京都のフリーアナウンサーが、冬の京都の風物詩「大根焚き」を語り、「蒸し寿司」を堪能しながら酒を楽しむ噺
2021,12,3 更新
京都をよく知る酒好きの人物が、京都の名所や歳時記とともに、酒の楽しみ方を語るシリーズの第10弾。今回は、京都生まれ京都育ちのフリーアナウンサー兼起業家としても活躍する岩崎絵美さんに話をお聞きしました。12月の京都は大根のおいしい時期。あちこちの寺院で「大根焚き(だいこだき)」が行われ、また、料理屋などには冬のご馳走「蒸し寿司」が登場します。京都ならではの冬の味覚を肴に岩崎さんが酒を楽しみます。
12月は和洋のどんなシーンにも合う、クリスマスを意識した着物で
「誰でも着付けを学ばなくても簡単に着られて、着姿は本物と変わらない」三部式のdricco(ドリッコ)きものを開発し、2018年 株式会社driccoを起業。アナウンサー業に着物の普及にと、日々忙しく活躍しています。
京都のいろいろなイベントや行事で司会をされている岩崎さん。
京都という土地柄、着物を着ていくことが多いそうです。上品さを醸す着物はどこでも喜ばれるので、最近では和のイベントだけでなく、洋のイベントにもよく合う和装を心がけています。
しかし、自身で着物が着られない人は、着付けにお金がかかり和装から遠のきがち。もっと手軽に着物を着られるようユーザー視点で考え、辿り着いたのが、着付けが簡単な「三部式着物」です。
さまざまな色柄の既製品もあれば、オーダーメイド、古い着物からのリメイクまで、多種多様なニーズに対応し、着物文化を広げようと日々活動しています。
大鍋でじっくり焚いて振る舞われる「大根焚き(だいこだき)」は、冬の京都の風物詩
そんな時期、「大根焚き」と呼ばれる行事が、京都のあちこちの寺院で行われ、冬の京都の名物にもなっています。
出し汁も、各寺院でこだわりがあり、柚子が添えられているものもあります。
大鍋で煮た大根を仏前に供え、参拝者に振る舞う行為は共通して今に残っています。
(※今年度開催については了徳寺ホームページをご確認ください)
大鍋で煮た大根は、家庭で作るのとはまた一味違います。
ほくほくで温かく、味もよくしゅん(※)でいて、冷え切った身体を温めてくれます。大根は事前に仏前で祈祷もされているので、そのご利益も一緒にいただけそうです。
(※「しゅんでいる」とは関西弁で「しみ込んでいる」こと)
馴染みの店にて、ふろふき大根と燗酒で温まる
仕事柄、京の歳時記を原稿で読むこともよくあります。
例年冬になると大根焚きを報じたニュースを目にすると、「今年もあとわずかだなぁ」と感じるそうです。
この日、岩崎さんが立ち寄ったのは、四条烏丸に近い馴染みの店「ごはん処 矢尾定(やおさだ)」。
「やはり、大根焚きの季節は、あつあつの大根料理をいただきたいですね」と、岩崎さん。
自宅でも冬は大根を使った料理をよく作るのだとか。
「忙しい合間につくるので、私が作る大根料理はシンプルな家庭のおそうざいです。他のお野菜も入れて焚き合わせにしたり、おでんにたっぷり入れたりしますね」。
大根は箸で切るときに出し汁が飛び出してくるほどしみています。
「色が薄いのによく大根にお出汁がしゅんでいて、そこにほどよくのった白味噌の甘さが絶妙です。柚子の香りもアクセントになっていますね」とさらに盃を重ねます。
「この白味噌の甘味が、お酒を引き立てておいしいです。お出汁にも、少しお酒が入っているようなので、互いに引き立て合っている感じですね」。
京都人にはなじみ深い冬の風物詩「蒸し寿司」をいただきます
冬になると京都の料理屋や寿司屋に登場するのがこの蒸し寿司。
蒸し寿司は、温ずし(ぬくずし)とも呼ばれ、関西以西で冬に食べられる温かいちらし寿司のことです。因みに「ぬくい」は温かいを意味する方言。穴子、海老、錦糸卵、椎茸、かんぴょう、蓮根など盛りだくさんの具材を酢飯に取り合わせたものです。
関東のちらし寿司は酢飯に活きのよい鮮魚をのせますが、それに対して関西では火の通った具材を酢飯に混ぜ込み、上にもトッピングします。
京都には蒸し寿司を出す店は多く、地元では馴染みの深い冬の料理です。
矢尾定では、お客さんの希望に応じて、温かい蒸し寿司のほか、蒸さない状態の寿司も提供しているそうです。
具だくさんの温かい蒸し寿司には、冷やの大吟醸酒を
味わい深い大吟醸酒を少し冷やして取り合わせ、温かい穴子や海老、錦糸卵などをアテにちびりちびりといただきます。
フルーティーな味わいの大吟醸酒と温かい蒸し寿司は、冬の宵にしっくりと合う、絶妙な組み合わせです。
岩崎さんにとって蒸し寿司は、冬場にお店で食べるご馳走。寒いときにほっこりできるそうです。
一口食べた岩崎さん、「ご飯がほかほかで、身体が温もりますね」。
そのあと大吟醸酒を口に含み、「ふわ~っと華やかな香りが広がります。やさしい味わいで、蒸し寿司の味にぴったりですね」と、うっとりと盃の酒を見つめます。
「蒸し寿司は、蒸すことで酢のカドがとれて、まろやかな味になります。お酒も米を磨きに磨いて仕込んだ大吟醸酒。味にやわらかさがあり、ぴったりなんです。やはり蒸し寿司には大吟醸酒ですね」と満足気です。
「やはり伝統文化は、時代を経てもずっと継承していってほしいですね。着物も同様に、若い方にもどんどん着てもらえるよう普及させていきたいです。2022年も仕事やプライベートに忙しくなりそうですが、おいしい料理やお酒をたくさんいただける良い1年にしたいですね」と、来年の抱負についても語っていただきました。
■driccoきものホームページ
https://dricco-kimono.com/whats-dricco/
<取材協力>
住所:京都市下京区新町通綾小路上ル四条町361
営業時間:11:00~14:00/17:30~20:00
定休日:水曜
URL:https://www.yaosada.com
※新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2021年11月19日)
▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●上撰松竹梅
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shochikubai/
●特撰松竹梅<大吟醸>磨き三割九分
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/daiginjo_migaki39/
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com)
・京都出身のアナウンサーが新年を祝い、「七草粥」で身体をととのえ、「骨正月」に向けて酒を楽しむ噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/newyear_220107
・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/japanesefood_221104
・10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/sakeday_220930
・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭の神事とお酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gionfestival_220624
・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gionfestival_220603
・宇治の有機茶園社長が語る「新茶」とお茶割りの噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/media/works/v2/articles/240
・京都の篠笛奏者が語る花見と酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/hanami_sake_220401
・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「ひなまつり」の豆菓子と酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/hina_festival_220303
・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「京都の節分と酒」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/setsubun_220203
・京都の老舗のご主人が、紅葉を愛でながら京都中華をアテに酒を楽しむ噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/momiji_211105
・「鞍馬の火祭」を思いながら、京都の老舗扇子屋の主人が家呑みする噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/kurama_himatsuri_211001
・「重陽の節句」を前に、京都の老舗扇子屋の主人が菊酒を楽しむ噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/choyo_sekku_210903
・先祖をしのぶ「五山送り火」を前に、京料理の名店で一献傾ける噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gozan_okuribi_210806
・夏本番となるこの季節、祇園祭に想いを寄せつつ家呑みする噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/gion_matsuri_210702
・「夏越の祓(なごしのはらえ)」を前に、陶芸家が晩酌で半年を振り返りつつ、新たな作品に意欲を燃やす噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/nagoshinoharae_210611
・やすらい祭のお囃子に浮かれつつ、春の宵にお酒を一献傾ける噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/yasurai_matsuri_210402
・大の酒好き、祇園祭の囃子方が京弁当をアテに飲む噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/hanami_bento_210305