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「夏越の祓(なごしのはらえ)」を前に、陶芸家が晩酌で半年を振り返りつつ、新たな作品に意欲を燃やす噺

「夏越の祓(なごしのはらえ)」を前に、陶芸家が晩酌で半年を振り返りつつ、新たな作品に意欲を燃やす噺

2021,6,11 更新

京都をよく知る陶芸家・津田友子さんが、6月の京の風物詩「夏越の祓(なごしのはらえ)」について語りつつ、旬の食材を肴に晩酌する噺です。

「今年も半年過ぎた」の思いで、北野天満宮の茅の輪をくぐり厄払い

京都をよく知る大の酒好きが、京の歳時記とともに名所を巡り、酒の楽しみ方を語るシリーズの4回目。今回の案内人は前回に引き続いて、京都在住の陶芸家・津田友子さんです。
6月の京都といえば、「夏越の祓(なごしのはらえ)」。
「夏越の祓」とは、1年の半分にあたる6月30日に半年間のからだの穢(けがれ)を祓(はら)い、残り半年の息災を祈願する神事です。
晩酌が日課の津田さんは、自作の器にちょっと高級なお惣菜屋さんから取り寄せた季節の料理を盛り、酒を注ぎ、残り半年の思いを馳せながら、家呑みで英気を養います。

6月30日の「夏越の祓」の日には、京都では多くの神社に大きな茅(ち)の輪が設置されます。しめ縄にも用いられる茅(かや)を束ねた茅の輪を、作法通りにくぐると半年間の厄払いができるということで、京都では多くの人が神社に参拝します。

京都生まれで京都育ちの陶芸家・津田友子さんにとって、「夏越の祓」は子どもの頃から馴染みの深い行事。「うちは北野天満宮の氏子地域なので、初詣、2月の梅花祭、夏越の祓、子どもの七五三など、日頃通うところが〈天神さん〉なんです。茅の輪くぐりも、もちろん天神さんで」と津田さんは微笑みます。
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北野天満宮では毎年、御祭神・菅原道真公の御生誕の日である6月25日に、楼門に京都でも有数の大きさを誇る、大茅の輪(おおちのわ)が設置されます。
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その後、6月30日には御本殿前にも茅の輪が設置されます。神事を執り行った後、神職に続いて多くの人が茅の輪をくぐり抜けます。

「やはり夏越の祓の日がくると、今年も半年経ったんだなあと思いますね。また過ごしやすい気候の6月は、土づくりや釉薬(※)づくりにとても適した時期なんです。だから、器を成形する作業もしながら、この時期には一年分の材料を仕込むんですよ」と、津田さんは語ります。

※釉薬(ゆうやく):陶磁器の表面を覆うガラス質の膜のこと。様々な色を出す、水が漏れないようにする、汚れがつきにくくする等の機能がある。

京都伝統の楽焼と、自由に発想できる日常使いの器と

津田さんは京都伝統の茶道具である「楽」を作る陶芸家。もともと会社員をしていた津田さんが、ある店で焼物と出会い、茶陶楽焼の吉村楽入(よしむら・らくにゅう)氏に入門します。7年間修業し、京都市の陶芸家育成コースなどでも学びました。
今は独立して京都花園に「未央窯(びおうがま)」を構え、楽焼を制作するとともに、手に取る人の心を豊かにする器が作りたいと、日常使いの食器も制作しています。

「楽焼の茶器は茶の湯のためのお道具。季節感やもてなす人、もてなされる人の立場を慮るつくりを求められます。日常使いの器は自由度が高いところが面白いですね。時間に流されないように、凛とした気持ちで背筋を伸ばしてお酒を楽しめる酒器が欲しくて。自分が欲しいものを作りたい、と思って制作しています。子どもが生まれ、子育てをするうちに発想の幅も広がりました」と語る津田さん。
忙しいワーキングママの日常をも原動力にして、器の創造に活かしています。

「宝焼酎の炭酸割り」を自作の酒器で

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毎日、晩酌は欠かさないという津田さん。
「6月は過ごしやすいとはいえ、もう夏。まずは冷たい飲み物がほしいですね」と、「極上〈宝焼酎〉」の炭酸割りから始めます。
津田さんが「極上〈宝焼酎〉」の炭酸割りを飲むのに選んだ自作の酒器がこちらです。
「私の作る器は、炭酸の泡立ちがきめ細かくなるので、スパークリング系のお酒やビール、炭酸割りなどに、とても向いているんですよ」。
そう説明する津田さんの前に置かれた器は、氷で冷えるにつれて水滴が溜まり、シズル感たっぷりです。
日常使いの食器にもゴールドを上品に使って、心豊かな気分で晩酌がしたいという津田さん。お酒を注いだ際の泡立ちや水滴のつき方、口当たりなども自分で実際に検証しながら、お酒を楽しむのだそうです。
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津田さんがアテに選んだのは、京のおばんざい、万願寺唐辛子とちりめんじゃこの炒め煮。
「万願寺唐辛子は夏の京野菜の代表。鮮やかな色を添えてくれるのもいいですね」と、ゴールドの酒器に緑色の万願寺唐辛子を盛り付けた小皿を添えます。
職業柄、食べる楽しさだけでなく、目を楽しませることも常に意識しています。
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「極上〈宝焼酎〉」の炭酸割りを飲みつつ万願寺唐辛子を口にふくんだ津田さん。「万願寺唐辛子のほろ苦さとやわらかさが、このお酒にぴったりなんですよ!」と声を上げます。

宝焼酎は連続式蒸留機で繰り返して蒸留し、不純物を取り除いた限りなくピュアな甲類焼酎です。そこに、樽で貯蔵された熟成酒をブレンドし、ひとクラス上の芳醇な味わいを楽しめるのが「極上〈宝焼酎〉」です。「このまろやかな風味で、万願寺唐辛子の甘味がさらに引き立ちますね」と、津田さんの晩酌はすすみます。

鮎の塩焼きやみょうがの甘酢に、華やかな吟醸香の日本酒を

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6月には鮎が解禁になります。
「鮎は、やはり旬の時期に一度は食べなくてはね。今度は日本酒で行きましょう」と津田さんが出してきたのが、「特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分」。原料米を39パーセントまで磨いた、華やかな吟醸香と上品できれいな味わいが楽しめる日本酒です。
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鮎をたで酢につけて一口食べ、お酒を口に含む津田さん。
「すっきりした上品な味わいのお酒で、淡白な鮎の風味との相性がすごくいい。たで酢の酸味とも抜群に合いますね」と箸をすすめながら、よく冷やした吟醸酒を自作の楽焼のお猪口に注ぎます。
赤い器の色が、1人飲みの時間を上質なものに仕上げてくれるようです。
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「みょうがの甘酢漬けも酢を使っているので、やはりこのお酒がぴったり。甘酢漬けと一緒に日本酒をいただくと、ほっとする感じですね。“磨き三割九分”はとてもしっかりした風味があるとともに、甘酢漬けの味をまろやかに感じさせてくれます」と、舌鼓。少しずつ盃を重ねる津田さんです。

6月の京都に欠かせない和菓子「水無月」には、スパークリング清酒「澪」

「夏越の祓」の日、京都で食べる和菓子と言えば、「水無月(みなづき)」でしょう。小豆がたっぷりのったういろう生地を三角形にカットしてある京都の定番和菓子で、小豆は厄払いを、三角形は暑気払いの氷を表しています。
「水無月はとても好きな和菓子なんです。子どもが小さいときアレルギー体質だったので、材料をよく選んだうえで、保育園によく手作りの水無月を持っていかせたんですよ」と語る津田さん。
そんなに簡単に作れる和菓子なのでしょうか? 聞いてみると「案外簡単に作れるので、しょっちゅう作ってました」と笑顔で話す津田さん、さすが京都の人ですね。

晩酌の最後は、水無月に合わせてスパークリング清酒「澪」を開けます。
「“澪”は、よく冷やして食前酒にすることが多いのですが、こうやって晩酌の締めのデザートに合わせるのもいいですね」と、よく冷えた「澪」を自作の紺色の酒器に注ぎます。
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やはり津田さんの器に注いだスパークリング清酒は、泡立ちがきめ細かい。ゴールドを施したフルートカップの足が、さらに気分を高めてくれます。
「白いういろう生地の水無月には“澪”がよいですが、黒糖生地の水無月はコクがあるので、“全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」”も合いそうですね」と、最後までお酒との相性を検証する津田さんです。

新しい半年に思いを馳せる「夏越の祓」の日の晩酌

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一年の真ん中にあたる「夏越の祓」の日には、毎年晩酌をしながら自身の毎日をふり返るそうです。
「楽焼は茶道において冬季である炉の時期(11月〜4月)によく使われます。上半期と下半期の節目の日が6月30日の夏越の祓。過ごしやすいこの時期に土を仕込みます。これからこの土をどう使おうか。また、釉薬実験の限りない可能性を考えると、今宵もお酒がすすみ、至福のひとときを楽しめそうです」。
自身の器で楽しむ酒と旬の肴。その一日を満足させる晩酌で、明日からの仕事に思いを馳せる津田さんでした。


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/gokujo/

●特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/daiginjo_migaki39/

●松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒
http://shirakabegura-mio.jp
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

・新緑の美しい季節、酒をこよなく愛する陶芸家が葵祭に思いを馳せて家呑みする噺
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・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
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・10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
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・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺
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