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【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸御影・榊山商店の噺

【兵庫・達人と巡る角打ち】神戸御影・榊山商店の噺

2023,5,12 更新

酒販店の片隅でさっとお酒をいただく「角打ち」。今回は、阪神電鉄御影駅から徒歩5分。夫婦が営む和やかな角打ち「榊山商店」へお邪魔しました。

100年続く酒販店の一角でお酒を飲もう!

全国でも屈指の酒所である兵庫県の灘五郷(※)のうちのひとつ、御影郷。現在も数々の酒蔵が入魂の酒を作り続けるこの町には、歴史を感じる、まさにいぶし銀といった風情の角打ちが数多く存在します。
※灘五郷:西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の5つの地域からなる日本を代表する酒造地の総称)

今回訪れた「榊山商店」もそのひとつ。シンプルで飾らない、昔ながらの昭和の酒販店といった風情。駅からやや遠く、住宅街のロードサイドにあることから、地元に根ざしたお店であることがわかります。お店の中を覗けば大きなショーケースにお酒が並び、午前中であるにもかかわらず、地元の方々が嬉しそうにコップを傾けているのが見えます。
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お店の中を伺う私たちに声をかけてくださったのは店主の上野晃(うえの・あきら)さんとその奥様の篤子(あつこ)さん。
誘われるままに、まずは“タカラ「焼酎ハイボール」<レモン>”をショーケースから取り出し、このお店の歴史について聞いてみました。
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上野さん「この店を立ち上げたのは私のじいさん。まだ大正時代のことですね。その頃は灘五郷からのお酒を卸したり、量り売りをしたりといった商いをしていたようです。その後、私の父の代に世界大戦が始まって食糧が配給制になると、酒販に加え米なども商うようになりました。
現在のような角打ちになったのはいつでしょうね。祖父の時代にはすでに店頭などでお酒を飲んでいく方もいらしたそうですし、私が父と仕事をし始めた頃には店内で簡単なおつまみと一緒にお酒を飲んでいく方はもういましたから。お客さんの求めに応じて、自然と角打ちになったんでしょうね。」

夫婦で乗り越えてきたお店の歴史

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なんと100年以上続く榊山商店。年輪を重ねたお店は実に居心地がよく、上野さんご夫婦も八十を超える年齢ながら矍鑠(かくしゃく)としていらっしゃいます。しかし、その長いお二人の歴史の中には、やはり一筋縄ではいかない出来事もあったようです。

篤子さん「阪神淡路大震災の時は、本当に辛かったですね。灘は大きな被害を受けましたし、私たちの店も酒瓶がみんな棚から落ちて割れてしまって。床一面がお酒の海でした。それを箒(ほうき)で片付けて。それでも、震災後すぐにご近所の方々は来てくださって、お店を始めましたけどね」。
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上野さん「でも震災はそれで終わりじゃなかったんです。この辺りは、震災前までは古い工場がたくさんあってね。そこの作業員さんが仕事帰りにさっと寄って、お酒を飲まれていったんです。気風が良くて、仕事仲間と仲良く飲み交わしているのを見るのは好きでしたね。でも老朽化していた工場が震災で潰れてしまうと、工場は再建築されずにみんな事業をたたんだり、海外に生産拠点を移すなりしていなくなってしまいました。寂しいもんですよ。」

篤子さん「それでも今も地元の常連さんがこの店を慕って来てくれますからね。ありがたいです。90歳を超えるお客さんが、一杯飲んでいかれるなんてこともありますよ。お元気な姿を見られるのは嬉しい限りです。常連さんみんなで続けてきたようなお店ですからね」。

炙ったエイヒレと缶詰、昔なつかし昭和の味覚でカンパイ

芝田さんと一緒にお話を伺いながら飲んでいた、“タカラ「焼酎ハイボール」<レモン>”も一本目が空に。
「ちょっとおつまみでも食べましょうか」と芝田さんのすすめで、お酒のおかわりとおつまみをいただきます。
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芝田さん「ここはね、缶詰や乾き物を肴に飲むんです。缶詰もちょっと変わったものが多いので、面白いですよ。それにエイヒレなんかの乾き物は、上野さんがさっとストーブで炙ってくれるんですが、これもなかなか乙なものです。」
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棚からそれぞれの好みのものを選んでいただきます。
缶詰からは、鯨の大和煮にコンビーフ、秋刀魚蒲焼きにソーセージ。それにミックスナッツと上野さんが炙ってくださったエイヒレをいただきます。
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芝田さん「神戸の角打ちには結構コンビーフがあるんですよ。昔はちょっとハイカラな食べ物でしたからね。神戸っ子の口にもあったんでしょう。この鯨の大和煮は懐かしいですね。いかにも“角打ちらしい”かつての庶民の味覚です。」
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ちょっと濃い味の缶詰に、甘辛く七味マヨネーズがピリッと効いたエイヒレ。“タカラ「焼酎ハイボール」<レモン>”や“タカラcanチューハイ<レモン>”がぐいぐい進みます。
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実家に帰ったような安心感に心休まる角打ち

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お酒がほんのりとまわり、心地よくなって辺りを見回すと、常連さんの数も増えて和やかな会話があちこちで交わされています。名残惜しいですが、ここで私たちは退店。
榊山商店の会計方法は、なんとそろばん。飴色になるまで使い込んだ年季の入った、珠を上野さんが軽快に弾いてお会計をしてくださいます。
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上野さん「私ももう年ですから、いつまで続くかわからないですが。お客さまがいらっしゃる限りは、続けていかないとね。また来てくださいよ。」
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篤子さん「健康でいるよりも、どこか1箇所にちょっと悪い部分があると健康により気を使って大病をしなくなるんですって。常連さんにも、“あんた店やめたらやりがい無くなって老けるで”と言われてますから、主人と一緒に“一病息災”で一日一日、仕事を続けていきますよ。」

チャーミングなお二人に見送られて、取材は終了。
心からほっこりとする、地元に根ざした角打ち。皆さんも御影を訪れることがあればぜひ、この和やかで暖かな雰囲気を味わいにいってみてはいかがでしょうか。

<取材協力>

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榊山商店
兵庫県神戸市東灘区住吉宮町6-4
078-851-3834
営業時間 9:00~20:00
定休日 日曜、但し祝日は営業
(取材日:2023年3月29日)

▽記事で紹介したお酒はこちら
タカラcanチューハイ<レモン>
タカラ「焼酎ハイボール」<レモン>

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