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京都の篠笛奏者が語る花見と酒の噺

京都の篠笛奏者が語る花見と酒の噺

2022,4,1 更新

京都をよく知る酒好きの人物が、京都の名所や歳時記とともに、酒の楽しみ方を語るシリーズの第14弾。4月は花見の季節。篠笛(しのぶえ)奏者の森美和子さんに話をお聞きしました。

人生が変わるほどの、篠笛との衝撃的な出会い

京都在住の篠笛奏者・森美和子さんは、篠笛教室を主宰しながら、神社仏閣での演奏をはじめ、ソロ公演も開催。また著名な音楽家や舞踏家、美術家との共演など、自身が奏でる篠笛の音色で多彩な舞台を創造しています。
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森さんの経歴は一風変わっています。
京都市立芸術大学の彫刻専攻を卒業後、ステージ照明を手がける会社に入社しました。

そこで、太鼓芸能集団「鼓童(こどう)」の公演ツアーに照明家として同行し各地をまわっていたある日、篠笛の独奏を聞き、その音色に人生が変わるほどの衝撃を受けたそうです。

「いつも演奏は照明室のインカムで聴くことが多かったのですが、その日は体育館での公演でしたので、篠笛の生音が自分の中にスーッと入ってきたんです。血が逆流し、お腹の中から力が湧いてくるような体験でした」。
それは森さんが24歳のときのこと。その後すぐに篠笛のとりことなり、修練を重ねました。

篠笛奏者のかたわら、日本に古くから伝わる竹製の横笛で、祭りや民俗芸能また、歌舞伎音楽や民謡などで用いられています。森さんは、そのなかでも民俗芸能の世界に惹かれていきました。

篠笛奏者として活動しつつ、日本各地をまわってさまざまな土地の民俗芸能を学ぶうち、岩手県の 「岩崎鬼剣舞(いわさきおにけんばい)」との深いご縁に恵まれます。
※「鬼剣舞」:岩手の北上地方に伝わる民俗芸能。鬼の面をかぶり剣を持った踊り手が、囃子方(はやしかた:拍子をとり雰囲気を高めるために添える音楽を演奏する人)に合わせて大地を踏みしめて踊り、五穀豊穣や悪霊退散を祈ります。

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「鬼剣舞は鼓童の研修所で知りました。お囃子が素敵で、ビデオの音を聴きとって自己流で吹いていたのですが、京都へ戻ってから民俗芸能を研究しているサークルに出会い、一緒に地元へ連れて行って頂けることに。27歳のときのことです。地元の方の奏でるお囃子に衝撃を受け、ますます魅了されていきました」。

それからは、毎年岩手に通いつめ、囃子方(はやしかた)の人たちに教えを乞います。
すると、「まず、酒を飲め、から始まるんです(笑)」と森さん。酒を酌み交わすことで、お互いの理解が深まり、一緒に演奏することが認められる、そんなある種独特の世界だったそうです。

「祭にお酒は欠かせないし、民俗芸能とお酒も、切っても切れない関係があります。人間関係が一番大切。一緒に飲むことで大切な人間関係が築かれるのです」。
その後、鬼剣舞を学ぶ先輩が「京都鬼剣舞」を立ち上げ、森さんはその発足より参加、現在も笛方として活躍しています。

桜と酒と篠笛と。笛吹き仲間との忘れられない思い出

そんな鬼剣舞の経験をはじめ、酒を通じて人と人との関係を築いてきた森さん。
この季節には桜と酒と笛にまつわる、忘れられない思い出があります。

10年ほど前、お稽古場として使っていた高瀬川沿いのギャラリーに笛仲間と集ったときのこと。
ちょうど高瀬川沿いの桜が満開で、ライトアップされていました。お酒と一人一品の料理を持ち寄った集まりでしたが、夜桜を眺めながらお酒を飲むうちに次第と気分が高揚し、それぞれが演奏をはじめ、やがてその場にいたメンバーで合奏するようになったそうです。
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「桜を眺めると心が浮きたちますよね。そこにお酒が入るとさらに気分が盛り上がり、仲間たちと一緒に演奏することに。まるで桜が別世界に連れて行ってくれたような、素敵な体験でした」。

別世界にいざなってくれる春の風物詩「都をどり」

京都の春の風物詩といえば、花街の踊り。「これもまた、別世界にいざなってくれるものですね」と森さん。花街の踊りは、華やかなポスターを見るだけで心が躍り、春を感じるそうです。
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平成31年南座新開場記念 都をどり (撮影:ハヤシフォート)
京都に5つある花街のうち、例年3月末〜4月初めに上七軒歌舞会が「北野をどり」、4月初めには祇園甲部歌舞会が「都(みやこ)をどり」、宮川町歌舞会「京(きょう)おどり」を開催します。祇園地区ではこれに5月の先斗町(ぽんとちょう)歌舞会の「鴨川をどり」が続き、秋には祇園東歌舞会の「祇園をどり」が開催されます。

「都をどり」は、明治5(1872)年の京都博覧会で、余興として舞妓・芸妓が舞を披露したのが始まり。近年はコロナ禍により中止を余儀なくされましたが、戦中戦後を除き毎年上演されています。
京都府の有形文化財に登録されている「都をどり」の舞台、祇園甲部歌舞練場は、平成28(2016)年から耐震改修が行われており、その間は南座で行われます。

有名な「ヨーイヤサー」の掛け声とともに、舞妓さん・芸妓さんが総出となって、舞や演奏の集大成を大舞台で披露する姿は圧巻です。本編では、爛漫の春、夏、錦秋の秋、深雪の冬が表現され、そして再びの春の花見で幕を閉じます。

「祭囃子の笛はかん高く、威勢のよさが特徴ですが、花街の囃子方の笛は、芯はあるけどやわらかな音色ではんなり(※)しています。また、笛が入ると、一気に舞台の雰囲気が華やぎますね」と森さんは語ります。
※「はんなり」:上品で華やかな様子を表す京ことば

祇園の店でちょっと一杯。アテは看板料理の馬刺し

今回は、「都をどり」の祇園甲部にほど近い祇園の名店に立ち寄り、春にふさわしいお酒をいただきました。
普段は焼酎や日本酒をよく飲むという森さん。焼酎はロックが好みで、それならと店主がすすめてくれたのは、店の看板メニューである馬刺しと、全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」のロックです。
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馬刺しは、ここに来る客のほとんどが頼むのだとか。分厚く切られた鹿児島産の馬刺しは霜降りでトロトロ。甘い醤油につけていただきます。

「焼酎の中でも芋焼酎が好き」という森さんが馬刺しに合わせたのが、全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」のロックです。
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一口飲んで、「これはおいしい!」と森さん。「芋の香りがたち、瓶のデザインもおしゃれですね」。
「ISAINA(イサイナ)」はロックで飲むと焼き芋のようなほっこり甘い香り、炭酸割りではりんごのようなさわやかな果実香が引き立つ、さまざまなシーンで楽しめる芋焼酎。
「馬刺しにはロックが合いますが、揚げ物などには炭酸割りを試してみたいです」と語る森さんでした。

馬刺しのあとは、野菜が欲しくなり、旬の一品である菜の花のおひたしを注文した森さん。これには、松竹梅「豪快山田錦」<特別純米>辛口のぬる燗を合わせました。
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「桜が咲き誇る近隣で、いっせいに咲く菜の花。そんな風景も、今の時期ならではですね。旬のお野菜はおいしいです」と語る森さん。
「お米の旨みと、料理を引き立てるキレのある辛口な味わいが料理と合いますね」と、盃をかさねます。

満開の桜も篠笛も、人を別世界にいざなうもの

「篠笛の音色は、身体にスーッと沁み入ってくるんです」と語る森さん。かつて初めて篠笛の演奏を聴いたときに衝撃を受けたときもそうでした。

「篠笛のいざなうところは、歌声で行き着く領域とはまた違う。どこか別世界に連れていかれるような気持ちになります。祭や芸能も人を非日常に連れていくものですよね。その辺りに笛が果たす役割もあるのだと思います」。
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桜咲く景色にまどろみながらお酒も進む春の宵。
「桜も篠笛も、人を異世界に誘う不思議な魅力をもっています。咲き誇る桜の木の下で笛を吹いてみたいですね」。

ほろ酔い加減で森さんは続けます。
「閉塞感のある世の中ですが、聴く人の心がやわらかく動き出すような場や音楽を、人と共に創りたいです」。

吹く人それぞれの個性や息づかいによって、音色も伝わり方も変わるという篠笛。ここ一、二年でも、森さんの吹く感覚がどんどん変わり、本当に楽しいと思うそう。
「この先、まだ聴いたことのない笛の音に出会いたい」。と、希望を語り、森さんはまた盃に酒を注ぎました。

<取材協力>

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呑み処 食べ処 音
住所:京都市東山区祇園町北側281-1 祇園ファーストビル B1F はんなり横丁
営業時間:18:00~翌2:00
定休日:日曜・祝日(繁忙期除く)
U R L:https://www.facebook.com/nomidokoroon2016/

※新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年3月14日)

▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/isaina/

●松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/


▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「京の歳時記と酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「ひなまつり」の豆菓子と酒の噺
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・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「京都の節分と酒」の噺
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