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京都出身のアナウンサーが新年を祝い、「七草粥」で身体をととのえ、「骨正月」に向けて酒を楽しむ噺

京都出身のアナウンサーが新年を祝い、「七草粥」で身体をととのえ、「骨正月」に向けて酒を楽しむ噺

2022,1,7 更新

京都をよく知る酒好きの人物が、京都の名所や歳時記とともに、酒の楽しみ方を語るシリーズの11回目。今回も、京都出身のフリーアナウンサー岩崎絵美さんに話をお聞きしました。1月の京都には、元旦に「初詣」、七日に「七草粥」、二十日に「骨正月」を行う習わしがあります。今回はそんな京都の行事に合わせてお酒を楽しみます。

新年を祝い、自宅で乾杯からスタート

岩崎さんはフリーアナウンサーであるとともに、3年前に立ち上げた簡単に着られる三部式着物を製造販売する会社「株式会社dricco (ドリッコ)」の代表も務めています。

この日は、大柄の花をあしらった艶やかな小紋の装い。
「小紋は、気取らず家で気軽に着られる着物。このまま初詣に行ってもいいですね。もちろん、これも三部式着物です」と岩崎さん。
あわいピンクの名古屋帯に水引メーカーとコラボした帯留めを合わせ、お正月らしく晴れやかなコーディネートです。
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例年、お正月は自分好みのおせち料理を手づくりするという岩崎さん。
家族全員お酒好きなので、元旦の食卓にはおせちのお重とともに酒瓶がいくつも並ぶのだとか。まずはよく冷やしたスパークリング清酒「澪(みお)」で乾杯!
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この日、岩崎さんがいただいたのは、新年の門出を祝う乾杯にふさわしい金箔入りの「澪」
<GOLD>。グラスの中を、スパークリングの泡とともにキラキラとただよう金箔が華やかです。

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仕事柄、司会者として、京都のいろいろな会合で乾杯の発声をする機会の多い岩崎さん。
「『澪』は日本酒なのに、スパークリング。和装の会合でも洋装のパーティでも重宝されて、よく乾杯に使われるんですよ。でも、金箔入りは初めて見ました!」とうれしそう。

初詣は、家族そろって下鴨神社へ

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お正月といえば初詣。岩崎さんのお宅は下鴨神社の氏子(うじこ)であるため、毎年家族そろって下鴨神社へお参りするそうです。

「御本殿の前に干支(えと)を祀ったお社(やしろ)があるので、家族がそれぞれの生まれ年にちなんだお社の前に並んでお参りし、それから御本殿へ参ります。もう毎年恒例のことですね」と岩崎さん。

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「干支のお社」とは、下鴨神社にある「言社(ことしゃ)」のこと。「大國(だいこく)さん」の愛称でも知られ、御本殿前に7つの社があります。それぞれの社に干支に対応した守護神が祀られており、徳があるとされていることから、古くから信仰されています。

お参りが終わると、境内で振る舞われている枡酒をいただくそうで、それもまた楽しみの一つです。

正月の三が日が明けたら、1月7日は「七草粥」で

ご馳走続きのお正月が一段落すると、1月7日は「七草粥」の日です。

古くは中国の六朝時代(3~6世紀)、人日(じんじつ)の節句(旧暦1月7日)に七草粥を食べたという記録があります。また日本でも、万葉時代から年初の野に出て芽を摘む「若菜摘み」の習慣があり、それが合わさり七草粥になったとも言われています。

まだ寒さの厳しい春先に芽吹いた野草には力強いパワーがあり、それをいただくことで邪気払いになるとも信じられてきました。さらに現代では、正月のご馳走で疲れた胃腸を休める意味合いも加わりました。
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春の七草とは、セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロの7種。このうちスズナはカブ、スズシロはダイコンの別名です。
七草粥には、7種すべての野菜を使わなくてもよいものの、近年はスーパーで春の七草セットとして簡単に手に入るようになりました。

七草は前の晩に茹でて刻み、翌朝のお粥に入れる

「お正月でお酒を飲み過ぎた胃腸を休めるのに、ちょうどよいタイミングですね」と言いながら七草粥をいただく岩崎さん。
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七草は茹でて刻みますが、そのうち、スズナ(かぶ)とスズシロ(大根)だけは根を薄切りにして下茹でし、翌朝、それら七草をお粥にのせ、混ぜていただきます。
「わが家では、お正月料理用に、年末にお出汁をたくさんとって保存しているのですが、七草粥でそれを毎年使い切るんです。だからわが家の七草粥は、お出汁の味が効いています」。
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実は1月7日は岩崎さんの誕生日!
七草粥で胃を休めつつも、誕生日のお祝いでご馳走を食べて、ついつい大好きなお酒を飲みすぎてしまうこともあるそうです。

1月20日の「骨正月」は、あら炊きと酒で骨休め

歳時記では1月20日のことを「二十日正月(はつかしょうがつ)」とも呼びます。かつてはこの日は正月の祝い納めをする節目の日でした。

冷蔵庫のない時代、保存のきく新巻き鮭や塩ブリを年末に買って、風通しのよい場所に吊るし、正月の間はこれらを食べて過ごしました。20日頃になると魚の身は食べ尽くされ、中骨やかま(魚のえらの下の、胸びれのついている部分)などのあらだけが残ります。そして、これらを使って粕汁や煮物を作って食べたことから二十日正月は「骨正月」とも呼ばれ、京都ではまだ馴染みのある言葉として伝わっています。
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骨正月が終わると、新春気分も少し抜けて、お正月が終わりを迎えます。この日の岩崎さんは、ブリのあら炊きに全量芋焼酎「一刻者」のロックを合わせました。

「あら炊きには思い出があるんです」と言う岩崎さん。
娘さんが幼稚園に通っていた頃、懇意にしていた魚市場の仕事をかたわらにする幼稚園バスの運転手さんからとびきり新鮮な材料を使ったタイやマグロのあら炊きをよく届けてもらったそうです。
「ご飯がいくらでも食べられるし、お酒にも合う。骨のまわりが本当においしいですよね。“バスのおじちゃんのあら炊き”と呼んで、親子ともども本物の味を堪能させてもらいました」。
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大根と炊き合わせたブリのあら炊きをアテに、「一刻者」のロックを楽しむ岩崎さん。
「大根にブリの旨味がよく染みていて、本当においしい!濃いめの味付けには、甘さがありながらもすっきりとした味わいの芋焼酎がよく合いますね。口の中の甘味や旨味が、焼酎を飲むことでリセットされるんです。やはりこれにはロックが最適です」と、晩酌がすすみます。

大根とブリを交互に味わいながら、1月の京都の行事について語る岩崎さん。
「私の母もアナウンサーの仕事をしていて忙しい家庭に育ち、一般的な行事が家ですべて行われていたわけではないですが、周囲の方から何かと伝わってきて自分の中に自然に伝承され、馴染みあるものになっていますね」。

酔いも少しまわってきて、「今年は寅年ですが、虎は千里を走るといいますよね。虎が元気ですぐれた行動力を持っていることのたとえですが、今年はこの虎にあやかって、コロナも落ち着き、人やものの勢いが盛んになるとよいですね。私の提案する三部式着物も、もっと多くの人に知ってもらって、皆さん気軽に着物を着てお出かけを楽しむ年になってほしいです」と締めくくっていただきました。


■driccoきものホームページ
https://dricco-kimono.com/whats-dricco/


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
・松竹梅白壁蔵「澪」<GOLD>
・全量芋焼酎「一刻者」
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

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