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【日本酒を知る】白壁蔵①:今更聞けない、日本酒の基本の噺

【日本酒を知る】白壁蔵①:今更聞けない、日本酒の基本の噺

「ほんとうに旨い酒を造る」――白壁蔵では、杜氏の技術と科学的アプローチを融合することで、再現性の高い、高品質の日本酒を製造しています。日本酒の製造工程を知る前に、まずは日本酒の基本的な情報について改めておさらいしましょう。

気温がぐっと低くなる冬から春にかけては新酒の季節。
造り酒屋さんに青々とした杉玉※がかけられ、「新酒できました」のポスターが貼られる12月から3月にかけては、日本酒の旬と言えます。
しかし、ひと口に日本酒といってもその世界は実に奥深いもの。
「どんなお酒でも美味しければいい」というのは至言ですが、普段何気なく飲んでいるお酒の壜やラベルに書かれた意味を理解するだけでも、お酒に親近感が湧きます。

そこで今回は、宝酒造で「ほんとうに旨い酒を造る」ことに情熱を燃やす神戸・灘の「白壁蔵」に向かい、酒造りのプロに日本酒のいろはから、こだわり抜いた「白壁蔵」ならではの日本酒造りについて、じっくりとお話を伺ってきました。
まずは、その初級編。日本酒の基本的な種類と特徴をご紹介します。
※杉玉:スギの葉(穂先)を集めてボール状にした造形物で、酒林(さかばやし)とも呼ばれる。日本酒の造り酒屋などの軒先に緑の杉玉を吊すことで、「今年も新酒が出来ましたよ」「搾りを始めました」という目印になる。

「ほんとうに旨い酒を造るための蔵」へ出発

松竹梅「白壁蔵」ブランドの日本酒やスパークリング清酒「澪」などを製造する、東灘区の製造拠点・白壁蔵。もともと同地では、1954年から宝酒造灘工場が稼働していました。その後の2001年、杜氏の技術を従業員に伝え「ほんとうに旨い酒を造る」と言う原点に立ち帰るための新たな蔵づくりがゼロから行われ、この「白壁蔵」が誕生したのです。

「白壁蔵」は、人の手による昔ながらの酒造りを重視しつつも、杜氏の経験と勘に頼っていた従来の酒造原理をデータの蓄積により科学的に解明し、目標とした酒質を再現性高く造ることにこだわっています。
今回は、この「白壁蔵」工場長の碓井規佳(うすい・のりよし)さんに酒造現場の案内と、日本酒についてレクチャーしていただきました。

【日本酒の種類】純米・吟醸・大吟醸、それぞれの違いって?

「まずは、日本酒の基本。種類からお話ししましょう」と碓井さん。

「日本酒には純米、本醸造、吟醸、大吟醸などの種類がありますが、これらを知るために重要なのは『精米歩合』『醸造アルコール』の添加です。それさえ押さえておけば、見分けは簡単につきますよ」と説明がありました。

精米歩合とは?

白壁蔵では、精米歩合の違いが手に取ってわかるお米のサンプルを見ることもできます。 ※一般の見学受付は行っていません
酒造りでは、日本酒を造るために適した米である「酒造好適米」を削り、中心の部分を使用することがあります。この削る割合のことを『精米歩合』と呼び、「精米した後に残ったお米の割合」をパーセンテージで表現しています。たとえば、精米歩合70%なら、お米の表面を30%削っており、30%なら米全体の70%を削って使うことになります。

精米を行う理由は、すっきりとした味わいで香りの高い日本酒を造るため。
お米の表面に近い部分には脂質やタンパク質が含まれており、これらが時に雑味になってしまうこともあるため、精米によって取り除きます。

醸造アルコールとは?

日本酒の醸造工程で生まれるアルコールとは別に、添加されるアルコールのこと。サトウキビなどから作られた無味無臭のアルコールです。
日本酒のいくつかには醸造アルコールを添加することがありますが、この工程によって吟醸酒や大吟醸酒の持つフルーティーな香りが一層膨らみ、また、口当たりもさらりとしたものになります。

日本酒の種類

<純米酒>
米と米麹と水だけで造った日本酒のことで、醸造アルコールの添加は行われないほか、精米歩合なども規定されていません。
旨味とコクが豊かに残っているのが特徴のお酒です。

<本醸造酒>
精米歩合が70%以下で米・米麹・醸造アルコールで造った日本酒。きりっとした辛口のものが多く、冷やしても常温でも、燗酒にしても美味しくいただけます。

<吟醸酒>
精米歩合が60%以下の日本酒で、磨いた白米を低温でゆっくりと醸造させることによって豊かな香りを引き出す「吟醸造り」で造られたお酒を指します。
吟醸酒にはフルーツを思い起こさせる、吟醸香が感じられます。これは、酵母が酢酸イソアミル(バナナのような甘みのある奥深い香り)、カプロン酸エチル(リンゴのような甘酸っぱくみずみずしい香り)などの特殊な成分を生成することで感じるものです。
また、吟醸酒の中でも醸造アルコールを添加しないものを“純米吟醸酒”と呼びます。

<大吟醸酒>
精米歩合が50%以下の日本酒は大吟醸と呼ばれます。米の半分以上を磨く、まさに特別なお酒。より一層香り高く鼻に届く吟醸香と、さらりと飲みやすい口当たりが楽しめます。
大吟醸で、醸造アルコールを添加していないものを“純米大吟醸酒”と呼びます。

酒好きでもなかなかわからない?生酛・山廃酛の違いとは

居酒屋などでお酒のメニューを見ると「生酛(きもと)」や「山廃酛(やまはいもと)」と書かれたお酒が並んでいることがあります。
「お酒好きでもこの二つの違いを明確に言える人は多くないのでないでしょうか」と、碓井さん。「生酛」と「山廃酛」の特徴と、白壁蔵でも造られる「速醸酛」について教えていただきました。

酵母が生育し、発酵し始めた酒母

生酛とは?

伝統的な日本酒造りの方法で、酛(酒母)造りの際、酒母の中にいる多種多様な雑菌を、乳酸菌が出す乳酸を使って殺菌し、酵母がアルコールを作り出しやすい環境にすること。また、酒母を仕込んだ後に蒸し米を櫂(かい)と呼ばれる棒ですりつぶす「山卸(やまおろし)」という工程を経るのが特徴です。
現在では、酒母造りには純粋に培養された乳酸菌も使われますが、かつての伝統的な手法では、杜氏の経験によって微生物や菌のはたらきをうまく活用し、山卸によって酒母に入れることで酒に豊かな風味や個性を与えていたと言います。

山廃とは?

山廃とは簡単にいうと、生酛造りの工程のうち「山卸」の工程を省いたもの。“山”おろしを“廃”したので、「山廃」です。江戸時代までは山卸を行うのが酒造りの主流でしたが、明治時代になって米をすりつぶさなくても酒造りができることがわかり、これが一般的に広まったのが山廃仕込み(山廃酛)です。

速醸酛とは?

生酛や山廃酛では、乳酸菌が生み出す乳酸を使って酒母を作っていました。しかし、さらに時代を経ると乳酸菌を使わずとも、純粋な乳酸を作り出せるようになり、酒母造りの段階において乳酸菌由来ではない乳酸を添加する手法も生み出されました。これを「速醸酛(そくじょうもと)」といいます。
速醸酛のメリットはなんと言っても酒造りの時間短縮。生酛では乳酸菌が乳酸を作り出すため、酒母造りに30日以上かかるものが速醸酛であれば14日ほどでできてしまいます。

ちなみに、生酛・山廃酛・速醸酛での味の違いは、生酛・山廃酛はコクがあり複雑な味であるのに対し、速醸酛はさっぱりとした味わいになるのが特徴です。

造り方を知れば、さらに酒が美味しくなる?

碓井さんのお話を聞きながら改めて感じるのは、日本酒造りの多彩さ。
米の磨き方や酛の作り方、仕込み方まで実に多彩で工夫が凝らされていることがわかります。星の数ほどある日本酒がそれぞれ個性を持っているのも納得です。

皆さんも、酒屋さんで日本酒を見かけたら、じっくりとそのラベルを眺めてみてください。書かれている言葉から、日本酒造りにかけた人々の思いが感じ取れるかもしれませんよ。

日本酒の基本をレクチャーしていただいた私たちは、碓井さんの案内で白壁蔵の中へ。
次回はいよいよ、日本酒造りの全工程を辿りながら「ほんとうに旨い酒を造る」ことができる、白壁蔵の秘密に迫っていきます。ぜひご期待ください。


▽「白壁蔵」について

白壁蔵 公式Webサイト「shirakabegura.jp」
https://shirakabegura.jp/ 

▽日本酒造りに関するその他の噺

・自然と人の努力が生んだ、酒造好適米・山田錦の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/a82EE

・改めて見直す、お酒と氷の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/ua1CR

・秋に円熟する日本酒「秋あがり」と灘の名水の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/2VQmN

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