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おでんと燗酒でモーニング“立ち飲み”の噺

おでんと燗酒でモーニング“立ち飲み”の噺

Morningは英語で“朝”のこと。 しかし、カタカナで“モーニング”と書けば、日本では喫茶店や飲食店で出される朝食を思い浮かべる方が多いはず。 一般的には、コーヒーとトースト、おまけでゆで卵がついてくる、と言うのが定番ですが、大阪の下町ではちょっと事情が違うようです。 もちろん、この“酒噺”で登場するのはお酒。 禁断の、でもお酒飲みなら誰もが一度は試してみたくなる“朝酒”を求めて、大阪の東・布施へと出かけました。

工場の街の歴史ある角打ち

近鉄布施駅前に続く商店街の中にある「小西酒店」。
お店のオープンはなんと朝10時。開店早々にお店にお邪魔すると、既にカウンターはにこやかに話す地元のお客さんでいっぱいです。

カウンターの上には小鉢の並んだショーケース、そのまた上には大鉢のお惣菜の数々、さらにカウンターの奥を覗けば、くつくつと湯気を立てて炊き込まれるおでん。
お客さんは、ビールや缶チューハイ、コップ酒を嬉しそうにあおりながら、料理に箸を伸ばしています。

そんな店内の様子は、朝を迎えたばかりなのに夜までタイムスリップしてしまったような光景です。

「ようこそいらっしゃい」と、お客さんの対応をしながら声をかけてくださったのが、有限会社小西酒店・代表取締役の小西恭子(こにし・やすこ)さん。
朝からお店を開いている理由について、早速伺いました。

「もともと、布施の周辺には工場が多かったんです。昔は夜も工場が稼働していてそこの工員さんの夜勤が明けて、家に帰る前に一杯飲んで行かれるのがうちだったんですよ。今でもその頃の名残で朝からいらっしゃる方もいますし、深夜タクシーの運転手さんが勤務明けに来ることも多くなりました。それに、朝食がわりにふらっと訪れる方も少なくないんですよ。常連さんは“モーニング”なんて呼んでくれていて、たとえばおでんの豆腐と熱燗でキュッとやって、さっと出て行くなんて粋な飲み方をしています」。

祖母の味と季節の味、多くの酒飲みを魅了する素朴なお惣菜

夜勤明けの〆の一杯や、朝食を取るなら角打ちのおつまみだけでは寂しいもの。
しかし、小西酒店には角打ちとは思えないほどたくさんの料理が並んでいます。それも、見たところ出来合いのものはほぼないようですが…。
キョロキョロと店内の料理を見ていると、小西さんが笑って解説してくださいました。

「小西酒店の創業は大正12年。私の祖父の時代ですが、その頃はまだ料理は出しておらず、ピーナッツや乾き物を用意していたんです。その後、祖母がおでんを出すようになって、そこから細々とした料理を出すようになりました。私も子どもの頃からお店を見ていましたし、お店で出される祖母のおでんや惣菜の味に親しんでいましたから。私が店を継いで作るのも、祖母の味が原点です」(小西さん)。

カウンターにずらりと並んだ惣菜におでん。これだけのものを作るのは大変なのでは?
すると、小西さんは朗らかに笑いました。

「料理はほとんど私が作っています。とは言っても、手のかかるものはほとんどないんです。家庭料理のように、さっと作れてしみじみ美味しく思えるものが基本。ただし、旬のものは常に何品か用意しています。毎日のように鶴橋の市場へ足を運んで、季節の魚や野菜を選んできているんです。なにより毎日、ウチで食べる料理を楽しみにきてくれる方がいると思うとつい頑張ってしまいますね」。

思い切ってはじめる贅沢な“朝酒”

料理の話を聞きながらカウンター越しの店員さんとお客さんの和やかなやり取りを聞いていると、もう注文せずにはいられなくなってきます。

最初にお願いしたのは、おばんざいの3種。
注文した瞬間に、大鉢からさっと盛り付けて出してくれます。提供時間わずか15秒。
そのスピード感がなんだか嬉しくなってきます。

しっかりと煮締まって飴色に光る稚鮎に、口の中できゅっきゅとネギが音を立て、甘いアオヤギの身が弾けるアオヤギのぬた。ふわりと火の通った卵をまとったほくほくのゆり根。
どれも懐かしく、美味しい一品ばかり。

食材を揃える手間、料理をする手間を考えれば家庭ではできないまさに“ご馳走”です。
そんなおばんざいと楽しむ一杯目に選んだのは、最近、小西酒店でも人気が上がっているという宝焼酎の「抹茶割り」。常連さんの中では「濃いめ」など独自の割り方もあるほど愛されているそうです。
あっさりとした惣菜と抹茶割りでひと息ついたら、ちょっと油気が恋しくなりました。

そこで注文したのが、サクサクに上がったワカサギとタコの唐揚げ。

ワカサギはほろほろと口の中で甘く崩れ、タコは繊維がギュッとしまって噛みごたえ抜群。スパイスと塩気の効いた衣がまたよく素材に合っています。
もちろん、唐揚げといえばタカラ「焼酎ハイボール」。
カリカリの食感とほのかな脂の甘みを感じたら、さっと焼酎ハイボールをひと口。間違いないコンビです。

続いてお願いしたのは、小西さんのおばあさまの代から受け継がれているおでん。

具は豆腐にロールキャベツ、梅焼きをお願いしました。
大阪人にはおなじみの梅焼きですが、他県ではなかなか見かけないものなのだそう。
魚のすり身と卵を使った、甘さ控えめの伊達巻ともいうべき素材です。
ふわふわの梅焼きに、素材の旨味に出汁が十分に“しゅんだ”(関西弁でしみ込んだの意)おでんの美味しいこと。

これに合わせるのは燗酒を置いて他にはありません。
松竹梅のまろやかな味わいが、出汁の旨味と甘味を幾重にも膨らませてくれます。

「おでんやったらこれも食べて」と小西さんがオススメしてくれたのは、大野の里芋に大根。
ねっとりとした食感、中まで出汁を含んだ旨味たっぷりの里芋は飲み込むのが惜しくなる逸品です。

お腹も落ち着いてきましたが、もう少しゆったりとお酒と料理を楽しみたいところ。
小西さんがこの日、市場で仕入れてきた旬のものは香箱(せこ)ガニ。
注文すると素早い手つきで、甲羅を外し食べやすい形で提供してくれます。

カニの繊細で甘い香りを邪魔しないあっさりしたお酒を、と選んだのはタカラcanチューハイのプレーン。
すっきりとした焼酎のうまみを感じるプレーンな味わいの缶チューハイは、ジューシーな脚の実にも、濃厚でたっぷりと詰まった内子(卵)にも優しくそっと寄り添ってくれます。

“思いやり”と“心地よい距離感”も楽しんでほしい

小西酒店は、小西さんと妹の藤野由里子さん(右)、小西さんの従姉妹の服部美紀さん(左)と、息子さんのお嫁さん(残念ながら本日おやすみ)の女性4人で切り盛りされている。


「最近は若い人も増えたけど、やっぱり昔からの常連さんも大切にしたいね」と小西さんは話します。

「長く通ってくれる方は、飲み方がきれいなんです。さっと飲んで、つまんで颯爽と帰る姿が格好いいですし、酔っ払って大声をあげる人もいない。みんなお互いに気を遣いつつ、気持ちいい距離感を作ってくれているんです。これからうちに来てくれる方も、私たちの料理だけでなく、このお店の空気感を大切に味わってくれたら嬉しいですね」(小西さん)。

「朝からお酒なんて、世間様に申し訳ない」と思いながら始めた取材でしたが、終わってみればとても豊かで幸せな気分でいっぱい。
毎日、というのは流石にできませんが、たとえば、よく晴れた休日の朝、早起きしてお酒と気持ちの詰まった料理を食べに出かけるのも悪くない。そう思える素敵なお酒との出会いができました。

皆さんも、たまには思い切って酒場で“モーニング”を楽しんでみませんか?

<取材協力>
有限会社小西酒店
営業時間:平日・土曜 10:00〜19:00、日曜・祝日 10:00〜17:00
定休日:水曜ならびに月1回の不定期休日あり
住所:大阪府東大阪市長堂1-2-4


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