酒噺 ~もっとお酒が楽しくなる情報サイト~

【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸東灘・小田商店の噺

【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸東灘・小田商店の噺

2023,4,14 更新

酒販店の片隅でさっとお酒をいただく「角打ち」。地元の人が愛する、地域の角打ち店の魅力を達人・芝田真督(しばた・まこと)さんと探索していくシリーズです。

コンビニエンスストアや大規模なスーパーがまだそれほど多くなかった時代、各家庭に調味料やお酒を届けていたのは近所の酒販店でした。今では見られなくなりましたが、30年ほど前までは台所に続く勝手口に、「酒屋さんの御用聞き」が来て、不足している醤油や味噌、お酒などの確認をしていたものです。こうした経緯から酒販店の多くは今も住宅街の中心部にあり、そのうちのいくつかは地域の大人たちが集まる貴重なコミュニティの場となっています。

今回訪れた小田商店もそんな地域に愛される集いの場となっている角打ちのひとつ。
ただし、集う人々はちょっとだけ他の地域と変わっているようです。

住宅街の中にある昔ながらの角打ち

 (8749)

神戸市東灘区、JR甲南山手駅から徒歩10分ほどの住宅街の中にある小田商店。
ラックとショーケースに囲まれた店内には、6人ほどが座れるテーブルと、奥にはバックヤードを改装したこちらも6人ほどで利用できる通称『VIP』ルームと呼ばれる飲食スペースが用意されています。
 (8751)

『VIP』ルームと呼ばれる飲食ができるスペース
「こじんまりとしていますが、それだけお客さん同士の一体感が出るんですね。」と芝田さん。「小田商店さんは、お店と常連さんのつながりが強いのが特徴で、それを実感できるのがこのVIPルーム。ここのテーブルは本来“焼き台(焼き鳥などを焼く炭火のコンロ)”となっていて、お客さんが自分で焼き鳥を焼きながら飲食できるのです。集気・排気用のダクトなども用意されていてかなり本格的。この焼き台やダクトは、建築関係を生業とする常連さんが、“このお店にこんなものがあれば楽しいだろう”と手ずから造られたそうです。今は、まだ新型コロナウイルス感染予防のため使用できませんが、いつかお客さんが使用できる日が来るといいですよね」。
 (8753)

小田商店の創業は1965(昭和40)年、現在の店主の小田雄二さんのお父様が立ち上げたお店で、創業当初から角打ちをされていたそうです。ただし当初は、乾き物や軽いスナック程度で、雄二さんに代が変わってから手料理などを提供するようになりました。
このコンパクトで落ち着くスペースと住宅街の中にある立地から、平日には地域の方々や近隣の企業にお勤めの方、休日には地域の野球チームの監督やコーチなどが集まって、お酒を片手にワイワイと話に花を咲かせています。

小田商店のもうひとつの顔、“だんじり”交流コミュニティ

 (8756)

小田商店のある神戸市東灘区は、実はだんじりの街。“だんじり”というと、大阪府岸和田のイメージが強いかと思いますが、実は“だんじり(祭りの山車)”を使う祭礼は近畿をはじめ、中国、四国地方に幅広く分布しています。ここ東灘区も江戸時代から続くだんじりの祭を守り続けていて、毎年5月には近隣5地区より32基のだんじりが一同に巡行します。小田商店はこの5地区からアクセスしやすく、なにより東灘生まれ東灘育ちで若い頃から、だんじりの引き手からブレーキ役までを務める小田さんは、まさに祭りの重鎮。そのため、お店には小田さんを慕って日々多くの人々が集まります。
 (8758)

「だんじりの飾りなどが壊れた時の対処を聞きたいとか、他の地区の情報を交換しに来る人は多いですね。みなさん地域愛、だんじり愛に溢れています。でもことお酒の席でだんじりの話題になると、議論が熱くなってしまうこともありますが、意外とそこまでヒートアップしないですね。祭りの前には和気あいあいと状況を語り合い、祭りが終われば大いに成功を喜び合ってお酒を酌み交わしていますよ」と小田さん。
 (8760)

小田さんの視線の先には、地区の皆さんで撮っただんじりの写真や、※懸装品(けそうひん)が誇らしげに飾られています。小田商店は、人と、地域、故郷の祭りをゆるやかにつなぐ、地元のコミュニティとして重要な役割を担っているのです。

※山車、山鉾、屋台、神輿(みこし)などを装飾するもの

お酒がすすむ懐かしいおつまみ

 (8763)

小田さんにお話しを伺いながら、おつまみとお酒をいただくことに。
「ちょっと待ってね」と声をかけてショーケースから小田さんがめざしとフランクフルトを取り出して網でこんがりと焼いてくれました。
 (8765)

焼きたてのめざしは、身の締まったほどよい塩気で、噛むほどに旨味が滲み出て、辛口の“タカラ「焼酎ハイボール」<レモン>”が進みます。フランクフルトも同様に、こんがりと火を通したことで、香ばしさが際立ち、皮はパリッと歯ごたえがアップし、肉汁が口の中にほとばしります。
 (8767)

続いていただいた玉子焼きは、ボリュームたっぷり。ほのかな甘さが感じられる懐かしい家庭の味わいで、友人や仲間と共に、お酒を傾けながらちょっとずつつまむのも小田商店ならではの楽しみ。
 (8769)

こちらもさっと出てくる一品、ほうれん草のおひたしです。みずみずしいほうれん草をさっとゆがいて、絞り出汁醤油をさっと回しかけただけなのに、しみじみと感動できるおいしさです。さっと口に入れ、“タカラ「焼酎ハイボール」”を飲むと、「この組み合わせが最高!」と思わず声が出てしまいました。
 (8771)

最後はちょっぴり贅沢にハムステーキをいただきます。合わせるお酒は、元祖辛口チューハイの“タカラcanチューハイ<レモン>”。
脂たっぷりのハムステーキはそのままいただいてもおいしいのですが、ウスターソースをかけてもおいしくいただけます。どこか懐かしい、濃厚な油とソースを、“タカラcanチューハイ”の爽快な刺激がさっぱりと洗い流して、次々と箸が進んでしまいます。

いつまでもあってほしい、地域住民の集いの場として

 (8774)

「この店は、東灘に住む常連の方から “すごくいい角打ちがあるから”と教えていただいたんです。本当に、お客さん同士の仲が良くて、いつでも温かく迎えてくれるのがこの店の良いところですね」と芝田さん。

「最近では、20代の女性の方もいらっしゃるようになってきましたね。女性のおひとり様も大歓迎です。うちは皆さん、お酒の飲み方もきれいですから、安心してくださいね。お酒のこと、食事のこと、だんじりについても質問していただければ、私も常連のみなさんもうれしいです」。

だんじりの記念品やポスターなどに混じって、小学生が社会科見学に来た際のお礼の手紙が並ぶ小田商店。酒を売るだけではない、決してコンビニやスーパーでは代替できない価値を持っているのだなと実感できます。みなさんも、忘れかけていた地域のつながり、人の温かさを感じたい時は、甲南山手の駅からのんびりと散歩がてら、こちらのお店を訪ねてみませんか?

<取材協力>

 (8777)

小田商店
兵庫県神戸市東灘区本山中町2丁目5-27
TEL 078-431-0897
営業時間11:00~23:00
定休日 日曜
(取材日:2023年3月15日)

記事で紹介したお酒はこちら
タカラcanチューハイ<レモン>
タカラ「焼酎ハイボール」<レモン> 

角打ちのことをもっと知れるこんな噺もどうぞ
溢れる酒愛、地元愛。「角打ちの日」の噺 
【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸長田・森下酒店の噺
   

\この記事をシェア/

  • twitter
  • facebook