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冬の夜をほっこり温める、一人鍋&家飲みの噺

冬の夜をほっこり温める、一人鍋&家飲みの噺

2022,2,11 更新

まだまだ寒さが続く冬の晩酌のお供は、手軽でおいしく豊富な種類が魅力の「鍋料理」はいかがでしょうか。

寒い季節のご馳走は数あれど、そのバリエーションの豊富さや調理中の楽しさなどにおいて、「鍋料理」に勝るものはなかなかありません。
なにより、鍋料理は野菜がたっぷり摂れるのが嬉しいところ。
揚げ物や、乾き物での晩酌が続いている皆さん、今日は新鮮な肉や魚介と野菜の旨味がたっぷりと溶け込んだ出汁がおいしい鍋料理と一緒にお酒を楽しんでみませんか?

一人鍋こそ鍋の基本形?

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テーブルの真ん中で、ぐつぐつと煮立つ鍋を見ながら、食材がいつ煮えるかと待ち遠しく思う瞬間。
日本人なら誰もが家族や気の合う仲間と共に鍋を囲んだ経験があるはず。
鍋が冬の定番となった理由は、何より温かい出汁と具材を一緒に食べることができ、体が温まるからなのですが、実はもうひとつ理由があるのです。

縄文~弥生時代ごろから、日本には煮炊きを目的とした調理器具があったようです。
鉄器の登場と共に鍋状の調理器具が出現すると日本各地で、囲炉裏(いろり)に吊るした鍋に地元で採れる食材を入れて煮込む、鍋料理が作られていました。これは現在でも各地に残る郷土料理のルーツとなっていますが、囲炉裏は住まいの中で唯一の調理場であり、当時の人々は年中「鍋料理」を食べていたわけです。

『東京美女ぞろひ 柳橋きんし』

『東京美女ぞろひ 柳橋きんし』

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
冬の食卓に鍋が「特別なもの」として登場したのは江戸時代と言われています。それまで囲炉裏が果たしていた暖を取る機能は火鉢や七輪など移動できる熱源に変化。「この火鉢で暖を取るついでに料理もしてしまおう」というのと、「居酒屋などで七輪をつかって、めいめいが鍋を煮ながら食べるのが粋だ」ということから江戸の町では鍋が流行。これが現在の食卓で食べる鍋につながっていくのです。

江戸時代の鍋は直径20cmほどの小鍋で、これを一人ないしは少人数で、お酒と一緒に楽しんでいたそうです。これになぞらえて、今回は一人でも楽しく味わえる酒噺おすすめの定番鍋料理と酒の組み合わせをご紹介していきます。

大阪庶民の味、鯨の「はりはり鍋」×全量芋焼酎「一刻者」のロック

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はじめにご紹介するのは、大阪発祥のご当地鍋「はりはり鍋」。
これはたっぷりの水菜と鯨肉を煮込んだもので、「はりはり」とは水菜のシャキッとした食感を音にしたもの。
昆布や鰹節の出汁にみりん・醤油・塩を加え、下地となるスープを作ったら、まずは鯨肉を入れます。鯨の匂いやドリップ(血)が気になる場合は、まず片栗粉をまぶして湯通ししておくとさっぱりと食べられますよ。
肉に火が通りはじめた頃に水菜を追加。水菜がちょっとしんなりしたら食べごろです。お好みで七味や山椒と一緒にいただきます。
今回は赤身を使いましたが、より脂の乗った鹿子(かのこ:鯨のアゴを覆っている部位でアゴの付け根部分)や鯨皮があると、より一層旨味とコクがスープに溶け出て美味しくなります。

また、鯨肉以外に豚肉でもOK。湯葉や油揚げなどを使っても一味違う味わいの鍋となります。
一緒に楽しむ酒は全量芋焼酎「一刻者」のロック。ちょっとクセのある鯨をしっかりと受け止め、旨味たっぷりの肉汁とコクのある出汁に、爽やかな甘味を加えてくれます。肉と一緒に「一刻者」を一口、ホッとついた息まで美味しく感じられる名コンビです。

変わり種が今や一番人気に?「キムチ鍋」×タカラ「焼酎ハイボール」

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日本における鍋料理では新参者の部類に入る「キムチ鍋」。
乳酸発酵されたキムチからは、酸味と旨味がたっぷりの良い出汁が出ます。この出汁に、キノコや肉類、時には貝やエビなどの海鮮類を加えることで、より複雑な味わいに仕上がります。またキムチ鍋の魅力といえば、コクに加えピリリと辛いその刺激。ご飯との相性もピッタリで、日本に上陸するや、老若男女問わず人気を博したのも頷けるおいしさです。
合わせる酒は、ニラやニンニク、胡麻油など香りの個性が強いため、まろやかな日本酒などよりもどっしりとコシのある本格焼酎や甘くない炭酸系の酒がよく合います。
今回選んだのは、タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>とアルコール分5%の「焼酎ハイボール」<前割りレモン>。
シャープでキレの良い強炭酸が、濃厚なキムチのスープをさらりと喉へと流してくれます。口中をさっぱりさせ、もうひと箸つまめば、唐辛子の辛味がより一層際立って心地よく舌を刺激してくれますよ。

酒の旨味を具材がまとってより美味しく!「常夜鍋」×「松竹梅」の熱燗

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鍋料理の定番ながら、学生が食べ始めたとも、中国から伝わったとも言われ、そのルーツが謎に包まれている「常夜鍋」。鍋のスープに味をつけず、水炊きのようにして豚肉とほうれん草を入れた、さっぱりとしたお鍋です。
作り方は、家庭や料理人ごとに違いはありますが、その基本は「お酒」をたっぷり使うこと。水と酒を入れた鍋に昆布を敷きゆっくりと温めます。この時の酒の量が、人によって水の量の1/3だったり、水と同量の酒を使用するなどということもあります。
煮たった鍋に、薄切りの豚肉やほうれん草、豆腐を入れ、ほうれん草が崩れないうちにさっと湯掻いていただきます。タレはポン酢にお好みでもみじおろしや小口切りのネギを加えます。お酒の旨味と香りが具材に染みて、口に運ぶ瞬間にふわりとくすぐり、口の上で旨味が洪水となって押し寄せます。

合わせる酒は、もちろん日本酒。「上撰松竹梅」はこれ以上ない相性です。口当たりが良くまろやかな味わいと、ふくよかな香りが豚やほうれん草の旨味と香りに寄り添い、複雑で豊かなものへと変えてくれます。人肌よりちょっと熱めの45度くらいの燗酒にするとより一層、出汁との相性が良くなりますよ。

家でも外でも食べたい冬の楽しみ 「おでん」×「松竹梅」の人肌燗

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木枯らしが吹いて寒さが身に染みるようになってくると、恋しくなるのが「おでん」。
日本人が好きな出汁の味を、心ゆくまで味わえる鍋料理の筆頭格です。
カツオや昆布の出汁の中で、練り物が魚の旨味とみりんの甘さに絡み、大根の懐かしく優しい香りと、牛すじなど各具材から溶け出したコクが合わさることで豊かな味わいが生まれます。よく味の染みたおでんはそれだけで御馳走となり得ます。おでんの良いところは、お酒の相性を選ばないところ。蒸留酒でも醸造酒でも上手に合わせてくれるのはさすが。一般の家庭でも屋台でも愛され、専門店が数多くあるのも頷けます。
今回は、ご家庭でも気軽にいただける「上撰松竹梅」を人肌燗(35度程度)にしていただきます。まろやかで優しく、気取らないおいしさは、おでんに相通じるものがありますね。

酒好きのための〆は…?

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鍋料理といえば、「締め」がつきもの。ごはんを入れて雑炊にするか、うどんを入れるか、時にはラーメン、博多では素麺(そうめん)なども定番なようです。しかし、酒好きにとってこの締めは意外と、お腹に重く感じられるもの。ただし、具材の旨味がたっぷり溶け込んだ美味しいスープを残すのはあまりに勿体無い。そこで、酒噺が提案するのが日本酒の出汁割り。
鍋の出汁をぬる燗(40度程度)に注いでキュッと飲み干します。
おでんの屋台などでは、以前から人気だったこの出汁割り。意外にも鍋のスープでも美味しくいただけます。皆さんも、出汁割りにぴったりな鍋のスープや、割って楽しむのに最適な酒を探してみては?

気軽に美味しくヘルシーに、一人鍋を堪能しよう!

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酒好きの方の中には、食事が偏りがちで野菜不足を気にしている方も多いはず。
鍋料理であれば、おいしくたっぷりと肉も野菜も楽しめて、酒とも相性抜群です。何より鍋に入れる食材はあなた次第。スーパーなどで好きな食材を買ってくれば良いのですから簡単。それに、最近では伝統的な鍋のスープから変わり種、エスニックなものまで種々様々な鍋つゆが店頭に並んでいますので、鍋を楽しむための敷居はより一層低くなっているわけです。
江戸時代に鍋が流行した頃に小鍋を突いていたように、鍋だからといって大人数で食べる必要はありません。なにより小鍋を一人占めして自由に食べたり、あるいは大切な方と差しつ差されつ分け合うのはなんとも粋なもの。
まだまだ寒い日々が続きますが、おいしいひとり鍋とともに晩酌をお楽しみください 。

▽今回紹介したお酒はこちら
全量芋焼酎「一刻者」
タカラ「焼酎ハイボール」
上撰松竹梅

▽その他冬におすすめの「酒」レシピ
手軽に栄養補給!日本独自の食材・酒粕の噺

▽鍋以外にも!江戸時代のお酒事情を知る
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