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京都・百万遍の居酒屋「きゅんとや」に聞いた日本食と和酒の未来の噺

京都・百万遍の居酒屋「きゅんとや」に聞いた日本食と和酒の未来の噺

2023,10,27 更新

京都は大学の多い街。中でも京都大学がある左京区の「百万遍」に注目します。百万遍エリアは、実は学生だけではなく、大学の教職員や大学病院の医師なども多く、夜遅くまで酒場が活気付いています。そんな百万遍の酒場事情や地域特性について、「海活楽宴(かいかつらくえん) きゅんとや」の店長・西山竜司さんに話を聞きました。

眠らない街「百万遍」―安心してお酒を楽しむ人で賑わう街

今から700年ほど前、1331年の悪疫流行の際に、法然上人が念仏百万遍を唱えて悪疫を防いだことから名の付いた「百万遍」。
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京都大学がある学生街ですが、大学職員や大学病院の医療従事者などの社会人も多く、夜遅くまで酒場が活気づく「眠らない街」とも言われています。
京都では早く閉める店も多いなか、真夜中でも食べて飲めるとあって、外国人観光客も少しずつ増えているエリアです。

近くに住む、のがわ鍼灸指圧治療院の院長・亀田哲生さんは、「地元の人は遠くへ行かず、百万遍で飲みますね。広くて個室のある店も多いので、宴会にはもってこい。営業時間が長いので2軒目使いもできて、百万遍はとても便利な街なんです」と話します。

たとえば保育園のパパ友飲み会や、大学病院や教授たちの宴会。学生ばかりでなく「大人が楽しめるのもこの街の良さ」だと、教えていただきました。
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加えて、大きな大学があるエリアは、学生や職員が多く人の増減も少ない。つまり、人口が安定しているので、商売には適しています。古くからの地元住民も多いので、夜も人通りがあり、安全安心な街という側面もあります。

一方で、コロナ禍で商店が苦しかった時期、廃業危機と聞けば「あの店で買物しよう!」といった声が挙がるなど、地元の協力意識が強いのも特徴です。大家さんが、テナント店の家賃を据え置き、その店に足繁く通うなんてこともある。
百万遍は、そんな「人と人のつながり」を大切にする街なのです。

グルメな京都人に愛される「産地直送の魚介」

百万遍エリアの酒場を代表し、「海活楽宴 きゅんとや」の店長・西山竜司さんにお話をお聞きしました。百万遍交差点裏にあるアクセスの良いお店です。
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オーナーは山村和孝さん。義父が長く寿司店を営まれていましたが、代替わりの2009年に、自身が居酒屋に勤めていた経験から、居酒屋としてオープンさせました。
店長の西山さんは、山村さんの居酒屋時代の同僚で、「きゅんとや」の客として毎日通い詰め、2年後にスタッフとして雇い入れられたそうです。

「とにかく人が集まる店でした。誰もが温かく迎えられ、楽しく落ち着ける。この雰囲気は15年たった今も全く変わりません」と、西山さん。カウンターの向こうで、にこやかに話します。

グルメな地元人やプロの料理人も飲みに来る同店は、なんとお客様の半数以上が常連客。
通常、飲食店のリピート率は3割前後。「きゅんとや」の人気の高さがうかがえます。
また、最近は外国人観光客の来店も増えているのだそうです。
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看板メニューは「富山県直送の新鮮な魚介類」。
富山県在住のオーナーの友人とタッグを組み、5年前からは、本格的に富山県岩瀬港直送の白えびやホタルイカ、ブリなどの魚介類を、現地価格で仕入れられることに。
とくに白えびは、お造りや丼、素揚げ、かき揚げなど、数々の人気メニューがあり、今ではほとんどの客が注文するそうです

一番人気は「白えび」+「ゆっくり飲むお酒」

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白えびは、世界的にみても富山湾のみで漁獲されると言われているほど希少なえびで、深い海底渓谷で育ち、透明感のある淡いピンク色から「富山湾の宝石」とも呼ばれています。

その白えびのお造りは、舌の上でとろけるような食感で、かすかに海の香りがひろがり、上品な旨みと甘みが喉をするりと通ります。

「白えびには、ゆっくり味わうお酒が合いますよ」と勧められたのは、全量芋焼酎「一刻者(いっこもん)」。
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宮崎県・日向灘を望む地で造られた、麹まで100%芋の「一刻者」は、華やかな香りと甘さがあり、それでいてスッキリとした味わい。海外のコンペティションでも数々の賞を受賞したプレミアムな本格芋焼酎です。

白えび×一刻者。日本列島の食の豊かさが生んだ、まさに逸材同士のペアリングです。

新鮮な魚介に合う和酒。「一刻者」ボトルキープする常連客も

「きゅんとや」ではここ数年、お客様の注文するお酒がビールからこだわりの日本酒や焼酎、いわゆる「和酒」にシフトしているそうです。

「新鮮な魚介にはやはり和酒が合うんですよね」。
またお客様にとって日本のお酒は、特別感・ハレの日の飲み物のイメージがあるため、「今夜は旨い肴でお酒を楽しもう」と期待感をもって来店される方が多いのだとか。
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その要望に応えるべく、お店には日本全国の地酒と選び抜いた焼酎が50種類以上揃います。

日本酒は辛口・甘口、「産地」別に、焼酎は、米、麦、芋の原料別に「王道」をセレクトするそう。「美味しいお酒はどれ?」と聞かれたとき、安心して勧められるものに限定して扱っているそうです。

「一刻者は、ちびちびと酒と食事を楽しむお客様に好まれますね」と、西山さん。60代の男性常連客は、いろいろなお酒を試した後に、最終的に「一刻者」で落ち着き、その後は月に2本のペースでボトルをキープ。
毎週2人連れで来店し、カウンター席でゆっくりと料理と水割りを楽しむ。「一刻者」はそんな方に選ばれ、喜ばれているようです。

若者に大人気「チューハイ」+「名物 厚揚げ」

もう1つの人気メニューは、名物の「厚揚げ」です。地元にある老舗のお豆腐屋さんから毎朝できたての京豆腐を仕入れ、注文を受けてからていねいに店で揚げます。
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たっぶりの鰹節とネギ山盛りで運ばれてくる熱々の厚揚げは、外はカリッ、中はふわっふわ。皆が必ずオーダーするというのも納得です。

厚揚げに合わせてくれたのは若者に好まれる「レモンチューハイ」。ベースは焼酎の定番「宝焼酎」です。
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「宝焼酎は軽くてスッキリしているので、どの味にも馴染むのがいいですね」。
チューハイメニューはイチゴやメロンなど17種類あり、レモンの次に人気のフレーバーは「キウイ&アロエ」。爽やな酸味と甘すぎない味で好まれているそうです。
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外国人観光客が口にする「サケ(Sake)、オイシイ、アリガトウ」

ようやくコロナ禍から明けた今、「きゅんとや」でも外国人観光客が増えています。
多いのは欧米系の2~3人連れで、注文の第一声はほとんどが「サケ(Sake)」。メニューはポテトフライなどの揚げ物だけでなく、お造りのオーダーも多いそう。
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「皆さん、日本の酒を飲まれ、帰るときにはオイシイ、アリガトウと片言の日本語でお礼を言ってくださる。それがうれしいですね」。

日本国内で若者の酒離れが叫ばれている一方で、今や和酒の輸出は右肩上がりで伸びています。また、健康志向の高まりを受けて、日本食も世界中で支持を集めています。

世界で人気が高まっている日本食と和酒の価値に、国内でもあらためて気づいてもらうヒントはどこにあるのでしょうか。

和食と和酒の美味しさを、じっくり楽しむお店へ

西山さんは、お店の今後についてこう話してくれました。

「これまで居酒屋として安価・大量メニューも揃えてきましたが、これからは量より質の時代。料理もお酒も本当に美味しくて上質なものを、ゆっくり楽しめるお店にしたいです」。

その第一歩として、11月から始まるのが「おまかせコース」。
「海鮮限定コース」はお造り、焼き物、揚げ物、ご飯ものまですべて海鮮。もう1つは「鶏限定コース」で、どちらのコースも飲み放題は付けません。
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代わりに、料理に合う日本酒・焼酎を楽しんでいただけるよう、和酒の品揃えをより充実させるそう。

現在も、お造りに添える大根のけん(剣・つま)は西山さんが調理の合間に作り、高知産ショウガをおろすなど、見えない部分にも手を抜かない「きゅんとや」。
すでに居酒屋の域を超え、割烹に近いスタンスといえるお店です。
美味な日本食と酒を楽しむ店として、いずれコースだけを提供する店にすることも視野に入れているそうです。

海外の人が日本食×和酒に惹かれるのは、美味しさだけでなく健康にいいことを知っているから。西山さんも素材の良さ活かすため、ここ数年で料理の味付けもやさしい薄味になっていると言います。
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日本の自然がもたらす海山の恵みと発酵などの技術が育んだ日本の食・酒文化。
その豊かさを、お客様に存分に味わっていただきたい。
そんな思いこそが、日本食と和酒の未来につながっていくのかもしれません。

<取材協力>

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「海活楽宴 きゅんとや」 
住所:京都市左京区田中大堰町152メゾンKOYO1F    
URL:https://www.kyuntoya.com/

▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら
●全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/

●宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/



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