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目に舌に、喉に。涼を呼び込む「竹の酒器」の噺

目に舌に、喉に。涼を呼び込む「竹の酒器」の噺

暑い季節のお酒は、温度はもちろん、見た目も涼しく楽しみたいもの。本日は、夏の爽やかな涼を感じる「青竹」の酒器をご紹介します。

晩夏とはいえ、まだまだ暑いこの時期。
熱暑で火照った体を心地よく冷ますために、お酒はキリリと冷えたものをいただきたいものです。
そんな時気になるのはお酒の器。夏にぴったりな酒器の定番は涼やかなガラスですが、より風情豊かにお酒を楽しむなら、竹を器にしてみるとまた違った雰囲気が味わえますよ。
今回の酒噺は、舌にも喉にも目にも竹林の涼やかな風を届ける、竹の酒器の噺です。

嵐山で85年続く竹細工の老舗へ

竹の酒器を求めて、今回酒噺スタッフが訪れたのは京都・嵐山。
嵐山と言えば、言わずと知れた竹の名所。野宮神社周辺や奥嵯峨にかけての竹林は、地元の方はもとより多くの観光客の目を楽しませています。
その嵐山の渡月橋を北へ渡って少し歩いた場所にあるのが、昭和10年創業の「いしかわ竹乃店」。嵯峨野の竹を中心に、茶道具や花器に酒器、アクセサリーにバッグまで、伝統的な技法と竹の個性を生かした道具の数々をつくりあげる専門店です。

私たちを迎えてくれたのは、代表取締役の石川恵介(いしかわ・けいすけ)さん。
いしかわ竹乃店の創業者は、この地で能楽器の小鼓(こつづみ)を販売していた石川さんのお祖父さま。小鼓を売る傍ら「嵐山に来た方の記念、お土産になるものを」と思っていたところ知人の勧めがあり、嵯峨・嵐山に多く生えている竹を使用した竹細工や竹製品も売り始めたのだそう。今でもいしかわ竹乃店の看板である提灯には小鼓が描かれており、その歴史を物語っています。

しなやかで強く、保温性にも優れた竹の魅力

「竹の魅力は細工の自由がきき、しなやかで強い点にあります。細かく割いて編むことで様々な形を表現することができますし、自然のものなので表情も豊か。色艶はもちろん、茶杓(しゃく)のように節の造形を楽しむといった使い方もできるんです」と石川さん。

さらに続けて竹の魅力について語っていただきました。

「意外かと思われるかもしれませんが、酒器としても竹は優秀なんです。竹の断面を見ると細かな繊維の管が見えます。この中には空気が入っているため保温性に優れているんです。夏は竹のタンブラーにお酒を入れてそのまま冷蔵庫で冷やすと、ひんやりと心地よい温度のお酒を長時間楽しむことができますよ。もちろん、料亭などで提供されるような青竹を切ってお酒を注ぐといった使い方も可能です。実際に、私の店でも嵯峨野の青竹を切って手を加え、酒器の形にしたものを販売しています」。

目にも涼やかな青竹の酒器で一献

石川さんが取り出してくださったのは、青竹の徳利(とっくり)とおちょこ。
由来には諸説ありますが、お酒を注ぐ「とくりとくり」という音から名前が付けられたとも言われる「徳利」は、デザイン上、空気に触れている部分が少ないので、香りや温度を器の中に保つことに適していると言われています。

いしかわ竹乃店の徳利は、嵯峨野の竹林で切った竹に、注ぎ口や取手をつけた風流なもの。竹の一番太い部分を使用しているので、竹一本につき徳利ひとつしか作ることができない贅沢品です。

お店近くで失礼して、この酒器に特撰松竹梅<純米大吟醸>を注いで一献いただいてみます。
同じく青竹で作った猪口に注いでひと口。青く甘い香りが、息とともに口から鼻の奥へと吹き抜けていきます。
竹の香りのおかげか後口もさっぱりとして、なんとも爽やかで晴れやかな気分にさせてくれます。酒器でここまで日本酒に個性がつくとは、本当に驚きです。

この清涼感、この贅沢さは日本だけでなく海外でも受け入れられているようで、いしかわ竹乃店の青竹徳利は、カンヌ映画祭のレセプションにおいて、乾杯の一献の酒器に選ばれたこともあるのです。

青竹はその香りの良さや見た目の美しさで私たちを楽しませてくれますが、生の野菜と同じく鮮度が命。冷蔵庫の保管で1~2ヶ月は使用可能で、しっかりと水洗いすれば、繰り返し使用することもできます。ただし、青竹は風に弱く空気に触れた部分から白く変色していくので、保存する時はできるだけ風に当てず、ビニールなどに包んで保管しておくのが良いそうです。

焼酎にも炭酸にも使えるオールマイティな竹の酒器

焼酎などを楽しむ場合は、白竹の酒器がオススメです。
白竹は青竹を火で炙ったり油抜きなどの下処理をしたりと、手を加えたもの。加工を施すことで、長期保存ができるようになります。

氷を入れても冷たすぎず掌にしっかりと馴染む持ち心地。竹の持つ保温性のおかげで、手のぬくもりは酒に伝わらず、酒の温度が変わらないのが嬉しいところ。

「竹のコップは海外の方にも人気です。海外には竹の自生していない地域も多く、切った形がそのままコップになっている竹の姿に驚く方もいらっしゃいますね。もちろん、私たちの日常使いにも最適です。私も自宅ではこのコップを冷蔵庫で冷やして晩酌に使っています」(石川さん)。

レモンサワーや炭酸系のお酒好きの方にも、竹の酒器はオススメ。
竹のコップの内側はすべすべとしているようですが、実は人間にはわからないほどの細かな凹凸が付いています。
この細かな凹凸が、キメの細かな泡を生み、炭酸系のお酒をまろやかに、泡立ち良いものにしてくれるのだそう。

いしかわ竹乃店では、病気平癒・疫病退散の願いを込めて、妖怪アマビエをプリントした酒器も用意されています。
竹や笹には殺菌・防腐作用があり、奈良の大安寺などでは、夏に竹の徳を称えるとともに、癌封じの祈祷をした青竹の酒を振る舞う「竹供養」が催されます。
アマビエと竹が手を組んだ酒器。コロナだけでなく、夏バテ・夏負けしないよう願いを込めて、使ってみるのも面白いかもしれませんね。

竹製品が教えてくれる、豊かな暮らしのあり方

「竹は古くから私たちの暮らしに役立ってきた植物です」と石川さん。

「竹冠(かんむり)の付く漢字を思い出してください。箸・筆・笊・籠・箪笥・筒・竿と、日常生活で使う物品の多くに竹冠がつくのは、かつてそれらが竹でできていたことを表しています。確かに、現在の私たちの生活の中には、竹よりもっと使い勝手のいい、金属やガラス、プラスチックなどの素材がいくつもあります。しかし、それらに竹が劣っているというわけではありません。先述した竹のしなやかさや強さもそうですが、竹の大きな魅力の一つは使い手によってその表情を変えてくれるところにあります。編み籠も、酒器も、使い込むほどに色が変わり味が出て、手入れ次第で使った人の個性が現れてくるんです。
いわば、持ち主とともに育つ道具。何年経っても変わらず壊れないものにはないこの性格は、便利一辺倒ではない手間をかけて実現する、本当の贅沢な暮らしのあり方を私たちに教えてくれるような気がします」(石川さん)。

もちろんいしかわ竹乃店では、伝統的な竹製品のみを取り扱っているわけではありません。レジンや樹脂など新たな素材を取り入れたアクセサリーや、竹と布を組み合わせたバッグなど、現代の生活にも取り入れられる、機能とデザインを兼ね備えた竹製品も数多く取り揃えているのです。

いしかわ竹乃店の製品は、嵐山の店舗はもちろん、インターネットでも購入可能。なんと青竹の酒器もクール便で年中配送してくれます。
夏のお酒の涼を求めて、竹製品のあるちょっと豊かな暮らしを。お酒好きの皆さんは、まずは酒器から始めてみませんか?

<取材協力>

いしかわ竹乃店 本店
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺造路町35
営業時間:12月~3月 11:00~17:00/4月~11月 10:00~18:00
定休日:なし

いしかわ竹乃店 昇龍苑店
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺門前
営業時間:10:00~17:00

URL: http://www.takenomise.com/
通信販売:https://store.shopping.yahoo.co.jp/takenomise/ 
▽竹の酒器と一緒にご紹介したお酒はこちら

・特撰松竹梅<純米大吟醸>
https://www.takarashuzo.co.jp/products/seishu/junmaidaiginjo/

・全量芋焼酎「一刻者」
https://www.ikkomon.jp/

▽お酒とともに楽しむ「酒器」の噺はこちらから

・現代の酒器を装う、伝統と革新の工芸品の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat1/sxhK4

・酒を注げば景色が変わる、天満切子の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat4/8OIGC

・酒の味を丸くする?錫器の噺
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・日本一の道具街で見つける酒器の噺
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・お酒を美味しくする、江戸切子の噺
https://sakabanashi.takarashuzo.co.jp/cat4/zEAdA