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笑顔とともに馴染みが集う角打ち“さんばし”の噺

笑顔とともに馴染みが集う角打ち“さんばし”の噺

しっかりと働いた日の、仕事終わりの一杯は何物にも代え難いものです。仕事場からの帰り道、一杯の楽しみに新しいお店を発掘するのもいいのですが、日々の疲れを癒すには、やはり馴染みの店主と常連がいる行きつけの店がぴったり。今回訪れた角打ちも、そんな常連客がほとんど毎日集うという、驚異のリピート率を誇るお店です。さて、その人気の秘密を確かめに行ってきました。

角打ち&立ち飲み天国・神戸

今回訪問したのは、神戸市兵庫区・和田岬駅から徒歩5分ほどにある「ピアさんばし」。
海側には、古くから酒造をはじめ造船、軽・重工業など各種産業が製造拠点を構えており、その工場で働く人々の憩いの場所として、角打ちや立ち飲みの文化が発達。
現在でも100軒を越す酒場があるという、まさに角打ち・立ち飲みの天国なのです。

「ピアさんばし」は1925(大正14)年創業。
近隣には、造船・電機の工場が並び、そこで働く人々とともに95年の歴史を重ねてきた老舗です。
店の前にそびえるのは、かつて和田岬にあったとされる、日本最古の鉄筋作り灯台のレプリカ。
店内は馬蹄型のテーブルに、船燈をあしらった壁が目を引く客船のキャビンのような作りとなっています。

「店名の“ピアさんばし”のピアは桟橋(さんばし)のこと。私の名前も三橋(さんばし)なので同じ音の2つを重ねて“ピアさんばし”。さらに海に近いこの街で、仕事から帰る皆さんが、船着場に停泊するキャビンでお酒を楽しむような雰囲気にしたいと考えて、この内装にしたんです」と話すのは、この店の3代目である三橋敏弘(さんばし・としひろ)さん。

古くから続く酒屋&角打ちを、平成2年に店内を改装。
現在は、4代目・息子の優策(ゆうさく)さんとともに、暖簾を守り続けています。

訪れる人の9割が常連客

3代目・三橋敏弘さん(左)と4代目・優策さん(右)
「うちに来るお客さんは9割くらいが常連の方で、ほぼ毎日いらっしゃいます」と敏弘さん。

「みなさん、それほど長居をされることはありませんね。昔から1人40分ほど、使うカウンターの幅は40cmほどで、さっとお酒と肴を召し上がって帰っていかれます。頼むメニューの組み立ても決まっていて、流れるように頼まれますよ」。

ほとんどの方が常連ともなると、客同士も互いに気心が知れているようで、入店する客があるたびに、馬蹄型のカウンターから「遅かったな!」、「おつかれさん」といった声が。
近況の報告など、親しげな会話が始まります。

「みなさん、飲み方もきれいで仲間同士やカウンター越しに私や息子と会話を楽しんでくれています。ここでは当たり前ですが、ご注文いただいたメニューは必ず注文の順番に出すことを心がけています。早く出るメニューがあってもそれは変わりません。誰もが心地よい距離感で、一日の疲れを癒せるようにと私たちも、一人ひとりのお客さんにしっかりと向き合っているんです」(敏弘さん)。

自由で素朴で、格安で。これぞ角打ちの醍醐味

会話の弾むカウンターで敏弘さんのお話を伺っていましたが、ふと気づけば周りは常連のお客さんが席を囲んでいる状態に。
私もみなさんに混じって、お酒と肴をいただきます。

角打ちらしくショーケースからお酒を選んで、肴は店内にあるラックに並べられたものを自分の席へと運んでいきます。

(※)現在は、提供しているおつまみの数は半数程度になっています。
ずらりと並んだお惣菜系のおつまみは20種類ほど(※)。100円〜380円まで容器によって値段が決まっている明朗会計です。
しかも揚げ物や炒め物、サラダなどのおつまみは、店のベテランスタッフ岡さんの手作り。唐揚げに卵焼き、シュウマイに魚のフライなど、どこか懐かしく、しみじみと美味しい「おふくろの味」的なラインナップ。
そのままいただいてももちろん美味しいのですが、ちょっと温かいものが食べたい時は、このお惣菜を店内のフライパンや電子レンジで各自加熱することもできます。

お惣菜以外にも、いわゆる“乾きもの”もずらりと用意されているので、お酒メインの方はこちらもおすすめ。

価格も70円からと実にリーズナブルで、ラックの端に紐で結ばれたハサミを使ってパックを開けてからカウンターやテーブルへ持っていきます。

今ほど料理にこだわった角打ちが少なかった頃、乾きものメインのおつまみを陳列する店の多くがこの紐付きハサミを用意していました。歴史を重ねた角打ちならではの、なんとも合理的で、どこかノスタルジックな風景です。

あれこれ目移りしながらまず選んだのは、海鮮サラダにナスのはさみ揚げ。
酒席の一杯目、乾いた喉にはすっきりとしたタカラ「焼酎ハイボール」。
ドライの強めの刺激が、始めの一杯にはたまりません。

油を吸ってちょっとしんなりとしたナスの間から感じる、肉の歯ごたえと旨味。
海鮮サラダは、かまぼこや魚介にこってりとしたマヨネーズが絡んで、時折口の中で弾けるとびこが楽しい一品です。
いずれも、飾らない実直な美味しさに心がほっとします。

喉もお腹もちょっと落ち着いたところで、卵焼きにウインナー、それから鴨のスモークをチョイスします。

しっかりした歯ごたえなのに、あっさりヘルシーにいただける鴨は、ふわりと柔らかい卵焼きと、懐かしく素朴な味わいのソーセージとも好相性です。

優しく素朴で食べ飽きない味わい系の2皿に合わせるのは、寶「抹茶ハイ」。
まろやかな抹茶の風味が楽しめ、無糖で甘くないのでそれぞれの料理とぴったりとはまります。

次はちょっと趣向を変えて、お店でも人気のスパークリング清酒「澪」をいただきます。

心地よい炭酸とほのかな甘さが特徴の「澪」には、やはり優しい味のお惣菜を。
柔らかなマカロニの食感に、ハムの塩気、それをうまくまとめるマヨネーズの酸味が嬉しいマカロニサラダは、ふとした時に無性に食べたくなるもの。家庭料理ではおかずや洋食の付け合わせですが、おつまみとしてお酒と合わせるとその美味しさが輝きます。

魚の旨味とほのかな甘さ、混ぜ込まれた野菜の食感が嬉しいさつま揚げも、侮りがたい一品。レンジでちょっとあたためると香ばしさとともにおいしさもアップします。
シンプルで馴染み深いこうしたお惣菜も、角打ちのこの環境でいただくと、家庭で食べるのとはちょっと違った顔を見せてくれるから不思議です。

角打ちの〆はやっぱり日本酒で。
お料理も手がける岡さんが、これまた手慣れた手つきで上撰松竹梅をコップの淵ぴったりに注いでくれます。

甘辛く炊いたつぶ貝に、らっきょう。
日本酒にぴったりの肴で、ゆっくりといただきます。

溢れそうなコップのフチに、顔をもっていって、まずはひと啜り。
口の中に日本酒が飛び込んでくると、「立ち飲みっていいなぁ」としみじみ感じます。
少し硬めに炊かれたつぶ貝は、いつまでも噛んでいたくなる美味しさ。

合間につまむらっきょうの甘すっぱさが口をキリッと引き締めてくれて、1杯のつもりが思わず2杯…とコップを持つ手も注文の口も忙しくなってしまいます。

ふらりと訪れてのぞいてみたい、角打ちコミュニティ

「三橋(敏弘)さんは声が大きいでしょう? この声を聞くと“ああ帰ってきたなぁ”って思うんですよ。仕事終わりの僕たちを労ってくれるのがわかって、ほっと一息つけるんです」そう語るのは、一人の常連さん。

すると、カウンターを挟んだ向かいから、敏弘さんの人となりを伝える色々な声が飛び交い始めました。その声に笑いながら、時に冗談を交えて受け返す敏弘さん。
店内は和やかで温かな一体感に包まれています。
常連が多い角打ちというと、ちょっと敷居が高いような、打ち解けにくいような印象を抱く人もはいるかもしれませんが、実際に立ち寄ってみるとそんな気遣いは無用のようです。

お客さんと敏弘さんが生み出す和やかな空気が漂うピアさんばしでも、昨今のコロナウイルスの影響から、以前のような賑わいが見られる日が減ったそうです。
ですが、そんな状況下だからこそ、敏弘さんの「お酒を愛するお客さんへの想い」が光ります。
「家にいることが増えたでしょう?だから、お持ち帰りにおすすめのお酒を看板に出すようにしたんですよ」。そう言って、朗らかに笑う敏弘さんの様子は、先の見えない状況下で塞ぎこみがちな心を解きほぐすようなパワーを感じました。

お店では、アルコール消毒の準備はもちろん、感染症対策としてお客さまとの間隔を空けるなどの対応もしています。
神戸の港町に訪れた際には、地域を知り尽くした店主や、フランクで陽気なお客さんなど、素敵な人々との出会いを求めて立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

※本記事は2020年3月に初回取材、2020年9月に追加取材した内容で作成しています。

<取材協力>

ピアさんばし
住所:神戸市兵庫区笠松通7丁目3-4
営業時間:月曜~金曜 16:30~20:30
定休日:土日祝

■料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

・タカラ「焼酎ハイボール」ドライ
https://shochu-hiball.jp/lineup/original.html

・寶「抹茶ハイ」 
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/matcha_hi/

・松竹梅白壁蔵「澪」スパークリング清酒
http://shirakabegura-mio.jp/

・上撰松竹梅
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/shochikubai/catalog.htm

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