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お酒と楽しむ大人の駄菓子、“串カツ”の噺

お酒と楽しむ大人の駄菓子、“串カツ”の噺

関西ではお酒のお供として定番になっている串カツ。 カリカリ、サクッとした衣と、中から現れる具の数々。リーズナブルな値段とどこか懐かしいソース味の“大人のための駄菓子”です。時折、串カツの中身が何かわからなくなり、予想していなかった具材にびっくりするなんて、闇鍋的な楽しさがあるのも串カツのいいところ。 もちろん熱々を頬張って、冷えたレモンサワーをあおれば至福の一言。今回は、そんな串カツの名店を求めて京都駅の北、七条通りの「はな串」を訪れました。

串カツ嫌いがつくった絶品串カツ?

京都の玄関口、JR京都駅から歩いて5分ほど、七条新町に店を構える「はな串」。暖簾をくぐると、揚げ油の弾ける音と香ばしい香りが漂います。
私たちを出迎えてくれたのは、はな串の取締役“番長”の肩書きを持つ、渡邉明日香(わたなべ・あすか)さん。その肩書き通り、姉御肌で気風がいい女性です。

挨拶もそこそこにオススメの串カツを注文。出来上がるまでにはな串の魅力を伺おうと思ったのですが…。
「私、串カツ好きちゃうねん、脂っこいし」といきなり打ち明ける明日香さん。
人気の串カツ店の女将さんが串カツ嫌いとはどういうことかと困惑していると、それを見透かしたように明日香さんは続けます。
「だからできるだけ、ウチの串カツは軽く作ってんねん。小麦粉もサラサラのキメが細かいものを選んで、揚げ方も工夫してるし、ソースもぼてっとしたもんじゃなくて、あっさりしたもの。ちなみにこのソースのレシピはオーナーしか知らない秘伝のもの、鰻屋のタレみたいなもんやね」。

なんとも不思議な話ですが、この店の人気は本物。何より、カウンターに並ぶ常連客が5本10本と串カツを頼んでは口に運び、間髪いれずにお酒をあおっては、幸せそうな笑顔でため息をつくのを見れば一目瞭然です。

肉に野菜にスイーツも、金色の衣をまとった珠玉の串カツたち

お客の様子を見たり店内に漂う香りを嗅いだりして、もうすっかり頭の中が串カツ一色になったころ、私たちのテーブルにも串カツが登場しました。

手始めは定番の牛肉、豚肉、鶏肉、チーズ、銀杏、それからこの店の一押し・大エビ。肉系の串カツなら、やはりさっぱりした飲み物が最適。ということで、選んだのは“宝焼酎「純」35度”の炭酸割り、通称「ジャパニーズハイボール」です。
「ソースはたっぷりつけるのが美味しいで」と明日香さん。言われるままにソースの船に串をドボンと漬けて一口。薄い衣の下から、ジューシーな肉汁を一杯に溜め込んだ牛肉が現れます。衣の厚い串カツは、ともすれば肉汁を吸って中がボソボソになってしまうことが多いものの、はな串ではそんな心配は皆無のよう。
肉汁の余韻が消えないうちに、ジャパニーズハイボールを一口。相性は言わずもがな最高、まさに至福の瞬間です。

続いてはこの店一押しの大エビ。「一人2本以上頼まれると儲けがなくなる」というほどのコストパフォーマンスの良さです。弾力のあるエビの身は甘く、サクッとした衣の食感との対比が見事。美味しいだけでなく、噛んだ音も香りも食感も楽しい、五感で味わう一串です。

串カツといえばやっぱり野菜ものも欠かせません。
続いては、ナス、玉ねぎ、れんこん、しそチーズ春巻きに、それから関西の串カツを象徴する紅生姜を味わいます。
お酒はちょっと趣向を変えて、日本酒の“松竹梅「豪快」”をいただきます。
「飲食店でしか飲めない“豪快”のファンって意外と多いで。もう常連さんなんかカウンターに座るなり“酒!冷や!”って言わはる。ウチの酒って言ったら、銘柄言わん限りは“豪快”やからね」と明日香さん。
しんなりと油を吸ったジューシーなナスにシャキシャキの玉ねぎ、レンコン。ピリッと刺激的で塩辛い紅生姜。いずれも、懐かしくしみじみとした味の串カツに、“豪快”のすっきりとした辛口はよく合います。

串カツが続いたところでひと休み。何か一品をと思ったところで明日香さんがオススメしてくれたのが、牛タンの刺身。串カツとは違った歯ごたえと柔らかな舌触りがたまりません。
肉の刺身に合わせるなら、焼酎がベスト。“全量芋焼酎「一刻者」”のロックをオーダーします。
“一刻者”ならではの芋の甘い香りと少し強めのアルコールが、生肉の香りを上品に包み込んでいくらでも食べられそうです。

「それからもこれも」と明日香さんが運んできたのは、ニンニクの丸揚げ。
豪快なビジュアルは男性好みのようですが、実はよく頼むのは女性なんだとか。「女性の方がよく食べるみたいやね。ニンニクの串カツを頼んだ後に、丸揚げもペロリなんてのも珍しくないで」。
ごま油と塩をかけた香ばしい丸揚げは、確かにあと引く美味しさ。ただしちょっと翌日が怖い気もします。

「反対に男性は甘いもんが好きやね」と、出てきたのは京都のお土産の定番“八ツ橋”の串カツ。
「うちはバナナとかマシュマロとか甘いものの串カツもあるけど、男性が頼むことが多いで。しかもテーブル全員分一気に頼んで食べてはることもあるわ」。
男性としては、外でおおっぴらに甘いもの頼むというのは気がひけるのかもしれません。ただ、串カツの衣に包まれてしまえば別というところでしょうか。
世の男性諸君、酒場で甘いものを食べるなら串カツ、意外にオススメですよ。

「特別なことはせえへん」。だからこそ通いつめたくなる

「うちは別に特別なことはしてへん、これからも美味しいって言ってもらえたらそれでええし、このままいい店であれば満足」明日香さんがそう言うと、カウンターで働いていた従業員や揚げを担当している店長までが、手を止めてうんうんとうなずきます。
安くて早くて、旨くて、なにより酒が進む。串カツにそれ以上の変化や特別感を求めるなんてのは、かえって野暮なのかもしれません。
はな串の絶品の串カツ、それから明日香さんをはじめとした気持ちよい店員さんとの会話、今ここにあるお店の魅力を味わうために、はな串を訪れる。それだけできっと十分なのです。
「これからも特別なことはせんけど、絶対また来てな」と話す明日香さん。
もちろん、また串カツをいただきに来ます。
まずはその前に、ジャパニーズハイボールと大エビの串カツをおかわりで!

<取材協力>
くしかつ処 はな串
営業時間: 17:30~25:00(食事LO 24:15/ドリンクLO 24:30)
定休日:日曜日(日・月連休の場合は月曜休)
住所:京都府京都市下京区七条通新町東入夷之町726

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