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大の酒好き、祇園祭の囃子方が京弁当をアテに飲む噺

大の酒好き、祇園祭の囃子方が京弁当をアテに飲む噺

2021,3,5 更新

京都をよく知る酒好きの人物が、毎回京都の名所や歳時記とともに酒の楽しみ方を教えてくれる新シリーズが始まります。シリーズ初回となる今回は、祇園祭で囃子方(はやしかた)※をつとめる北村匠海さんが、毎年訪れるという桜の名所の一つ岡崎エリアの花見コースについて語ったあと、京弁当をアテに酒を味わいます。

※囃子方とは、鉾の上から「コンチキチン」で有名な祇園囃子の音を奏でる人のこと。祇園祭になくてはならない存在です。

囃子方も酒好きも、春は忙しい

京都の3大祭の代表格ともいえる、祇園祭。その囃子方を13歳から行っている北村匠海さんは大の酒好きです。老舗料理屋に生まれたこともあり、20代の頃から晩酌を覚えました。
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日本酒や焼酎がとくに好きで、サラリーマンになった現在も、仕事終わりにどの酒に何の料理が合うかを自宅で色々と試しているそう。

いかにも京都らしい育ちの北村さん。毎年春には京都の桜の名所に必ず訪れ、その場で酒を楽しみます。地元京都観光は、酒の次に好きなのだそうです。
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とはいえ、囃子方にとって3月は、7月の祇園祭に向けて初めての練習会が始まるとき。
現在はコロナ禍で人数を分けて練習しているものの、毎年春は忙しいシーズンです。
巡行で奏でる曲は各山鉾でなんと30曲以上もあり、それらを全部マスターするのは、好きでないとつとまりません。

しかし、酒好きの北村さんにとっては、花見も酒を美味しくさせてくれる大切な行事です。毎年桜を愛でた後、料理屋の弁当を持ち帰り、うまい酒に合わせて家で一献といくのが恒例なのだとか。
今回は、一足先に花見気分。これからの花見シーズンを意識して、北村さんお気に入りの花見コースを教えてもらったあと、いつもの春と同様に、弁当と酒を味わうことにしました。

早咲きの岡崎。大鳥居は撮影スポット。

酒の楽しみは取っておき、まずは北村さんおすすめの花見スポットを教えてもらいました。
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毎年早々に咲き出すのが、岡崎エリアの桜。約90本のソメイヨシノが廃線跡に咲き誇る「蹴上(けあげ)インクライン」の桜は、やはり、最初に観に行きたいところなのだとか。
「明治時代に完成した舟を運ぶ鉄道が、戦後に運転休止になり、存在感をかもしています。趣深いですよ」と、北村さんが感慨深く語ってくれました。
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そのあとは線路沿いをゆっくりと歩き、平安神宮の大鳥居に向かいます。
「鳥居と一緒に咲くソメイヨシノは、一番の撮影スポットです。私も毎年写真を撮っています」。
北村さんにとって平安神宮は、美しい桜の名所というだけでなく、また特別な場所なのだそう。

祇園祭で自身が奏でる能管(お能のときに吹く横笛)を、いつも見に来てくれる3つ上のお姉さんが、結婚式を挙げた場所。桜を眺めていると、お姉さんと一緒にその日飲んだ枡酒や料理のことを思い出すそうです。 
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岡崎の疎水沿いに続く桜も圧巻で、水面に映る桜も楽しめます。

竹籠弁当は、酒のアテに最適

ここからが、北村さんにとって何よりのお楽しみです。大好きな酒と料理屋の弁当を花見気分で味わいます。
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今日選んだ弁当は、竹籠に入ったもの。容器も情緒深く、色とりどりの食材も、その種類の多さも京都らしい一品です。桜の包み紙を開けると、竹籠いっぱいに詰められた心尽くしのお料理。どの酒と合わそうか……と考え、北村さんが選んだ酒は2種でした。

京料理の贅沢な一品は、日本酒と。

まず、北村さんが選んだのは、特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分。フルーティーで華やかな吟醸香とすっきりとした味わいが特徴の日本酒です。
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北村さんは早速、ほろ苦い菜の花のおひたしと合わせてみました。
上品できれいな味わいの大吟醸は、鰹出汁が利いた菜の花のおひたしにぴったり。思わず「めちゃくちゃ美味しいです!」と叫ぶ北村さん。
京料理屋のおひたしは味わいが上品で、家庭料理とはまったく違う風味なのだそう。精米歩合を39%まで磨き上げた、淡麗なこの酒だからこそ、相性がいいのですね。
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「イクラが百合根の器の上で輝いていますね。これも大吟醸に合いそうです」。
京料理の細かな気配りが見える盛り付けも見逃さない北村さん。
魚卵のコクがすっきりと口の中で酒と溶け合い、これがまた最高に合うのだとか。
「奈良漬も合いますね。これは酒が進みます」。
意外にも大吟醸が、奈良漬の甘味をまろやかにさせてくれるそうです。北村さんの酒好きな一面が見ていてよくわかります。
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大吟醸を飲み進めていると、「気分転換に酒器を変えるのも酒の楽しみの一つです」と北村さんは盃を変え、最後にタコの甘煮と茹で海老を合わせました。
「やはり出汁に合いますね。タコの甘煮は見た目よりもあっさりとしていて、噛むほどにタコのやわらかな甘みを感じます。そのあとに、くいと大吟醸を口に含んで飲むと美味しい。大吟醸の少し苦味ある後味がタコや海老のやさしい甘みを際立たせます」。
囃子方の飲み会に持って行きたくなる酒だと、北村さんは満面の笑みで酒を飲み続けます。

美しいあられ揚げは、ほどよい酸味に合う。

「お弁当には必ず天ぷらが入っているので、泡ものが飲みたくなるんですよね」と話す北村さん。2つ目に選んだ酒はスパークリング清酒「澪」です。
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綺麗な海老のあられ揚げと、春らしいタラの芽の天ぷらを、このスパークリング清酒でいただきます。「澪の酸味はほどよくて、口に広がる甘さもやわらかいから好きなんです。あまり飲めない姉も気に入ってよく飲んでいます(笑)」。
あぶら物が、心地よい炭酸と混ざり合い、後味がすっきりと清々しい。みるみるうちに、北村さんは「澪」を1本開けてしまいました。この酒はお姉さん宅に訪問する際、必ず持って行くそうです。

竹籠ひとつに、煮物や焼き物、揚げ物と、たくさんの京料理が詰まっているお弁当は、酒好きには最高のアテになります。

「仕出し文化の根付いた京都には、持ち帰りの弁当や出張懐石の料理屋がたくさんあります。好きな酒と合わせて、いろいろ試してみるのも面白いですよ」。
いつも京都の歳時記を身体中で感じながら、酒を楽しむ北村さん。ときどき京都のおすすめスポットと美味しい酒のお話を聞いてみようと思います。


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
・特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/daiginjo_migaki39/

・松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒
http://shirakabegura-mio.jp
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

・やすらい祭のお囃子に浮かれつつ、春の宵にお酒を一献傾ける噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/yasurai_matsuri_210402

・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/japanesefood_221104

・10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/sakeday_220930

・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭の神事とお酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gionfestival_220624

・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gionfestival_220603

・宇治の有機茶園社長が語る「新茶」とお茶割りの噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/media/works/v2/articles/240

・京都の篠笛奏者が語る花見と酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/hanami_sake_220401

・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「ひなまつり」の豆菓子と酒の噺
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・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「京都の節分と酒」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/setsubun_220203

・京都出身のアナウンサーが新年を祝い、「七草粥」で身体をととのえ、「骨正月」に向けて酒を楽しむ噺
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・京都のフリーアナウンサーが、冬の京都の風物詩「大根焚き」を語り、「蒸し寿司」を堪能しながら酒を楽しむ噺
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・京都の老舗のご主人が、紅葉を愛でながら京都中華をアテに酒を楽しむ噺
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・「鞍馬の火祭」を思いながら、京都の老舗扇子屋の主人が家呑みする噺
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・先祖をしのぶ「五山送り火」を前に、京料理の名店で一献傾ける噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gozan_okuribi_210806

・夏本番となるこの季節、祇園祭に想いを寄せつつ家呑みする噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gion_matsuri_210702

・「夏越の祓(なごしのはらえ)」を前に、陶芸家が晩酌で半年を振り返りつつ、新たな作品に意欲を燃やす噺
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・新緑の美しい季節、酒をこよなく愛する陶芸家が葵祭に思いを馳せて家呑みする噺
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