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お酒を楽しむ氣力の源“お水の神様”の噺

お酒を楽しむ氣力の源“お水の神様”の噺

私たちを心地よく楽しませてくれる“お酒”。お酒の歴史はとても奥深いもので、古事記や日本書記が生まれる前の時代よりもあったとされます。現存する神社仏閣がない時代から、私たちのご先祖様は自然の神様に作物の豊作や天候を願い、その願いの代わりに神様に捧げてきたのが”お酒”。お酒は神様を楽しませるものとし、またその言葉自体に“捧げる”という意味を込めたものと言われています。古来ではお酒を神様とのコミュニケーションの道具として扱っていた私たちですが、今は気心知れた人とお酒を楽しむものになっていますね。酒噺では、お酒の場で誰かに話したくなるような”お酒と神様の関係”を全4回に渡ってご紹介します。第一回は、お酒のみならず生命の源である「水」の神様を訪ねるお噺。お酒の成分の約8割はお水。水の神様はまさにお酒の主。そんな水を司る神様をお祀りする貴船神社総本社”貴船神社”を訪ねてきました。

水の神様をお祀りする“貴船神社”の神様とは?

京都市内から電車とバスに揺られ約1時間。

京都北部にある貴船神社は、樹木が生い茂る自然豊かな山中にあります。
四季によって色鮮やかに変化する景色は観光スポットとしても大人気の場所。

夏の貴船は、京都の街中に比べ5度ほど低いと言われ、酷暑であった取材日でも涼しさを感じるほど。境内までの通りには、川床で賑わう貴船川が流れ、川音でさらに涼を感じることが出来ます。

貴船神社の御祭神は、水を司る神本宮に祀られる【高龗神(たかおかみのかみ)】と奥宮【闇龗神(くらおかみのかみ)】、そして縁結びで有名な結社【磐長姫(いわながひめ)】。

本宮、奥宮の神様は共に祈雨(きう)と止雨(しう)にご利益のある神様とされ、平安時代から人々や朝廷に大切に信仰されてきた神様です。

現在も水を司る神様として、酒造会社や地元京都の料亭など水を扱う方々からの崇敬が厚い神社の一つ。


お話をお伺いしたのは、貴船神社の宮司として25年務めていらっしゃる高井和大(たかいかずひろ)さん。

水の神様を祀る宮司として「世界水フォーラム」京都誘致を働きかけ、基調講演も行われた方です。

「高龗神の“龗(おかみ)”というのは水の湧き出すところという意味なんです。高龗というのは、高いところから水の湧き出すところの神様。 奥宮は闇龗神、暗い暗い谷底から水の湧き出すところの神様と云われています。高龗も闇龗も名前は違うけれども同じ神なりと書いてありますので、高も闇もいらない“龗(おかみ)の神”が非常に大事なんですね。龗の漢字を調べると、雨冠の下に口が三つあります。三つの口は祝詞を入れたり、神饌(しんせん:神様にお供えするお酒や食べ物など)を入れたり、お祀りする時の道具を入れる器なんですね。つまり龍神様にお祀りして雨を祈っているんです。貴船神社の神様の働きは、これ一字でよくお判りいただけます。」(高井さん)

氣力が生ずる根源の地“氣生根(きふね)”

【貴船神社本宮境内にそびえる桂の木。龍のように大地から勢いよく立ち昇る姿から、貴船神社の御神徳を象徴していると云われる御神木】


貴船神社の名称には諸説あり、その一つに【氣生根(きふね)】があります。
この“氣”という漢字の中には「米」が入っています。農耕民族である日本人にとって、「米」はなくてはならないエネルギーの源でした。「米」を食べると“元氣”になる。そして、「水」と「米」が合わさって“氣力”が湧いてくるという意味もあります。

「ハイキングなどをしていて、谷川の水の音を聞くだけで元気になってきたという経験が誰にでも一度はあると思うんですね。水源の神様の静まるところ、氣力の生ずる根源から“氣生根(きふね)”という地名が生まれたと言われています。まさに水は、氣力を生じさせる。元気が生まれると運も開かれるということで、運気開運の信仰から、水の神様というだけでなく、さまざまな願い事を叶えてくれる、諸願成就の神様という信仰が広まりました。」(高井さん)

「米」は末広がりの字であり、良い“氣”のエネルギーが八方に広がるという意味もあります。
“氣”が生ずるという、まさに正真正銘のパワースポットである貴船神社にはたくさんの伝説があります。貴船神社が創建された時にも一つの大きな伝説が残っています。

川を遡り生まれた“黄船(貴船)誕生の伝説”

約1600年前の奈良時代。船に乗った女の神様【玉依姫(たまよりひめ)】が大阪湾に現れ、
「この船で水の源までさかのぼり、上陸をした場所の神様を大切にお祀りすれば国土を潤し、庶民に福運を与える」というお伝えがあり、その船に乗り大阪湾から、淀川、賀茂川、貴船川の源流である奥宮の地に上陸をしました。その時に乗っていた船の色が黄色かったことから【黄船(きふね)の宮】とされたというのも貴船神社の名称の謂れの一つ。

現在も、その船は人目につかないように、奥宮の拝殿横に石を積まれて隠されていると云います。

また、黄船の上陸までの道のりは、とても急な流れの中での航海だったことから、“航海安全”の神様として海上自衛隊や漁師の方々にも信仰され、舟形石に積まれた小石を持って航海や旅行に出ると無事に帰って来られると云われています。

貴船神社の氣力がみなぎる神聖なる奥宮

さまざまな伝説が今なお残る貴船神社の深い“氣力”の源は、奥宮にある貴船龍穴から生じているといいます。

非常に神聖な龍穴(気が溢れる場所、龍神の住処とも云われる)で、誰も見ることが出来ないものとして御本殿の下に祀られています。

そんな龍穴には、ちょっと怖い伝説が現在まで伝わっています。

文久時代(1861~1864年)、御社殿の修理が行われた時に誤ってノミを龍穴に落としてしまった大工。
すると、たちまち竜巻が起こり、ノミは天高く舞い上がり戻って来たが、程なくして大工は亡くなってしまったという言い伝えがあります。

そんな怖い伝説も残る不思議な力が満ちている奥宮は霊感などがない方でも、何かを感じる場所だとも高井さんはおっしゃいます。

実は、高井さんも4年前に行われた解体修理の際に、見てはいけない神聖な井戸を少し覗いてしまったそうです。「土壁のようなもので覆いをされていた。たたくとボコボコと音がしていた。」(高井さん)今なお、水が深い谷底から湧き出ている神聖な奥宮。

ぜひ、貴船に訪れた際は奥宮まで足を伸ばしてみてくださいね。きっとドキドキするような気持ちになりますよ。

ご参拝後は水占みくじと川床へ。貴船川の涼を感じる

貴船神社にお参りの際には、ぜひ水占みくじを試してみてください。
境内横の御神水に浮かべると、結果がじわりと浮き出てくるというおみくじです。

この日は辛口の結果でしたが、おみくじ結果が浮かんでくる様は涼しげでとても気持ちがスッキリとしました。

また参拝の後には、川床で料理とお酒を楽しんで、パワーを養うのもおすすめですよ。
川床ではつめたい川に足をつけて、火照った体をクールダウンできます。

自然のゆらぎを感じ、氣力をいただく

日本人は昔から神様の存在を、自然の中で“感じた”と言います。

「季節が繊細に移ろうさま、風の音など微妙な揺れ具合から第六感として感じ取っていたのではないでしょうか。」宮司の高井さんはおっしゃっていました。そして、「季節の移り変わりそのものに関心を持つことが大事です。」とも。

都会にいるとなかなか自然の移ろいを感じにくい現代。
ぜひ、日頃感じることのできない自然のゆらぎを感じられる場所へと足を運んで見てはいかがでしょうか?

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