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7月10日は「納豆の日」― 発酵食の定番・納豆と日本酒を愉しむ噺

7月10日は「納豆の日」― 発酵食の定番・納豆と日本酒を愉しむ噺

2023,7,10 更新

京都を拠点に第一線で活躍されている匠が、お酒の楽しみ方を語るシリーズ。今回は、7月10日の「納豆の日」にちなみ、「発酵食堂カモシカ」を拠点に発酵文化の普及に取り組む関恵(せき・めぐみ)さんに、発酵食である納豆と日本酒の合わせ方についてお聞きしました。

共通項は「発酵」。納豆にひと手間加えて、日本酒のお供に

7月10日は「納豆の日」です。
京都市右京区にある「発酵食堂カモシカ」の代表・関恵さんは、京都を拠点に活躍する発酵食の第一人者。
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「“ご飯のお供”という印象が強い納豆も、ひと手間加えることで、日本酒にぴったりのツマミになります。発酵食である納豆に、発酵の力で造られた日本酒が合うのは必然ですね」と関さんは語ります。
前回の「味噌と日本酒」に続き、今回は納豆と日本酒の相性ついてお話しいただきました。

納豆は、蒸した大豆に納豆菌をまぶしてできる発酵食品です。納豆菌は乾燥や熱に強く過酷な環境でも生き延びることができる菌で、生きたまま腸まで届くため、健康に良いとされています。
しかしその強さ故に、納豆菌がお酒の麹菌の繁殖を妨げる可能性があり、日本酒作りの現場では懸念される菌でもあります。
酒造りのシーズン中、杜氏(とうじ)たちは納豆を食べることを控え、納豆を口にするのは酒造りが終わってから。そんな杜氏をねぎらうため、酒造りが終わる頃に、納豆を贈るケースもあるのだそうです。

一見、敵対関係にあるように思われる納豆×日本酒ですが、発酵食特有の「複雑で深みのある味わい」を持つ両者が合わない筈はない、と関さん。
「納豆も日本酒も、微生物の力を活かしてつくられています。微⽣物が⽣み出す命をいただくこと で、私たち⼈間の命が作られていると⾔えます。⽇本⼈が発酵⾷や⽇本酒を好んで⼝にするの は、美味しいからだけでなく、健康な⼼⾝をキープするためでもあると思います」。

「納豆に一番合うのは、白ごはんと味噌汁でしょう。でも、納豆の旨みは、お酒とも最高に合います。その相性の良さを感じていただける納豆料理を考えてみました」。
ここで、関さん考案の「日本酒に合う納豆料理」をご紹介しましょう。

豊かな風味の「一休寺納豆」×複雑な味わいの日本酒

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関さんが惚れ込んでいる発酵食の一つである「一休寺(いっきゅうじ)納豆」。

私たちが普段食べている納豆とは異なり、京都府京田辺市にある「一休寺」で500年以上にわたり自家醸造されている大豆発酵食品です。
蒸し大豆・はったい粉・麹(こうじ)を合わせて発酵させ、天日干しと攪拌(かくはん)を繰り返し、約1年かけて作られます。

「一休寺納豆」は、濃い味噌のような味わいが特徴。京都の大徳寺納豆や中国の豆豉(とうち)に似ており、一粒の中にコクや酸味、旨みがギュッと詰まっています。
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この「一休寺納豆」を使い、お酒に合う一品として作っていただいたのは「テンペの一休寺納豆乗せ」。
テンペは、インドネシアで400年以上前から食べられている大豆の発酵食品です。

「テンペの一休寺納豆乗せ」は、多めのごま油で焼いたテンペの上に一休寺納豆を乗せた、二つの大豆発酵食の組み合わせ。全体に振りかけた粒の塩こしょうがアクセントです。

関さんが「テンペの一休寺納豆乗せ」のお供に選んだのは、松竹梅白壁蔵<生酛(きもと)純米>。酵母や乳酸菌など、微生物の働きを巧みに利用して造る日本酒の伝統製法「生酛造り」による純米酒です。

「お米そのものの美味しさがしっかり感じられるのに、すっきりとしたきれいな味わいの日本酒。いろんな菌の重なりが感じられる複雑味があります。
冷やしていただくのがおすすめですが、冬はぬる燗にしてもいいかもしれませんね」。

一休寺納豆×テンペに、生酛造りの日本酒の複雑な味わいを重ねることで、発酵の重層感が楽しめる組み合わせです。

新提案! 炭酸代わりのスパークリング日本酒「澪」でご褒美酒が誕生

「麹納豆」は、納豆と米麹、みりんや料理清酒、にんじん、昆布とともに熟成させた発酵食品です。
カモシカの麹納豆は、臭みのない「あん」状で、納豆の旨みだけを凝縮した逸品。そのままでも美味しくいただけますが、冷奴に乗せたり、そうめんやパスタと和えたりと、さまざまなアレンジが可能な人気商品です。
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こんがりと炙った油揚げと麹納豆の組み合わせは、「発酵食堂カモシカ」の定番メニューですが、さらに上から自家製の甘酒ラー油をかけることで、しっかりとした味付けの一品に。これで、お酒が進むこと間違いなし!

「旨みが濃いので、シュワッとした発泡性のお酒が合いますね」という関さんのおすすめは、スパークリング日本酒「澪」シリーズ。
今回は、甘さ控えめの「澪(みお)<CLEAR>」を合わせました。「澪」の原材料は、米と米麹のみ。香料ではなく、酵母の力でフルーティーな風味を出しているというから驚きです。

「私は、お米に由来するものが特に好きなんです。白ごはんも日本酒も、いただくとホッとするのは日本人だからでしょうか。発泡性のお酒の中でもお米うまれの澪は特に好きです」。
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「澪<CLEAR>」のアレンジメニューとして提案していただいたのは、関さんお手製の青梅のシロップ漬と「澪<CLEAR>」の組み合わせです。
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「炭酸の代わりに澪<CLEAR>を注ぐことで、とても奥深い旨みが楽しめる贅沢なサワーになります。私は、お気に入りの吹きグラスにたっぷり注いで飲むのがお気に入りです」。
「このお酒は、頑張った自分へのご褒美ですね。澪を使うことで、炭酸では出せないお米由来の深みが出て、リッチな気分になれると思います」。

美味しさと健康志向で、世界が発酵食に注目

近年世界では、その複雑な味わいと健康志向の高まりから、発酵食がトレンドになっています。

2022年の春、京都市内のホテルで、デンマークの高級レストランがコースに発酵食を加えたことも話題になりました。またフランスやイタリアでは、発酵食が腸内環境を改善することで健康寿命を伸ばすということにも期待が高まっているそうです。

海外で「発酵食をもっと知りたい、食べたい」というニーズが高まっていることを受け、関さんは納豆をはじめとした発酵食を世界へ発信するための活動を始めています。
最近では台湾の発酵専門家とコラボレーションでワークショップを開催しました。

そんな折、関さんは、「日本への普及も十分ではないのに、なぜ海外に出ていくのか」と尋ねられたことあったのだとか。
その答えは「世界中に待っている人がいるから」。
関さんは、日本の発酵食への期待値が、今とても高まっていると感じているそうです。
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また関さんは、「言葉が通じなくても、発酵食があれば世界の人たちとつながることができる」とも語ります。

ここ数年、欧米やアジア各国で、スパークリング日本酒「澪」をはじめとした日本酒の人気が高まっているのは偶然でないのかもしれません。

まずは7月10日・納豆の日に、定番の発酵食である納豆を。
納豆にちょっといい日本酒を合わせて、発酵が織りなす美味しさや、世界に広がりつつある発酵文化にも想いを馳せながら、ワンランク上の晩酌を楽しんでみてくださいね。

<取材協力>

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発酵食堂カモシカ
住所:京都市右京区嵯峨天竜寺若宮町17-1
営業時間:11:30~17:00(ランチL.O.15:00)
定休日:日曜・月曜
URL:https://kamoshika.kyoto.jp


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●松竹梅白壁蔵「澪」<CLEAR>
http://shirakabegura-mio.jp/

●松竹梅「白壁蔵」<生酛(きもと)純米>
https://shirakabegura.jp/
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「匠×酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

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