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新緑の美しい季節、酒をこよなく愛する陶芸家が葵祭に思いを馳せて家呑みする噺

新緑の美しい季節、酒をこよなく愛する陶芸家が葵祭に思いを馳せて家呑みする噺

京都をよく知る大の酒好きが、京の歳時記とともに名所を巡り、酒の楽しみ方を語るシリーズの3回目。今回の案内人は、伝統的な楽焼の茶碗や日常の酒器など、幅広い作品を生み出す陶芸家の津田友子さんです。津田さんにとって何よりのリラックスタイムが晩酌。お酒を飲みながら、ゆったりと自作の使い心地を検証する機会でもあるそうです。新緑の5月は、葵祭の季節。いつもの晩酌で津田さんが思い浮かべる風景とは?

平安装束のあざやかな色が、釉薬(ゆうやく)の世界に重なっていく葵祭

写真提供:上賀茂神社(※コピー禁止)
葵祭は毎年5月15日に行われる上賀茂神社と下鴨神社の祭礼。平安装束の行列が京都御所を出発し、下鴨神社を経て加茂街道を通り上賀茂神社に至るみやびな風景は、新緑の京都の風物詩です。
津田さんにとって葵祭は、「京都三大祭の中で最も格式が高く、静かに拝見するお祭」なのだそうです。

そして「行列を見ていると、まず目に入ってくるのが“色”。うぐいす色、桃色、紫色……、伝統衣装のあざやかな色が美しくて目を奪われます」と話します。

写真提供:上賀茂神社(※コピー禁止)
陶芸家の津田さんは、作品の仕上がり色を想定して釉薬を調合するなど、日常で色彩を意識されています。自然の素材で染められた葵祭の衣装は王朝風俗の伝統色。自作の色めと重なり、インスピレーションが湧いてくるのだとか。

「私も楽焼という伝統工芸に携わっていますが、葵祭にも多くの伝統継承があります。平安装束や事物などに用いられる伝統工芸の色彩が、生きたまま伝わっていくことは本当に素晴らしいです。これからも続いていってほしいですね」と語ります。

伝統の楽焼茶道具と、華やかな日常のうつわを焼く日々

津田さんは京都市に生まれ、21歳で陶芸の道に入りました。茶陶楽焼の吉村楽入(よしむららくにゅう)氏に7年間師事するとともに、京都府や京都市の陶芸家育成コースで学び、2015年から京都花園に「未央窯(びおうがま)」として独立。

楽焼の茶道具作りがメインの仕事ですが、出産や子育てを経て作品にも多様性が出てきました。仕事や家事に忙しい女性が、自分だけの贅沢なひとときを持つ。そんな日常の華やかな食器づくりにも力を入れています。

葵祭の日の晩酌は、芋焼酎と吟醸酒を味わいつつ、季節の素材をシンプルに

毎日晩酌を楽しむという津田さん。その時間は、土や釉薬と向き合う仕事を終え、もっともリラックスできるひとときです。昨年同様、感染症防止のため、行列は中止になった葵祭ですが、神事は執り行われます。
「大切な祭礼は行列だけではないことを、京都は教えてくれます」と、津田さん。葵祭の5月15日を前に、本日は祭の風景を思い浮かべながらの晩酌です。

この日に飲むお酒は、全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」と「特撰松竹梅<純米大吟醸>」。津田さんがとくにお好きなお酒です。
それに合うアテとして、津田さんが行きつけの店でテイクアウトしたのが、焼き筍、かつおのたたき、はまぐりの酒蒸し。まさに春そのもの、といった素材の味を生かしたシンプルな料理を自作のうつわに盛り付けていきます。

香り高い全量芋焼酎「一刻者」には、山椒香る焼き筍を

「一刻者」を、20年前の発売当時から愛飲しているという津田さん。
南九州産のさつまいもを100%使い、麴まですべて芋という本格焼酎で、「芋本来の甘い香りが楽しめて本当に大好きです」と話していただきました。
「『一刻者』の淡いターコイズブルーのラベルには、この酒器が合うんです」。津田さんのおすすめは、白に金をあしらったゴージャスな高杯(たかはい)。たしかに、食卓を優雅に飾る津田さんの世界観が展開されていきます。

「『一刻者』は、芋そのものを飲んでいるような味わい。この香りを存分に味わうには、水割りやソーダ割りはもったいない。やはり、オンザロックですね」と、高杯に氷を入れ、とくとくと「一刻者」を注ぐ津田さん。
「見込み」と呼ばれる茶碗の内側部分の金色が、透明な氷と酒でゆらゆらと揺れ、上質な焼酎との相性は抜群です。

「一刻者」のオンザロックに合わせ、山椒の効いた焼き筍を白い台皿に盛りつけます。筍を一口食べ、「一刻者」を口に含む津田さん。「これは、美味しい!」と思わず高い声をあげます。

「山椒の香りと芋のしっかりした風味がよく合いますね。飲み慣れている『一刻者』ですが、やはり香り高いお料理との相性は抜群。間違いない組み合わせです」。
空色と白と金色と……。葵祭でも色彩が最も気になる津田さんですが、お酒の風味とともに、自らの目も色で楽しませるひとときとなります。

晩酌は贅沢な癒しの時間ながら、うつわとお酒の実証実験も兼ねる

津田さんにとって晩酌とは、癒しの時間であるとともに、うつわの使い心地や食材の見栄えを検証する時間でもあるそうです。
「作品に料理を盛り付け、お酒を注ぐ。料理を愛でながら酒器に口をつけて実際に飲んでいくと、わかることも多いです。それが次の作品作りにも生きていきます。まさに一石二鳥の晩酌タイムです」と津田さんは微笑みます。

また、家飲みだからこそ、贅沢な器を使い、自分の癒しの時間を作ることは、「日用のうつわ」を制作するコンセプトそのもの。「仕事に家事にと忙しい女性が、自分の時間を大切にするひとときを持ってほしい。そのときは、とびきり上質なうつわで優雅に楽しんでほしいんです」。

うつわを替えて、「一刻者」のオンザロックでかつおのたたきを

「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」の俳句にもあるように、葵祭の頃は、南の海から北上してくる上りがつおがおいしい時期。
赤身でさっぱりした味の初がつおのたたきを、褐色の台皿に盛り付け、細切りにした生姜、みょうが、青ネギ、大根を添えます。これには、気分も新たに「一刻者」のオンザロックを、紺色の高杯に入れ替えて味わいます。

かつおを食べて「一刻者」を口に含んだ津田さん、「芋の香りが引き立ちますね! かつおと芋、それぞれの味が混ざらずに味わえる、抜群の組み合わせです。焼き筍と合わせたときとはまた違い、これは本格芋焼酎のさわやかさが増しますね」。
マッチングの変化を楽しみながら、津田さんの晩酌タイムは進んでいきます。

はまぐりの酒蒸しに純米大吟醸酒を冷やでいただく

この日最後のアテ「はまぐりの酒蒸し」には、やはり日本酒。これには「特撰松竹梅<純米大吟醸>」の冷やを、お猪口に注いで合わせます。
「丸くととのったはまぐりの味に、やわらかい飲み口の純米大吟醸が馴染みます。淡いはまぐりの旨みとお酒のほのかな甘みが口の中に広がってまわり続ける。そんな同質の風味が絶妙なマッチングです」と津田さん。
はまぐりのアイボリーが映えるよう、青いうつわに盛りつけ、お猪口の色は、はまぐりの身と同系統の白。どこまでも色彩にこだわる津田さんの美意識を、ここでも感じることができました。

お猪口の「口当たり」も確認しつつ、晩酌の時間はすすむ

お猪口の口当たりは、美味しさにも影響するそうです。自作の飲み口のカーブにも津田さんはこだわりがあります。
なんとこのお猪口の口当たりは、津田さんの親指の腹の曲線なのだそうです。子育て中に子どもの指しゃぶりを見て、「人が安心してモノを口に含む角度の秘密が、親指にあるのではないか?」と気づいたと言います。

自作のうつわの口当たりを確かめつつ、晩酌で作陶へのエネルギーをチャージする津田さんでした。

来月の案内人も、引き続き津田友子さんです。無病息災を願う6月の京の歳時記「夏越の祓」について語りながら、旬の食材をアテに酒を楽しみます。


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/

●特撰松竹梅<純米大吟醸>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/junmaidaiginjo/

▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事はこちらから(『ハンケイ500m』ホームページ:https://www.hankei500.com

・やすらい祭のお囃子に浮かれつつ、春の宵にお酒を一献傾ける噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/yasurai_matsuri_210402

・大の酒好き、祇園祭の囃子方が京弁当をアテに飲む噺
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・「居酒屋は、街を元気にするツール」…京都南座裏にある、わら炙りが名物の酒場店主の噺
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・「お酒とは、身体も心も和ませてくれるもの」…京都のサラリーマン街にある、やかん酒が名物の居酒屋店主の噺
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・「お酒とは、人と人とをつなぐもの」…京都の住宅街にあるお寿司が美味しい居酒屋店主の噺
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・「酒とは料理の楽しさを倍増してくれるもの」…京都・西院の和中創作居酒屋店主の噺
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・上賀茂の新鮮野菜で味わう本格タイ料理の噺
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・京都・南太秦の食を満たす、もの静かな店主の賑やかな酒場の噺
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