【TRANSIT×酒噺】旅の“宝噺”〈砂漠編〉
2019,6,21 更新
トラベルカルチャー雑誌『TRANSIT(トランジット)』では、特集した国や地域の旅の思い出を編集部と制作に携わった取材クルーが語りあう「旅の宝話」という企画を連載しています。「酒噺」では、TRANSITとのコラボ企画として、その内容を不定期に「旅の“宝噺”」としてご紹介します。今回はTRANSIT44号・砂漠特集でモロッコを旅した写真家の西山勲さんをゲストに迎え、思い出のモロッコ料理をいただきながら乾杯しました。現地はイスラームの国だったので、旅の間もアルコールはなし。暑い砂漠を歩き、何度もお酒のことが脳裏をよぎりながら、ようやく帰国。取材旅の打ち上げ感覚で、お酒を飲みながら、旅の話もヒートアップしました。
■プロフィール
東京、福岡を拠点に、写真家、編集者、デザイナーとして活動。世界のアーティストを訪ねる『Studio Journal knock』を創刊、旅をしながら雑誌制作も行う
モロッコの旅の“宝噺”
西山(以下N): 6年ぶりですね。そのモロッコ旅が初めての一人旅でした。高校時代にブラジルにサッカー留学をしたことはあったけど、旅らしい旅はしたことなくて。その頃はまだデザイナーとしての仕事がメインで、写真は撮りだしたばかりでした。写真を始めたことで、今住んでいる文化圏と全然違うところに行きたいなと思ったんですよね。モロッコを選んだのはTRANSITのモロッコ特集と大竹伸朗さんの『カスバの男:モロッコ旅日記』を読んだから。TRANSITは在庫がなくて、6000円で古本を買いました(笑)。
T:定価より高い! ありがとうございます。初めてのモロッコはどうでしたか?
N:スペインからフェリーでジブラルタル海峡を渡ってモロッコ入りして、砂漠の町マアミド(アルジェリア国境まで45㎞の場所にある最果ての町)まで縦断するルートだったんですが、10年くらい旅してる人に出会ったり、現地の人たちに声をかけてポートレートを撮ったりして、とにかく写真を撮るのも旅をするのも楽しかった。どちらかというと、僕はそれまで石橋を叩いて生きてたんだけど、その旅でタガが外れたというか、どこまででも行きたいと思いましたね。あの旅がなければ、写真を仕事にしていなかったかもしれませんね。
T:人生が変わるほどの旅だったんですね! 今回モロッコを再訪してどうでしたか?
N:北から南まで旅して思ったけど、町によって人の顔立ちも服も暮らしも全然違いました。印象的だったのは、山岳地帯ミデルトでテント生活をしている遊牧民の一家ですね。雄大すぎる自然の中で、小さなテントがポツンと一つ頼りなげにあった景色が忘れられません。それでも着いたらすぐにお茶を淹れて、炒り卵とヤギのバターとパンを出してくれて、夕飯は鶏のタジンでもてなしてくれました。それがものすごく美味しかったんです。砂砂漠の男たちの手料理も美味しかったな。夜の真っ暗な中でも、手際よく火を熾こして、料理を作ってくれて、生きる力 が強いなって思いました。
T:今回は、西山さんが発行している『Studio Journal knock』の取材も含めてモロッコを旅 していたんですよね。
N:はい。今回はマラケシュやラバトで活動するアーティストを取材しました。ヨーロッパで高い教育を受け、広い視野と価値観を持つ若い世代との出会いは刺激になりましたね。ふたつの取材を通してモロッコの多様性に触れることができたのはよかったです。
T:前回の旅ではある意味で人生を見つけたわけですが、今回の旅では何か見つかりましたか。
N:一番大きい収穫は、モロッコをまた訪れたいと思ったことかな。旅先によっては、1回でいいなってところもあるし、もう行きたくないってこともある。2 回行ってもまだ行きたいと思えるってことは、まだ見たいものが何かあるってことですからね!
TRANSITとは?
URL:http://www.transit.ne.jp/