
10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
2022,9,30 更新
「学問の神様」として全国から信仰を集める北野天満宮(京都市上京区)は、実は日本酒に縁深い神社なのです。10月1日の「日本酒の日」を前に、北野天満宮権禰宜(ごんねぎ)・東川楠彦(ひがしかわ・くすひこ)さんに、北野天満宮と日本酒の歴史とともに、米やお酒などの関係についてお聞きしました。
「米」は天上の神様からの贈り物
その由来は、かつて日本酒業界の年度始めが10月だったことから、また、収穫したばかりの新米で酒蔵が酒造りを始める時期だから、さらには、酒壺や酒をあらわす「酉」という字が十二支では10月だから、など諸説あります。
今回は「日本酒の日」にちなみ、日本とお米・お酒との関わりなどについて、北野天満宮権禰宜・東川楠彦さんにお話しを伺いました。

かつて天上界(高天原)を治めておられた主神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、日本国土(葦原中国)に降りる瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)に稲作を託しました。
つまり、私たち日本人が主食としていただいているお米は、天上の神様からの贈り物なのです」。
秋は全国の神社で、米や野菜の収穫を祝い、神様に感謝する秋祭が斎行されます。
祭で必ず神様にお供えするのは、米・酒・塩・水の「神饌(しんせん)」。その中でも「酒」は、神様をもてなす上でとても重要なものだと東川さんは語ります。
「お祭りの後の直会では、御神前にお供えしていた日本酒を頂戴します。
結婚式や成人式でいただくお酒は御神酒(おみき)と言いますよね。お供えをすることによってお酒に御神霊が宿ることからそう呼ばれています。
御神酒をいただくことは、神様と一体となって、神様とご縁を結ぶということ。神様のお力をお分けいただくということを意味しています」。

また、お酒に「ご縁を結ぶ」という意味があることも、酒の場が人々の親睦を深めさせてくれることと繋がっているのかもしれませんね。
室町期、北野天満宮は酒造りに欠かせない「麹」の製造・販売を独占
一方で、お酒との関わりが深い神社であるということはあまり知られていません。
実は北野天満宮には、日本酒造りに欠かせない「麹※」にまつわる歴史があるのです。
※麹:蒸した米などの穀物にカビの一種である麹菌を繁殖させたもの。日本酒のほか、味噌や醤油などの原料として使われる。
室町時代、北野天満宮は「北野社(きたのしゃ)」と呼ばれていました。
北野社は、西ノ京を中心に広大な社領(所領)を有しており、そのエリアは「西京(にしのきょう)」と呼ばれていました。
将軍家・足利氏は天神信仰が篤く、北野社は幕府からとても手厚い庇護を受けていました。
このことから、幕府は北野社に、京都全域の酒麹の製造・販売の権利を独占する「北野麹座」の設置を認めたほか、宮内庁に属する役所「造酒司(みきのつかさ)」に代わり酒造税を徴収する業務も委ねていたのです。
当時約350あった京都の酒蔵は、北野社が運営する「北野麹座」から麹を購入してお酒を造り、同じく北野社の「北野麹座」に税を納めていました。
このシステムにより、室町時代に北野天満宮は大きく栄えたといわれています。

献酒祭
関西の酒造メーカーが御神前に新酒をお供えし、良いお酒ができたことに感謝するとともに、酒造業界の発展と関係者の無病息災を祈願するものです。

献酒祭
世の安寧・疫病退散を願う「北野祭」の再興に向けて
京都で政治家・文人・学者として活躍していた菅原道真公が無実の罪で太宰府に左遷され、903年に薨去(こうきょ)。それからの44年間、京都では疫病などの災いが頻発しました。
「このままでは京の都が滅びてしまう」
こうして「北野祭」は、道真公の荒ぶる御霊(みたま)を鎮め、「天神」という神として崇め祀り、世の中の安寧と国家安泰、疫病退散を祈るために始められました。

室町時代の北野祭(華やかな渡御列)
当時の「北野祭」では、神事のほか、相撲や狂言の奉納、華麗な装飾がほどこされた御神輿などが出揃い、祇園祭、葵祭をしのぐほど盛大なお祭りだったと伝えられています。
しかし、応仁・文明の乱で御神輿などが焼失したことをきっかけに、祭は衰退の一途をたどります。
現在、「北野祭」は最盛期であった室町時代とは形を変えて行われています。
9月4日の「例祭(北野祭)」では、かつての祭で執り行われていた神事のみを、10月1日~5日の「ずいき祭」では、花傘や御神輿の巡行が執り行われます。

例祭(北野祭)の北野御霊会で行われた山門八講

ずいき祭(第一鳳凰とずいき御輿)
新型コロナが猛威を振るう今こそ、神事と祭礼行列で京都一と謳われたかつての「北野祭」を蘇らせたいと、準備を進めているそうです。
北野天満宮では、菅原道真公の没後25年、50年おきに式年大祭をおこなっています。
2027年に行われる菅原道真公千百二十五年半萬燈(まんとう)祭を機に、北野界隈・氏子地域の活性と京都の伝統・文化の継承を目指す「北野祭」再興が予定されています。
「日本酒の日」に楽しみたい秋の漬物×日本酒
北野天満宮の「ずいき祭」にちなみ、野菜をアテに一献。
北野天満宮から徒歩1分、石畳の小路にある「もり漬物 北野上七軒店」のお漬物をいただきます。

酒かすの甘みと酸味、大根の辛みが一体となった風味は、酒好きに好まれます。
京都の伝統野菜・壬生菜の浅漬け「京みぶな漬」は、シャキシャキ食感と自然な辛みと苦みが特徴です。
やや主張のあるお漬物には、日本酒の王道「上撰松竹梅」がよく合います。
お漬物の味わいが舌の上に残っているうちに、「上撰松竹梅」を口に含むと、個性的な漬物の香りにお酒のまろやかな風味がからみ合い、箸もおちょこも止まりません。
白ごはんにお漬物が合うように、米のうまみがしっかり感じられる「上撰松竹梅」にお漬物が合うのはもはや必然といっていいでしょう。
常温の「冷や」でも、45℃前後の「お燗」でも美味しく飲めるのは、懐の深い「上撰松竹梅」だからこそ。
最初は「冷や」で、飲み進めるうちに「お燗」も…と、お好みでいろいろ楽しんでみてくださいね。

日野菜はかぶの仲間で、約40cm長さ。根の上部が赤紫色、下は白色ですが、お漬物にすると全体が淡いピンク色に染まります。
「もり漬物」が手作業で漬けた日野菜の浅漬け「きざみひの菜」には、「特撰松竹梅<純米大吟醸>」が好相性。
「松竹梅<純米大吟醸>」は精米歩合45%まで磨いた、贅沢な純米大吟醸酒です。
りんごを思わせるフルーティな香りと、純米ならではの旨みはありながら、食事との相性の良いすっきりとした味わいが楽しめます。
また、米を重ね合わせた花をモチーフにしたお洒落なラベルデザインが、ワンランク上の晩酌気分を盛り上げます。
「きざみひの菜」をかじると、最初に蕪の甘み、次に酸味、最後に喉もとにほのかな苦みが残ります。そこに「松竹梅<純米大吟醸>」を口に含むと、フルーティな甘さが苦みを包み込み、喉元に心地良くすっと流れていきます。
さらに「松竹梅<純米大吟醸>」を冷蔵庫で冷やして飲むと、美味しさが一層引き立ちます。

北野天満宮と日本酒の歴史に思いを馳せながら、旬のお漬物と一緒にこだわりのお酒を飲む。
そんな楽しみ方で、秋の夜長を過ごしてみてはいかがでしょうか。
<取材協力>


●上撰松竹梅
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shochikubai/
●特撰松竹梅<純米大吟醸>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/junmaidaiginjo/
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「匠×酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com)
・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
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