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宇治の有機茶園社長が語る「新茶」とお茶割りの噺

宇治の有機茶園社長が語る「新茶」とお茶割りの噺

2022,5,6 更新

京都をよく知るお酒好きの人物が、京都の名所や歳時記とともに、お酒の楽しみ方を語るシリーズ。5月は「新茶」の季節。有機栽培一筋の永田茶園・永田恭士(ながた・やすし)社長にお話しを伺いました。

京都で有機茶の栽培・製造・販売を手掛ける「永田茶園」

1970(昭和45)年創業の永田茶園は、農薬・化学肥料・除草剤を使わない有機農法に取り組んでいます。
二代目の永田幸吉さんら、ドイツの専門家や東京、大阪のオーガニック関連商社6社が発起人となり、有機JAS認証(※)の先駆けとなる独自の厳しい有機基準を作りました。

※「有機J A S認証」:日本農林規格であるJAS法に基づき、農薬や化学肥料などの化学物質を使用せず生産された食品に対し、認証される。

永田茶園は、自家茶園で栽培するほか、全国の契約農家約50軒から届く茶葉を扱い、お茶の製造・販売を行っています。
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現社長の永田恭士さんは三代目。茶問屋で修業したのち家業に入り、商品開発、各地の契約農家さんとのやりとりなど精力的に活動しています。
現在取り扱っている、ほうじ茶・番茶・煎茶・玄米茶・玉露・紅茶・烏龍茶の7種類すべてが有機栽培のお茶であり、品質にこだわった商品を取り扱っています。
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また、赤ちゃんも安心して飲めるカフェインレス茶葉、環境への配慮を意識した紙筒パッケージなど、オリジナリティある商品ラインアップも取り揃えています。

5月は「新茶」の茶摘みシーズン

お茶は、お茶の木の葉や茎を収穫して作られます。京都府南部では4月上旬、その年最初の芽が出ると京都府茶葉研究所より「萌芽(ほうが)宣言」が出されます。
冬の寒さに耐えた包葉から勢いよく出た、生命力にあふれた新芽だけを使うお茶が「新茶」です。
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新芽の摘み取りはゴールデンウィーク中に行われます。茶葉は収穫後すぐに蒸し、乾燥させると、「荒茶(あらちゃ)」という原料になります。

永田茶園では、各地の契約農家から届く「荒茶」が出揃うと「合組(ごうぐみ)」という作業を行います。
「合組」とは、選別・ブレンド・火入乾燥を行う工程のこと。産地や品種によって蒸し具合が異なる「荒茶」は、「合組」で独自の味に加工します。そして5月中旬から、「新茶」の出荷を始めます。
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「新茶」は「一番茶」とも呼ばれています。「一番茶」の摘み取りが終わると、その次に出てきた芽を「二番茶」、続いて出てくる芽を「三番茶」と呼びます。二番茶・三番茶を収穫せずに育て、秋に摘みとったお茶が「秋冬番茶」です。
ちなみに、抹茶の場合は、摘み取る前に一手間を加えます。4月下旬から茶畑全体に黒いネットをかぶせて強い日光を遮断し、甘みを引き出してから5〜6月に茶葉を刈り取ります。

「5月は“茶摘み真っ盛り”というイメージがありますが、実はお茶の刈り取りは、冬をのぞいてほぼ1年中行われます。さまざまなお茶がありますが、多くの方がもっとも楽しみにしているのが、5月に収穫を迎える「新茶」です。「新茶」の良い芽を出すため、茶農家は前年から茶摘みや剪定をいろいろと工夫しているんですよ」と、永田さん。
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「新茶」はビタミンCやカテキンなどの栄養素が豊富に含まれており、苦み・渋み成分であるカテキンやタンニンも少なめ。爽やかな香りを存分に楽しむことができます。
「新茶」が市場に出回るのはわずか約1ヶ月。まさに、この時期だけのお楽しみです。

爽やかさをストレートに味わえる、「極上<宝焼酎>」の新茶割り

「新茶」を淹れるにはコツがあります。
「まずは軟水を使うこと。ミネラルウォーターの中には硬水もあります。硬水だとお茶の旨みを引き出しにくいので避けた方がいいですね」と、永田さんは教えてくれました。

日本の水道水は軟水ですが、ヤカンなどで数分沸騰させ、塩素を抜くのが重要だそう。塩素が残っていると、やはりお茶の美味しさが出にくいのだとか。
「お湯の温度は70〜80℃。蒸らす時間は2分です。お湯が熱すぎると渋みが一気に出てしまいます。お湯は、湯呑みなどに移すと約10℃下がるので、100℃のお湯を湯呑みに入れると90℃に、また違う湯呑みに入れると80℃、と湯呑を移すことによって温度を下げることができますよ」。
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では、こうして淹れた「新茶」を味わいつつ、お茶割りも楽しんでみましょう。

永田さんは普段、夕食時にウイスキーやジン、焼酎をストレートか炭酸割りで楽しむほどのお酒好き。京都や奈良のバーでは、グラッパやマール(※)といったマニアックなお酒もオーダーしているそうです。
「出張の帰りには、新幹線の車内で必ず『タカラcanチューハイ』をプシュッと開けていただきます。ほっとひと息つく、あの瞬間がたまりません」と永田さん。

※「グラッパ」「マール」:どちらもワインを作る際にできる葡萄の搾りかすを原料としたブランデー。イタリア産がグラッパで、フランス産がマールと呼ばれる。

そんな永田さんが「新茶」に合わせるのは、樽で貯蔵したまろやかで芳醇な味わいの甲類焼酎「極上<宝焼酎>」です。グラスに氷を多めに入れ、「極上<宝焼酎>」をコップの1/3ほど注ぎ、上から「新茶」を注ぎます。

口に含むと、「新茶」の爽やかさが鼻腔に広がり、続いて「極上<宝焼酎>」のふんわり芳醇な香りを楽しむことができます。
2口目、3口目と飲み進めるうちに、次第にまろやかな甘みも感じられるようになります。氷でよく冷えたお茶割りは、暑さを感じられるこの季節にピッタリです。

抹茶のほか、煎茶&紅茶ブレンドも「お茶割り」にマッチ

「抹茶割りもお勧めです」とのことで、抹茶割りのつくり方を紹介いただきました。

まずは抹茶茶碗または大きめの器に熱湯を入れて、器を温めておきます。お湯を捨て、ティースプーン2杯の抹茶を入れ、80℃のお湯を注ぎ、茶筅(ちゃせん)で素早くかき混ぜて泡立てます。
茶筅がなければ泡立て器やホイッパーを使います。抹茶の粉が残らないよう、しっかり泡立てるようにしましょう。
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こちらもたっぷりの氷を入れたグラスに、「極上<宝焼酎>」と抹茶を1:3の割合で合わせます。
抹茶の甘みと柔らかな苦み、クリーミーなテクスチャーを「極上<宝焼酎>」がまろやかに仕上げ、濃厚ながらあと口はすっきりとした味わいです。

最近、お茶に詳しい知人から「煎茶と紅茶を9:1で合わせると美味しい」と聞き、興味を持ったという永田さん。その煎茶&紅茶ブレンドのお茶割りをいただきます。
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今回はどちらも永田茶園のティーバッグを使用しました。
急須に煎茶のティーバックと水を入れ、4〜5分待つと煎茶のできあがり。一方、国産紅茶のティーバッグは熱湯に入れ、好みの濃さになったら取り出します。

大きめのグラスに氷を入れ、「極上<宝焼酎>」をグラスの1/3ほど注ぎます。そして煎茶と紅茶を9:1の割合で入れ、グラスの底からすくい上げるようにかき混ぜます。
「煎茶の甘みと程よい渋みに、国産紅茶の優しい香りが合いますね。それぞれのお茶の香りが楽しめ、意外な組み合わせですが、これはハマりますよ」。

日常的にお茶を楽しむための商品を展開

茶葉のほか、ティーバッグ、飴、抹茶タブレットなど、いろんな形態の商品を取り揃えているのは「お茶を、毎日気軽に楽しんでほしいから」と永田さん。
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ユニークな商品でいえば、抹茶・海水塩をブレンドした「抹茶塩」。水に溶かしてスポーツドリンク感覚で飲んだり、揚げ物に添えたりとさまざまな使い方ができる商品です。

「全国的に、高齢化と継承者不足のため茶畑を手放さざるを得ない農家さんが増えています。しかし国内外で、抹茶や有機茶のニーズは年々高まっています。お茶を有機農法で栽培するのは苦労が多いため、簡単に契約農家さんを増やすことはできません。将来的には自社茶園を増やしていって、多くのお客さまに永田茶園の味をお届けできればと思っています」。
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お茶の世界は奥が深く難しいと思う方がいるかもしれません。しかし実は、肩ひじを張らず気ままに楽しめるのもお茶の魅力です。
新茶や抹茶、煎茶…どんなお茶でも、お茶そのものを楽しんでいただくも良し、私のようにお酒好きの方なら焼酎のお茶割りとして楽しんでいただくのも良いと思います。ぜひ好みのお茶を見つけていただき、その美味しさをじっくりと味わっていただきたいですね。

<取材協力>

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永田茶園 本社
住所:京都府城陽市長池北清水92番地の12
https://www.nagata-chaen.com/

▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●極上<宝焼酎>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/gokujo/
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