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漬物屋お勧めの漬物と酒で、夏の晩酌を楽しむ噺

漬物屋お勧めの漬物と酒で、夏の晩酌を楽しむ噺

2022,8,5 更新

京都をよく知る酒好きの人物に、その人だからこそ知っている酒の楽しみ方を語っていただくシリーズ。今回は、「京つけもの もり」代表の森義治(もり・よしはる)さんに、酒のアテにピッタリな夏の漬物について教えていただきました。

酒と漬物の共通点は「米」

日々の食卓に、お弁当に、お酒のお供に……。あると安心で、どこか頼もしい存在でもある「漬物」。

京都では茶道が発達した室町時代、お湯やお茶の温度を加減するのに漬物が使われていました。また、お香をたいてその種類をききわける「聞香(もんこう)」の際に、舌や鼻を休ませるために食べられていたそうです。

「京漬物」とは、京都の漬物店が漬けた漬物の総称。素材の味を生かすため、塩加減が薄めなのが特徴です。
京都の三大漬物は「しば漬」「千枚漬」「すぐき」。お土産や贈答品としても人気ですが、これら漬物は京都人も好んでよく食べています。
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昭和37年創業、京都市右京区西大路三条に本社がある「京つけもの もり」。
2代目の森さんは、「おいしい漬物を作るには、おいしい野菜から」という先代の教えを受け継ぎ、亀岡にある2町(6,000坪)の自社農場で育てた野菜で漬物を作り続けています。
直営店は京都市内を中心に15店舗あり、オンラインショップも運営しています。

漬物の本質は「ぬか漬」

もりでは、浅漬・奈良漬・キムチなど、さまざまな種類のお漬物を製造していますが、森さんが「漬物の本質」と語るのが「ぬか漬」です。

ぬか漬の歴史は古く、それは「ぬか床」の歴史でもあります。

玄米の外側の茶色い部分が米ぬかと呼ばれる部分。
江戸時代に、玄米の表面を削ってできる白米を武士が食べるようになり、白米はやがて庶民にも広まりました。
一方で米ぬかが大量に余り、塩などを入れて活用するようになったのが、「ぬか床」の始まりです。これに野菜を漬けて発酵させたものが、今にも伝わる昔ながらの「ぬか漬」です。
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発酵食は健康や美容に良いということは古くから知られていますが、ぬか漬にはGABA(ギャバ/γ-アミノ酪酸)という成分が多く含まれており、GABAには血圧が高めな方に適した機能があることが報告されています。
そのことから、もりでは、独自製法によるぬか漬「森の恵み」GABAシリーズを新たに開発し、漬物店としては国内初の「機能性表示食品」の認証を取得して販売しています。

「ウチのGABAシリーズのぬか漬を食べると血圧が上がりにくいという認証が得られました。これは、塩分が血圧を上げると思われている漬物業界において、画期的なことなんです」。

「森の恵み」GABAシリーズをお中元やお歳暮などのギフトで利用されたお客さまからは、「相手の健康を気遣った贈り物ができる」と、喜ばれているそうです。

8月の漬物屋は「お盆を支える裏方」

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8月の漬物は、水分をたっぷりと含んだ夏野菜が中心です。
森さんは、夏場は朝4時50分に起床。日が昇らないうちから亀岡の農園に行き、農作業に励むこともしばしばです。

「手をかけて育てるからには、自分の子どもにも安心して食べさせられる野菜を作りたい。お客さまにも安心・安全な漬物を食べていただきたい。そのため、農薬は必要最低限に抑える、腐葉土は慣行農法(※)の約2倍使用するなどで工夫しています」。

※慣行農法:法律で認められた農薬・肥料を基準の範囲内で使う一般的な栽培方法

森さんは、幼い頃から昆布をハサミで切るなど漬物作りの手伝いをし、お盆にも休みなく働いていた父母の姿を見て育ちました。
7〜8月は漬物屋にとって、最繁忙期。畑の夏野菜も収穫のピーク、お中元はもちろん、お盆の帰省みやげなどで需要が増え、休んでいる暇はありません。
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「ご先祖さまは8月に入ると家に戻って来られるから、墓参りに行けなくても、私たちが働いている姿を見てくれていると思います。8月16日の五山の送り火で、ご先祖さまは、またあの世に帰って行かれるんやけどね」と語る森さん。
私たちがお盆の里帰りで手みやげを求めたり、家族が集まって精進料理を食べたりできるのは、森さんのような「お盆を支える人」がいるからなのですね。

そしてお盆が終わると、畑の夏野菜は収穫期を終え、秋冬野菜の準備に入ります。
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「お客様にお金を頂戴して、『おいしかった!』とお礼を言ってもらえる。こんなに嬉しいことはない」。
森さんの原動力は精魂込めて作った漬物を喜んでくださる“お客さまの笑顔”なのです。

夏にこそいただきたい漬物と酒

お酒が大好きという森さんは、お酒を365日楽しんでいるのだとか。
自宅では缶ビールを飲んでから、焼酎や日本酒へと続くそう。同じくお酒好きの奥様と一緒に酒を酌み交わしながら夕食を食べ、その後は晩酌タイムに入ります。

お酒を美味しくしてくれるのは、なんといっても楽しいおしゃべり。自宅では奥様と、宴会では仲間たちと。
「酒は、誰と飲むかがとても大切!」、そう笑顔で語る森さんは、いつも誰かとワイワイ話しながらグラスを開けるのが何よりの楽しみだそうです。
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森さんの今宵のお供は全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」です。麹まで芋で作った芋100%の焼酎は、ロックなら芋本来の甘い香りと旨味をしっかり味わえ、水割りならすっきりと芋の香りを楽しむことができます。

蒸し暑い夏の夜は、しっかり冷やした軟水と「一刻者」を6:4で割った水割りが定番。森さんは、氷が溶けにくく時間が経っても冷たさが持続する、燕三条(※)のチタンタンブラーを愛用しています。

※燕三条(つばめさんじょう):新潟県の中央に位置する刃物・金物や洋食器の生産が盛んなエリア
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「一刻者」に森さんが合わせたのは、爽やかな香りが楽しめる漬物3種。
「酒に、漬物が合わないわけがない!」
決まってアテに漬物を選ぶ森さんは、こう断言します。

まずは水割りでゴクリと喉を潤し、「梅香漬(ばいこうづけ)」をカリッと一口。天日干しにしたたくあんをカツオ味の国産梅肉にからめた優しい酸味が、すっきりとした「一刻者」に絶妙にマッチします。

あっという間に水割りを飲み干した森さんは、氷の残ったタンブラーに再び焼酎を注ぎ入れ、次はロックでいただきます。
アテは、鼻にツンと抜ける辛さが大人好みの「わさび風味 長芋」と、皮まで柔らかい若いカボチャを漬物にした「浅漬かぼちゃ」。漬物をコリコリとかじりながら、「一刻者」を楽しみます。

「妻との晩酌に漬物は欠かせません。芋の甘い香りを楽しめる『一刻者』には、塩分がほどよく感じられるものや、酸味がある漬物がよく合いますね。香りや食感が異なるお漬物を組み合わせると気分が変わり、お酒が進みます」。
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次に森さんが選んだのが「松竹梅『白壁蔵』<生酛(きもと)純米>」。
酒どころである神戸・灘(なだ)で、江戸時代から続く伝統製法「生酛造り」による純米酒です。

「米から造られる日本酒には、やはり米由来のぬか漬が合いますね。酒のアテとしていただくと、日本はコメ文化やなあと実感します。去りゆく『夏』を感じるお盆は、『夏野菜』の漬物と合わせたいですね」と、森さん。

パリッとした歯ごたえの「味わい漬うり」、薄味仕立ての「賀茂なす」。どちらの野菜も自家農園で栽培したもの。また、きゅうりと、茄子、みょうが、しそ、生姜を一緒にあっさりと漬けた「しば好み」は、ひと口でさまざまな香りを楽しめる創作漬物です。
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「日本酒は、季節を問わずキリッと冷やした冷酒が好きです。
白壁蔵<生酛(きもと)純米>はお米の旨みがしっかり残っていますね。ふだんは辛口を飲むことが多いのですが、このお酒は口当たりがまろやかでありながらキレがあり、かなり好みの日本酒です。精米歩合(※)70%と聞きましたが、きれいな味わいなので、もっと米を磨いているのかと思いました。漬物の繊細な味をきちんと感じられる、いい酒ですね」。

※精米歩合(せいまいぶあい):日本酒造りに使用する玄米を磨いて残った割合

「お酒とお漬物の組み合わせは無限にあります。京都の暑い夏、畑仕事や漬物作りで汗をかいて帰宅したときには、とくに酒と漬物が恋しくなります」。

夏の夜長にいただく酒の、最高のアテともいえる漬物。
皆さんも是非お好みの漬物を見つけ、ご自宅での晩酌をお楽しみください。

<取材協力>

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京つけもの もり 本社三条店
住所:京都市右京区西院金槌町15-7
URL:https://www.kyoto-mori.com
▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/

●松竹梅「白壁蔵」<生酛(きもと)純米>
https://shirakabegura.jp

▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

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