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京都の老舗菓子司・末富の4代目が語る新しい京菓子に合うお酒の噺

京都の老舗菓子司・末富の4代目が語る新しい京菓子に合うお酒の噺

2023,3,3 更新

京都を拠点に第一線で活躍されている匠が、お酒の楽しみ方を語るシリーズ。今回は、創業1893年の老舗「京菓子司・末富」の4代目・山口祥二(やまぐち・しょうじ)さんに、新ブランド「SUETOMI AoQ(アオキュウ)」に合わせるお酒についてお聞きしました。

創業130年、京菓子の老舗「末富」の新たな挑戦

創業1893(明治26)年、京都の老舗和菓子店として知られる「京菓子司・末富」。
代々受け継がれてきた技法で厳選した素材を用いて作り上げられる京菓子は、茶道の三千家(さんせんけ)※でのお茶会や有名寺院の行事などでも使われています。

※茶道の流派のうち、表千家・裏千家・武者小路千家を総していう呼び名。
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末富の4代目である山口祥二さんが、和菓子の世界に入ったのは28歳の頃。
当時から、フランス料理のシェフやパティシエ(洋菓子職人)との交流がありました。
たとえば、モナコ、ロンドンで3つ星レストランを運営し、チョコレートブランドも展開するアラン・デュカスとのコラボレーションイベントでは、フランス料理の〆を飾るデザートの企画・製作に携わりました。

こうした海外での経験をきっかけに、山口さんは、西洋でも和菓子の魅力を引き出すことができると気づいたそうです。

和食にはみりんや砂糖が使われていることから、甘めの料理が多くなりがちです。そのため、食事の〆はさっぱりいただける果物などの水菓子が主流なのだとか。
一方、フランス料理は甘いメニューが少ないため、コースの最後にしっかり甘みのあるデザートをいただくことで、食事の満足感を高めるのだそうです。
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「イベントでは甘い和菓子をベースとしたデザートを考案し、とても喜んでいただきました。
和菓子に興味を持った西洋のパティシエたちは、米粉で作ったシンプルな焼き菓子『ふやきせんべい※』にチョコレートを合わせたりしていましたね」。

山口さんはこのとき、日本で受け継がれてきた京菓子は、西洋の文化にも馴染むと実感できたと話します。

※麩のように軽く、やさしい口溶けのお菓子。麩は使われておらず、もち米からつくる。

新ブランドで「若い方にも、和菓子の魅力を知ってほしい」

山口さんは、同志社女子大学、大谷大学の非常勤講師も務めておられます。
学生に和菓子の印象を聞いてみると、「ほとんど食べない」「買いづらい」という声があがり、「京都には、四季折々の美味しい和菓子がたくさんある。まずは食べてもらわないことには、その魅力は伝わらない」と痛感しました。
こうして「若い人たちに受け入れられる菓子を作りたい」という気持ちを抱くようになった山口さんは、自身がフレンチとのコラボレーションで得た経験を活かし、新しいブランドの創設に向けて動き始めます。
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そして2022年秋、末富が受け継いできた京菓子伝統の技に、現代的なエッセンスを加えた新ブランド「SUETOMI AoQ(アオキュウ)」が誕生しました。
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京都駅のジェイアール京都伊勢丹に出店して以来、「SUETOMI AoQ」の店舗には、感度の高い若者から本物を知るシニア層に至るまで幅広い世代の方が訪れ、その人気は広がりを見せています。

そして2023年3月下旬には、末富本店近くにテイクアウト専門店「SUETOMI AoQ カフェスタンド」をオープンする予定です。
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半日がかりでじっくり炊き上げた餡には“旨み”が詰まっている

AoQでは、こだわりの餡を瓶詰めにして販売しています。
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「上等な餡を炊くには、まずは豆の選別から始まります。
煮汁を捨て、砂糖を足して…と、餡炊きだけをする専門職人が鍋につきっきりで、半日かけて作っています。
1つ1つの作業をおろそかにせず、きっちりと仕事をすることが、美味しいほんまもんの餡の基礎になるんです」。
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ラインアップは「小倉あん」「こしあん」「味噌あん」の3種類。
アイスクリームに乗せたり、トーストと合わせたりと、洋のシーンでも楽しむことができます。
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「餡の美味しさは、“旨み”にあります。奈良時代、唐の僧・鑑真和尚(がんじん・わじょう)によって日本にもたらされた砂糖は、近年になるまで貴重品でした。
そのため当時は、甘みだけに頼らず味噌や醤油を使って旨みを出した菓子が多かったのです。新春の縁起菓子である花びら餅に味噌が使用されているのもその名残でしょう」。

旨み広がる「純米大吟醸酒×味噌あんフィナンシェ」で晩酌を楽しむ

「あまり馴染みがないかもしれませんが、お菓子とお酒はよく合うんです。
酒粕を使って作る『酒まんじゅう』は、その一例ですね。
ちなみに海外では、イベント終了後の打ち上げで、シェフやスタッフとシャンパンを飲みながらお菓子を食べるのが定番です」。

そう語る山口さんは、夕飯後、お菓子をつまみに奥様と会話を楽しみながら晩酌することも多いそうです。

「日本酒には、和菓子も洋菓子も合わせますね。お菓子があれば、おつまみを用意しなくていいので、妻の手を煩わせずに済みますし、女性はお菓子が好きだから、会話も弾みます」。
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山口さんのお勧めは、味噌あんを乗せたフィナンシェと特撰松竹梅<純米大吟醸>の組み合わせです。

AoQのフィナンシェは、バターを贅沢に使用しながらも甘さは控えめで、味噌あんと好相性です。
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そんな味噌あんフィナンシェと合わせた特撰松竹梅<純米大吟醸>は、精米歩合(せいまいぶあい)※45%まで磨いた、贅沢な純米大吟醸酒。りんごを思わせるフルーティな香りと、純米ならではの旨みがありながらもすっきりとした味わいが楽しめます。

「華やかながらもすっきりした味わいの純米大吟醸酒と味噌あんは好相性です」と山口さん。
フィナンシェに乗せた味噌あんの旨みとコクを感じた瞬間に、松竹梅<純米大吟醸>を一口。和洋のおいしさを併せ持つお菓子と純米大吟醸酒の旨みが鼻腔に広がる新感覚が堪能できる組み合わせです。

※日本酒造りに使用する白米の玄米に対する重量割合。精米歩合45%は、玄米の表層部を55%削り取ることをいう。

米を使ったふやきせんべいには、米由来のスパークリング日本酒が合う

AoQの「チョコふやき」は、小さく切ったお餅を鉄板で挟んで焼いたせんべいである「ふやき」をチョコレートで包んだお菓子で、ラインアップはミルク・ダーク・ホワイト・抹茶の4種類です。
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※「澪」<CLEAR>は3月14日新発売
「もち米の素朴な味を感じられるふやきは、同じ米由来の日本酒と合います」と、山口さん。
甘さが楽しめる「チョコふやき」は、すっきり爽やかなスパークリング日本酒「澪」<CREAR>がぴったりだと語ります。
「澪」<CREAR>の原材料は米と米麹。酵母が生み出したフルーティな風味と、甘さすっきりの味わいが特徴です。

「シャンパンと比べて、『澪』はあと口がスッキリしています。ふやきから感じられる米の香り、チョコレートや抹茶の苦みをすっとまとめてくれます」。
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京都の伝統をモダンに昇華させたAoQのお菓子は、3月14日、ホワイトデーのギフトにもおすすめです。
お酒好きの方に贈って、お酒とのペアリングを楽しんでいただいたり、大切な方と一緒に優雅なひと時を過ごしたりされてはいかがでしょうか。

日本の伝統的な技術をベースに新たに生み出されたお菓子とお酒のマリアージュは、どこか懐かしくてしっくりくる味わいとともに、新しいお酒の楽しみ方を発見させてくれるに違いありません。

<取材協力>

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SUETOMI AoQ
住所:京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 ジェイアール京都伊勢丹 地下1階 和菓子売場
URL:https://aoq.jp/


▽料理と一緒にご紹介したお酒はこちら

●特撰松竹梅<純米大吟醸>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/junmaidaiginjo/

●松竹梅白壁蔵「澪」<CLEAR> ※3月14日新発売
http://shirakabegura-mio.jp
▽そのほか、『ハンケイ500m』コラボ記事「匠×酒シリーズ」はこちらから。
『ハンケイ500m』ホームページ(https://www.hankei500.com

・発酵食のスペシャリストが語る味噌と日本酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat2/fermentedfood_230203

・専門家が語るおせちのアレンジ料理とお酒の噺
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・専門家がおせちのポイントを伝授!新年を彩るおせち料理とお酒の噺
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・京都の老舗料理旅館「八千代」の支配人が語る和食と日本酒の噺
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・10月1日は「日本酒の日」―北野天満宮と日本酒との深い縁の噺
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・京都の和菓子職人が語る、和菓子と酒の噺
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・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭の神事とお酒の噺
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・京名物・黒七味屋当主が語る祇園祭とお酒の噺
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・宇治の有機茶園社長が語る「新茶」とお茶割りの噺
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・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「ひなまつり」の豆菓子と酒の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/hina_festival_220303

・京都の老舗豆菓子屋主人が語る「京都の節分と酒」の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/setsubun_220203
   

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