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【京都・酒呑気びんご】 週一で通いたくなる酒場の噺

【京都・酒呑気びんご】 週一で通いたくなる酒場の噺

2022,10,7 更新

行きつけにしたくなる酒場の条件としては、料理やお酒が美味しいということと、時にはそれ以上に「気持ちよく時間が過ごせる空間であること」が重視されます。
店員や馴染み客とワイワイと楽しくお酒を酌み交わし、会話を重ねる時間は何ものにも代え難いもの。今回はそんな、心地よい空間を提供してくれる京都の酒場のご紹介です。

東京スタイルの酒場が京都に誕生

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京都市のビジネス街のひとつ烏丸駅から5分ほど。京の台所こと錦市場の西手にあるのが、今回訪れた酒呑気(さけのんき)びんご。お店の一階はコの字のカウンターが設えており、温かみのある空間が広がっています。
カウンターに座ると、目の高さには料理やお酒のメニューが書かれた短冊がずらりと並ぶ、これぞ大衆酒場という趣です。2020年9月に京都に誕生した比較的若いお店ですが、開店時刻を少し過ぎる頃には、カウンターも2階席も満員になる人気ぶり。そんな人気の秘密をオーナーの三輪圭吾さんに伺いました。
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「僕が修行時代に出会った東京の人気酒場の影響が大きいんです」。
と語る三輪さん。20代の時に飲食店の道を志し、東京や大阪で7年間修行をし、京都にびんごをオープン。その提供スタイルや店の雰囲気づくりのヒントとなったのが、東京時代の人気大衆居酒屋だったそう。

「たとえば、どぶ漬け(※)でのお酒の提供や、お客さんが自由に割るタイプのサワーの提供、カウンターを用いたお客さんとの距離の取り方、あえて昭和の大衆レトロの趣を演出した店内の内装やメニューを掲げる短冊などにはそれが色濃く反映されていますね。」


※ 氷水の入ったシンクや容器の中、瓶ごとお酒を入れて、飲み頃の温度に冷却&保冷する方法。
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びんごのカウンターには、客席の目の前にステンレスのシンクが設置されていて、そこには氷水でキンキンに冷やされたサイダーやトニックウォーター、お茶などがどぶ漬けされています。
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お客さんは宝焼酎の360ml瓶を注文し、このシンクから出されたドリンクでお酒を割って自分好みの味&濃さのサワーを作るという仕組みです。
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「東京で見た時に“これは面白いな”と思いまして、関西ではなかなか見ない形ですので取り入れてみました。」


こうした東京の大衆酒場スタイルの目新しさ、楽しさが京都の人々の間にも人気を博し、現在では週3回来店されるお客さんもいるほどの繁盛店に。客層も当初三輪さんは20代後半〜を考えていたそうですが、現在はなんと20代前半、しかも女性が8割を占めるそう。こうしたご贔屓さんが、SNSなどを通じてメニューやお店の雰囲気を拡散していくことで、開店からわずか2年で、しかも、コロナ禍にありながら京都の街にしっかりと根を下ろすことができたのです。

名前から入るユニークなメニューで、話題づくり

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「お店のスタイルは東京を参考にアレンジしたのですが、お酒に合わせたびんごだけのオリジナルメニューもしっかりご用意していますよ」。

確かにメニューの短冊には思わず目を惹くメニュー名が並んでいます。
これらのメニューは三輪さんが創作したものですが、そのきっかけは「面白そうなネーミングをつけてみよう」という発想からなのだそう。
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「例えば、“こんな名前のメニューがあったら面白そうだな”、“味のイメージを言葉にするとこんな感じかな?”と思ったら、その名前に合わせて食材を決めて、メニューを作っていくんです。最近のものでは、“ティラ味噌”や“甘エビのケジャン”、“すっぱこりこり”なんかがそうですね。一見して“なんだこれは?”って思っていただけたら、きっとスタッフやお客さん同士の会話も広がると思います。なので、料理の内容は来てのお楽しみということで(笑)」。

創作メニューの数々はお酒との相性も抜群

ユニークな名前が並ぶびんごのメニューの中から、特におすすめ&人気の料理とお酒を紹介していただきました。
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まずは、コンビーフのポテサラ。コンビーフを混ぜ込んだじゃがいもはしっとりとしつつ、コンビーフのコクのある風味をしっかり感じられる一品。上にトッピングされているのはとびこ。魚卵とコンビーフのポテトサラダという異色の取り合わせですがこれが不思議とマッチします。このチョイスも三輪さんの“思いつき”なのだとか。

合わせるお酒は、ホッピー割り。宝焼酎のボトルから、お好きな量をついで、濃さを調整するその一手間がまた楽しいもの。さっぱりとした口当たりで、ポテサラの風味を邪魔しない、こちらも相性の良い取り合わせです。
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続いては肉どうふ。
毎日スープを継ぎ足しながら煮込んでいるため、食材のエキスがたっぷりと染み出した、複雑な味わいとなっています。ただしこれにも、一工夫するのが「びんご」らしいところ。
小皿で提供されるスタッフお手製の“生七味”をふりかけると、一層風味豊かに。さっぱりとしつつピリリとした辛さが後を引く味わいとなります。

こってり目の肉どうふといただくのは、バイスサワー。宝焼酎と氷を入れたグラスに、バイスサワーの素を入れていきます。甘酸っぱさと紫蘇の香りが、舌をリフレッシュしてくれるので、グラスも箸も止まらなくなります。
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びんごでは、創作料理だけでなく、さまざまな地方の人気料理を取り入れているのも面白いところ。豚バラのレタス巻きは博多の串焼きの定番をモチーフにした一品。
豚バラの脂身はとろけても、レタスはシャキッとした歯応えを残す火の通し加減が見事。さらに、下に敷かれた酢だれの酸味が程よいアクセントとなります。

人気の一品に合わせるのは、女性からの支持が高いみかんサワー。フレッシュなみかんを生搾りにした果汁たっぷりの一杯です。
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最後は、手羽先の一夜干し。こちらも、なかなか他のお店では見かけないメニュー。
手羽先を一夜干して揚げることで、皮はよりパリッと香ばしく、余分な水気が抜けて締まった肉質からはより味わい深い肉汁がほとばしります。シンプルなだけに、かける一手間が大きな味の変化をもたらしてくれる。三輪さんの料理のセンスをここでも感じることができます。

揚げ物と好相性なのが、香ばし茶割り。宝焼酎にティーバッグの緑茶を入れて飲むと、お茶の香りをいっぱい感じられるお酒が、手羽先の油っこさを打ち消して、その甘みと旨味をより色濃く感じさせてくれます。

若者も年配も集まる和やかなコの字カウンター

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「びんご」の店内では、スタッフやお客さん同士が和やかに談笑している様子が見られます。
この雰囲気作りにも、三輪さんのこだわりが詰まっている。

「コの字カウンターは、スタッフやお客様同士との距離も近くなりますし、調理している風景がどの席からも見えますからね。変わったメニューなんかを作っていると“なにそれ?”と声がかかりやすいんですよ。ただ、ひとつ心がけていることは、スタッフが無理に話しかけないこと。和やかな雰囲気や接客の教育っていうのは、したくないんです。その代わり、私がスタッフを酒場に連れて行って、一緒に飲んで笑って、夢を語ってその中で“楽しい酒場の雰囲気は何か”ということを知ってもらい、実践してもらうようにしているんです」。

食事とお酒と、なにより気持ちよい、お客さんとスタッフの一体感が楽しめる「びんご」。
京都で、ほっと力を抜いて時間を過ごせる居場所がほしいと思ったら、ぜひ訪れていただきたい名店です。



<取材協力>
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酒呑気 びんご
住所:京都府京都市中京区西錦小路266
TEL:075-748-1499
無休

https://www.instagram.com/sake_nonki_bingo/

▽料理と一緒に紹介したお酒はこちら
宝焼酎
   

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