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手軽に栄養補給!日本独自の食材・酒粕の噺

手軽に栄養補給!日本独自の食材・酒粕の噺

粕汁や甘酒など、古くから親しまれている「酒粕」。知っているようで知らない酒粕の知識と、すぐに活用できるレシピのご紹介です。

新酒の出回る冬になると、スーパーや酒屋さんなどの店頭に「酒粕」が並びます。
粕汁や甘酒として古くから親しまれていますが、この酒粕がどのようにして造られているかご存知ですか?
今回はそんな、知っているようであまり知らない酒粕に関する噺。
寒い時期に芯から身体を温める酒粕の秘密を、酒造り・調味料の専門家に伺いました。

そもそも酒粕ってどのようなものなの?

今回お話をしてくださったのは、宝酒造、商品第二部の田熊克彦(たくま・かつひこ)さん。
加工食品や総菜などに適した酒類調味料やだし調味料などの商品企画に携わり、JSAのソムリエの資格も持つお酒と調味料のエキスパートです。
田熊さんに早速、酒粕についてのレクチャーをしていただきました。

「日本酒造りでは、米や米麹が酵母によってアルコール発酵したものを醪(もろみ)と呼びます。この醪を圧搾すると日本酒ができあがります。その時の副産物として生まれる搾りカスが『酒粕』です」(田熊さん)。

日本酒造りの工程表
なるほど、酒粕は日本酒造りの副産物ともいえる食材なのですね。でも、酒を搾った後の“カス”であれば、栄養などはお酒に取られて残っていないのでしょうか。

「とんでもない。日本酒で酵母が使用するのは主に糖分ですから、酒粕にはそれ以外の様々な栄養が残っているんです。酒粕は50%ほどが水分で、約5〜8%のアルコール分を含みます。酵母が使い切れなかった炭水化物に加え、タンパク質、食物繊維、葉酸、セラミド、微量のミネラルなど多様な栄養成分が含まれています。また、タンパク質としてコレステロールの排出などの機能性で注目されるレジスタントプロテインも含まれているんです。酒造りには大量の米と菌が使われますから、それを搾った酒粕は米や酵母や麹菌由来の栄養が濃縮された優れた食品なんです」(田熊さん)。

近年、酒粕は料理だけでなく化粧品などにも利用されているそう。これも酒粕の持つ豊富な栄養によるものと頷けます。

平安時代から存在した、日本独自の食材・酒粕

田熊さんは、酒粕の栄養に加えて酒粕の歴史や文化的な側面についても教えてくださいました。

「酒粕は、酒造りの発祥とともに生まれたと考えられます。奈良時代~平安時代にはすでに利用されていたようで、『延喜式』には“疾病者に酒粕五合を給与した”という記述が見られるほか、『万葉集』では山上憶良(やまのうえのおくら)も酒粕についての歌を詠んでいます。古くから日本において米は年貢や俸禄となり、金と同じ価値を持つ大切なものでした。その米を大量に使って造る特別な飲み物が酒であり、人々はその搾りカスまでも無駄にすることなく利用しようとしたのでしょう。現在、世界中で多様なお酒が造られていますが、ワインにせよビールにせよその搾りカスを食品として再利用するという話は聞いたことがありません。日本酒の酒粕は、そういった意味で日本の文化が生んだ独自の食品と言えるでしょう」。

酒粕の利用法は?

栄養価はもちろん、文化的な意味合いも奥深い酒粕。
しかし、一般的に私たちが酒粕を利用する機会というと、粕汁や粕漬けといったものしか思いつきません。栄養たっぷりの酒粕をもっと気軽に利用する方法はないのでしょうか。
この疑問にも田熊さんは気軽に答えてくださいました。

「利用方法の前に、酒粕の種類についてお話ししておきましょう。店頭などでよく見かける板状の酒粕は、圧搾機で搾ったものをフィルターから手で丁寧にはがした“板粕”と呼ばれるもの。破砕したものや不定形のものが“ばら粕”と呼ばれるものです。さらに、酒粕と酒を練り合わせた“練り粕”、漬物用としてばら粕を練りこんで熟成させた“踏み込み粕”などがあります。また、吟醸酒の酒粕である“吟醸粕”というものもあります。吟醸粕は、普通酒の酒粕に加えてでんぷん質が多く、香りがよいのが特徴ですね」(田熊さん)。

「酒粕には、食材に風味をつける効果旨味をプラスする効果食材のにおいを抑えるマスキング効果などがあります。食材の風味付けや旨味をプラスする効果は、鍋のスープや粕汁で考えていただくとわかりやすいと思います。こうした汁物などに使う際は、板粕やばら粕が使いやすいでしょう。変わったところでは、ラーメンのスープとして利用する方もいるようです。マスキング効果の代表的なものは粕漬け(漬け床)です。魚や肉の臭いを抑えて旨味をプラスしてくれるこうした粕漬けには柔らかく塗りやすい練り粕がおすすめです」(田熊さん)。

「また、酒粕というと“冬のもの”というイメージがあります。これは新酒の時期に出回るからなのですが、実は冷蔵であれば半年、冷凍すれば一年程度は保存が可能。栄養価が高い食品ですので、うまく保存して季節を問わず楽しんでほしいですね。暑さで体力の落ちやすい夏場には、冷やした酒粕の甘酒が栄養補給などにもおすすめです」。

作ってみよう!酒粕レシピ

なお、宝酒造では、東西に調味料カスタマーセンターを設け、加工・業務用のお客様に食品分析や調理効果の検証、そしてレシピの開発などを提案しています。今回はそうしたレシピの中から、酒粕を使った一押しの料理に挑戦してみました。


酒粕があさりの旨味とマッチする「和風クラムチャウダー」

酒粕が牛乳のコクに深みを持たせたスープは、具だくさんで満足感のあるひと品です。
*和風クラムチャウダー*

<材料(3~4人前)> 
ベーコン 50g
たまねぎ 75g
ねぎ 75g
白菜 100g
にんじん 50g
セロリー 35g
※食材はすべて1cmサイズの角切り

無塩バター 20g
粉末だしの素 30g
水 570g
蒸しあさり 100g
しめじ 100g
大豆水煮 180g
酒かす(大吟醸の吟醸粕推奨) 70g
食塩 2g
こしょう 0.2g
薄力粉 35g
牛乳 150g
万能ねぎ(飾り付け) お好みで

<作り方>
1.鍋にバターを溶かし、ベーコンを軽く炒め、たまねぎ、はくさい、にんじんを加えしんなりするまで炒める。
2.①に粉末だしの素と水を加え、25分煮る。
3.②に蒸しあさり、しめじ、大豆水煮、酒粕を加え、塩胡椒で味を整える。
4.ボウルに小麦粉を入れ、牛乳を加え、泡立て器で蒸して濾す。
5.③に④を少しずつ加えとろみをつけて仕上げる。
6.器に盛り付け、万能ねぎを散らす。

コクが増した大人のスイーツ「酒粕のパンプキンプディング」

*酒粕のパンプキンプディング*

<材料(19×23cmのバッドで4~5人分)>

【プディング】
かぼちゃ 500g
牛乳 450g
グラニュー200g糖
卵 6個
卵黄 4個
酒粕 50g
45%生クリーム 50g
バニラエッセンス 2g
ブランデー 5g
無塩バター 適量

【キャラメルソース】
グラニュー糖 300g
熱湯 150g
レモン 5g
水 150g

<プディングの作り方>
1.かぼちゃはスプーンで種をかき取り、大きめのくし型に切り、皮付きのまま蒸気の上がった蒸し器に入れ、15〜20分蒸す(竹串がすっと入るくらいが目安)。
2.①の蒸したかぼちゃは粗熱を取ってからスプーンで身を取り、裏ごしする。
3.牛乳を温め、②のかぼちゃとグラニュー糖を合わせてミキサーにかけ、ボウルに移して、牛乳、卵、卵黄、酒粕、生クリーム、バニラエッセンス、ブランデーを加え、濾し器で濾す。
4.バッドの内側にバターを薄く塗り、③のプティング種を8〜9分目まで注ぎ入れる。
5.天板に④を並べ、湯を天板の半分くらいまで注ぎ、160℃のオーブンで40分間焼き、冷蔵庫で冷やし、キャラメルソースを流す。

<キャラメルソースの作り方>
1.鍋にグラニュー糖・熱湯を入れ、グラニュー糖が溶けてきたらレモン汁を加え飴色になったら火からおろして水を加える。

粕汁以外にも大活躍! 便利な酒粕

「料理にもいいですが、手軽な栄養補給としても酒粕は便利。私は毎日ひとつまみほどをそのまま食べています」と田熊さん。
今まで粕汁くらいしか利用方法が思いつかなかった酒粕ですが、その栄養価や食材を美味しくする効果に着目すると、もっと活用しなくてはもったいない気分になってきました。皆さんも、ぜひ酒粕を使っていろんな料理にチャレンジしてみましょう!

▽酒粕の魅力を知っていただいた後は「日本酒の造り方」に関する記事をどうぞ

・【日本酒を知る】白壁蔵①:今更聞けない、日本酒の基本の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/sake-shirakabegura1

・【日本酒を知る】白壁蔵②:知っていたら自慢できる?日本酒造りの噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/sake-shirakabegura2

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