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「チューハイ」ってどんなお酒? その歴史や魅力を深掘りする噺
2022,9,23 更新
【意外と知らない焼酎の噺07】これまで、焼酎の歴史や、造り方について深掘りしてきた本シリーズですが、ここからはその飲み方などの”実践編”。今回のテーマは「チューハイ」です。おそらくお酒好きなら誰もが一度は飲んだことがある「チューハイ」の誕生から、現在に至るまでの歴史やおいしい飲み方などを、大衆酒場にまつわる著書を数多く上梓している藤原法仁(のりひと)さんと、雑誌『古典酒場』創刊編集長の倉嶋紀和子さんにアツく語ってもらいました。様々な角度から「チューハイ」について紐解いていきます。
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そもそも「チューハイ」とは?
※割り材:酒を割って飲むための炭酸水や果汁などのこと
もともとは焼酎の炭酸割りから派生した「チューハイ」ですが、現在は焼酎だけでなく、ウォッカやジンなどの蒸留酒を、炭酸水などで割ったアルコール飲料を総称して「チューハイ」と呼ばれているようです。
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それでは、まずは「チューハイ」の定義から考察していきましょう。「チューハイ」はビールや清酒と違い、酒税法上の品目ではありません。また現在、業界団体など民間の統一基準がないため厳格な定義もなく、何をもって「チューハイ」とするかの明確な規定はありませんが、藤原さんはどのようにお考えなのでしょうか?
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ちなみに、『チューハイ』は酒税法上ではリキュール(エキス分が2度以上)あるいはスピリッツ(エキス分が2度未満)に分類されます」
倉嶋「『チューハイ』は下町の『焼酎ハイボール』がルーツと言われますもんね。以前に藤原さんが紹介した『三祐酒場 八広店』の回で詳しく触れていました」
藤原「はいはい。今はなき『三祐酒場 本店』のご主人(奥野木祐治さん)が1951(昭和26)年にアメリカ進駐軍の駐屯地で飲んだ『ウイスキーハイボール』に感銘を受けて生まれたのが『元祖焼酎ハイボール』だったという話ね」
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倉嶋「『ウイスキーハイボール』はつまり、ウイスキーの炭酸割り。諸説ある『ウイスキーハイボール』の由来のひとつにも、炭酸の泡(泡の玉=ボールが上昇する様)説がありますもんね」
「ハイ」と「サワー」の違い
そして「サワー」といえば、レモンサワーを思い浮かべる人が多いでしょう。確かに「サワー」は英語(SOUR)で酸っぱいという意味ですから、味のイメージとしてもリンクします。では、実際の起源はどこにあるのでしょうか。
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昭和30年代には焼酎を炭酸水で割ったものを『タンチュー(炭酎)』などと呼んでいたそうです。一方、ジンを炭酸水などで割ったカクテル『ジンサワー』も知られるようになっていて、ならば焼酎をベースにした『チューサワー』があってもいいのではないかと。でも、当時の焼酎は安い格下の酒というイメージが強かった。そこで『チュー』も省いて『サワー』と名付けてしまおうということになったのだとか。
加えて、1958(昭和33)年といえば映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の時代。東京タワーが建設されるなど経済成長期にさしかかっていたため、生レモンも入手しやすくなっていました。そうして、生のレモンを入れたサワーを名物ドリンクとして発案。これがレモンサワーのルーツだと聞いています」
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そして、レモンサワーを世に広めた立役者が、目黒区武蔵小山の飲料メーカー、博水社のロングセラー割り材「ハイサワー」。こちらのストーリーは藤原さんが教えてくれました。
藤原「定番であり、『ハイサワー』シリーズの第1号である『ハイサワー レモン』は1980年の発売。そのヒントになったのは、同じ目黒区にあった『もつ焼きばん』のレモンサワーなんです。やがて割り材として『ハイサワー レモン』は大ヒット。『わ・る・な・ら・ハイサワー』のCM効果もあって『サワー』も広く知られるようになりました」
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藤原「『炭酸水を使わないなら“緑茶ハイ”ではなく“緑茶割り”が正しい』と言う人もいますね。それと『炭酸水ナシはチューハイじゃない』とか『緑茶ハイはチューハイじゃない』という人もいるかもしれません。僕も気持ちはわかるんです。でも、ウーロンハイや緑茶ハイなどの『お茶割り』も、広義では『チューハイ』に含まれると思います。緑茶割りではなく、緑茶ハイとして売り出しているお店もたくさんありますし、ほとんどのお酒好きは『どっちでもいい』と思っているのではないですかね。そこに関しては目くじらを立てるほどではないかなと思いますよ」
倉嶋「そうなんですよね。私も緑茶割りやウーロン茶割りは雑誌『古典酒場』を制作する上でも表記が難しかったなって、今でもよく覚えています」
藤原「ええ。定義がないですから、それがひとつの答えなのかなと。できれば、それぞれの由来は諸説を含めて知っておいたほうがいいのかなとは思いますけどね。よくないのは、根拠がない情報で理解したつもりになって、そこから『チューハイとは○○であり、○○は違う』とか発信したり断定しちゃったりすること。うーん、あらためて『チューハイ』って奥が深いですね」
エキスを使う「チューハイ」の酒場が東京東部に多い理由
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トレンドの発信地となったのが、東京の下町。その理由は、かつては界隈に高度経済成長期を支えた町工場が多く、大衆酒場は労働者の社交場として栄えたから。また、さらに歴史をさかのぼると、もともと江戸は水路の街で、川を使って船で物流を行っていたから。川沿いを中心に産業が栄えて人が集まり、街が発展。大きな河川のそばにあった古い街のなかには、船が使えるという利点を生かし、工業地帯として発展していったケースも多いのです」
倉嶋「特に下町の『チューハイ』として根付いているのは、焼酎+炭酸水+エキスのタイプです。このエキス文化は東京の大衆酒場でも、都心部には下町ほど多くは見られないと思います。都心部のホワイトカラー労働者は、ビールやウイスキーハイボールを好んだからという背景もあると考えられます」
「チューハイ」はこうして全国区になった
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倉嶋「特に『村さ来』は果汁や甘くて色の鮮やかなシロップを使って、カクテルのような『チューハイ』をバリエーション豊かに展開したことで有名ですよね。このカジュアルさが当時の若者に受けると予想したんでしょうね。今日久々に飲みましたけど、懐かしいです! 若返った気分になりました」
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そして、1980年代のチューハイブームの火付け役として忘れてはいけないのが、さっき話した『ハイサワー』と、『缶チューハイ』の誕生です」
倉嶋「そう、日本初の缶入りチューハイ『タカラcanチューハイ』。1984(昭和59)年に発売されるやいなや大ヒットし、いまも続くロングセラーですよね」
藤原「その通り! まとめると、偉大な焼酎『純』の大ヒットによるチューハイブーム、カクテルのように甘くてバリエーション豊かな『チューハイ』を提供する居酒屋チェーンの拡大、『ハイサワー』のヒット、『缶チューハイ』の誕生。これらが、『チューハイ』が全国区になった要因といえるでしょう」
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酒場通のふたりが好きな「チューハイ」と居酒屋
藤原「僕はやっぱり、エキスと炭酸水の黄色い『チューハイ』が一番好き。僕の中では『チューハイ』といえば下町の『焼酎ハイボール』ですから。甲類焼酎とエキスを先に混ぜた“焼酎ハイボールの素”を作って冷やしておいて、さらにキンキンに冷やした炭酸水を先にグラスに入れてから“焼酎ハイボールの素”を入れるレシピがベスト。できれば氷はナシ。レモンスライスを入れるのもアリで、その場合も炭酸水を入れる前。こうすると、炭酸水とともにレモンがピーッと上がって美的にも素晴らしいんです」
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【東京・大衆酒場の名店】酎ハイ街道をゆく。八広・亀屋の“ボール” 受け継がれる秘伝レシピの噺
倉嶋「さすが藤原さん。先に炭酸を入れるのは、墨田区あたりに多いスタイルですね。私は特にコツというほど実践していることはなく、甲類・本格(乙類)焼酎両方とも使いますし、レモンも使ったり使わなかったりなんですが、最近のお気に入りは宝焼酎『レモンサワー専用』です。やさしいコクと、ほんのりハーブ系なニュアンスがあってレモンの香りが立つし、炭酸水で割るだけでもおいしい。あと、タイ系などスパイス料理との相性がピカイチでオススメです」
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藤原「最近のマイブームおつまみはハムエッグ。卵はよく焼いてあるのが好きです。そしてお店は、東向島(墨田区)にある大衆酒場『岩金』。両手に炭酸水の小瓶をもって、一気に2杯ぶんの『チューハイ』を作る技があって衝撃を受けたんです。僕はあれを“炭酸二本差し”と名付けました」
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村さ来 中野北口店
住所:東京都中野区中野5-64-5 サンピオーネビル 4F
営業時間:17:00~24:00(L.O.23:30)
定休日:なし
※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年9月2日)
撮影/鈴木謙介
記事に登場した商品の紹介はこちら▼
・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/
・宝焼酎「純」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/jun/
・宝焼酎「レモンサワー専用」
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/lemonsour/
・タカラcanチューハイ
https://www.takarashuzo.co.jp/products/soft_alcohol/regular/
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【意外と知らない焼酎の噺01】「焼酎って何?」その定義やルーツをお酒の専門家に聞く噺
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