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大人の居所、大衆焼き鳥酒場の噺

大人の居所、大衆焼き鳥酒場の噺

2020,9,18 更新

カウンター越しに感じる熱気と炭の煙、肉汁がたまらない串。仕事が終わったあと、ふらりと立ち寄りたい焼き鳥酒場の噺をご紹介します。

夕闇が迫る仕事帰り、ふらりと立ち寄った焼き鳥屋。
カウンターにどかりと腰を掛け、仕事の疲れを吐き出す瞬間、ふと目線を上げれば頭にタオルを巻いた大将が、人生を煮しめたような顔で真っ赤な炭火に串をかざしている。
大衆的な居酒屋、特に数多くのメニューを提供する店は、町の辻々にあります。もちろん、その中には焼き鳥を提供しているも店も少なくはないのです。
それでも私たちが、あえて焼き鳥屋に足を運んでしまうのは、焼き鳥のプロがこだわり抜いた味を楽しむというのに加え、鶏ひとつに人生を賭けて、カウンター越しに客と差し向かいで調理する、どこか不恰好で、たまらなく生一本(きいっぽん)な店の姿勢に、じんとくるからなのかもしれません。
今回の酒噺は、そんな人生を感じる大衆的な焼き鳥酒場のお話です。

実直な人柄の店主が守る焼き鳥屋の暖簾

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京都市上京区丸太町。JR・地下鉄二条駅から歩いて10分ほどの立地にある「炭火焼やきとり串揚げ おいで」。赤提灯が点り、店名が染め抜かれた暖簾がはためく、これぞという風情のお店です。

暖簾をくぐって入店すると、カウンターで炭を熾(おこ)しながら、店主の山田剛(やまだ・つよし)さんが出迎えてくれました。
「おいで」が開店したのは今から15年前、創業以来こだわっているのは何より鶏の質。
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「鶏の仕入れは毎日。焼き鳥用は、信頼のおける業者に頼んで、鳥刺しに使うものは毎日自分で目利きします。鶏肉には産地やブランドなど様々な種類がありますが、私が大切にしているのは名前ではなく鮮度。生でいただく鶏は、必ず朝引き(※)のもので、京都で飼育されたものを選んでいます。遠くのブランド物より、近くの新鮮な本物。大切にしているのはそんなところでしょうか」。

焼き鳥台に積み上げられた炭から目を離さず、扇ぎながら話す山田さん。その飾らず、品より質を問う実直さ、山田さんの作る焼き鳥の味に、俄然興味が湧いてきました。

※朝引き:朝に絞めた鶏をその日のうちにさばいた鶏肉

出来上がるのが待ち遠しい!絶品鶏料理の数々に舌鼓

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炭が赤く色づいてきたところで、山田さんが手塩にかけて作る料理をいただきます。
焼き物に入る前に運ばれてきたのは、朝引きの鳥刺し。
この日は、レバーにささみ、それからユッケがオススメとのこと。

ぷつんと皮が弾けるととろりとした中身が溢れ出るレバーは、生臭みとは無縁、いっそ甘く香り豊かと表現したくなるほどの、味わいです。もちもちのささみは、食感を楽しむものかと思うほどに淡白な味ですが、噛みしめるほどに醤油や薬味が生臭みを取り去って、鶏の強い旨味が舌に立ち昇ります。
ささみの刺身と打って変わり、複雑で甘辛いタレをまとったユッケもまた佳品。
卵の黄身をたっぷりとまぶして口に運べば、色彩豊かな味の洪水に思わずうっとり。生肉を味わう鳥刺しは、どこか野生的な記憶を呼び覚ます食べ物なのだなぁと実感します。

そんな、繊細にして大胆な鳥刺しには、その名からして好相性の“松竹梅「豪快」”がぴったり。
おいででは、小さなやかんに入れて提供してくれるサービスも。
すっきりとした辛口の豪快のキレの良いコクが、鳥刺しの淡白な味わいを損ねず一層深いものに変えてくれます。
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焼き鳥が焼き上がるまで、まだ少し時間があるようです。
カウンターでは炭に脂の落ちる音と香りが漂ってきて気もそぞろとなるのですが、それをぐっと堪えつつもう一品のオススメを。

手羽先の「甘辛揚げ」と「辛辛揚げ」は、いずれもお酒の進む手頃なおつまみです。
「甘辛揚げ」はこってりとした醤油ベースの甘辛いソース、「辛辛揚げ」は唐辛子や胡椒がピリリと効いたスパイシーな味わい。カリッと揚がった皮目と、しっとりジューシーな手羽の身のコントラストが一口で堪能できるだけでなく、ソース&スパイスで口の中の印象もガラリと変わるので、ついつい手が伸びてしまいます。

香ばしい脂を十分に楽しんだら、「宝焼酎の宇治抹茶のお酒」でリフレッシュ。抹茶の香りが鼻へと吹き抜けて、口の中はさっぱり。
そのおかげで、また新しい手羽先へと手が伸びます。
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焼き鳥台に脂が落ちる音が止むといよいよ真打、焼き鳥の登場です。
柔らかくほろりと溶けるつくねに、定番のねぎま、ギュッと締まった繊維から、繊細にぴんと張り詰めた旨味が溢れるささみ、こりこりとした食感と香りが新鮮な砂肝、それから絶妙な歯ごたえと柔らかさ、肉と内臓の良いとこ取りといった風合いのハート。

どれも、炭火の香りを十分にまとって、中からふっくらと焼きあがっています。
脂はのっているのに、しつこさを感じないのも炭火のおかげです。
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さらに、毎日継ぎ足しながら大切に育てているタレの味わい深いこと。歯に串を当て引き抜く手間ももどかしいほどに、食が進みます。
新鮮な鶏の本当の味わいに向き合うのなら、合わせるお酒も本格的なものを。ということで、全量芋焼酎「一刻者」のロックと焼き鳥は、おいででも人気の組み合わせ。
タレの甘辛さにも、塩のさっぱり感も、懐豊かに受け止める焼酎の香り、芋を感じさせるほのかな甘さと、鳥の部位ごとの味わい、コクが一瞬複雑に混ざり合い、キレよく流れていきます。
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おいでで人気が高いのは焼き鳥ですが、常連さんには串揚げを楽しむ方もおおいのだとか。野菜や魚介といった定番も美味しいのですが、やはりここで頼むなら「鳥ささみ」がイチオシ。
きめの細かなパン粉と、酸味&旨味が詰まったソースの中から、ささみの肉汁が飛び出します。熱々の串揚げの余韻が口の中に残っている時に、間髪を開けずにぐいっと飲みたいのが、“宝焼酎「純」35度”の炭酸割り、通称「純ハイ」。プレーンな甲類焼酎の香りと、炭酸の刺激はやはり揚げ物との相性抜群です。

世界各国のお客さんに、またこの店の味を楽しんでもらうために

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鶏の鮮度と味にこだわり、その持ち味を十二分に生かすために心を砕く山田さん。その姿勢は、京都に住む人々だけでなく、この地を訪れた海外の観光客にも大人気を博していました。カウンターには、この店を訪れた海外の方が記念にと置いていった、各国の紙幣が一面に貼られています。

また、海外のSNSでもおいでの魅力は発信され、世界各国に根強いファンがいるそう。
SNSには「最高だった!また行きたいよ!」というメッセージが数多く残されています。
しかし、その状況も2020年のコロナウイルスの感染拡大によって一変。現在では、海外からの観光客はゼロとなってしまいました。

味とは全く異なるところで、急減してしまったお客さん。おいでもその影響に苦慮していましたが、それを支えてくれたのは古くからの常連さん。
「やっぱりこの店の味が恋しくてね」と言いながら、それでも店では常連同士距離をとって、焼き鳥を味わう顔なじみのお客さん、ボトルキープのお酒を手にこの日も嬉しそうにコップを傾けていました。
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山田さんはこう話します。

「常連さんには本当に感謝していますね。それから、SNSを今も見てくれている海外のみなさんにも。また以前のように、地元の方も世界各国の方もこの店で焼き鳥を味わっていただけるように、これからも毎日の仕入れを続けていきます。できることをするだけです」。

訥々(とつとつ)と話す山田さんには、静かに、しかし誇りを持ってお店を守っていく大将としての強い意思が垣間見えました。

まだまだ先の見えないコロナウイルスの状況。ふと思い出した時に、おいではもちろん、あなたの行きつけの焼き鳥屋さんへ足を運んでみては?
鶏一本にかけた芯の強い職人さんの姿と、熱々の焼き鳥がきっとあなたを元気付けてくれるはずですよ。
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<取材協力>

炭火焼鳥 串揚げ おいで
住所:京都府京都市上京区丸太町通り千本東中務町491-5
営業時間:17:00~25:00
定休日:不定休

▽料理と一緒に紹介したお酒はこちら

・松竹梅「豪快」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/gokair/ 

・全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/ 

・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/

▽あわせて、他の「鶏」にこだわったお店の記事もご覧ください

・秋の夜長にお酒と楽しむ絶品焼き鳥の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/Q8jLj
   

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