酒噺 ~もっとお酒が楽しくなる情報サイト~

出汁を楽しむ“京おでんと出汁割り”の噺

出汁を楽しむ“京おでんと出汁割り”の噺

2020,2,21 更新

少しずつ春の気配が漂いつつある2月の暮れ。
三寒四温とは言うものの、まだまだ寒い日続くこの時期は居酒屋に立ち寄って、熱燗と熱々の肴で体を温めて春の訪れを待ちたいものです。
ふらりと立ち寄った居酒屋で気軽に頼める温かいものの代表と言えば、なんといっても“おでん”ではないでしょうか。

じわっと出汁のしみた具と合わせるお酒の喉越しを思い浮かべるだけで、自然と笑みがこぼれます。今回はそんなおでんを楽しむお店の噺です。

はんなり、きっちり。出汁にこだわる京おでん。

 (2576)


和食文化の中心・京都。
一大観光都市でもあり“日本らしさ”を体現するこの街の玄関口となるのがJR京都駅です。
ここから徒歩5分ほどの場所に店を構えているのが、今回訪れた「京おでん だいすけ」。

ただのおでんではなく“京おでん”と銘打っているこのお店の魅力は、京都が誇る和食の基本、“出汁”に重きを置いたスタイルにあります。
店の暖簾をくぐった瞬間にふわりと鼻をくすぐるのは、鰹出汁の香り。
思わず、胸の奥まで吸い込みたくなる空気の中、笑顔で私たちを迎えてくれたのが、この店の大将である結縁大策(ゆうえん・だいさく)さんです。
 (2578)


「出汁に使うのは鹿児島の鰹節と利尻の昆布、鰹節は毎日市場から削りたてのものを仕入れます。鰹節は時間が経つと香りが抜けてしまいますから、やはり使う直前に削るのが一番。これをたっぷりと使って出汁を取っています」と結縁さん。

出汁へのこだわりは相当のものですが、それもそのはず。
この「だいすけ」は、祇園で40年続く有名和食割烹が手がけるおでん屋さんなのです。

和食の基本となる出汁はもちろん、食材の選び方から、味加減、お酒との相性まで徹底的にこだわっています。
 (2580)


「それから…」と結縁さんは話を続けます。

「おでんというと、何日も出汁を変えずに煮込み続けて、具材それぞれの味わいが溶け込んだものが良いとされることもありますが、うちの店のおでんはその正反対。毎日仕込みのたびに出汁を全て取り直します。その上で、煮立たせないよう大切に具材を仕込んでいくことで、出汁はどこまでも透き通り、味わいもクリアなおでんが出来上がります。これが、京おでんの“京”たる所以です。さらに私たちの店では、この出汁に合うようにおでんダネも京都らしいものを選んでいるのが特徴です。大根や練り物など、定番のタネはもちろん、湯葉(ゆば)に京あげ、生麩(なまふ)など、いずれも繊細な出汁の味で美味しさが引き立つ京の素材もご提供しています」。

出汁の香りに酔いしれる絶品おでんを!


結縁さんのお話が進むにつれて、店の奥からは出汁の香りがより深くただよってきます。
きっと鍋のなかでは、数々のおでんダネがクリアで繊細な出汁をその身に染み込ませているからでしょう。
ふとカウンターの奥を覗けば、琥珀色のつゆに泳ぐ具材の数々…。
たまらず「オススメのおでんをください!」とオーダーします。
 (2584)


間髪入れずにテーブルに登場したのは、大根に京あげ、牛スジに糸こん、生麩にロールキャベツ。

箸がスッと通り、透き通るほどに出汁の染み込んだ大根は一番人気です。
出汁を目一杯に吸い込んだ、肉厚な京あげもまた絶品。ほろほろに崩れる牛スジはなんと6時間以上煮込んだものだとか。
つるりと出汁をまとって喉の奥へと流れていく糸こん、しっとりもちもちのよもぎ入りの生麩はもはや麗しいとすら言える官能的な食感です。

 (2586)


ひと心地ついたところで、おでんをちょっとだけ離れて、お酒と合わせるおいしい肴を楽しんでみます。
木枯らしの吹く2月は、魚の身に脂が乗って美味しくなる季節。
オススメされたのは、寒ブリ。
毎日、京都の中央卸売市場で目利きをするからこその鮮度の高さで、包丁の当たった端までピンと立ち、頬張れば甘い脂が口いっぱい広がります。

とろりと脂が乗った寒ブリには、松竹梅「豪快」の熱燗がぴったり。
脂の甘さをゆっくりと堪能したら、お猪口でお酒を一口。ブリの香りと旨味の余韻が、お酒の香りと一体になってふわりと立ち上がります。

 (2588)


続いてはこちらも冬の肴の定番、真鱈の白子。
鮮度の高い白子は、生臭さとは無縁。
それをほんの少し湯がいて、たっぷりのポン酢と大根おろしでいただきます。
ぷちっと皮の弾けた瞬間に広がる、甘さと濃厚なコク。
寒ブリもそうですが、寒い日に楽しむ冷たいご馳走と&熱燗のコントラストは感動もの。
この季節、これほどまでに合う肴は他にないと思えるほどの美味しさです。

 (2590)


美味しい魚でお酒を楽しんだら、もう一度、あったかいおでんのおかわり。
大根と京あげ、それから出汁の中で柔らかく煮込まれ、何倍にも甘みを増したロールキャベツ、こちらも忘れがたい一品です。

程よく体が温まったところで、宝焼酎を本場京都の宇治抹茶で割った“宇治抹茶割り”をひと口。抹茶のほろ苦く豊かな香りが、おでんの余韻を深めてくれます。

 (2593)


「だいすけ」のおでんには、生麩や京菊菜など、いかにも京都らしいものはもちろん、ちょっと変わったタネがあるのも魅力。
結縁さんにオススメを聞くと「これですね」と小鉢が出てきます。このスピード感も嬉しいところです。

運ばれてきたのはなんと、ワカメのおでん。
仕込みの段階から1時間以上煮込まれたワカメは、とろりとした歯ざわりで、温かく濃厚な旨味が喉を流れていきます。
これに合わせるのは、その繊細な味わいを引き立てる「松竹梅 白壁蔵」の“生酛純米(きもとじゅんまい)”。こちらは冷やで楽しみます。
透明感のある“生酛純米”ならではの柔らかな香りとキレのある飲み口が、出汁と見事に調和します。

 (2596)


最後にオーダーしたのは、出汁を楽しむ一品・日本酒の“出汁割り”です。

東京ではおでん屋さんや小料理屋さんで定番となりつつある飲み方ですが、関西では味わえるところはまだまだ少ないようです。このお店で”出汁割り“が始まったのも、そのおいしさを知った常連客が、結縁さんに頼み込んだことでできたメニューなのだとか。
松竹梅「豪快」の熱燗に、おでん出汁を1:1で割り入れたものがこちら。
鰹の旨味と、数々の具材から染み出したおでん出汁は、それだけで飲んでも極上。そこに熱燗が加わることで、更に深いコクと日本酒ならではの甘く豊かな香りが楽しめます。さらにこの店では、鰹節に唐辛子や海苔などを混ぜ込んだ「香味かつお」と呼ばれる薬味をちょっと足していただくのが流儀だとか。薬味用の匙(さじ)でほんの一杯入れるだけで、旨味が更に広がります。
熱燗が出汁の味わいでほんのりと和らぎ、後味の香ばしさがたまらない“出汁割り”。その美味しさは、ついつい盃が進んでしまう一品でもあります。

身も心も温めてくれる出汁とお酒のコラボレーション

 (2599)


京おでんに出汁割り。さらに時折はさむ肴の美味しさで、すっかり身体はポカポカに。
出汁の香りに後ろ髪を引かれながら、心地よい余韻とともに、暖簾をくぐって帰途につきます。

京料理や和食というと、なんだか敷居が高いような気がしていましたが、この店でその思いは霧消してしまいました。
京都料理の真髄を身近に、そして手軽に味わうなら「京おでん だいすけ」へ。
大将のこだわった料理とお酒を堪能しつつ、“出汁割り”の注文は必須ですよ。

 (2601)


<取材協力>
京おでん だいすけ
住所:京都府京都市下京区木津屋橋通新町西入東塩小路町597-2 アパホテル京都北 1F
営業時間:16:00~23:00 (L.O.22:30)
定休日:月曜(1月のみ日曜定休)

■料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

・松竹梅「豪快」辛口(飲食店限定商品)
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/

・松竹梅「白壁蔵」生酛純米
https://shirakabegura.jp/

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/


出汁を楽しむおでんの噺の後は、こんな“出汁”や“おでん”の記事もどうぞ

お酒好きにこそハマる“ラ飲み”“う飲み”の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/f8jfb

おでんと燗酒でモーニング“立ち飲み”の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/X9xB0



   

\この記事をシェア/

  • twitter
  • facebook

関連記事