ホッピーミーナが語る! 焼酎のベストパートナー「ホッピー」の噺
2022,10,21 更新
【意外と知らない焼酎の噺08】『古典酒場』編集長の倉嶋紀和子さんがナビゲーターとなって探っていく「意外と知らない焼酎の噺」。今回のテーマは、前回の「チューハイ」と並んで甲類焼酎の飲み方として定番の「ホッピー割り」。東京で生まれて昔から焼酎の割り材として人気の「ホッピー」。その誕生から現在までの歴史と変遷、美味しい飲み方を、“ホッピーミーナ”(以降はミーナ)ことホッピービバレッジ株式会社(東京都港区)代表取締役社長の石渡美奈(いしわたり みな)さんに伺います。
●倉嶋紀和子・右/雑誌『古典酒場』の創刊編集長。大衆酒場を日々飲み歩きつつ、「にっぽん酒処めぐり」(CS旅チャンネル)「二軒目どうする?」(テレビ東京)などにも出演。その他にもお酒をテーマにしたさまざまな活動を展開中。俳号「酔女(すいにょ)」は吉田類さんが命名。令和4年(2022年度)「酒サムライ」の称号を叙任
そもそも「ホッピー」とは?
倉嶋「0.8%というのが『ホッピー』のおいしさを司る特徴であり、魅力でもありますよね!」
ミーナ「そう! アルコールはコンマ数%でもうまみですから。0.8%といえどもしっかり発酵させて造っているところがこだわりの1つです」
原材料と醸造への徹底したこだわりがあり、現在の麦芽はカナダおよびドイツ産の二条大麦、ホップは世界最高級のドイツ・ハラタウ産のアロマタイプとビタータイプを使用。さらに酵母はドイツ・ミュンヘンの酵母バンクでホッピー醸造のために厳選された下面発酵酵母を用い、水は清らかな秩父山系の天然水を使っているそうです
ミーナ「製法も一般的なビールと同じですが、0.8%のアルコール度数でベストなおいしさを追求。麦汁濃度、使用酵母、発酵時間など、すべてが当社秘伝のノウハウで造っています」
親しみやすい名称の由来は、当初は本物のホップを使ったノンビアで「ホッビー」と創業者が考えましたが、語呂が良くないので「ホッピー」にして販売したそうです。
ミーナ「ホッピーのロゴにも秘密があって、この『ピー』の字は、夜空を仰いで笛を吹く少年の姿をイメージして父(二代目・石渡光一氏)が考えたんです」
「ホッピー」誕生秘話
ミーナ「当社は1905(明治38)年に祖父(石渡秀氏)が五個連隊の御用商人を拝命して、餅菓子を納めていた『石渡五郎吉(ごろきち)商店』がルーツです。いまの『東京ミッドタウン』あたりですね。その後、海軍伝いにラムネの伝来をいち早く聞きつけ、ラムネの製造を始め『秀水舎(しゅうすいしゃ)』を設立しました」
やがて大正時代末期になると、本物のビールは手に入りにくい時勢だったのでビールの代用品としてノンビアがブームとなり、「秀水舎」にもノンビアの製造依頼が舞い込みます。ただ、当時は中小企業にとって良質な原材料が入手困難な時代でした。創業者は「まがいもので造ることはまかりならん」と、製造を断固拒否。引き続き清涼飲料水を手掛けつつ、長野に「千曲(ちくま)飲料合資会社」を設立してホップ農家の方々とご縁をいただき、本物の原材料にこだわったノンビアの製造開発着手に至りました。
倉嶋「長野といえば、有名な国産ホップ『信州早生(しんしゅうわせ)』のふるさとですし、ホップ開拓の光を長野に見出したんですかね」
倉嶋「そうして昭和になり、戦争を経て『ホッピー』が発売されるわけですよね。でも1948年って、戦後すぐじゃないですか。当時の時代背景からすると、すごいスピードの早さですね」
ミーナ「長野にあり戦火を逃れた製造設備をいち早く赤坂へ移設し製造を再開できたことも一つの要因ですが、何よりも復興への情熱ですよね。それに、戦時中は思うように造れなかったというジレンマもあったでしょうし。私自身あらためて、すごい人だなと思います」
倉嶋「でも終戦後すぐだったからこそ、『ホッピー』のおいしさがいっそう際立ったとも思うんです。当時は食糧難で、ビールは高嶺の花。焼酎も粗悪なものが少なくなかったと聞いていますから、『ホッピー』が焼酎をおいしく飲む割り材として礼賛されたんじゃないかなって気がします」
ミーナ「ありがたいことです。ビールより安くておいしく早く酔えるということで、市民権を獲得していったと聞いています」
ミーナ「これも祖父の人脈ですね。当時の『ホッピー』ファンが、祖父との信頼関係で各地にプッシュしてくれたと聞いています。あとは、浅草には祖父の弟が住んでおり、横須賀も熱心に販売してくれる方がいらっしゃったと。そうしたご縁のなかでホッピー文化が根付き、育てていただいたんです」
2000年代以降に「ホッピー」が飛躍した背景
ミーナ「女性の社会進出や、インターネットによる情報拡散も大きかったと思います。雑誌『古典酒場』や倉嶋さんの影響力もありがたかったです」
ミーナ「全国的に知っていただけるようになったことは非常にありがたいと思っています。ただ、『ホッピー』のふるさとは東京であり首都圏。あくまで東京のご当地ドリンクとして、全国へ発信していきたいですね」
「ホッピー」の種類
●ホッピー(360ml)
●黒ホッピー(360ml)
ミーナ「重すぎず飲みやすいうえ、飽きのこない深みも持ち合わせた美味しさの秘密は、醸造マイスターによる絶妙なブレンディング技術とセンスがカギ。香ばしさと苦味の程よいバランス、まろやかな甘みが特徴です」
●55ホッピー(330ml)
ミーナ「ビールに一番近いビアテイスト飲料の味に仕上げており、麦芽のコクとホップの爽やかな香りは、のどの渇きを癒すのに最適です」
●樽ホッピー
限られた飲食店で提供されている「樽ホッピー」。殺菌方法が瓶と異なり、よりフレッシュな味わいの特別な「ホッピー」。
ミーナ「生ビールと同じくサーバーから注がれるため、きめ細かくやわらかい泡が魅力的。非常に繊細な商品なのでお取り扱い店舗が限定されているのですが、ファンの方々の間では、『樽ホッピーを探せ!』運動があるとかないとか言われてるんですよ(笑)」
なお、市販の商品では「ホッピー」が「ホッピー330」、「黒ホッピー」が「ホッピーブラック」という330mlボトルで販売。ガラスびんを採用しているのは、外光から美味しさを守るためという理由に加えてもう1つあります。それは、ガラスびんは天然素材のため何度もリサイクルでき、地球環境の保護にも応えるエコな容器だから。
倉嶋「ちなみに、『ホッピー』と『黒ホッピー』が360mlとなっているのは、専用の500mlジョッキでおいしく飲むためですよね。ということで、次は実践編。場所をお店に代えて、ホッピー割りを存分に楽しみましょう!」
「ホッピー」の飲み方
ずっとおいしく飲んでいただきたいので、『ホッピー』と焼酎をよく冷やし、ジョッキは凍らせることをオススメしています」
ミーナ「そう聞いています。しかしながら、いつしか氷を入れて飲むスタイルが定着しているとも感じていました。そこで当社では1990年代後半から、あらためてこの飲み方を『3冷』と命名。飲食店様などを中心に『3冷』のおいしさを知っていただくなど、『3冷』を広めていく活動を推進していきました」
倉嶋「笛を吹く少年のモチーフ以外にもあったんですね。しかも北斗七星とは、なんとロマンチックな先代社長!」
3つの公式レシピでますます美味しい「ホッピー」
ミーナ「『中』と『外』に関してはわからないですが、お酒が好きな方が考えたのではないかと思います。私たちとしては『3冷』で1杯飲み切っていただくことをオススメしているので、途中で焼酎や『ホッピー』を追加することは提案していません。とはいえ、お客様が自分で自由に割って作る楽しさも『ホッピー』の魅力だと自負しています。焼酎で割らずに飲む『ホッピー』も美味しいですし」
倉嶋「はい! 私は『ホッピー』の遊び心というか、この余白も大好きなんです。『3冷』を基本に、3つの公式アレンジレシピもありますよね」
次は『ウルトラD』。アルコール度数25%の甲類焼酎を専用グラスの★2つめまで注いだ、アルコール度数が約7%の飲み方です。醸造による『ホッピー』のコクと蒸留酒である焼酎のスッキリした飲み口が絶妙で、『ウルトラドライ』から『ウルトラD』と名付けられました。なお、★1つめまで注いだ場合のアルコール度数は約5%となります。
3つめは『プレミアムライト』。まずはシャーベット状に凍らせたアルコール度数20%の甲類焼酎を、ジョッキ1つめの★半分(35ml)まで入れます。そこによく冷やしたアルコール度数25%の甲類焼酎を1つめの★上(35cc)まで注入。あとはよく冷やしたホッピーを勢いよく注げばでき上がり。アルコール度数が約4.8%の、ライトな口当たりが楽しめます」
倉嶋「あらためてお話を伺うと、『ホッピー』は本当に面白いドリンクですね。ミーナさんは『ホッピー』に合う甲類焼酎の良さとは何だとお考えですか?」
ミーナ「『ホッピー』の美味しさを際立たせつつ、アルコールのうまみをちゃんと伝えてくれるのが甲類焼酎。立ち位置が『ホッピー』と似ているとも思います。どちらも主役のようで、脇役のようなバイプレイヤーでもある。でもだからこそ味があるし、どんな食事にも合うベストパートナーだと思います」
倉嶋「蒸留酒の甲類焼酎を醸造酒テイストの『ホッピー』で割るという、この組み合わせはかなり珍しく、それでいてベストマッチな美味しさ。私はこの絶妙なバランスも大好きです!」
オススメの飲み方とおつまみはこれだ!
ミーナ「個人的には、アルコール度数25%の甲類焼酎を専用グラスの★2つめまで注いだ『ウルトラD』がベスト。でも、何をおいしく感じるかは人それぞれですから、お好きな飲み方で楽しんでいただければ幸いです」
倉嶋「私はカスタマイズできるのが魅力だと思っており、ちょっとお酒を控えたいなと思う時は、薄めで割って美味しいし、ガッツリ飲もうという日は『横須賀割り』で飲むのもよし。カクテルとしては『ホッピー』と焼酎とトマトジュースでレッドアイ風にするのがオススメです。ジョッキの縁に塩を付けたスノースタイルにすれば、もうどんどん進んじゃいますね(笑)」
フードペアリングに、ふたりとも「何にでも合う」という意見で一致。特に「ホッピー」はオールラウンドで、「黒ホッピー」はコクが豊かな料理に合うといいます。
ミーナ「おつまみは何でも合いますね。今日のお店(煮込み居酒屋 寅 赤坂店)なら、繊細な味わいの『豆腐の浅漬け』に、甘み豊かな『とうもろこしの天ぷら』、名物の『自家製八丁みその牛もつ煮込み』のような濃厚なものまで。ちなみに、意外な組み合わせでいえば『黒ホッピー』にティラミスを合わせる楽しみ方はぜひ試していただきたいです」
甲類焼酎のベストパートナーであり、アレンジも自由自在で料理との相性も幅広い「ホッピー」。あらためてお店やご自宅で楽しんでみてください。その際は「3冷」で飲むこともお忘れなく!
<取材協力>
住所:東京都港区赤坂3-15-6 B1
営業時間:11:00~14:00、17:00~23:00(フードL.O.22:30/ドリンクL.O.22:45)
定休日:日祝
※価格はすべて税込みです
※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年9月15日)
撮影/我妻慶一
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・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/
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