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新元号に乾杯!人とも神様ともつながり合える“お酒”の噺

新元号に乾杯!人とも神様ともつながり合える“お酒”の噺

2019,5,1 更新

万葉の時代から、お酒は人と人をつなぐコミュニケーションツール

2019年5月より「令和」へと改まった元号。
発表会見でも紹介されたように、この「令和」は万葉集の『初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やはら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の香(かう)を薫らす』が典拠となっています。貴人から役人、防人(九州を守る兵士)まで、様々な身分の人々が詠んだ歌が収められている万葉集。万葉集編纂の頃は、中国などから酒造りの技術が渡来し「国酒」として国内での生産が本格化した時代でした。そんな背景からか、万葉集の歌の中にはお酒に関するものがいくつもあるのです。先述した『初春の・・・』の歌の作者である、大伴旅人は大の酒好きで『なかなかに人とあらずは酒壷になりにてしかも酒に染みなむ』(半端に人間でいるよりもいっそ酒壺になってしまえたら、酒に浸っていられるのに)なんて歌を残しているほどです。
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他にも、酒の歌には

『味飯(うまいひ)を水に醸(か)みなし吾が待ちし代(かひ)は曽(かつ)て無し直(ただ)にしあらねば』
(あなたのために良い米と水を口噛みにしてお酒を作っていたのに、あなたが来ないならなんの甲斐もありません)

『酒杯(さかづき)に梅の花浮べ思ふ達(どち)飲みて後(のち)には散りぬともよし』
(梅の花を酒杯に浮かべて友達と飲めたら、あとは梅が散ってもいいよ)

などがあります。いずれも誰かと一緒にお酒を飲みたいという心情がうかがえるもの。この頃からすでに、お酒は人と人をつなぐコミュニケーションの道具だったのですね。

もともとお酒は、人と神様をつなぐもの

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現在では親しい人々と酌み交わすことの多いお酒ですが、お酒が生まれた当初は「神様とのコミュニケーション」を取るためのものでした。
これは、古来より神事において、神様に備えたお神酒(みき)と神饌(しんせん:供物)を、人がいただくことで神様の力を分けてもらい、その教えを聞くことができるという信仰によるもの。なによりお酒が心地よく回ってきたあの不思議なほろ酔い心地は、昔の人々にとっては神様に近づいた証であったのかもしれません。
この神とつながることができる酒はありがたいものであり、長時間にわたって大切な食物を醸して作る貴重品であったため「ハレの日」を選んで特別に飲まれるものでした。
今でも、お祝いの日や記念日、祭りなどでお酒を飲むのはこうした風習の名残と言えるでしょう。

インターネットで飲み会??時代に合わせて変わる飲みニケーションの形

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さすがに現代においては、お酒で神様とつながろうという人は多くありませんが、それでもお酒の持つ不思議な力は今も人と人を結びつけてくれます。例えばお酒が緊張やストレスを緩和することで、素直に自分のことが話せたり、場の空気が円滑になったりといった経験は誰にもあることでしょう。特に、ビジネスの場では昔から「飲みニケーション」と呼ばれるほど、お酒はコミュニケーションツールとして重宝されてきました。
そんな「飲みニケーション」ですが、近年では働き方改革の影響を受けて、徐々に変化しているそう。例えば、終業後ではなく次の日にお酒が残らないための“ランチ飲み会”、リモートワークをする仲間とインターネットを介して飲む“オンライン飲み会”が注目されたりと、時流を反映した一風変わった飲み会の形が増えてきているそう。
ただしインターネットや就業時間など働き方の形は変わっても、親しい人が時間を共有する際、その中心にお酒があるという事実は、やはりどんなに時代を経ても変わらないことのようです。

古(いにしえ)からのコミュニケーションツールで新時代に乾杯!

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天皇陛下の生前退位によって、あたらしくはじまる「令和」の時代。しかも、改元の日はゴールデンウィークの真っ只中!
この記念すべき時代の始まりは、やはり家族や親しい友人と一緒に、お酒を酌み交わして祝いたいもの。万葉の時代から、今日まで数限りない「ハレの日」に祝杯をあげてきた先祖にならって、私たちもいつもとはちょっと違う、特別なお酒で乾杯してみませんか?

ちなみにフランスでは、戴冠式や国王の受洗式の慶事に際してシャンパンを飲むのが通例。同じく日本では新しい年号に変わるなど祝賀の際に、スパークリングワインならぬスパークリング清酒がぴったり! 炭酸の爽快な刺激は、乾杯の喉を潤すのにも最適。
もちろん、スパークリング清酒はほんの一例です。例えば全国有数の日本酒の産地である京都では、コミュニュケーションの輪をもたらした“日本酒”による乾杯の習慣をもっと広めるため、“日本酒で乾杯しよう”と定めた「乾杯条例」を平成25年1月15日に公布しました。日本酒の普及を通して日本文化や伝統産業への理解やすばらしさを広める取組のひとつともなっています。その後「乾杯条例」は全国各地へと広がり、各自治体それぞれの地域の地酒で乾杯しようという機運が、徐々に高まりを見せているのだとか。数々の地酒自慢を競う日本ならではのこの条例、令和を祝し、お酒を飲む時には皆さんの住む土地のお酒を確認して、郷土愛ならぬ郷土酒愛を深めてみるのも面白いかもしれませんよ。

一緒に飲む顔ぶれによっても、お祝いにぴったりなお酒は様々に変わるはず。
さぁ、あなたにとってお祝いにふさわしいお酒を用意して、「新しい時代のはじまりに、乾杯!
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https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/
   

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