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【兵庫・達人と巡る角打ち】垂水・フジワラ酒店の噺

【兵庫・達人と巡る角打ち】垂水・フジワラ酒店の噺

2020,12,18 更新

近年、酒好きの間で流行りつつある「角打ち」。実は住宅街などにひっそりとたたずんでいることがほとんど。地元の人が愛する、地域の角打ちの魅力を達人と巡るシリーズです。

酒販店の一角でお酒が飲める角打ち。近年流行となりつつあるこのお酒の楽しみ方ですが、多くの場合角打ちを提供している酒販店は、住宅街などの一角にあり、ふらりと立ち寄るというのはなかなかハードルが高いもの。
そこで、酒噺では兵庫県を中心に活躍する、文筆家であり、町歩きや純喫茶、角打ちなどの研究家でもある芝田真督 (しばた・まこと)さんに、角打ちの道案内をオファー。地元の人が密かに楽しむ、地域の角打ちの魅力をご教授いただきました。

芝田真督さんプロフィール

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日本ペンクラブ会員。神戸の下町に古くからある大衆酒場や大衆食堂、純喫茶などの魅力を伝える文筆家。
著書『神戸ぶらり下町グルメ」『神戸立ち呑み八十八カ所巡礼」『神戸懐かしの純喫茶』(以上神戸新聞総合出版センター)のほか、『兵庫下町まちあるき(兵庫図書館)」『純喫茶で学ぶ食のルポルタージュ( KAVC )」『下町グルメのススメ(下町芸術大学)』などの案内役など精力的に活動する。
現在、サンテレビWebサイトにてコラム「神戸角打ち巡礼(https://sun-tv.co.jp/column/kakuuchi)」 を連載中。

【Webサイト】 http://msibata.org/
【神戸立ち呑み巡礼】 http://msibata.org/tachinomi/
【ブログ】 https://ameblo.jp/msibata/

元気なご夫婦と娘さんが守る垂水の角打ち

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今回芝田さんと訪れたのは、神戸市垂水区にあるフジワラ酒店。
JR・垂水駅から、山手に向かって徒歩5分ほど。垂水教会の隣、静かな住宅街の一角に佇む酒販店兼角打ちです。

芝田さんお気に入りのこのお店、「飲み仲間の紹介ではじめて訪れた」そうなのですが、話を聞いてみると、かつて芝田さんのご実家にお酒の配達に来ていたお店だったそうで、以来、不思議な縁を感じているのだそう。

「ここの魅力は素敵な店主ご夫婦と、手頃な価格の料理にお酒、それから集う方々でしょうか。公式では午後2時半の開店ですが、住宅街らしく2時ごろには地域のリタイアされた方々が飲みにいらして、開店時刻にはもう満員ということもあります。この常連さんたちとの会話も楽しく、ここに来れば垂水のことがなんでもわかるという感じがしますね」(芝田さん)。
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お店は西向きの正面が酒販店の入り口で、南側の側道に角打ちの入り口があります。
暖簾をくぐると、実直そうなご主人と穏やかな笑顔の奥様が迎えてくださいました。

60年間病気しらずの奥様の秘訣

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フジワラ酒店の歴史は古く、明治期には兵庫区の和田岬で酒販店を開業。昭和18年の大戦の最中、和田岬に三菱の工場ができると、これに伴い現地に移転しました。
当初は酒販店の他に料亭も営んでいたそうですが、やがて酒販店と角打ちというスタイルになっていったそう。

芝田さんのおっしゃるように、この店の自慢は奥様と娘さんの手料理。
毎日変わる5品ほどの小鉢メニューの他、冬にはおでんなどもカウンターの中で温かな湯気を上げています。さらに、焼きそばやピザなど、お客さんの要望でメニューにはない料理を提供することもあるのだそう。
奥様が毎日買い物に出かけ、時間をかけて作る日替わりのメニューはすべて税込270円! その手頃さにびっくりしますが、さらに驚くべきはその価格が60年間でたったの20円しか値上げされていないところです。
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「儲けがあるとかじゃなくて、ここに来てくれる方が美味しいって言ってくださるのが嬉しくて。もう60年、日曜日以外は1日も欠かさずお料理をして、毎日店に立っているんです。おかげで大きな病気は一度もしたことがないんですよ」と笑う奥様。いやはやその優しさ、頭が下がります。

芝田さん曰く、奥様は兵庫の名物「いかなごのくぎ煮」の名手で、テレビ出演をしたこともあるのだそう。こうした、地元の人でなければわからない街の情報が聞けるのも、角打ちの醍醐味のひとつです。

心のこもった料理といただくお酒の数々

お話を伺っていると、開店の時間に。早速暖簾を開けて、ちょっとご年配の紳士がすっとお店に入っていらっしゃいました。
和やかに、自然と始まる店主さんと常連の世間話。私たちもここで、お料理とお酒をいただくことにします。
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はじめにいただいたのは、ハマチのあら煮。
さすがは漁港が近い垂水。鮮度の高いあらにはたっぷりと脂と身がついています。これだけ脂の乗ったあらを、しつこく感じさせないのが奥様の腕なのでしょう。生姜の香りが程よく効いたほろほろの身は、お酒と一緒にいつまでもつまんでいたくなる、素朴な美味しさです。

タカラcanチューハイ<ドライ>のすっきりした口当たりと合わせると、身と脂の甘さがさらに引き立ちます。

「最近では少なくなりましたが、昔は常連さんが釣ってきた魚を使ったお料理の御相伴にあずかったこともありますよ」(芝田さん)。
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続いては、すじ煮。これも兵庫を代表するお酒のつまみです。

「すじ煮は醤油で煮るものもありますが、これは味噌ですね。こっくりとした味がお酒によく合います」と芝田さんも美味しそうに箸を伸ばします。
このすじ肉、実は神戸の老舗肉店のもので、予約しなければ手に入らないものだとか。
丁寧に灰汁を取り、柔らかくなるまで煮込む手間を考えると、270円なのが信じられないひと皿です。

甘辛いすじ煮には、きりりとしたタカラ「焼酎ハイボール」<レモン>がぴったり。箸が進みすぎて、お酒も煮込みもすぐになくなってしまうのが残念です。
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小鉢が続いた後は、冬の醍醐味・おでんをいただきます。

「昔は関西では関東煮(かんとだき)と呼んだものですが、今はおでんと呼ぶことが多くなりましたね。なんだか少し寂しいです。ここのおでんは昆布と鰹、それからいりこで出汁を取ったもの。すじ肉も入って、あっさりとした正しい関東煮です」(芝田さん)。

身も心も温まるおでんと一緒に、上撰松竹梅の冷やをコップ酒で。
出汁をたっぷり含んだおでん種を、きりっと冷えた日本酒で流し込むと、美味しさに喉がきゅっと鳴るような心持がします。

この日は奥様のお料理を堪能しましたが、時には娘さんのちょっとハイカラなメニューも登場するそう。また訪問する楽しみができました。

角打ちデビューのお作法

お酒とお料理ですっかり気持ちがほぐれたところで、芝田さんに角打ちの流儀についてお話を伺いました。
静かな住宅街にあるフジワラ酒店。常連のお客様たちの宝物のようなお店なので、一見の私たちが訪れる際には何か心得ておかなければならないことがあるのでしょうか。
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「宝物というのはその通りですね。角打ちというと立ち飲みが主流ですが、この店には足掛けのバーに加え、椅子も用意されています。年配の常連が多いからこその配慮ですね。フジワラ酒店さんもそうですが、角打ちを訪れる際に気をつけた方が良いのは、訪問する人数。一人で行くのが一番いいですが、多くても二、三人までにしておくことをお勧めします。店のどこに行けばいいかわからない時は、遠慮なく店主さんに聞きましょう」。

ちなみに、芝田さんのお話に出た、カウンターの足元にある足掛けバーは、片足を乗せるためのもの。
乗せている足を時々入れ替えることで長時間の立飲みでも足が疲れないという、角打ちには欠かせない相棒のような存在です。
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さらに、芝田さんは続けます。

「また、カウンターなどの場所を独占しないこと。常連さんには居場所がありますからね。それさえ守れば、難しく考えず、店主さんや常連さんとの会話を楽しめばいいと思います。食べ物を頼む時は、まずお店の外から中の様子を伺って、注文の仕方やマナーなどを確認してみることです。そして中に入ったら他のお客さんを見習って、美味しそうだなと思ったアテを頼んでみるのがいいと思います。一度来たお客さんの顔を覚えている店主さんもいますし、気に入ったお店へ通う内に、徐々に馴染んでいけるはずです」。

お酒と料理を楽しみながら、芝田さんと常連さんも交えて語らうことしばし。
すっかり楽しい気分になったところで、座はお開き。
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「常連さんがいらっしゃって、身体が続く限りお店は開けていきたいですね。またいらしてください」とおっしゃる、ご主人、奥様と娘さんに手を振って、次のお店へと向かいます。


芝田さんの案内で次に向かうのは、神戸・西元町。少しレトロな住宅街にたたずむ、歴史ある角打ちです。
次回の角打ち巡りもお楽しみに。
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<取材協力>

フジワラ酒店
住所:庫県神戸市垂水区瑞ケ丘3-4
営業時間:14:30~20:00(自粛期間中は〜19:00)


▽料理と一緒に紹介したお酒はこちら

・タカラcanチューハイ<ドライ>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/regular/lineup/

・タカラ「焼酎ハイボール」<梅干割り>
https://shochu-hiball.jp/lineup/original.html

・上撰松竹梅
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shochikubai/

▽その他の角打ちの噺はこちら

・笑顔とともに馴染みが集う角打ち“さんばし”の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/5Gee6

・おでんと燗酒でモーニング“立ち飲み”の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/X9xB0

・親子の絆がつくる、都会の角打ちの噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat3/mqh4A
   

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