます。「この表情は決して怒っているのではなくて、あくまで“二度漬け禁止”を促しているだけですから、怖がらないで大丈夫です。あとこれ、全部ハンドメイドなので一つずつ顔が違うんですよ」と藪口さんが笑いながら教えてくれました。
顔が一つずつ違うのか……意外な豆知識を得たので、他の人形と見比べるために、また別の店舗にも行ってみようと思いました。
<取材協力>
串かつだるま 動物前店
大阪市浪速区恵美須東2-4-5
06-6630-8230
営業時間 11:00~22:30(ラストオーダー22:00)
定休日 無休
(取材日:2023年7月13日)
▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/index.html
▼「関西チューハイ事情」バックナンバーはこちら
【第1回】大阪チューハイ文化のパイオニア、ヨネヤ「純ハイ」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/yoneya_230623
【第2回】東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/banpaiya_230721
串かつだるま 動物前店
大阪市浪速区恵美須東2-4-5
06-6630-8230
営業時間 11:00~22:30(ラストオーダー22:00)
定休日 無休
(取材日:2023年7月13日)
▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/index.html
▼「関西チューハイ事情」バックナンバーはこちら
【第1回】大阪チューハイ文化のパイオニア、ヨネヤ「純ハイ」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/yoneya_230623
【第2回】東京スタイルで関西に上陸!「立呑み晩杯屋」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/banpaiya_230721