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京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺

京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺

2022,6,3 更新

京都をよく知るお酒好きの人物が、京都の名所や歳時記とともに、お酒の楽しみ方を語るシリーズ。今年7月に開催される「祇園祭」では、3年ぶりの山鉾巡行も決定し、京都ではお祭りムードが高まっています。語り手は、黒七味の老舗・祇園「原了郭(はらりょうかく)」13代目当主で、祇園祭で神事を担う「宮本組」組頭の原悟(はら・さとる)さん。その前編となる今回は、「原家と祇園祭」についてお話しいただきます。

一子相伝で製法を伝える黒七味の老舗

元禄16年より続く、京都・祇園にある黒七味の老舗「原了郭(はらりょうかく)」。先祖は赤穂義士四十七士(※)の1人、原惣右衛門元辰(はらそうえもん・もととき)です。
創業は、その一子、原儀左衛門道喜(はらぎざえもん・みちよし)が漢方の名医に「御香煎(おこうせん)」の伝授を受けたことに始まります。

※赤穂義士四十七士(あこうぎししじゅうしちし):1702(元禄15)年,高家の吉良義央 (きらよしなか) 邸で,旧赤穂藩主浅野長矩 (あさのながのり) の仇を討った家老大石良雄ら47人の浪士のこと。

「御香煎」とは、陳皮(ちんぴ)やウイキョウなど漢方の原料を粉末にして煎り、焼き塩で味付けをしたものです。白湯に入れて香りを楽しみながらいただくもので、創業以来変わらぬ製法で作られています。

原了郭は、「祇園社」とも呼ばれる、八坂神社の門前で御香煎を出す茶店として始まりました。江戸時代の木版画「貞信都名所之図(さだのぶとめいしょのず)祇園社西門」には「御香煎 原了郭」の建屋が描かれています。
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看板商品は、約100年前に生まれた「黒七味」です。
「黒七味」は御香煎に使われている山椒のほか、白ごま、唐辛子、青海苔、けしの実、黒胡麻、おの実が原料。黒っぽい茶色と豊かな風味が特徴で、地元・京都の方はもちろん、観光客のおみやげとしても人気です。
京都市内のうどん店、鶏白湯ラーメン店などに置かれているのを見かけたことがある人も多いでしょう。
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直営店舗は、祇園・四条通の本店、同じく祇園・大和大路通の「Ryokaku」、京都駅八条口 おもてなし小路にある麺とカレーのお食事処があります。店舗では御香煎、黒七味、粉山椒、一味のほか、洋風ハーブを5種類合わせたミックススパイス、カレースパイシーなどバラエティ豊かな商品を取り揃えています。
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原了郭13代目当主の原悟さんは祇園生まれの祇園育ち。
商品の作り方は一子相伝・門外不出ということもあり、御香煎と黒七味の製造を手がけるのは、なんと原さん1人だけ。しかも手作業で行なっているというから驚きです。

原さんは、素材に寄り添いつつも、商品それぞれに独特の香りを出すために、五感を研ぎ澄ませながら作業しているそうです。
「黒七味は、和食だけでなくどんな料理にも合うのが面白いところ。うどんや親子丼はもちろん、味噌汁やカレーとの相性も抜群。刺身にはワサビ代わりに振りかけます。冷やしトマトにかけるとイタリアン風味に変身するんですよ」と、料理との相性について教えてくださいました。

祇園祭の神事を担う「宮本組」

そんな原さんは、1年を通して裏方として八坂神社の行事に関わる氏子集団・宮本組の組頭でもあります。
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写真提供:宮本組
宮本組が担う大仕事の一つが「祇園祭」。祇園祭は八坂神社のお祭りで、平安時代に疫病平癒を願って始まったといわれています。7月1日の「吉符入(※)」にはじまり、31日の「疫神社夏越祭(※)」で幕を閉じるまで、1ヶ月にわたって各種の神事・行事がくり広げられます。

※吉符入:祭りの無事を祈願する祇園祭の最初の儀式。
※疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい):大きな茅の輪をくぐり、無病息災を祈る祇園祭の最後の儀式。

祇園祭の行事としては「神輿」や「山鉾巡行」がよく知られていますが、原さんは、それらだけでなく、一般には馴染みのない祇園祭の一連の神事に深く関わっています。
江戸時代から現在に至るまでの「久世駒形稚児(※)」の宿として、また、行列一行の世話役としてご奉仕を続けている家で生まれ育った原さんにとって、祇園祭は語り尽くせないほど大きな存在なのです。

※久世駒形稚児(くぜこまがたちご):ご神体を身に着けて神霊を乗せた神輿を先導する「神の化身」とされる稚児。

7月17日の神幸祭(※)当日、原家がお祓いを受け、祭りの無事を祈願した後、八坂神社と同じスサノオノミコトを祀る綾戸國中神社(あやとくなかじんじゃ)のご神体を胸に付けた少年が久世駒形稚児となります。
この久世駒形稚児は、まさに“神”の化身。決して地面に足を下ろさぬよう、強力(ごうりき)が久世駒形稚児を肩に担いで白馬の背に乗せ、八坂神社の拝殿回りへ向かいます。この出発点は今も昔も原了郭の前なのです。

※神幸祭(しんこうさい):祇園祭で最も重要な神事の一つで、神輿渡御が行われる。
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写真提供:原了郭
他の参列者たちは皆下馬して拝殿回りを行う中、唯一原家で“神”となった久世駒形稚児だけが地面に足を下ろすことなく拝殿します。7月24日の還幸祭(かんこうさい)で御神霊を本殿にお遷しした後、久世駒形稚児は神の化身のまま原家に戻り、ご神体を外してようやく元の少年に戻ります。

「このような儀式を司る家で育ったので、幼い頃から神様がお座りになる御神輿を神聖な気持ちで眺めていました。昔は、御神輿に神様の御霊(みたま)がいらっしゃるということを誰もが知っていたので、皆、御神輿に両手を合わせて拝んでいたものです。私は今でも変わらず、神聖な気持ちで神輿を拝んでいます」と原さんは語ります。

黒七味に合うアテとお酒が、祭り気分を盛り上げる

祇園祭の準備に終わりはなく、1年のほぼ365日、祇園祭のことを考えているという原さん。祭りの協議で宮本組の役員仲間が集う場には、いつも必ずお酒があります。

毎年6月は、協賛金を募るための挨拶回り、手拭いや扇子の発注、お神輿の用意など準備が続き多忙な毎日を過ごしています。役員15名と協力者約70名との意思疎通も行わねばなりません。
「大変なこともありますが、すべてを楽しいと思えるのは、仲間たちと酒が飲めるから。苦労をともにした仲間と飲む酒は、どんな時でも美味しいですね」と原さん。
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原さんが20年以上愛飲しているのがシークヮーサーの焼酎割りです。自宅での晩酌では、沖縄から定期購入しているシークヮーサーの原液を焼酎に合わせているそうです。

原さんが紹介してくれたのは、焼酎3:シークヮーサー原液2:水5の割合で作るシークヮーサー割り。
「極上<宝焼酎>」は芳醇でまろやかな風味ながら、割材を引き立てる立役者。すっと鼻腔を抜けるシークヮーサーの爽やかさを、ほのかな甘みの「極上<宝焼酎>」がしっかりと支えてくれます。

「焼き鳥は塩・タレどちらも大好き。コクのある焼き鳥に、奥深い香りの黒七味が華を添えてくれます。やや青っぽい香りとすっきりした酸味が楽しめる焼酎のシークヮーサー割りがほんま合いますね。何杯もおかわりしてしまいます。シークヮーサー割りは、焼き鳥に限らずどんな料理にも合うのでおすすめです」。
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夏が近づくと食べたくなるのは、やはり鰻。鰻をいただくために原さんが足繁く通うお店のひとつが、本店から徒歩3分の場所にある鰻店・かね正です。
原さんのお気に入りはまむし丼。関西では、うなぎ丼のことを「まむし丼」といいます。関東風の背開きですが、鰻を蒸さずに焼くのが関西風で、皮はパリパリ、身はふっくら。テイクアウトでは原了郭の粉山椒が付きます。

口にほおばると、鰻の香ばしさ、品のある旨み、優しく甘辛いタレが三位一体で口いっぱいに広がります。パラッとかけた山椒がピリリとしたアクセントに。原さんは気分によって黒七味をかけることもあるそうです。

まむし丼に合わせたお酒は、しぼりたてのような味わいの生酒(※)「松竹梅『生』」です。
※「生酒」:上槽(絞り)から壜詰めまで、殺菌のための火入れを一切せずに詰口した清酒のこと。
「祇園祭の神事でいただく御神酒(おみき)など、祭りと日本酒は切っても切れない存在」と、原さん。「松竹梅 生」の華やかな香りと柔らかな味わいが、祇園祭へ向けて準備を進める原さんの気分を盛り上げます。

前編となる今回は、原家と祇園祭についてご紹介しました。
後編(6月24日公開)では、そんな原さんの祇園祭への思い、また、コロナ禍でどのように祇園祭の神事が行われていたかについてお聞きします。ご期待ください!

<取材協力>

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原了郭 Ryokaku
住所:京都市東山区大和大路通神門前下ル西之町216-1
URL:http://www.hararyoukaku.co.jp

▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/gokujo/

●松竹梅「生」
https://www.takarashuzo.co.jp/tkr-shohin/cmn_p_detail.php?p_prodid=2818
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭の神事とお酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gionfestival_220624

・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
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・10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
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・大の酒好き、祇園祭の囃子方が京弁当をアテに飲む噺
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