日本一の道具街で見つける酒器の噺
2019,2,1 更新
お店で日本酒や焼酎を注文したとき、ちょっとお店のこだわりを感じる酒器で提供されると思わず嬉しくなるものです。お酒の種類や味わい、温度によって酒器を変えるのは、飲食店ならよくあること。そこまで本格的に酒器を揃えることは難しいですが、自分の好きなお酒にあう器を選ぶのは、家で飲むお酒を今よりも美味しく、楽しくしてくれます。そこで、今回は東京にある日本一の道具屋街、「かっぱ橋道具街」を訪問。プロも買い求める調理道具専門店に、お話を伺ってきました。※表示の価格はすべて税込
日本一の道具屋街の食器店「かっぱ橋 まえ田」
現在は観光地としても有名ですが、もちろん飲食業を営むプロも足繁く通うプロ御用達の街です。その一角にあるのがこの「かっぱ橋 まえ田」。
和食器や酒器、包丁などを中心に数多くの食器を取り扱う専門店です。
かっぱ橋道具街通りに面した店からは、山のように積まれた食器が見えます。
店の奥を覗いてみると…ありました。壁一面には酒器の数々がずらりと並んでいます。
徳利(とっくり)に升(ます)に、お猪口(ちょこ)に、何やら見慣れないものまで実に多彩。
これらは、店主である前田潤(まえだ・じゅん)さんの目利きによるもの。まえ田では、岐阜の窯元(かまもと)や佐賀県有田を中心とした酒器を集めているそうです。
「うちはシンプルな酒器が多いですね、飲食店をされている方はシンプルなものを好みますし、こうしたものって意外と探しても見つからないんですよ」。(前田さん)
確かに、百貨店などでは鮮やかな柄ものの酒器はよく見かけるものの、無地の徳利や土の風合いを活かした素朴な猪口や片口などはなかなか見かけません。
また飲食店の内装や多彩な料理との取り合わせを考えると、酒器がシンプルなものに落ち着くというのは確かにうなずける話です。
こうしたシンプルな酒器を揃えて、「自宅で居酒屋気分に浸る」、なんていうのもなかなか趣があるものかもしれません。
プロが教える酒器の選び方
そこで前田さんに、酒器の選び方を伺ってみました。
「何より実際に手に取ってみることが大事ですね。私も店に置く器を選ぶときには必ず自分で持って感触を確かめます。持ったときに掌に馴染むような感触があるといいですね。その後は、自分の飲みたいお酒を、その器で飲むと想像してみてください。縁が薄いお猪口だったら、唇に当てたときどんな感触がするか。ガラスの器だったらどんな色のお酒が映えるか。お酒を飲む状況を考えて“この器で飲みたい!”と思えたら、それが自分好みの酒器だと思います。値段よりも、大切なのは相性。数百円の酒器でも、それで飲みたいと思えたらそれがあなたにとっていい酒器です。もっと言えば、酒器だけにこだわる必要もないんです。例えば、お気に入りの蕎麦猪口で日本酒を飲んだりするのも素敵ですよね」(前田さん)
前田さんの選ぶオススメの酒器は?
【片口2合(1470円)と猪口(1350円)】
温かな風合いの土ものの片口と猪口の取り合わせは日本酒にぴったり。
2合と容量も大きいのに、器自体はそれほど重くなく取り扱いやすいのが特徴。飲食店でも人気なのだとか。
【蛇(じゃ)の目ぐい呑(のみ)(170円〜860円)】
利き酒などに使われる蛇の目のぐいのみ。大きさによって値段は変わるものの、とってもリーズナブル。こうした業者向けのアイテムが気軽に買えるのもかっぱ橋道具街の醍醐味です。ちなみにこのぐい呑。常連客であるスウェーデン人ソムリエのお気に入りの品でもあるそう。
【両口燗徳利 (2500円)】
リーズナブルな価格ながら、お酒を燗する際に直火や電子レンジでの使用も可能です。
【さえずり盃(1410円)とさえずり徳利(5400円)】
お酒を注ぐときには徳利から、お酒を飲むときには盃から鳥がさえずるような音が聞こえる珍しい酒器。酒器の中の空気が抜けることで、音が出る仕掛けですが、軽やかで可愛らしい音を聞きたくて、ついついお酒が進んでしまいそう。
酒飲みのための酒器扱いの極意
でも、せっかく買った自分好みの酒器ですから出来るだけ長持ちさせたいものです。
酒器の上手な取り扱い方を前田さんに聞いたところ、
「ひとつ挙げるとしたら、飲んだ日に片付けないことですね。好きな酒器だとお酒がすすみますから、意外と飲み過ぎているかもしれませんので思わぬ拍子で落としてしまう可能性も。おいしく飲んだらゆっくり休んで、片付けは翌日に。これが極意です」とのこと。
酒器の取り扱いだけでなくユーモアもたっぷりな「かっぱ橋まえ田」。
「お酒を飲む器にこだわりたいな」と思ったら、まずはこの店を訪ねてみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
営業時間:平日:9:00〜17:00 祝休日 10:30〜17:00
定休日:日曜
住所:東京都台東区松が谷1丁目10-10
※取材データは2018年11月時点