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懐かしくて新しい、地域に根ざした京都の角打ちの噺

懐かしくて新しい、地域に根ざした京都の角打ちの噺

京都の趣深い街並みの一角で、三代にわたって続く角打ちの名店。時代を超えて愛される店には、今日もふらりと立ち寄りたい、と思う魅力がありました。

京都の繁華街から少し離れている西院から西大路のエリアは、近年進出してきた商業施設群の中に昔ながらの市井がある趣き深い町。
こういう町には得てして、古くから暖簾を守る良い角打ちがあるものです。
酒噺スタッフが今回訪れたのは、西大路御池。
安くて、うまくて、気軽で、近所の常連さんだけでなく、噂を聞きつけて遠方からもファンが訪れる角打ちの名店がありました。

老舗角打ち酒店が灯す、街の明かり


夕闇が迫るころ。
京都市営地下鉄東西線「西大路御池」駅の4番出口を出ると、道を挟んだ視線の先、住宅地の一角にふんわりとした灯りが見えてきます。ここが今回訪問した、高木与三右衛門商店(たかぎよさうえもんしょうてん)。いかにも「昔ながらの酒屋」といったイメージですが、ガラス越しに中を覗けば、笑顔でお酒を楽しむ常連さんの和やかな姿が見えます。


早速引き戸を引いて店内へ。
まず目に飛び込んでくるのは、手書きの黒板。お酒やつまみの数々がずらりと並ぶメニューを見てびっくり。おつまみはほとんどが300円以下、お酒も500円以上のものは、一部の地酒やボトルのワインを除けばほとんどありません(表記価格は税別)。
看板を見上げる私たちに、「うちは角打ちですから、飲み物で大きな利益を出そうとは思っていませんよ」と声をかけてくださったのが、店主の高木雄司(たかぎ・ゆうじ)さんです。

おじいさんの名前を掲げて新たなスタートを切った三代目


高木与三右衛門商店の創業は1939年。創業者は高木さんのお祖父様にあたる、与三右衛門さん。当時から酒屋を切り盛りしながら、角打ちも営んでいたのですが、その頃は今のように料理のラインアップが多くはなかったそう。

「今のような店になったのは、私の代からですね。実は、もともとの屋号は『高木商店』だったのですが、私が継いだ時、古風だった祖父の名前を付け加えたんです。私はこの店に生まれて、子どもの頃にはすでに店を継ぐつもりでしたが、父が元気でしたから一度京都の飲食関係の会社に就職しました。その会社で料理の技術や店作りのノウハウを身に付けたんですが、会社の方針と合わなくなり東京勤務から京都に戻ったんです。その頃、父が体調を崩して、私が店を継ぎました。料理や店作りのノウハウもあったので、一念発起して料理も出す今の形態にしたというわけです。カウンターや店の調度も私が作ったんですよ」と、おおらかに笑って話す高木さん。


現在の店舗は、構えこそ時代を感じさせるものの、内装はどこか今風でおしゃれな雰囲気。老舗の酒屋の角打ちを大胆にリニューアルさせるとなると、古くからの常連さんからご意見があるのでは…と伺ったところ、

「常連さんには顔なじみの方も多くて、かえって応援されちゃいました。店を閉めて改装している時も覗きに来て、“おい、いつオープンするんだ、早くしろ”なんて催促されたりもしたんですよ」(高木さん)。

なるほど、店と常連さんの絆は、代が変わっても確かにつながっているのですね。

安くて早くて何よりうまい、角打ちグルメと名酒


店の魅力は、何と言っても雰囲気と店主が作るメニューの数々。冷蔵のショーケースに入っているものもあれば、揚げ物や焼き物などもありますが、どれも驚くほどスピーディに提供されます。

「居酒屋ではなく、角打ちですから提供の早さが大事ですよね。ただし、美味しいのは絶対条件です。魚は京都の中央卸売市場で、その日の良いものを選んできますし、定番の料理も美味しさは折り紙つきです」(高木さん)。


まずいただいたのは、タコとトマトのジェノベーゼ。
角打ちとは思えない、手の込んだ料理です。シコシコと素晴らしい歯ごたえのタコはオリーブオイルとの相性抜群。トマトの酸味とバジルの香りが憎らしいほどによく合います。
乾杯の一杯は、タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>。

高木さん曰く「すっきりとして料理の邪魔をしないから、店でもよく出ます。私も愛飲しています」とのこと。
料理と一緒に楽しめば、オリーブオイルの香りを残して、油っぽさは残さない、名脇役ぶりを発揮してくれます。


続いては、店の定番・焼津 浜汐(はましお)サバのきずし(しめサバ)。
酸味が柔らかく、脂は甘くとろりとして、身はもっちり。定番になるのもうなずける美味しさ。炙りもできるということで、次回はぜひとも挑戦しようと心に決めた一皿です。
今回は醤油でいただきましたが、お勧めは「酢しょうが」でいただく食べ方だそう。ぜひお試しいただきたい逸品です。

また、角打ちながら酎ハイにもこだわりがあります。粉末の抹茶をたっぷりと使った濃厚な「特濃ミドリ(緑茶割り)」は、緑茶のほろ苦さと、胸がすくような香りが特徴。宝焼酎と合わせることで、アルコールの不思議な甘さがさらりと漂います。きずしの香りやクセにも負けない香りと味わい。これもまた好相性です。


ここらで、「ちょっとお腹にたまるものを」と、お願いしたのはサルサミートマカロニグラタン。ナチョス(トルティーヤチップス)にピリッと辛いひき肉、さらに柔らかいマカロニとたっぷりのチーズをかけて、オーブンで焼いたもの。調理済みのものを温めてくれるので、熱々のところをいただけます。馴染みのマカロニが、チーズとサルサミートで大変身。ほどよくついた焦げ目がまた美味いのなんの。
お店でも人気の高いトマト酎ハイと一緒にいただくと、箸が止まらなくなります。気軽な角打ちなのに、なんとも贅沢な取り合わせです。


「これは、うちのイチ押し」と高木さんがオススメしてくれたのは、よさアカ。京都の酒場で言うところのバクダンです。バクダンは、京都の下町では定番の、ぶどう味の甘酸っぱいチューハイですが、この店のものは香りも味の深みもちょっと違って格段にうまい!

「配合は企業秘密です」(高木さん)とのことなので、これはぜひ店まで足を運んで確かめていただきたい美味しさです。

常連さんに支えられ、コロナを超えて


時計の針が進み、時刻は夕方から夜へ。
一人抜けてはまた一人、常連さんや新規のお客様が店を訪れます。
今は人気の絶えない店ですが、コロナ禍の影響はやはり深刻だったそう。

「お客さんの数は、半減です。緊急事態宣言の時は、店の外にテーブルを置いて、料理は容器に詰めて、お酒はコップ酒の容器に移し替えたワインや日本酒を入れたショーケースを店外に出し、テイクアウトしていただきました。そんな厳しい状況でしたが、支えてくれたのは常連さん。“ここがなくなったら、飲みに行く場所がわからないよ”なんて嬉しい言葉も聞けました」。


住宅街の一角に立地し、長きにわたり常連さんに愛され続けるこの店に、角打ちの極意を伺いました。

「角打ちって、ふらっと寄って気軽に飲んでいくところですよね。だから、大人数でワイワイ楽しむのはあまりよくないですよね。静かに、落ち着いて気心の知れた仲間同士、常連同士で飲むのが一番楽しいですよ。
そこさえ守っていれば大丈夫。ウチなんか、初めて来店されたお客さんに、店のルールや料理やお酒の頼み方まで、全部指南してくれる常連さんがいますから(笑)。お互いの距離感を保って、静かに心地よく。これが原則です」。


お酒や料理の提供はお母さまが対応。お客さんのお会計もお母さんがそろばんでお勘定を計算します。その仕草がまた、何ともアットホームな雰囲気を醸し出しています。


馴染みの店と、お客さん。
立っているスペースだけでなく、心の距離も適度に保つことができる角打ち。人との距離感を保つことが求められる今の時代に、ぴったりな酒場なのではないでしょうか。

ふと見回せば、距離を取ってお酒と料理を楽しむお客さんの顔は、皆笑顔。
きっと高木与三右衛門商店は、これからも多くのお客さんに支えられていくことでしょう。


<取材協力>
高木与三右衛門商店
住所:京都府京都市中京区西ノ京西中合町64
営業時間:16:00~22:00(コロナウィルス自粛期間中は〜21:00)
定休日:日曜、日曜に絡む振替休日


▽料理と一緒に紹介したお酒はこちら

・タカラ「焼酎ハイボール」<ドライ>
https://shochu-hiball.jp/lineup/original.html 

▽その他の角打ちの噺はこちら

・笑顔とともに馴染みが集う角打ち“さんばし”の噺
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・おでんと燗酒でモーニング“立ち飲み”の噺
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