酒を注げば景色が変わる、天満切子の噺
2019,4,26 更新
薩摩切子に江戸切子など、カッティング技術を生かしたガラス工芸の中でも、近年特に注目が集まっている天満切子(てんまきりこ)。
天満とは大阪市北区、日本三大祭りのひとつ天神祭の本宮である、大阪天満宮(おおさかてんまんぐう)付近の地名のこと。この地で生まれた天満切子には他の地域の切子とは一線を画す、ある決定的な違いがあるのです。大阪らしい“用の美”を兼ね備えた、その魅力を探りに天満切子発祥の工房を訪れました。
そもそも天満切子って?
この地でガラス工業が発展した理由のひとつは、市内を流れる大川(旧淀川)の水運に恵まれ、ガラスの材料となるケイ砂や燃料の流通が容易だったこと。
もうひとつは、明治維新の一大プロジェクトである、大阪造幣局がこの地の近隣にできたこと。大阪造幣局では、貨幣だけでなく金属精製のための原料も製造しており、そのうちの炭酸ナトリウムはガラスの原材料でもあったのです。
こうしたきっかけから、明治期には天満界隈には数多くのガラス工場がひしめいていたのですが、時代とともに輸入品のガラスなどに押され、やがてひとつ、またひとつと閉鎖されていきました。
酒を注ぐと生まれるグラスの底の別世界
そう言って紹介していただいた天満切子のグラスは確かにすっきりとした可愛らしいデザインですが、装飾的な面で見ると細かなカッティングが無数に入る江戸切子や薩摩切子に比べ、いささかシンプルなような気もします。
計算され尽くした、失敗のできないシンプルさ
この遊び心と実用性を兼ね備えた天満切子の魅力が認められ、大阪の有名ホテルのバーや水族館とのコラボレーション切子も誕生。さらには2025年の大阪万博誘致のための贈答品として選ばれるなど、国内外に広く知られるようになってきています。実際に、ホテルのバーで天満切子を使った方が、その魅力に惚れ込んで買いに来ることも珍しくないのだそう。
自分好みを選ぶなら、まずは使ってみないと
とはいえここは、幾つもの見事なカッティングが施されたグラスが並ぶギャラリー。どのような基準で選べば自分にぴったりなグラスが選べるのでしょうか。
そう話している間にも、1つ2つとグラスを買い求めるお客さんが、ギャラリーを訪れています。
ガラス工業発祥の地で、近代になって生まれた天満切子。
伝統を下敷きに、実に大阪らしい実用性を兼ね備えたこの新たな工芸品。皆さんも、ちょっと贅沢な気分のお家呑みや、お酒好きな方へのプレゼントに選んでみてはいかがですか?
切子工房RAU(きりここうぼうラウ)
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜・祝日
住所:大阪市北区同心1-11-8 宇良ビル1F
https://www.temmakiriko.com/
天満切子Gallery (てんまきりこギャラリー)
営業時間:11:00~20:00
定休日:月曜
住所:大阪市北区天満2-2-19 サンナカノビル1F
https://gallery.temmakiriko.com/
※取材データは2019年3月時点
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