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山菜おつまみと美酒で感じる春の息吹の噺

山菜おつまみと美酒で感じる春の息吹の噺

2022,4,15 更新

四季を通じて楽しめる「山菜」ですが、最も柔らかくて若々しい新芽がおいしくいただけるのは春の時期。
今日は山菜おつまみとお酒で春の訪れを感じる噺です。


八百屋の店先やスーパーの陳列棚に、タラノメやこごみ、ぜんまい、わらび、ふきのとうといった山菜が並び始めると、思わず「春だなぁ」と思ってしまいます。
少し前は、寒の戻りで思わず身震いするような寒さでしたが、山菜が野山に芽生え、それがスーパーに運ばれてくるようになると、季節がしっかりと巡っていることが感じられてホッと一安心できるものです。
今では、季節を問わずさまざまな野菜が店先に並んでいますが、生の山菜だけは初春から初夏にかけての僅かな季節にしか出回りません。
口にすれば、苦味やほのかな渋みと共に、野山の香りがいっぱいに広がる山菜は、お酒のお供としても最高の相性。
一年のうち、わずか数週間。旬のひとときにしか味わえない春の醍醐味である山菜とお酒で春を満喫してみませんか?

「春の皿には苦味を盛れ」

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「春の皿には苦味を盛れ」。
春のことわざとして知られるこのフレーズの意味は単純。「春には苦いものを食べましょう」という意味で、その苦いものの筆頭が山菜であると言われています。
確かにいくつかの山菜には、独特の苦味や渋味、アクの強さを感じることがあります。
この苦味や渋味の正体は、ポリフェノールをはじめとした植物性のアルカロイド。
今では医薬品やサプリメントなどに使われている成分ですが、昔の人にはおそらくそんな知識はなかったはずです。しかし春の野菜を食べた時の苦味や渋味の中に、長い冬で縮み切った体を元気にさせてくれるような効果を感じていたのでしょう。

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では、山菜があの独特の苦味や渋味を持っているのはなぜなのでしょうか。
理由のひとつに、山菜の多くが野生のものであることが挙げられます。私たちは、長い歴史の中で野山に生えていた野草を農作物として選び、甘く、柔らかく、食べやすく、大量に栽培できるものに品種改良してきました。
その一方で、山菜は品種改良があまり行われず、大量栽培にも向いていないため、野生の植物の特徴である苦味や渋みが残っているというわけです。

私たちが山菜を食べたときに感じるあのほろ苦さは、野生そのものの味。
この季節にしか感じられない山菜の風味は、成分などの難しい話をしなくとも、春の訪れを私たちに伝えてくれます。

シャキシャキ&ねっとりとした歯ごたえを楽しむ「こごみのくるみ和え」

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まず前菜がわりに楽しむ山菜は「こごみ」。
山菜の中でも比較的アクが少なく、食べやすいのが特徴です。さっと塩茹でしたこごみを水に取り、すり鉢ですったくるみに、煮切った(※)みりんと醤油を合わせたものをひと垂らししてよく和えれば、こごみのくるみ和えの完成です。
最初はみずみずしいシャキッとした歯応え、噛んでいくうちに甘みと共に粘りが出てきます。この食感こそが、こごみの醍醐味。

一緒に楽しむお酒は、こごみの優しい味覚を壊さないよう、よく冷やした生貯蔵の日本酒を。
松竹梅「昴(すばる)」<生貯蔵酒>は、独自の酵母が生み出すフルーティーな香り高さが特徴で、こごみのほのかな香りとも、くるみのこっくりとした油とも良い相性です。
それぞれの個性が引き立て合い、美味しさを堪能できます。

(※)煮詰めてアルコールを飛ばすこと

里に春を告げる筍は、あえてコッテリと「筍のバター醤油ソテー」

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比較的手に入りやすい山菜の代表といえば「筍」。
特に孟宗竹(もうそうちく ※)のものは、大ぶりで香りも豊か。火を通せばほくほくとした歯応えと甘さが楽しめます。
旬の筍の定番といえば土佐煮や若竹煮ですが、今回は目先をちょっと変えて、簡単に作れて筍の甘さを余すことなく味わえる料理にしてみましょう。
下茹でをした筍を薄くスライスし、バター醤油でソテーするだけのお手軽料理ですが、出汁やお湯に筍の旨みをしっかり閉じ込め、筍にはなかった油分をバターがプラスし、あっさり&コッテリの美味しいコントラストとなります。

ちょっと濃厚なコクが感じられるソテーには、寶「丸おろし」<レモン>がよく合います。
若い筍独特のアクの強さを、皮ごとすりおろした濃厚なレモンの苦味と酸味を上手に抑えてくれて、筍の歯応えと甘みを十分に感じることができますよ。

(※)中国江南地方原産で、日本では北海道函館以南に広く分布。大型で肉厚で柔らかく、えぐみが少ない。

目の覚める鮮烈な辛さと苦味「花わさびの醤油漬け」

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ちょっとコッテリした筍料理の後は、舌をリフレッシュするあっさり&刺激的な一品を。
雪解けの時期になると、わさびの葉や茎、蕾などがからなる「花わさび」が市場に出回るようになります。これもこの季節しか味わうことのできない旬の味覚のひとつ。
この花わさびの味覚を存分に味わうなら、醤油漬けが一番です。

花わさびを80℃程度のお湯に10秒ほど浸したあと、ザルの上で強く揉み、間髪入れずに煮切ったみりんと醤油を注ぎ、瓶などに密閉します。
鼻から目へと抜けるような辛味に、じんわりと舌に広がる爽やかな苦味
日本酒と合わせても良いのですが、「酒噺」のおすすめは、全量芋焼酎「ISAINA(イサイナ)」とのペアリング。
飲み方によって香りが変わる本格芋焼酎ですが、今回のチョイスはロック。ぴりぴりとした花わさびの刺激をマイルドな甘みで包み込んで、後味にふわっと焼き芋のようなほっこりとした甘みが広がります。
舌と鼻で感じる香りと刺激の移り変わり。一度試してみていただきたい驚きある取り合わせです。

ひと手間かけることで一層美味しくなる「わらびの桜鯛巻き」

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花わさびの香気と辛味で、舌をリフレッシュしたら、次はちょっと繊細な料理に。
「わらび」も山菜の中では有名なものの一つですが、その馴染みやすさとは裏腹に、アク抜きに手間のかかる食材でもあります。
藁灰(わらばい)や重曹を溶かしたお湯に8時間程度わらびを浸し、その後アクが出なくなるまで流水にさらせば、下処理は完了。
今回は濃い緑が鮮やかでいかにも春らしいわらびを、同じく春に産卵を控えて身に栄養を溜め込んだ桜鯛の昆布締めで巻いていただきます。旨味が凝縮された鯛の甘さの奥に感じる、わらびのシャキシャキとした食感。次第にシャキシャキとした食感はとろみへと変化し、そこに早春の山土にも似た、野趣あふれる香りが加わります。
わらびの下処理と鯛の昆布締め。ちょっと手間はかかりますが、その労力に見合う味わいです。合わせるのはこちらも「ISAINA」。ほっこりとした甘みは刺身などの和食とも好相性です。粘りのあるわらびと鯛、昆布の香りの余韻が重くならず、いつまでも爽快に楽しめます。


最後は山菜料理の王道「タラノメの天ぷら」

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別名を「山菜の王様」と呼ばれる「タラノメ」。お浸しにすると苦味と香りが強く出て「これがたまらない」という方もいますが、今回はやはり王道中の王道、天ぷらでいただきます。
カリッとした衣と、温かく柔らかくなったタラノメ。噛むと僅かな苦味と共に、若草を思わせる香りがさっと通り抜けていきます。味付けはシンプルに塩だけで。
タラノメが大量に手に入った場合は天ぷらにして、翌日甘めの天つゆで煮てからご飯に乗せてもたまらない美味しさです。
天ぷらと楽しむのなら、やはり日本酒を置いて他になし。
昴のフルーティーさが、タラノメがもつやさしい野の香りの輪郭をくっきりと際立たせてくれます。


季節感のない毎日に、一皿&一杯の旬の刺激を

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寒く厳しい冬が明けたことを感じさせてくれる山菜。
普段、外食やスーパーのお惣菜に慣れてしまった私たちにとって、山菜を食べることは、目新しく香り高く旬を感じさせてくれる貴重な機会となるはずです。

今年はカレンダーの数字ではなく、舌や鼻で季節を実感してみませんか?
「酒噺」でご紹介した調理法以外にも、皆さんのお好きな食べ方で山菜とお酒の取り合わせを楽しんでみてくださいね。

   

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