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気心知れた行きつけのカウンターでの噺

気心知れた行きつけのカウンターでの噺

店の中は居心地が良くいつでも顔なじみの顔であふれていて、もちろん店主の対応も親しげであたたかい。仕事帰りや近くに立ち寄った際に、ついなんとなく足が向いてしまう。お酒好きなら、誰もが一軒はもちたい行きつけのお店。でも「そんな運命のお店にはなかなか巡り会えないし、常連になれるかどうかも不安」。なんて二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。 そんなみなさんの背中を押すべく、大阪・東心斎橋で多くの常連に愛される居酒屋「タコラ」を訪問。気心知れた、店主と常連のやりとり&エピソードを伺ってきました。

長堀橋の隠れ家的居酒屋、「タコラ」

大阪・東心斎橋、地下鉄長堀橋駅から歩いて3分ほど。螺旋階段を上がったビルの2階にあるのが、タコラ。ちょっと見つけにくい場所にあるのですが、開店すぐから賑わう人気店です。

この店を切り盛りしているのが、店主の福本直美(フクモト・ナオミ)さん。
カウンターに並ぶおばんざいをはじめ、店の料理はほぼ全て福本さんの手作り。家庭料理のようでありながらもそこは居酒屋。しっかりとお酒をすすめてくれる、そして何よりもほんわかとした福本さんの人柄を慕って、常連が連日店を訪れます。

この日、カウンターで福本さんと和やかに言葉を交わしていた常連は“白井さん”。
まずは、白井さんにタコラの居心地や魅力を語っていただきました。

常連のリクエストでお店の定番になった焼酎ハイボール&おでん

白井さんは通称「先生」。大阪の北浜にご自身の会計事務所を構える方で、毎日仕事が終わるとタコラによって、おばんざいとお酒を楽しまれています。
「6時頃に来たら、だいたい8時までいるかな。事務所の同僚と来ることもあるし、1人で来ることもある。でも、いつも来る時間も帰る時間も決まっているよ。僕は独り者だからね、家ではほとんど食事をしないし、ここは野菜もしっかり摂れるからいいよね。何より、これがあるからさ。」

と目線に掲げてくれたのは、タカラ焼酎ハイボール。
なんでも白井さん、もともと地元のスナックで焼酎ハイボールを見かけてから、自宅でも愛飲するようになったんだそうで、毎日の食事中にも同じものを飲みたい……と福本さんに“お願い”したのだとか。

「白井が言うならってことで、仕入れてくれたんだ。僕が来る前に、買いに行ってくれるんだよ。日本酒ほど甘くないし、ウイスキーのようなクセもない。
焼酎ハイボールはすっきりしていて料理の味を邪魔しないんだよね。食中酒にはぴったりだよ。これはタバコの銘柄と一緒。1回気に入ったら“これでなくっちゃ”って思うんだ。そうしたらもう浮気はできない。だから、“この店で飲みたい”って頼んだんだよ。それに僕が飲んでいると、他の客も“なんですかそれ”って、尋ねてくるから話も弾むしね」と、嬉しそうに飲み干してお代わりを注文されます。

「先生、これで3本目ですよ」と、焼酎ハイボールを手渡す福本さん。
なんでも、白井さんはタコラで飲むのは3本までと決めているそうで、もちろん福本さんもそれを知って、声をかけているのです。
白井さんは、タコラの開業以来の常連。自宅にいるように自然な呼吸で、カウンター越しでのやりとりが行われています。

「この店にはおでんが年中あるんだ。これも僕たちのリクエストでやってくれるようになったんだよ。他にも、“旅先で食べた料理が美味しかったから作ってよ”なんて無茶なことを言う常連もいるけど、気安く作ってくれるんだ」と、3本目の焼酎ハイボールもあっという間に残りわずかに。

今日はあの人が来るから

「カウンターに乗っているおばんざいは、日替わりなんです」と福本さん。
「作る前に、いつも”今日はあの人が来るだろうな“って想像して、その人の好物を用意することもありますね。白井先生は青い野菜が好きですから、それも一品作ろう、同僚の田辺さんは卵好きだからあれも作ろうなんて考えます。だから、1週間くらい姿が見えない常連さんがいると心配になりますよね。他の方に、”あの人最近どうされてます?“なんて聞いたりして…。」

お仕着せの料理ではなく、食べる人のことを想って作る料理人とその料理。
当たり前のようでいて、なかなかできない思いやり。常連にとっては、第2の家であり、帰る場所でもあるのですね。タコラの魅力は、まさにここにあるのではないでしょうか。

行きつけの店を作る秘訣

タコラの魅力を聞いたところで福本さん、白井さんに「行きつけを作る秘訣」について伺ってみます。
「僕にとって、タコラは特別な場所ではなくて日常の中にある飲み屋。毎日を大切にするのであればアインちゃん(福本さんの愛称)も常連も大事にするよ。店が混んできて、他の常連が来たらちょっと早めに切り上げたり、場所を開けたり、時には旅先のお土産を持ち寄ったり、みんなが思いやって譲り合うから気持ちがいいし、居心地も良くなる。常連だってみんな最初は初めての客なんだから、怖がることはない。タコラは初めてのお客さんにも、常連が気安く話しかけるし、輪の中にも入りやすい。この空間を、例えば自分の家のように心地よく感じることができきれば、自然と通いたくなるはずだよ」と白井さん。

福本さんは「私は良く来てくれて、料理を“美味しいよ”って言ってくれる人が好きですね。あとは一杯どうですか、なんて言ってくれる人も。気持ちよく食べてくれて、顔を覚えたら、料理も作りがいがありますしね」と笑いながら話してくれました。

話をするうちに、いつしか外は夜の気配に。カラカラと戸を開ける音がして常連がひとり、またひとりと入ってきます。嬉しそうに出迎える福本さんと、挨拶を交わす白井さん。
そこには、店と客というよりも、お互いに時間と場所を共有する仲間意識がありました。行きつけを作る秘訣、それはなによりも同じ時間に酒場に集う、それぞれの人を思いやる心にあるのかもしれません。

東心斎橋のタコラ。これから行きつけを見つけようという方、まずはこの店に集う人々の輪に入ってみては? 行きつけにしたくなる酒場の雰囲気、そして常連の仲間の一人になるためのお手本がここにはきっとあるはずです。

【取材協力】
タコラ
営業時間:18:00~24:00
定休日:土曜・日曜・祝日
住所:大阪府大阪市中央区東心斎橋1-4-11 大和ビル8号館 2F
※取材データは2019年4月時点



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